夢(引用)

心身が休息している時、理性はその私室に退いてゆく。理性がこうやって留守になると、模倣好きの想像力がしばしば眼を覚まし、理性の真似をしはじめる。だが、その際、形象の組み合わせを間違え、奇々怪々なものを作る、――とくに、夢の中で遠い昔やごく最近のいろんな言葉や行動を無闇に繋ぎ合わせて、そういったものを作ることが多いのだ。
                                     アダム(ミルトン『失楽園』)


「彼はいま夢をみてるのさ」とトゥイードルディーが言いました。「何の夢だと思うかね?」
 アリスは「誰にも分かりっこないわ」と言いました。
「なんと、君の夢だ!」してやったりと手を打ちながら、トゥイードルディーが言いました。「そしてもし彼が君の夢を見やめたら、君はどこに行くと思うかね?」
「もちろん、今いるここだわ」とアリス。
「どこにもおらん!」小馬鹿にしたように、トゥイードルディーがやりかえしました。「君の行くところなんかありゃせん。なにせ君は彼の夢の中にだけ存在するにすぎんのだぜ!」
「そこな王様がもし目をさましたら」とトゥイードルダムが言い足しました。「君は消えるんだ――パッと――まるでローソクの火みたいにね!」
                                    ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』


要するに何人もそれまでに全く知らなかった事柄を夢に見たためしはないのである。
                                    ブリア・サヴァラン『美味礼讃』



子の曰わく、甚だしいかな、吾が衰えたるや。久し、吾れ復た夢に周公を見ず。
(先生がいわれた、「ひどいものだね、わたしの衰えも。久しいことだよ、わたしがもはや周公を夢にみなくなってから」)
                                      『論語』述而第七
最終更新:2017年05月31日 02:23