→ある国の森に、王様が狩人を送り込むが、狩人は帰ってこない。さらに二人、そして最後には
お抱えの狩人をすべて森に送り込んだが、とうとう一人も帰ってこない。それ以来何年も森に入らなくなったが、
ある時外国から来た狩人が申し出て、自ら犬を連れて森に入る。犬が森の中の沼の前へ行くと、
そこから裸の腕がにゅっと出てきて犬を引きずり込んでしまう。狩人が手伝いを連れてきてこの沼の水を
残らず汲み出してしまうと、底に体中錆びた鉄のような赤茶けた色をして、顔一面に髪がかぶさって
膝まで伸びているという大男が寝ている。これを縄で縛って国王の下へ連れて行くと、以降森で行方不明者は出なくなる。
(なお、この鉄のハンスは、魔法にかけられて山男にされていた国王だったことが最後にわかる)
- 『グリム童話集』「池にすむ水の精」〈KHM181〉
→ある父親が、傾いた家の富を立て直すことと引き換えに、生まれた我が子を引き渡すことを池の水の精に
約束してしまう。子は成長してりっぱな狩人になったが、ある時その池であることを忘れて
獲物を打ち取った手を洗いに池に近づき、そこで水の精に引きずり込まれてしまう。
狩人の妻が、魔法使いの老婆の助言によって満月の夜に黄金の櫛、黄金の笛、黄金の糸紡ぎを置くことで
狩人を取り返す。
→ドラクスと呼ばれる水怪があり、川の淵を棲み処としていて、水に浮かぶ指輪や盃に変身して
川辺で水浴びしている女子供を引き寄せるのだという。特に授乳婦が狙われ、彼女たちがドラクスに
攫われるとドラクスの子孫の乳母として使われるという。が、七年すると十分な報いを得て戻されるという。
戻って来た授乳婦たちは、川の淵や岸辺の広大な宮殿に住んでいたと話すという。
ゲルウァシウスは、
フランスの
ローヌ川川辺でドラクスに連れ去られた婦人に会った事があると記している。
参考文献
『完訳グリム童話集(4)』
『完訳グリム童話集(5)』
『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』ティルベリのゲルウァシウス
最終更新:2016年11月17日 04:32