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第一話 - (2007/04/19 (木) 17:57:29) の最新版との変更点
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朝――それから連想される言葉は、「清清しい」、「眠い」、「寒い」、「○○○、お腹がすきました」等、人により色々あるだろう。
ちなみに、僕――御空光輝はこう答える。「こんな朝、もう嫌だ」と。
第一話&html(<font color="white">―</font>)一発ネタなエンゲージ
「お早うマイサンッ!今日も良い日だぁっ!!」
朝っぱらから喧しく且つ近所迷惑な大声を出すのは僕の父親―御空黒人―である。
ちなみに現在時刻午前5時30分。家ではこの時間に起きるのは普通だが、ご近所では起きている人間は少ない。
この父親は、どこか頭の構造が根本的に間違ってるようで、何度注意しても「分かってるぞぉ!」と叫ぶだけで直っていない。
っていうか注意した端から叫ぶ時点で間違ってる。
なので、今では諦めてスルーすることにしている。視界の端で無視されて落ち込んでいるのが見えるが無視だ無視。
さて、今日は僕にとって結構特別な日である。それは、今日から高校生になるからだ。
これで小学校、中学校の頃の悪友とも縁が切れ、僕の周囲の、性格が540度すっ飛んだ人間の人口は一気に一人にまで減少した。その前は軽く20人を超えていた。
出会う端から変人奇人だったからなぁ。それも今日で父さん一人だと思うと気が楽だ。
そう思いながら、布団をたたみ、服を着替え居間に入る。
「お早う光輝」
「うむ、お早う」
「いや待て」
声をかけてきたのは母さん(名前は御空琥珀)と――面識が一切無い少女。
少女といっても僕と同年であろうが、こんなことは重要じゃない。問題なのは何故に面識の無い人間がここにいるかだ。
「この人誰さ」
「あれ?言ってなかったっけ?この前近くに引っ越してきた九条さんのお嬢さんよ。
光輝と同じ歳で、同じ高校に行くからって聞いたし、この辺りの地理には疎いらしいからあんたと一緒に行かせようと思って」
何だそのギャルゲーの初日染みた突発イベントは。
「九条七統だ。よろしく頼む」
そして彼女は彼女でこちらを見ることなく、挨拶をした。その視線の先には――朝食。
今日の朝食は昨日のシチューである。一晩寝かせたシチューもカレー同様とっても美味しい、って違う!
「ねぇ、黒人は?」
「無視ったらへこんだ」
「じゃぁ暫くは来ないわね。なら先に食べましょうか」
家の力関係は父さん=僕<<<―以下無量大数なので省略―<<<母さんである。逆らう余地は無い。
前の周囲の変人奇人の数を訂正しよう。現時点で三人だ。
母さんは母さんで良く考えれば数に入ってるし、目の前の彼女も恐らくはそうだろう。
シチューを見ながらとても楽しそうにしている。っていうか、目がキラキラしてる。そんな好きか?シチュー。いや、僕も好きだけどさ。
「頂きます」
「はいどうぞ」
彼女はそう言って右手で皿を受け取り、逆の手で箸を――
「待て」
「何だ」
止められた理由が全く分からず、寧ろ何で止めるんだこの野郎ぶっ殺すぞと言わんばかりの視線で睨みつける彼女。
「いや、シチューに箸って違うだろ」
「箸以外にどんな食器を使えというのだ」
駄目だ。根本的に何かが違う。
ここで、うっかり箸を持ったとか言うなら良いんだが……目の前にスプーン置いてあるのにその台詞を言うか。
テーブルのど真ん中に、これでもかというほどの存在感を持っているスプーンをしっかりと無視るか。
一体どれだけ純和風生活してんだあんた。
「七統ちゃん、こういうときはこれを使うのよ」
そう言って母さんが持ってきたのは、
「更に待てっつーに」
「ん?何か変な物持ってる?」
「おたま手にして良く言えるな」
金属製のスプーンが目の前にあるのに、プラスチック製の、しかも調理用の大きいおたまを手に取るなよ……
「こういうときはこれを使うんだよ」
これ以上周りにボケられても埒が明かないので自分でスプーンを取って手渡す。
そして食べようとして、また突っ込まないといけない状況になった。
「何故二本使おうとする」
「一本で良いのか?」
助けて、誰か。幾ら自他共に認めてやるツッコミ役でもこれは厳しい状況だ。
突っ込んだことにボケられる。しかも天然で。これほどツッコミ役にとって相性の悪い存在は居ない。
例えるならそう、同人作家にとってのアメリカネズミのようなものだ。触れてはならない、近づいてはならない。それに触れてしまったのだ、僕は。
言ってしまえば現状救いようの無い大ピンチ。棺桶に片足突っ込んだならまだしも棺桶に両膝まで突っ込んだ状態。
ボケとツッコミの攻防だけでここまで来るなんて思いもしなかったぞ。
「って人がしみじみと地の文使って感傷浸ってる隙にスプーンを逆さまに持って無理矢理箸みたいに使うんじゃねぇ!」
「カルシウム不足だな」
「あんたの所為だろうが!紛れも無く!!」
それからすぐに慣れた手つきでスプーンを使ってシチューを食べ始める。こ、こいつ――ッ!!
「始め見たときはなかなか分からなかったが、匙と一緒だな」
「一目見て気づけよ!」
ツッコミの性とは恐ろしいものである。脳が突っ込もうとする前に既に脊髄反射で突っ込んでいる。
「今日は一段と突っ込みのキレが良いわね。彼女へのアピール?」
「んなアピールが本当にあったら僕も是非この目で拝んでやるよ」
古今東西、ボケに対するツッコミで求愛行動をするなんてぶっ飛んだ行動聞いたことも見たことも無い。つーかあってたまるか。
「全く、そんな我侭言ってるとトタケケ君が襲ってくるわよ?」
「誰だそれ。っていうかその前にそれって人間なのか?」
「ゲームのキャラクター」
「知るか!」
ぜぇはぁ言いながら皿にシチューを盛り、ようやく朝食が食べれる状態になった。
その横で初対面で恐らくはこの家に上がるのも初めてのはずの彼女は、遠慮という言葉を生まれてすぐに投げ捨てたかのように遠慮なくシチューを食っている。
人が一生懸命突っ込んでる合間に、幸せそうに朝食を食ってやがんのか元凶が。
まぁいい。まず何はともあれ朝食を食べることが先決だ。
「頂きます」
「はいどうぞ」
「美味いぞ」
「ビーフシチュー最高だね」
……何か幻聴が聞こえた。父さんはまだここには居ない。そのはずなのに4人目の声がはっきりと聞こえた。
ちなみにここにあるシチューはホワイトシチューであって、ビーフシチューではない。
「気のせいだよな」
「気のせいね」
「気のせいだな」
今度は何の反応も無い。幻聴だ、幻聴だったんだ。
その後、朝食は何の問題も無く終わってくれた。ボケも無く、ツッコミをしないですんだ。……朝食は。
僕達は現在登校中である。時刻は午前7時。本来の集合時間は午前8時だし、歩いて3分程度しかかからないのでこんな早く出る理由は無いが。
後ろから妙に視線を感じる。あの腐れ親父でもなければ母さんの気配でもない。
それ以外の、そして僕の知り合い以外の誰かが僕達を尾けている。しかも可也上手い。
と、不意に彼女が立ち止まる。そして後ろを振り向いて無感情に言い放つ。
「これ以上付いてくるなら流石に怒りますよ。母様」
様、って。自分の母親に様を使うってどれだけお嬢様ですか貴女。
「やぁねぇ、七統ちゃんが男の子と一緒に歩いてるから気になっちゃって」
「うどぅわぁ!?」
さっきまで後ろに居たはずのその人は、更に後ろから、しかも可也の至近距離から声をかけてきた。
一体、何者?
「あらあら、驚いちゃって可愛いわねぇ。食べてちゃおうかしら?」
「教育衛生上宜しくない発言をさも嬉しそうに言うなよアンタ」
ツッコミに対してもあらあらと前置きをしてから、更に一言。
「ツッコミ役だなんて本当に良いわ。それに男の子とも思えないほど可愛い。本当に家に連れて帰っちゃおうかしら」
「教育衛生も法もあったもんじゃない発言だな」
彼女はずっと黙っている。ふむ、ボケる余裕が無いほどにこの人がボケまくってるのか。
そんなわけ無いと思うけどな。多分。
「冗談はここまでにして、この子の事よろしくね。ハァハァ」
「一番後ろに本音混ぜといて何言いやがる!!」
突っ込みを入れたときには既に姿は無い。神出鬼没とはよく言ったものだ。
変人数4人。何か?これは認めたくないが、所謂類友って奴か?
「流石母様だ。目の付け所が違う」
何が流石なのか良く分からないが、彼女はボケも発言もせずただただ感心していたようだ。
兎に角、とりあえず疑問に思ったことを聞いておく。
「どこがどう違うと」
「連れて帰って調教しようとは、私でも考えなかった」
「よりにもよって感心した点が調教かよ」
何か可笑しなことを言ったのかとでも言いたげな目でこちらを見る。
口に出すと何か生命に関わるレベルで嫌な予感がするので心の中だけで言う。十分を軽く余裕で通り越して三十分くらい可笑しいっつーに。
そんな内心を誤魔化して、学校へと歩く。早くも前途多難です。
さて、一難去ってまた一難という事は聞いたことがあるが……
今の状況は一体何難くらいになるんだ?
現在、僕達は未だ登校途中。ちなみに、現在7時55分。そして今の場所から高校までは全速力で走って4分。
何があったか、は聞かないで欲しい。お願いだから。
七統が一人で寄り道したとか七統が一人で迷子になったとか七統が勝手に消えたとか、そんなん全然あるに決まってんだから。
「登校初日の朝っぱらから全然平穏じゃねぇな」
「誰の所為だと思っている」
「思い切り!誰がどう否定しても!120%!アンタの所為だろう!!」
天然恐るべしという言葉がまざまざと思い出される。
今自分が直面している事態と重ね合わせると、それが事実であると認識せざるを得ない。
御免、主人公なのに第一話から流れ星がビューンとか言いたくなってきた。本当に言ったらヤバイから言わないけど。
「兎に角、死ぬ気で走らないともう間に合わないんだよ」
「大変だな」
「アンタも同じ状況だろうが!!」
誰か、誰でもいいから頼むからこの人どうにかしてくれよ。
僕じゃもうこの人抑えきれそうにありません。その前にこっちがキレる。精神的に本当にキレる。
「まぁ、本気で遅れる前に急いでいくしかないよな」
「遅刻したら目立つだろうなぁ」
「初日早々遅刻して目立ちたかない!!」
言うが早いか二人してダッシュ。恐らくこれで間に合うのは、余程のお約束か、はたまた身体能力が高いのかどっちかだとは思う。
しかしながら、諦めるわけにはいかないのだからどうしようもない。兎に角走るしかない。何が何でも走り抜ける。
視界の端のみならず、真ん中やら上下左右にも何かを捉えるが片っ端からちぎっては投げちぎっては投げ、ひた走る。
スタミナが切れるのが早いか、それとも着くのが早いか、彼女の様子を見てみると
「どうした、もうへばったのか?」
こっちは全速力で走ってるのになんだかものすごい余裕な表情でいらっしゃいやがります。
しかも話す余裕までありやがりますか、そうですか、ありますか。
もう非現実を通り越して異世界に両膝までどっぷり使った気分。今更なんだろうけどさ!
「7時58分。このペースだと余裕で遅れるな」
大分高校まで近づいたとき、彼女の言葉が聞こえた。確かに、このペースだと遅れるだろう。
ふざけるな、と言葉に出して突っ込んでやりたいのだが、恐らく突っ込んだが最後呼吸が乱れて更に遅れるだけだ。
……待て、さっきなんつった。このペースだと余裕で遅れるだと?
この辺りの方までは来る途中にゆっくり教えれば良いだろうと思ってここには来てはいない。
つまり、知ってやがったという答えが導き出される。
現在の心情を言葉にして言い表すならこうだろう。「おーまいあろ」……もとい「オーマイジーザス」
「7時59分。あと1分も無いな」
淡々と話す言葉に、何か無性に腹が立って仕方がありません。
何ですか、これは蹴ってしまえと?寧ろ蹴れと?
まぁそれをしたら返り討ちにあいそうなのでやらないが、最終手段は使う。
それは――!
「ハッ!」
気合を入れた一声と共にジャンプ。塀に飛び乗り、其処から更に屋根へ。
形振り構っちゃいられないのでご近所の話題になること覚悟で屋根伝いに直線距離で突っ走る!
結果論からだけ言えば、ギリギリ。残り10秒で教室に飛び込んだ。
呼吸するだけで疲れる感じがする。
「おー、お疲れー」
恐らくは担任であろう、教卓の付近に立っている男性がのんびりとした声をかけてくる。
そして、空っぽの教室を見渡す。
まさかッ!!僕は遅れてしまったのか!?あんなことまでしたのに!
「あー、悪いんだがなぁ」
先生であろう人物からの恐怖の宣告を待つ。
なんてこった。初日早々遅れるなんて赤っ恥をかくなんて――ッ!!!
「8時集合だったんだが、30分遅れたんだ」
……はい?
「校長先生がなぁ、交通渋滞に引っかかっちまって遅れるそうだ。
他の家には既に連絡が回ってたんだが、君達は連絡する前に出かけたそうで、って大丈夫か?」
大丈夫じゃありません。
僕にはもう、それだけの言葉を声に出す力も無く、ただただ床に突っ伏すことしか出来なかった……
こんな朝、もう嫌だ。
・現時点での(かなりふざけた)登場人物の紹介
α:御空光輝
年齢:15 性別:男性 所属:私立紅霞高校一年 一人称:僕
攻撃力(正確にはボケの破壊力):E 防御力(正確にはツッコミの正確さ):A 技量(正確にはボケ、ツッコミ両方のキレ):B 特殊(下を参照):A
数少ないツッコミ担当で主人公、ついでに言えばそれなりの良識派。飽く迄もそれなり。
特殊能力は脊髄反射で繰り出されるツッコミで、意識がある限り常時発動している「神速の一撃」。ほとんど本能による行動なのでツッコミがストップされにくい。
必殺技は三つで、一つは相手のボケを先読みし、ボケとボケの合間に冷ややかな言葉を放ち、ボケを無条件でストップさせる「キラーアタック」(失敗の可能性あり)。
もう一つはボケる気力自体を根こそぎ奪うためにボケの途中に厳しい一言を入れることで気力とボケをカットする「スマッシュ」。
最後は相手がどんなボケを繰り出そうが完全に無視を決め込み、自分の中ではボケが無かったことにする最終奥義「絶対空間」。
周囲にボケが呆れるくらいに多かったため、ツッコミに専念し続けた結果、攻勢には出れないものの圧倒的な防衛力を持つ。
基本的には特殊能力である「神速の一撃」が発動しているため、最終奥義である「絶対空間」を見ることは出来ない。
しかし、彼が一度キレれば話は変わり「絶対空間」が発動することになる。発動中はいかなるボケであっても無条件でキャンセルされるため効果を発揮しない。
そのため、彼の知り合いはボケる際には必ず「絶対空間」が発動しないうちに切り上げることにしている。
なお、「絶対空間」発動前のツッコミは口だけで終わるが、発動後は何があっても不思議ではない。
ちなみに、足の速さだけには自信があり、100mを10秒台で走れるぶっ飛んだ奴。ただし脚力以外は並以下、腕力はそれこそ目も当てられない。持久力のほうはそれなり。
β:九条七統
年齢:16 性別:女性 所属:私立紅霞高校一年 一人称:私
攻撃力:A 防御力:E 技量:D 特殊:C
メインヒロインにしてかなりの天然電波純和製少女。ついで言えばクールビューティー担当。
特殊能力は、突然話がかみ合わなくなってくる「次元屈折」。
必殺技は一つで、天然の攻撃力を最大限利用し、突っ込みを入れる気力を根こそぎ奪い時間をも凍結させる「時空凍結」。ただし天然ツッコミ人間の光輝には非常に効き難い。
天然だからか、はたまた性格の所為か、攻撃力の高さを利用した攻撃のみが得意で力押し。防御・技量に関しては可也の難あり。
しかし、一度ドツボにはまってしまうと逃げることすら不可能なダメージを一撃で負うことになり、さらには容赦なく追い討ちがかけられる。
γ:御空黒人(下は「くろと」と読む)
年齢:37 性別:男性 所属:不明 一人称:俺
δ:御空琥珀
年齢:37(黒人よりも二ヶ月年上) 性別:女性 所属:不明 一人称:私
:七統母(名前はまだない)
年齢:未定 性別:きっと女性 所属:きっと不明 一人称:私
:先生(名前はまだない)
年齢:多分20後半 性別:男性 所属:私立紅霞高校一年 一人称:未定
:遅刻した校長(出番はまだない)
年齢:未定(寧ろ出番は(ry) 性別:未定(寧ろ出番(ry) 所属:私立紅霞高校一年 一人称:未定(寧r(ry)
※ネタの解説
・「○○○、お腹がすきました」
→最近PS2で全年齢対象として発売された(と思う)Fateより。まぁ、分かる人だけ分かればいいです。
・「トタケケくん」
→フリゲ「みちばたくえすと(以下みちくえ)」にて主人公の名前として入力するとスコアが加算される。ただしみちくえでは平仮名入力が正しい。
・「ビーフシチューの幻聴」
→フリゲ「シルフェイド見聞録」より時折出てくるテストの妖精らしき存在をモデルにしたもの。ただし原作ではこんな事言わない。けど色々謎な行動をすることが多い。
・「流れ星がビューン」
→機動戦士Ζガンダム最終話より。カミーユが精神崩壊したときに言った結構有名な台詞。ΖΖで復帰したとか言われるが、あのシーンを見ると…
・「おーまいあろ」
→正確には「おーまいあろえって」。とあるサイトにて公開されているTRPGリプレイで有名な台詞。勝手に使ってるから実は結構怖かったりする。
今回の言い訳
御免、何か無駄にテンション高いかも
朝――それから連想される言葉は、「清清しい」、「眠い」、「寒い」、「○○○、お腹がすきました」等、人により色々あるだろう。
ちなみに、僕――御空光輝はこう答える。「こんな朝、もう嫌だ」と。
第一話&html(<font color="white">―</font>)一発ネタなエンゲージ
「お早うマイサンッ!今日も良い日だぁっ!!」
朝っぱらから喧しく且つ近所迷惑な大声を出すのは僕の父親―御空黒人―である。
ちなみに現在時刻午前5時30分。家ではこの時間に起きるのは普通だが、ご近所では起きている人間は少ない。
この父親は、どこか頭の構造が根本的に間違ってるようで、何度注意しても「分かってるぞぉ!」と叫ぶだけで直っていない。
っていうか注意した端から叫ぶ時点で間違ってる。
なので、今では諦めてスルーすることにしている。視界の端で無視されて落ち込んでいるのが見えるが無視だ無視。
さて、今日は僕にとって結構特別な日である。それは、今日から高校生になるからだ。
これで小学校、中学校の頃の悪友とも縁が切れ、僕の周囲の、性格が540度すっ飛んだ人間の人口は一気に一人にまで減少した。その前は軽く20人を超えていた。
出会う端から変人奇人だったからなぁ。それも今日で父さん一人だと思うと気が楽だ。
そう思いながら、布団をたたみ、服を着替え居間に入る。
「お早う光輝」
「うむ、お早う」
「いや待て」
声をかけてきたのは母さん(名前は御空琥珀)と――面識が一切無い少女。
少女といっても僕と同年であろうが、こんなことは重要じゃない。問題なのは何故に面識の無い人間がここにいるかだ。
「この人誰さ」
「あれ?言ってなかったっけ?この前近くに引っ越してきた九条さんのお嬢さんよ。
光輝と同じ歳で、同じ高校に行くからって聞いたし、この辺りの地理には疎いらしいからあんたと一緒に行かせようと思って」
何だそのギャルゲーの初日染みた突発イベントは。
「九条七統だ。よろしく頼む」
そして彼女は彼女でこちらを見ることなく、挨拶をした。その視線の先には――朝食。
今日の朝食は昨日のシチューである。一晩寝かせたシチューもカレー同様とっても美味しい、って違う!
「ねぇ、黒人は?」
「無視ったら凹んだ」
「じゃぁ暫くは来ないわね。なら先に食べましょうか」
家の力関係は父さん=僕<<<―以下無量大数なので省略―<<<母さんである。逆らう余地は無い。
前の周囲の変人奇人の数を訂正しよう。現時点で三人だ。
母さんは母さんで良く考えれば数に入ってるし、目の前の彼女も恐らくはそうだろう。
シチューを見ながらとても楽しそうにしている。っていうか、目がキラキラしてる。そんな好きか?シチュー。いや、僕も好きだけどさ。
「頂きます」
「はいどうぞ」
彼女はそう言って右手で皿を受け取り、逆の手で箸を――
「待て」
「何だ」
止められた理由が全く分からず、寧ろ何で止めるんだこの野郎ぶっ殺すぞと言わんばかりの視線で睨みつける彼女。
「いや、シチューに箸って違うだろ」
「箸以外にどんな食器を使えというのだ」
駄目だ。根本的に何かが違う。
ここで、うっかり箸を持ったとか言うなら良いんだが……目の前にスプーン置いてあるのにその台詞を言うか。
テーブルのど真ん中に、これでもかというほどの存在感を持っているスプーンをしっかりと無視るか。
一体どれだけ純和風生活してんだあんた。
「七統ちゃん、こういうときはこれを使うのよ」
そう言って母さんが持ってきたのは、
「更に待てっつーに」
「ん?何か変な物持ってる?」
「おたま手にして良く言えるな」
金属製のスプーンが目の前にあるのに、プラスチック製の、しかも調理用の大きいおたまを手に取るなよ……
「こういうときはこれを使うんだよ」
これ以上周りにボケられても埒が明かないので自分でスプーンを取って手渡す。
そして食べようとして、また突っ込まないといけない状況になった。
「何故二本使おうとする」
「一本で良いのか?」
助けて、誰か。幾ら自他共に認めてやるツッコミ役でもこれは厳しい状況だ。
突っ込んだことにボケられる。しかも天然で。これほどツッコミ役にとって相性の悪い存在は居ない。
例えるならそう、同人作家にとってのアメリカネズミのようなものだ。触れてはならない、近づいてはならない。それに触れてしまったのだ、僕は。
言ってしまえば現状救いようの無い大ピンチ。棺桶に片足突っ込んだならまだしも棺桶に両膝まで突っ込んだ状態。
ボケとツッコミの攻防だけでここまで来るなんて思いもしなかったぞ。
「って人がしみじみと地の文使って感傷浸ってる隙にスプーンを逆さまに持って無理矢理箸みたいに使うんじゃねぇ!」
「カルシウム不足だな」
「あんたの所為だろうが!紛れも無く!!」
それからすぐに慣れた手つきでスプーンを使ってシチューを食べ始める。こ、こいつ――ッ!!
「始め見たときはなかなか分からなかったが、匙と一緒だな」
「一目見て気づけよ!」
ツッコミの性とは恐ろしいものである。脳が突っ込もうとする前に既に脊髄反射で突っ込んでいる。
「今日は一段と突っ込みのキレが良いわね。彼女へのアピール?」
「んなアピールが本当にあったら僕も是非この目で拝んでやるよ」
古今東西、ボケに対するツッコミで求愛行動をするなんてぶっ飛んだ行動聞いたことも見たことも無い。つーかあってたまるか。
「全く、そんな我侭言ってるとトタケケ君が襲ってくるわよ?」
「誰だそれ。っていうかその前にそれって人間なのか?」
「ゲームのキャラクター」
「知るか!」
ぜぇはぁ言いながら皿にシチューを盛り、ようやく朝食が食べれる状態になった。
その横で初対面で恐らくはこの家に上がるのも初めてのはずの彼女は、遠慮という言葉を生まれてすぐに投げ捨てたかのように遠慮なくシチューを食っている。
人が一生懸命突っ込んでる合間に、幸せそうに朝食を食ってやがんのか元凶が。
まぁいい。まず何はともあれ朝食を食べることが先決だ。
「頂きます」
「はいどうぞ」
「美味いぞ」
「ビーフシチュー最高だね」
……何か幻聴が聞こえた。父さんはまだここには居ない。そのはずなのに4人目の声がはっきりと聞こえた。
ちなみにここにあるシチューはホワイトシチューであって、ビーフシチューではない。
「気のせいだよな」
「気のせいね」
「気のせいだな」
今度は何の反応も無い。幻聴だ、幻聴だったんだ。
その後、朝食は何の問題も無く終わってくれた。ボケも無く、ツッコミをしないですんだ。……朝食は。
僕達は現在登校中である。時刻は午前7時。本来の集合時間は午前8時だし、歩いて3分程度しかかからないのでこんな早く出る理由は無いが。
後ろから妙に視線を感じる。あの腐れ親父でもなければ母さんの気配でもない。
それ以外の、そして僕の知り合い以外の誰かが僕達を尾けている。しかも可也上手い。
と、不意に彼女が立ち止まる。そして後ろを振り向いて無感情に言い放つ。
「これ以上付いてくるなら流石に怒りますよ。母様」
様、って。自分の母親に様を使うってどれだけお嬢様ですか貴女。
「やぁねぇ、七統ちゃんが男の子と一緒に歩いてるから気になっちゃって」
「うどぅわぁ!?」
さっきまで後ろに居たはずのその人は、更に後ろから、しかも可也の至近距離から声をかけてきた。
一体、何者?
「あらあら、驚いちゃって可愛いわねぇ。食べてちゃおうかしら?」
「教育衛生上宜しくない発言をさも嬉しそうに言うなよアンタ」
ツッコミに対してもあらあらと前置きをしてから、更に一言。
「ツッコミ役だなんて本当に良いわ。それに男の子とも思えないほど可愛い。本当に家に連れて帰っちゃおうかしら」
「教育衛生も法もあったもんじゃない発言だな」
彼女はずっと黙っている。ふむ、ボケる余裕が無いほどにこの人がボケまくってるのか。
そんなわけ無いと思うけどな。多分。
「冗談はここまでにして、この子の事よろしくね。ハァハァ」
「一番後ろに本音混ぜといて何言いやがる!!」
突っ込みを入れたときには既に姿は無い。神出鬼没とはよく言ったものだ。
変人数4人。何か?これは認めたくないが、所謂類友って奴か?
「流石母様だ。目の付け所が違う」
何が流石なのか良く分からないが、彼女はボケも発言もせずただただ感心していたようだ。
とりあえず疑問に思ったことを聞いておく。
「どこがどう違うと」
「連れて帰って調教しようとは、私でも考えなかった」
「よりにもよって感心した点が調教かよ」
何か可笑しなことを言ったのかとでも言いたげな目でこちらを見る。
口に出すと何か生命に関わるレベルで嫌な予感がするので心の中だけで言う。十分を軽く余裕で通り越して三十分くらい可笑しいっつーに。
そんな内心を誤魔化して、学校へと歩く。早くも前途多難です。
さて、一難去ってまた一難という事は聞いたことがあるが……
今の状況は一体何難くらいになるんだ?
現在、僕達は未だ登校途中。ちなみに、現在7時55分。そして今の場所から高校までは全速力で走って4分。
何があったか、は聞かないで欲しい。お願いだから。
七統が一人で寄り道したとか七統が一人で迷子になったとか七統が勝手に消えたとか、そんなん全然あるに決まってんだから。
「登校初日の朝っぱらから全然平穏じゃねぇな」
「誰の所為だと思っている」
「思い切り!誰がどう否定しても!120%!アンタの所為だろう!!」
天然恐るべしという言葉がまざまざと思い出される。
今自分が直面している事態と重ね合わせると、それが事実であると認識せざるを得ない。
御免、主人公なのに第一話から流れ星がビューンとか言いたくなってきた。本当に言ったらヤバイから言わないけど。
「兎に角、死ぬ気で走らないともう間に合わないんだよ」
「大変だな」
「アンタも同じ状況だろうが!!」
誰か、誰でもいいから頼むからこの人どうにかしてくれよ。
僕じゃもうこの人抑えきれそうにありません。その前にこっちがキレる。精神的に本当にキレる。
「まぁ、本気で遅れる前に急いでいくしかないよな」
「遅刻したら目立つだろうなぁ」
「初日早々遅刻して目立ちたかない!!」
言うが早いか二人してダッシュ。恐らくこれで間に合うのは、余程のお約束か、はたまた身体能力が高いのかどっちかだとは思う。
しかしながら、諦めるわけにはいかないのだからどうしようもない。兎に角走るしかない。何が何でも走り抜ける。
視界の端のみならず、真ん中やら上下左右にも何かを捉えるが片っ端からちぎっては投げちぎっては投げ、ひた走る。
スタミナが切れるのが早いか、それとも着くのが早いか、彼女の様子を見てみると
「どうした、もうへばったのか?」
こっちは全速力で走ってるのになんだかものすごい余裕な表情でいらっしゃいやがります。
しかも話す余裕までありやがりますか、そうですか、ありますか。
もう非現実を通り越して異世界に両膝までどっぷり使った気分。今更なんだろうけどさ!
「7時58分。このペースだと余裕で遅れるな」
大分高校まで近づいたとき、彼女の言葉が聞こえた。確かに、このペースだと遅れるだろう。
ふざけるな、と言葉に出して突っ込んでやりたいのだが、恐らく突っ込んだが最後呼吸が乱れて更に遅れるだけだ。
……待て、さっきなんつった。このペースだと余裕で遅れるだと?
この辺りの方までは来る途中にゆっくり教えれば良いだろうと思ってここには来てはいない。
つまり、知ってやがったという答えが導き出される。
現在の心情を言葉にして言い表すならこうだろう。「おーまいあろ」……もとい「オーマイジーザス」
「7時59分。あと1分も無いな」
淡々と話す言葉に、何か無性に腹が立って仕方がありません。
何ですか、これは蹴ってしまえと?寧ろ蹴れと?
まぁそれをしたら返り討ちにあいそうなのでやらないが、最終手段は使う。
それは――!
「ハッ!」
気合を入れた一声と共にジャンプ。塀に飛び乗り、其処から更に屋根へ。
形振り構っちゃいられないのでご近所の話題になること覚悟で屋根伝いに直線距離で突っ走る!
結果論からだけ言えば、ギリギリ。残り10秒で教室に飛び込んだ。
呼吸するだけで疲れる感じがする。
「おー、お疲れー」
恐らくは担任であろう、教卓の付近に立っている男性がのんびりとした声をかけてくる。
そして、空っぽの教室を見渡す。
まさかッ!!僕は遅れてしまったのか!?あんなことまでしたのに!
「あー、悪いんだがなぁ」
先生であろう人物からの恐怖の宣告を待つ。
なんてこった。初日早々遅れるなんて赤っ恥をかくなんて――ッ!!!
「8時集合だったんだが、30分遅れたんだ」
……はい?
「校長先生がなぁ、交通渋滞に引っかかっちまって遅れるそうだ。
他の家には既に連絡が回ってたんだが、君達は連絡する前に出かけたそうで、って大丈夫か?」
大丈夫じゃありません。
僕にはもう、それだけの言葉を声に出す力も無く、ただただ床に突っ伏すことしか出来なかった……
こんな朝、もう嫌だ。
・現時点での(かなりふざけた)登場人物の紹介
α:御空光輝
年齢:15 性別:男性 所属:私立紅霞高校一年 一人称:僕
攻撃力(正確にはボケの破壊力):E 防御力(正確にはツッコミの正確さ):A 技量(正確にはボケ、ツッコミ両方のキレ):B 特殊(下を参照):A
数少ないツッコミ担当で主人公、ついでに言えばそれなりの良識派。飽く迄もそれなり。
特殊能力は脊髄反射で繰り出されるツッコミで、意識がある限り常時発動している「神速の一撃」。ほとんど本能による行動なのでツッコミがストップされにくい。
必殺技は三つで、一つは相手のボケを先読みし、ボケとボケの合間に冷ややかな言葉を放ち、ボケを無条件でストップさせる「キラーアタック」(失敗の可能性あり)。
もう一つはボケる気力自体を根こそぎ奪うためにボケの途中に厳しい一言を入れることで気力とボケをカットする「スマッシュ」。
最後は相手がどんなボケを繰り出そうが完全に無視を決め込み、自分の中ではボケが無かったことにする最終奥義「絶対空間」。
周囲にボケが呆れるくらいに多かったため、ツッコミに専念し続けた結果、攻勢には出れないものの圧倒的な防衛力を持つ。
基本的には特殊能力である「神速の一撃」が発動しているため、最終奥義である「絶対空間」を見ることは出来ない。
しかし、彼が一度キレれば話は変わり「絶対空間」が発動することになる。発動中はいかなるボケであっても無条件でキャンセルされるため効果を発揮しない。
そのため、彼の知り合いはボケる際には必ず「絶対空間」が発動しないうちに切り上げることにしている。
なお、「絶対空間」発動前のツッコミは口だけで終わるが、発動後は何があっても不思議ではない。
ちなみに、足の速さだけには自信があり、100mを9秒後半~10秒前半で走れるぶっ飛んだ奴。ただし脚力以外は並以下、腕力はそれこそ目も当てられない。持久力のほうはそれなり。
β:九条七統
年齢:16 性別:女性 所属:私立紅霞高校一年 一人称:私
攻撃力:A 防御力:E 技量:D 特殊:C
メインヒロインにしてかなりの天然電波純和製少女。ついで言えばクールビューティー担当。
特殊能力は、突然話がかみ合わなくなってくる「次元屈折」。
必殺技は一つで、天然の攻撃力を最大限利用し、突っ込みを入れる気力を根こそぎ奪い時間をも凍結させる「時空凍結」。ただし天然ツッコミ人間の光輝には非常に効き難い。
天然だからか、はたまた性格の所為か、攻撃力の高さを利用した攻撃のみが得意で力押し。防御・技量に関しては可也の難あり。
しかし、一度ドツボにはまってしまうと逃げることすら不可能なダメージを一撃で負うことになり、さらには容赦なく追い討ちがかけられる。
γ:御空黒人(下は「くろと」と読む)
年齢:37 性別:男性 所属:不明 一人称:俺
光輝の父親。出番は安定しない。出てきても基本的に無視される。
δ:御空琥珀
年齢:37(黒人よりも二ヶ月年上) 性別:女性 所属:不明 一人称:私
光輝の母親。これまた出番は安定しない。御空家で一番恐ろしい人。
ε:七統母(名前はまだない)
年齢:未定 性別:きっと女性 所属:きっと不明 一人称:私
まんま七統の母親。もしかしたら出番はこれっきり。
ζ:先生(名前はまだない)
年齢:多分20後半 性別:男性 所属:私立紅霞高校一年 一人称:未定
正確には先生かもしれない人。
η:遅刻した校長(出番はまだない)
年齢:未定(寧ろ出番は(ry) 性別:未定(寧ろ出番(ry) 所属:私立紅霞高校一年 一人称:未定(寧r(ry)
遅刻した人。
※ネタの解説
・「○○○、お腹がすきました」
→最近PS2で全年齢対象として発売された(と思う)Fateより。まぁ、分かる人だけ分かればいいです。
・「トタケケくん」
→フリゲ「みちばたくえすと(以下みちくえ)」にて主人公の名前として入力するとスコアが加算される。ただしみちくえでは平仮名入力が正しい。
・「ビーフシチューの幻聴」
→フリゲ「シルフェイド見聞録」より時折出てくるテストの妖精らしき存在をモデルにしたもの。ただし原作ではこんな事言わない。けど色々謎な行動をすることが多い。
・「流れ星がビューン」
→機動戦士Ζガンダム最終話より。カミーユが精神崩壊したときに言った結構有名な台詞。ΖΖで復帰したとか言われるが、あのシーンを見ると…
・「おーまいあろ」
→正確には「おーまいあろえって」。とあるサイトにて公開されているTRPGリプレイで有名な台詞。勝手に使ってるから実は結構怖かったりする。
今回の言い訳
御免、何か無駄にテンション高いかも