昔々のその昔、合衆国中西部と呼ばれる世界―具体的に言えばミネソタ州とウィスコンシン州―に、ゲームの歴史を永久に変えることになるある友人たちの一団が集まった。
そうすることを彼らが意図していた訳ではない。彼らは魔法や、モンスターや、
冒険の世界についての物語を単に読むだけでは飽き足らなくなったのだ。彼らはそうした世界を見守るだけではなく、そこで遊んでみたくなったのだ。そこで彼らが発明したのが『Dungeons & Dragons』であり、それによって今日まで続く次のゲーム界の革命に火を点けることになったのだが、そこから次の2つのことが言えるであろう。
第一に、彼らの発明と天才的な才能によって生み出されたこのゲームは、他には存在しえない世界を探険する完璧な方法を表現していた。今日あるゲームのほとんど全てといっていいほどのものが、それが電子媒体によるものであろうと、卓上で行なうものであろうとも、何らかのD&Dの影響を受けていると言える。
第二に、それは彼らが生み出したこのゲームが持って生まれた魅力を証明している。『Dungeons & Dragons』は全世界規模で成功した現象に火を点けた。これは最初のロールプレイング・ゲームであり、その血脈の中で最高のものの1つであり続けている。
D&Dをプレイするために、またそれを楽しくプレイするために、このルール全てを読む必要はないし、ゲームの事細かな細部に渡って記憶する必要もなく、変わった形のダイスの振り方に熟練する必要もない。これらの事柄のどれひとつとして、このゲームを最高に楽しくするにあたって必須のものではない。
君に必要なものは2つだけだ。第一に、君と一緒にゲームをやってくれる友人たちだ。友人と一緒にプレイするゲームは多くの楽しみを提供してくれるが、D&Dはただ楽しいという以上の楽しみをもたらしてくれる。
D&Dのゲームをプレイすることは、共同創作活動を実施することである。君と君の友人は緊張と記憶に残るドラマでいっぱいの叙事詩を作り出すのだ。君たちは何年経っても笑うことができる仲間内の冗談を作るだろう。ダイスは無情かもしれないが、それでも負けずに頑張れるだろう。君たちが集合しての創造性は、全く馬鹿げたものから、伝説の類と言えるものまで、さまざまな、何度も何度も語られることになる物語を生み出すことになるだろう。
もし一緒にゲームをするのに興味のある友だちがいないとしても、気に病むことはない。D&Dのテーブルを囲む場というのは他の何ものにも替え難い特別な魔力を秘めているのだ。誰かと十分にたくさんのゲームをプレイしたなら、君たち二人はすっかり友人になっていることだろう。君の次なるゲーム・グループは、最寄りのゲーム店、オンライン・フォーラム、あるいはゲーム・コンベンションなどすぐ近くにあるのだ。
君が必要とする第二のものは、生き生きとした想像力や、あるいはそれ以上に重要なものは、君の持つ想像の産物がどんなものであれ、それを使おうという意欲である。君は熟練のストーリーテラーや才能あふれる芸術家になる必要はない。君に必要なのは単に創造を熱望することだけであり、何かを作り出したいと望み、それを他人と共有しようとする意志を持つ勇気を持つことだけである。
幸運なことに、D&Dが君たちの友情を強化してくれるのと同時に、それは君たちの間に創造と共有についての信頼というものを生み出すのにも役立つ。D&Dは利口な解決方法を見つけることを教えてくれ、問題を打ち破ることができる突発的なアイデアを共有し、単に何が受け入れられるではなく、何が起こるか想像を促すゲームである。
君が作り出す最初のキャラクターと冒険は、もしかすると陳腐なお決まりコースの寄せ集めかもしれない。これは史上最高のダンジョン・マスター以下、誰にでも言えることである。この現実を受け入れ、第二のキャラクターや冒険の作成にとりかかれば前よりも良くなるだろうし、さらに第3についてはなおいっそう良いものになるだろう。こうしたコースを何度も繰り返すことで、キャラクターの背景物語からファンタジー冒険の叙事詩的世界まで、君はすぐに何でも作ることができるようになるだろう。
いったん君がこの技能を手に入れたなら、それは永久に君のものである。無数の作家、芸術家、その他の創作者たちが、D&D用に書き付けた数ページ、一握りのダイス、そして台所のテーブルにその始まりを辿ることができる。
何にもまして、D&Dは君たちのものである。テーブルで築いた友情は君たちだけのものである。君たちが乗り出した冒険、君たちが作り出したキャラクター、君たちに残る記憶―これらは全て君たちのものとなるだろう。D&Dは宇宙の中での君たち固有の在り処であり、君たちが望むように自由に君臨することができる場所である。
さあ、今こそ乗り出そう。このゲームのルールを読み、この世界の物語を読むのだが、これらに生命を与えるのは君なのだという事はいつでも覚えておくこと。君たちがこれらに生命の輝きを与えない限り、何も始まらないのだ。