08(春)(木村)

2008年度・春学期・会計学A(木村 吉孝)60分 持込一切不可




Ⅰ.次の各文章の空白に適当な語句を入れなさい.

1.会計とは,会計情報の利用者の( 1 )を提供するよう,経済主体の経済活動を認識し,測定し,伝達することである.
 企業は営利目的をもって利潤最大化に努める経済主体であるが,この企業活動を対象とする会計を企業会計という.企業会計には,財務会計と管理会計の2つの大きな領域があるが,財務会計は,複式簿記システムによって,企業の( 2 )や( 3 )を明らかにし,それを企業を取り巻く利害関係者に報告する会計である.この財務会計における利害関係者への報告は,財務諸表のよって行われるが,その中心的なものとして,貸借対照表,損益計算書,株主資本等変動計算書,( 4 )計算書があげられる.
 貸借対照表は,企業の一定時期の(2)を表す.資金の( 5 )である資産と,資金の( 6 )である負債及び純資産が貸借対照表に示される.損益計算表は,企業の一定期間の(3)を表す.すなわち,一会計期間の収益から費用を差し引いた期間利益が損益計算書に示される.

2.会計の機能として,受託責任の解除(資金提供者への資金顛末を報告する責任を果たす機能),利害調整機能(株主や債権者などの利害関係者間の利益配分における調整機能),( 7 )(投資家や経営者の資金配分状の意志決定に役立つ有用な情報を提供し,情報の非対称性を解消する機能)などが挙げられる.
 会計公準とは,会計あるいは会計原則の基礎にあり,これらが依存している基本的な諸仮定を言う.会計公準は,経済的・社会的環境の変化によって変化し得るものであるが,代表的なものとして次の3つの公準が挙げられる.①( 8 )の公準(企業そのものを所有者から独立した経済主体と見なし,会計を行う独立の場を設けるという前提),②( 9 )の公準(企業が将来にわたって永続的に活動するものと仮定し,一定の期間に区切って会計を行うという前提),③( 10 )の公準(季語湯実態の期間的活動の状況を多様な財・サービスの共通尺度である貨幣額をもって集約して表現するという前提).

3.我が国における会計基準の基礎となってきたのが( 11 )である.その一般原則の内容は次の通りである.
①真実性の原則 「企業会計は,企業の(2)及び(3)に関して,真実な報告を提供するものでなければならない.」
②正規の簿記の原則 「企業会計は,すべての取引につき,正規の簿記の原則に従って,正確な会計帳簿を作成しなければならない.」
③資本取引・損益取引区別の原則 「資本取引と損益取引とを明瞭に区別し,特に( 12 )と利益剰余金とを近藤してはならない.」
④明瞭性の原則 「企業会計は,財務諸表によって,利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し,企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない.」
⑤( 14 )の原則 「企業会計は,その処理の原則及び手続きを毎期継続して適用し,みだりにこれを変更してはならない.
 (14)の原則の目的は,利益操作を排除し,財務諸表の( 15 )の可能性を確保することにある.
⑥( 16 )の原則 「企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には,これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない.」
⑦( 17 )の原則 「株主総会提出のため,信用目的のため,租税目的のため等種々の目的のため異なる形式の財務諸表を制作する必要がある場合,それらの内容は,信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって,政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない.
⑧重要性の原則 「重要性の乏しいものについては,本来の厳密な会計処理によらないでほかの簡便な方法による」ことを認める原則.

4.資産とは,過去の取引または事象の結果として,報告主体が支配している( 18 )をいう.ここで,(18)とはキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいい,実物財に限らず,金融資産及びそれらと同等物を含む.資産の認識には,資産の定義の充足に加えて発生可能性・( 19 )の条件を満たす必要がある.
 資産はその機能的な属性によって,貨幣性資産と( 20 )に分けられるが,貨幣性資産は支払い手段としての現金預金,金銭負債などからなり,(20)は将来の収益の稼得のために利用されるべく待機している未回収の資本(未消費原価)であり,棚卸資産,有形固定資産,無形固定資産,繰延資産などがこれに当たる.
 資産の評価において,過去における実際の取引価額である取得原価(歴史的原価)をもって資産の評価基準とする方法を取得原価基準という.取得原価基準の合理的根拠は,①取得原価が外部取引に基づく点で,客観性や確実性が高いこと,②時価評価にともなう( 21 )の計上を排除し,収益認識における実現主義の原則と結びついて,資金的裏付けのある( 22 )を測定することができる点にある.
 一方,取得原価基準の問題点として,取得原価が現在の資産の経済的価値を反映しているとは限らないことが挙げられる.貨幣価値が下落しているときには,名目的な利益が(22)に混入してしまい,実質資本維持が図られなくなる.取得原価基準のこうした欠点を補うものとして,時価基準がある.時価基準とは,期末時点の時価を貸借対象価額とする方法である.時価基準には,( 23 )(購買市場と売却市場とが区別されている場合において,購買市場で成立している価格をいう)による(23)基準と( 24 )(購買市場と売却市場とが区別される場合において,売却市場で成立している価格から見積もり販売経費を控除したものをいう)による売却時か基準がある.また,その他の基準として,割引価値(資産の利用から得られる将来(4)の見積額から何らかの割引率によって測定時点まで割り引いた測定値をいう)による割引原価基準がある.

5.損益計算の方法として,( 25 )と損益法がある.(25)とは機首と期末の純財産額の比較により,期間損益を計算する損益計算法であり,一方,損益法とは一会計期間の収益からその獲得のために犠牲とされた費用を差し引いて期間損益を計算する損益計算法である.現行の会計制度は損益法に立脚しているが,その期間損益計算の構造はおよそ次のようである.
 まず,実現主義の原則に基づいて期間収益が決まる.次に,( 26 )に基づいて認識された費用のうちから,当期の収益を獲得するために犠牲となった部分が期間費用として抜き出され,期間収益と期間費用の差額として,期間損益が算定される.なお,時期以降の収益獲得に貢献する費用は資産として次期に繰り越される.
 このように,期間損益計算に際して,経営活動の成果としての収益とその収益獲得のための努力としての費用を対応づけて,両者の差額として利益を算定・表示することが求められる.これを( 27 )の原則という.(27)には,( 28 )(例として,売上高と売上原価)と期間的対応(例として,売上高と販売費および一般管理費)がある.
 ここで,現実主義の原則とは,販売などにより客観性や確実性を備えた時に収益を認識するものであり,具体的には,①( 29 )の提供,②( 30 )の確定とその受領を要件とする.これら2つの要件は,一般に商品を販売した時点に満たされるため,現実主義は典型的には販売基準として適用される.


Ⅱ.下記の記述について,妥当なものには「○」,間違っているものには「×」とその理由を述べよ.

① 資本主理論においては,企業の資産,負債,純資産さらに純資産の期間増減分である利益ないし損絵質は資本主に帰属する.その考え方は,「資産-負債=資本(純資産)」という資本等式によく表現されている.また,資本主理論に基づくならば,借入金に対する支払利息も株主に対する配当と同様に利益処分(剰余金の分配)とされるべきである.

② 企業会計は,企業の財政状態や経営成績に関して,真実な報告を提供するものでなければならない.従って,財務諸表の作成には,将来に対する予測や見積もりといった経営者の主観的な判断を排除し,絶対的真実性を確保することが求められる.

③ 文具等の消耗品の購入時に消耗品費として全額費用処理することは,簿外資産を生じさせることとなるため,正規の簿記の原則に従った処理とは認められない.

④ 割賦販売においては,代金の回収期間が長期にわたるため,中途で回収不能になる場合も少なくない.そこで,収益の認識を慎重に行う必要があるため,販売基準に代えて,割賦金回収日または回収期限到来日に収益を計上することも認められる.

⑤ 賃借対照表の純資産の部は,株主資本,評価・換算差額等,新株予約権の3つに区分される.このうち会計上の資本である株主資本は,資本金,資本剰余金,利益剰余金に区分される.さらに,資本剰余金は資本準備金とその他の資本剰余金に区分され,利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に区分される.

⑥ 減価償却は,費用配分の原則にもとづいて,資産の取得源から残存価額を除いた額をその耐用期間にわたって費用配分する手続である.償却方法としては,定額法,定率法,階級法,生産高比例法などがあるが,減価償却の計算要素として,取得原価,残存価額,耐用年数の3つの要素が決定されれば,どのような減価償却方法によっても減価償却費の計算は可能となる.

⑦ 残存価額は,耐用年数到来時に予想される売却価格または利用価格であるが,資産の種類や状態によっては,解体・処分等の費用を差し引くと残存価額がマイナスになることも考えられる.このような場合には,当該マイナスの残存価額を取得原価に加えて要償却額とすべきである.

⑧ 減価償却の開始時には予見することのできなかった原因等により,機能的減価要因が生じたときは,耐用年数の短縮や残存価額の修正などに基づいて減価償却費を臨時に計上することができる.これを臨時償却という.また,有形固定資産が災害,事故等の偶発的事情によって物理的に滅失したり,損傷したりした場合には,その滅失部分の金額に相当する金額だけ帳簿価額を切り下げなければならない.これを減耗償却という.

⑨ 繰延資産とは,既に代価の支払いが完了しまたは支払い義務が確定し,これに対応する役務の提供を受けたにもかかわらず,その効果が将来にわたって発現すると期待されるため,収益との適正な対応を目指す観点から経過的に資産計上の正当化される項目である.この定義に該当するものはすべて繰延資産として貸借対応表に資産計上しなければならない.

⑩ 企業会計原則は,一定の要件を満たした臨時巨額の損失について,繰延資産と同様に経過的に貸借対照表に資産計上して繰延経理することを認めている.これも,費用収益対応の見地から,臨時巨額の損失を将来の収益に対応させることを目的に認めている会計的資産である.


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最終更新:2008年07月30日 18:08
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