- 主に海岸や川の淵、滝などにまつわる事例の多い事が知られている。
- 和歌山県西牟婁郡に伝わる伝説では、琴の滝という名の滝に牛鬼が住んでおり、
この牛鬼は人の影を食べると伝え、食べられると必ず命を落とすと伝える。
- 同県東牟婁郡本宮町には「牛鬼滝」がある。同地の百姓が川の上流に牛を留めて置いたところ、
「ニンジンのように赤い角と漆のように黒い体の牛鬼が現われ」、同地の家の祖先が
毎年一度、旧暦十一月十七日に祀る事を引き換えに引き取らせたとか。
また同町十九良谷にも牛鬼滝があり、ここに現れる牛鬼は鼻が椿のように真っ赤に開いているという。
- 同じく和歌山県の古座町に伝わる伝説では、若い女の姿で現れたという。
猟師の男が、水に映る姿が牛鬼であった事からこれを鉄砲で撃ったが、後に発狂してしまったとか。
- また同じ古座川水系に伝わる伝説では、少女の姿で現れ食物を欲しがる牛鬼に食べ物を与えると、
のちに大水の際に食べ物を与えた青年を牛鬼が助けた、とする話がある。
しかし牛鬼は人間を助けると生きていけないといい、そのままたちまち溶けて赤い血となって流れて行ったとか。
- 岡山県阿哲郡の明神山山頂に牛鬼堂(ぎゅうきどう)がある。鳴滝橋の上で昼寝をしていた牛鬼の首を
青年が斬り落とすと、首が飛びあがってその地に落ちたので堂を建てたという。
- 島根県江津市には、赤ん坊を手渡してくる女性の姿の牛鬼の伝説が残る。
- 高知県土佐郡に残る伝説では、川に毒を流して魚を獲ろうとした漁師の夢に美女の姿で現れたが、
漁師が制止をきかずに毒を流すと、のちに漁師の家ごと土砂崩れで流れてしまったという。
- 愛媛県南伊予の祭礼に、神輿の先駆けとしてウショウニンもしくはブーヤレと呼ばれる
牛鬼の練り物が見られる。割竹を編んで作り、全身を棕櫚の毛や赤色の布で包んだもので
数十人の若衆がこれを担ぐという。
- 『枕草子』「名おそろしきもの」に「牛鬼」の名前があがっている。
- 『太平記』巻第三十二には、源頼光が牛鬼の頭を切り落とした話が載る。
- また『好色一代男』巻四に、入牢者を形容した表現で「牛鬼島の住人そっくり」という一文があり、
牛鬼の住む島といったものが想定されていた事が見られる。
参考文献
『枕草子 中』講談社学術文庫
『日本伝奇伝説大事典』
最終更新:2014年03月31日 05:33