ツバメ

   オウィディウスやアポロドーロスでは、フィロメラではなく姉のプロクネがツバメになったとしている。

  • パウサニアス『ギリシア案内記』によれば、フィロメラとプロクネが、テレウスに追いつかれそうになって
   鳥に変身した場所であるとする伝説を持つダウリスでは、
   フィロメラだった頃の、テレウスに対する恐怖が今もあるため、
   ツバメはこの町では卵を産まず、軒下に巣をつくることもなかった、と述べている。

  • プリニウス『博物誌』第四巻に、ビズュエという土地に関する記述で、この土地はテレウスに荒らされたため、
   「燕たちに憎まれているトラキア諸王の城」だとする記述がある。

   ツバメが頭上を飛び回り、追い払おうとしてもなお大王の頭にとまりさえした。
   これを後に占い師のアリスタンドロスに尋ねたところ、これは王の友人の一人が陰謀を仕組んでいる兆しだが、
   一方でその陰謀が露見する兆しでもある、なぜならツバメは人馴れした、人間に親しい鳥であり、
   他のどんな鳥よりもおしゃべりだからだ、と述べたという。



  • 『閑吟集』に、以下の歌がある
「人は嘘にて暮らす世に なんぞよ
 燕子が実相を談じがほなる」
(実相は「諸法実相」の略で、生滅・無常の相を離れたありのままの姿を表す仏教語)
 また『南院国師語録』に
「燕子梁間ニシテ実相ヲ談ズ」とあり、燕が「実相」についての談義をしたり、
 またはそうした事をしたがったりする、というイメージが中世五山の禅文化にはあったらしく見られる。


      参考文献
『ギリシア案内記(下)』パウサニアス
『アレクサンドロス大王東征記(上)』アッリアノス
『プリニウスの博物誌 Ⅰ』
『新編日本古典文学全集 神楽歌・催馬楽・梁塵秘抄・閑吟集』



最終更新:2016年02月23日 04:51