「窓の向こうが土みたいになってる……ここは五階なのに……」
宮原葵は呆然と呟くと女子トイレの窓ガラスをノックしてみた。普通のガラス窓を叩いたときより、心なしか音がくぐもっている気がした。
よもや自分が今までいたショッピングモール毎地獄に再現されたものに置き換えられたなどつゆ知らず、明らかな異常事態に戸惑う。優に十メートル以上は地上からあるはずのそこが少し目を離した間に土で埋められているなどというのは、彼女に危機感を抱かせるには充分であった。
とりあえず洗面台から水が出ることを確認したりして派手なドッキリなのではないかと考えたりもするが、そんなものに自分が巻き込まれる理由もわからない。トイレの内にも外にもいつの間にか人がおらず、そんな大規模なドッキリを営業中のショッピングモールで、ただの小学生である自分にするとは到底思えない。
ただ一つの例外を除いて。
「また鬼ごっこだったり……?」
こんなことをできたりしたりする存在に一つだけ心当たりがある。このあいだ、突如学校を地獄と化して鬼ごっこを強いてきた鬼達。奴らならば可能ではないのかと推測を立てる。そしてその推測は当たっている。今の事態は葵達三人を主に殺し切るために用意し、それを大規模にしたものである。しかも鬼達へのチュートリアル用のエネミーとして鬼の牢獄の出口から遠い場所がスタート地点だ。鬼達からすればボーナスステージだが彼女にとってはモンスターハウスであった。
(私だけ巻き込まれたのか、悠も一緒に巻き込まれてるのか……)
トイレからおずおずと出て物陰に隠れながら考える。先程まで一緒にいた桜井悠はシアター近くにいるはずだ。なんとか合流したい。飲み込んだ生唾が喉にベッタリと貼りついている気がした。
【F-05/00時10分】
【宮原葵@絶望鬼ごっこ】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『水晶』
[道具]:若干のお小遣いなど
[思考・行動]
基本方針:死にたくない。
1:鬼に警戒。
2:幼なじみが巻き込まれていたら合流したい。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
人物解説……当企画のパロディ元である『絶望鬼ごっこ』シリーズのキャラで小学六年生。二巻の『くらやみの地獄ショッピングモール』からの参戦。ガリ勉宮原と揶揄されるほど勉強熱心で学年でトップ。また妖怪ウォッチの元ファンで、妖怪等の民俗学について教えたがる。この企画では今現在三人目のリピーターである。なお女だ。
最終更新:2018年05月27日 23:57