「またこの空か。」
ウンザリしたという感情がこもった声で空を見上げるのは黒髪の少年だった。ともすれば険の強いとも思われるであろう切れ長の目で、火花散る赤い空を見る。つい先程までの青い空とは対抗色のそれは誰がどう見ても異常事態であり。それ故少年は何が起こったかこの鬼ごっこの他の子達の中でもいち早く理解した。
(このチラシ、学校の時とほとんど一緒か。また鬼ごっこだろうな。)
雲と呼ぶにはあまりに禍々しい赤い何かが、水面に垂らしたインクのように野放図な陰影をつけている空。
初見ではなんのことかわからない、説明する気があるのかないのかわからない
ルール説明。
そしていきなり子供を拉致ってくる頭のおかしい発想とそれを可能にする力。
三つ揃えばこれが以前に自分が巻き込まれた、地獄の鬼達の鬼ごっこだろうと想像はついた。
(で、あれなんだ?)
一度経験があるため内心の驚きはともかく物陰にすぐ隠れながら考える。また鬼ごっこに巻き込まれたのはいい、いや良くないが、まあそれは置いておく。なんかポケットに違和感を感じて見てみたら珍妙な紙が入っていたのも、まあ鬼の仕業だろう。だが納得のいかないものがあった。
「なんで椅子ごとパラシュートで落としてるんだ……?」
自らの頭上を飛ぶ飛行機が親の仇の如く撒くチラシと一緒に落っことされてくる、椅子にくくりつけられた人影。そのシュールな光景に数秒真顔になる。あの鬼達が考えることはまるでわからないしわかりたいとも別に思わないが、物事には理由があるはずであるという考えからすると、頭の中にハテナマークが浮かばざるを得なかった。
(いや、常識的に考えればあれ親か鬼だろ。だったらとりあえず隠れられる場所を探すか。)
呆けていたのから立ち直ると素早く周囲を見渡す。幸い、少し坂を下ったところに建物があるようだ。鬼ごっこでは身体を休められる場所は重要である。秘密基地にできれば鬼に捕まる危険性は減らせるだろう……あの建物が罠という可能性もあるが。
(行こう。)
聞き耳を立て、足音を忍ばせながら歩き始める。また訳のわからないことに巻き込まれてしまったがこんなところで止まってはいられない。
自分には、帰る義務があるのだから。
【H-06/00時02分】
【金谷章吾@絶望鬼ごっこ】
[役]:子
[状態]:健康
[装備]:『式札』
[道具]:若干のお小遣いなど
[思考・行動]
基本方針:絶対に生きて帰る
1:鬼に警戒。
2:自分以外の存在を捜索。
※その他
自分の役・各役の人数・各役の勝利条件・会場の地図・制限時間は全て未把握。
人物解説……当企画のパロディ元である『絶望鬼ごっこ』シリーズのキャラで小学六年生。二巻の『くらやみの地獄ショッピングモール』からの参戦。運動会ではリレーの選手に選ばれるなど運動神経は全体的に良い方で、勉強の方もトップクラス。クールな性格で一匹狼気質だが、なぜか子供には懐かれるタイプ。投下時現在、四人目のリピーターである。
最終更新:2018年05月29日 02:27