- 古代エジプトでは、この鳥の母親は自らの血を雛に餌として与えると信じられたという。
その点を母親の盲愛と見たことから、
エジプトの象形文字では
ペリカンは狂気と無分別の象徴とされたという。
- 同じ俗信から、キリスト教世界では、母鳥は死んだ我が子を3日間悼んだ後、
右胸から血をしぼり雛にふりかけて蘇生させるとされ、
聖餐と自己犠牲の寓意を持たされた。
ゆえに「孝心あるペリカンpelican in her piety」の図柄は
磔刑図の
十字架の上に描かれるようになり、
さらにペリカンの母鳥が、人々を救済するために死んだキリスト自身とも
解釈されるようになった、との由。
- 錬金術で使う蒸留器具の一つに「ペリカン」と名のつくものがある。
本体から上へ伸びた細い管がぐるりと曲がって本体胴部に突き刺さる形をしており、
蒸気が液化して循環する仕組み。
自分の血を生命の源に供与するペリカンの俗信からこう呼ばれたものと思われる。
(『世界大博物図鑑 鳥類』荒俣宏)
最終更新:2012年05月02日 02:43