「遅かったじゃないか、エルフ」聞き覚えのある乱暴な声がした。ブルーノー・バトルハンマーが殺した敵の背を踏んであらわれた。ドリッズドがただでさえ重たいイエティにのしかかられたままだという事実は、まるで気にしていないようである。重くてしようがないけれど、何度もへしおられたことのある、とがった長い鼻や、白いものがまじりはじめたが、それでもまだ火のように赤い顎髭を見て、ドリッズドはうれしくなった。「探しに出てきたおかげで、あんだの難儀を救えたってわけだ」
―R.A.サルヴァトーレ(著)、風見 潤(訳)
『アイスウィンド・サーガ1 魔石の復活』
古代の荘重さを誇る王国、山岳地の裾野に掘られたホール、深い鉱山と熱い鍛冶場に鳴り響くつるはしとハンマーの音、氏族と伝統への信頼、そしてゴブリンとオークに対する激しい憎悪―これら共通の糸が全てのドワーフを一体にしている。
ドワーフは他のほとんどの種族と良好な関係を築いている。「知人と友人の違いは100年くらいだな」というのはドワーフが良く口にする誇張表現だが、人間のような短い寿命の種族の者がドワーフの信頼を獲得することがいかに難しいかを言い表している。
エルフ:「エルフどもを頼りにするのは感心しない。エルフどもが次に何をするかは全く予測もつかない;ハンマーがオークの頭をぶちのめしたとき、やつらは突然剣をほっぽり出して歌を歌い出す始末だ。 奴らは気まぐれで軽薄だ。しかし、やつらについては2つの事は間違いない:やつらにはほとんど鍛冶屋がいないにも関わらず、やつらは非常に素晴らしい細工仕事をする。それから、オークやゴブリンどもが山から下りてきたときには、エルフはおまえの背中を預けるに足る素晴らしい仲間だ。やつらはドワーフほど優れた種族じゃあないが、たぶん、我らと同じくらいオークどもが嫌いなことは間違いないだろう。」
ハーフリング:「もちろん、やつらは気のいい連中だ。でもまあ、ハーフリングの英雄なんてものは見たことがない。帝国、勝利を収めた軍隊。それどころかハーフリングの手になる古代の宝物。こうしたものは何もない。まじめな話、どうして奴らを一緒に連れて行ったりできるものだろう?」
人間:「1人の人間の事を知るという程の時間を持った頃には、その人間は死の床にあるだろう。おまえが幸運なら、彼女と同じくらい素晴らしい手と心臓を持つ彼女の親類を見つけることができるだろう。おまえが人間の友人を作ることができるのはそんなときだ。彼らがする事を良く見ておくといい! 彼らは、それがドラゴンの宝物庫だろうが、帝国の玉座だろうが、自らが熱望する物を手に入れる。たとえそれが、大抵は彼らを困難な状況に追い込むものだとしても、この種の献身には称賛を贈るべきだ。」
背が低く頑健
勇敢にして頑健なドワーフは、熟練の戦士、鉱夫、石と金属の仕事の作業員として知られている。彼らの身長は5フィートにも満たないが、がっちりとした体格で引き締まっており、身長が2フィートも高い人間と同じくらいの体重にもなる。彼らの勇敢さと持久力は、より大きいあらゆる者たちに容易に匹敵するものである。
ドワーフの肌の色は深い褐色から赤みがかったより薄い色合いまでの幅があるが、最も一般的には明るい褐色か深い日焼け色であり、ある種の土のような色合いである。彼らの頭髪は長く素朴な様式で編みこまれ、通常は黒、灰色、あるいは褐色であるが、色素の薄いドワーフの場合にはしばしば赤毛である。男性のドワーフは彼らの顎鬚を大いに誇りにしており、慎重に手入れを行なっている。
長い記憶、長い恨み
ドワーフは400年以上の歳月を生きることができるため、最も年老いたドワーフはしばしばまるで異なった世界の事を記憶している。たとえば、フェルバール要塞(フォーゴトン・レルム世界にある)に住む最古老のドワーフの幾人かは。3世紀以上前、オークたちがこの要塞を制圧し、彼らを250年以上に渡って追放するに至った日の事を思い出すことができる。こうした長命である事は、彼らに人間やハーフリングのような、より短い人生の種族が欠いている世界に対する見識を彼らに与えている。
ドワーフたちは、彼らが愛する山々のように堅固で持続的であり、禁欲的な持続力とほとんど不変である事によって何世紀もかけて道を作り出していく。彼らは自らの氏族の伝統に敬意を払っており、まだ世界が若かった頃に最も古い要塞の設立にまで遡る自らの祖先を辿り、彼らの伝統を軽々に放棄したりはしない。こうした伝統の一部にはドワーフの神々に対する献身、勤勉な労働者というドワーフの理想の保持、鍛冶場に対する献身といったものが含まれる。
個々のドワーフは決然として忠実であり、有言実行の人であり、ある点では頑固とも言える。多くのドワーフは正義感が強く、彼らが受けた悪い事柄をなかなか忘れようとしない。1人のドワーフに対する悪い行為は、そのドワーフの氏族全体に対する悪い行為と見なされるため、初めは1人のドワーフの復讐に過ぎなかったものが、本格的な氏族全体の確執に発展することがある。
氏族と王国
ドワーフの王国は山の地下深くに広がり、そこでは、ドワーフたちが貴金属を採掘し、素晴らしい品々を鍛え上げている。彼らは貴金属と良質な宝石の美しさと工芸品を愛しており、中にはこうした愛が高じて貪欲に陥ってしまうドワーフもいる。彼らが自らの山で見つけることができない物全般は、交易を通じて手に入れる。彼らはボートを嫌っており、そのため、水路を使ったドワーフの品々の交易には、よく人間やハーフリングが従事している。他の種族の信用にたるメンバーはドワーフの居住地に喜んで迎えられるが、そうした者たちにすら、いくつかの場所は立ち入りが禁止されている。
ドワーフ社会の主要な構成単位は氏族であり、ドワーフは社会的な立場というものに高い価値を置いている。自分自身の王国から遠く離れて暮らしているドワーフであっても、彼らの氏族としてのアイデンティティと仲間意識を大切にしており、仲間のドワーフを識別し、誓いや罵りの際には彼らの祖先の名前を呼ぶ。氏族なしの状態になるというのは、ドワーフが陥りうる中で最悪の運命である。
故郷以外の地にいるドワーフは一般的に職人であり、特に武器鍛冶、鎧職人、宝石細工師である。中には傭兵やボディガードになる者もおり、彼らの勇気と忠誠心ゆえに人気が高い。
神々、金、氏族
冒険者生活に入るドワーフは、宝物を望むということが動機であったかもしれない―それ自体が理由かもしれないし、特別な目的があるのかもしれないし、あるいは誰か他の者を助けるためという利他的な目的ですらあるかもしれない。また別のドワーフの中には、神の命令や霊感に導かれており、直接に招請を受けたか、ドワーフの神々の1柱の栄光をもたらすためという単純な理由であるかもしれない。また、氏族や祖先というものも重要な動機となりうる。ドワーフは氏族の失われた名誉を取り戻したり、氏族が受けた古代の過ちへの復讐を果たしたり、追放されてしまった後の氏族内における新しい立場を手に入れたりすることを求めるのかもしれない。あるいは、ドワーフは強力な祖先が使用していた、何世紀も前の戦場で紛失した、あるアックスを探索しているのかもしれない。
ドワーフの名前
ドワーフの名前は、伝統に則って氏族の長老から授けられる。それぞれのドワーフの固有名は何世代に渡って使用され続けてきた名前である。ドワーフの名前は氏族に属するものであり、個人のものではない。氏族の名前を悪用したか、名前に泥を塗ったドワーフは名前を剥奪され、いかなるドワーフ名であれ、その代わりに使用することを法によって禁じられる。
男性の名前:アドリク、アルベリク、ベルン、バレンド、ブロッター、ブルーノー、デイン、ダラク、デルグ、エベルク、アインキル、ファーグリム、フリント、ガーデイン、ハルベク、キルドラク、モーグラン、オーシク、オスカー、ラングリム、ルーリク、タクリン、ソラディン、ソーリン、トルデク、トラウボン、トラヴォク、ウルフガー、ヴェイト、ヴォンダル。
女性の名前:アンバー、アーティン、オウドヒルド、バードリン、ダグナル、ディーザ、エルデス、ファルクラン、フィネルン、グンローダ、ガーディス、ヘルヤ、フリン、カスラ、クリスティド、イルデ、リフトラーザ、マードレッド、リズウィン、サンル、トルベラ、トルベラ、トルガ、ヴィストラ。
氏族の名前:バルデルク、バトルハンマー、ブローナンヴィル、ダンキル、ファイアフォージ、フロストビアード、ゴルン、ホルデルヘク、アイアンフィスト、ロデール、ルトゲール、ルムナハイム、ストラーケルン、トルン、アンガルト。
ドワーフの種族特徴
ドワーフのキャラクターは、ドワーフの性質の要となる、一連の生まれつきの能力を持っている。
能力値上昇:
君の【耐久力】の値は2上昇する。
年齢:
ドワーフは人間と同じ割合で大人に成長するが、50歳までは若者と見なされる。平均的には、彼らは350年ほど生きる。
属性:
大部分のドワーフは秩序属性であり、良く秩序立った社会の利益について固く信じている。また彼らは善属性の傾向もあり、フェアプレーの強い感覚と、だれでも正当な命令による利益を共有するにべきだと考えている。
サイズ:
ドワーフは身長約4~5フィートで、体重は平均150ポンドである。君のサイズは中型サイズである。
移動速度:
君の基本歩行移動速度は25フィートである。君の移動速度は重装鎧を着用することによって減少することがない。
暗視(Darkvision):
地底での生活に適応していることで、君は暗闇や薄暗い光の環境下における優れた視力を持つ。君は60フィート以内の薄暗い光の中をあたかも明るい光の中であるように、また暗闇の中を薄暗い光の中であるかのように見通すことができる。暗闇の中の色を識別することはできず、ただ灰色の濃淡しか識別できない。
ドワーフの毒耐性(Dwarven Resilience):
君は毒に対するセーヴィング・スローに“優位”を得、また[毒]
ダメージに対する抵抗を持つ(第9章に説明されている)。
ドワーフの戦闘訓練(Dwarven Combat Training):
君はバトルアックス、ハンドアックス、ライト・ハンマー、ウォーハンマーに対する習熟を有する。
道具の習熟(Tool Proficiency):
君は次の中から選択した職人道具への習熟を得る:鍛冶道具、醸造用品、石工道具。
石工の勘(Stonecunning):
石造りの品に関連する【知力】〈歴史〉判定を行うときにはいつでも、君は〈歴史〉技能に習熟しているものと見なされ、その判定には通常の習熟ボーナスの代わりに、習熟ボーナスの2倍を加算する。
言語:
君は共通語とドワーフ語を話し、読み、書くことができる。ドワーフ語には硬い子音と喉音が多く、その文字はドワーフが話しているものではない他のさまざまな言語にも転用されている。
アンダーダーク深くの都市の中にドゥエルガル、別名グレイ・ドワーフは生息している。この邪悪で隠密行動を生業とする奴隷商人たちは、捕虜を得るために地表世界に略奪にやって来ては、その犠牲者をアンダーダークの他の種族に売りさばいている。彼らは不可視になり、巨人サイズにまで一時的に巨大化したりする生来の魔法能力を有している。
出展:『Player's Handbook』
出典:『Sword Coast Adventurer's Guide』
最終更新:2016年09月12日 22:47