- オウィディウス『変身物語』では、「アッシリアの人々がフェニックスと呼ぶ鳥」について、
この鳥は穀類や草によってではなく、乳香の木の樹脂とバルサム樹の樹液で生きており、
五百年に渡るその生涯を生き終えたと知ると、
樫の枝か
棕櫚の梢に巣を作り、
そこへ桂皮と甘松の穂、砕いた肉桂、没薬を敷き詰め、その上に横たわって息絶える。
すると父親の体から新たに小さなフェニックスが生まれる、としている。
また、新たに生まれた雛鳥が成長して力をつけると、この巣を
エジプトの
ヘリオポリス(太陽神の都)にある、太陽神の神殿の扉の前に置く、としている。
- ヘロドトス『歴史』巻二にも、ポイニクスという名でこの鳥の事を記している。
ヘリオポリスの住民の話では、500年ごとにエジプトに姿を現すのだ、という。
その他のポイニクスの習性については、オウィディウスが記しているのとほぼ同じ内容。
- プリニウス『博物誌』第十巻に言及があるが、プリニウスは「これはたぶん架空の話だと思うが」と付け加えており、
必ずしも実在を信じていなかった様子。
またプリニウスによれば、この鳥は「全世界にたった一羽しかいないのでまず見られないという」と記している。
ワシほどの大きさで、首の回りは金色に輝き、他のところは紫色、尾は青くてバラ色の毛が点々と混じっている。
そしてノドにはところどころ毛の房があり、頭には毛の飾り前立てがあるという。
またプリニウスがマニリウスという人物の記事を引いて言うには、この鳥の寿命は540年であるとか。
民会で観覧に供せられたという。これはローマの正式な記録にもあるが、この不死鳥がつくりごとであることを
疑う人は一人もいないであろう、ともしている。
- ティルベリのゲルウァシウス『皇帝の閑暇』に、ヘリオポリス近くのアトラスの山に住む不死鳥についての記述がある。
巨大な羽根を持つ鳥で、頭上に大きな王冠と、
クジャクが尾羽を広げたような羽根飾りを持ち、
この鳥には「太陽の悦楽がこもっていると言われている」。
アモマム(
ショウガ科の植物)と香で滋養を摂取し、真珠と大真珠でできた巣を占有しているのだ、とも。
参考文献
『変身物語(下)』オウィディウス
『歴史(上)』ヘロドトス
『プリニウスの博物誌 Ⅱ』
『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』ティルベリのゲルウァシウス
最終更新:2016年11月15日 04:49