紅生姜とは、日出る國
日本が編み出した
生姜料理の最高峰にして至高の和食。その究極の付け合わせたる一品である。
一般には薬味の定番として知られる。
脂っこい物、味の濃い物を食べながら、時折この紅生姜を頬張るのが基本。
梅酢由来の独特の酸味が口いっぱいに広がり、それによって生の生姜よりも程よく角が取れた鼻を通る辛みと、その鮮やかな紅色が食欲をさらに増進する。
紅生姜の無い食事など、さしずめ
キャベツのないカップ焼きそばのようなものだと心得たい。
紅生姜は何故、あんなにも食欲をそそる美しい鮮やかな紅色をしているのか。
紅生姜の紅は生姜本来のアントシアニン系色素とポリフェノールの紅。
梅干しを浸ける際に共に漬け込んだり、梅酢に漬けて作るため、紫蘇の紅が移りあの鮮やかな色が出ているのだ。
近年では食紅などを使ってより鮮やかな色を出している場合もある。
が、やはり紫蘇本来の自然な紅色の方が、優しい絶妙な色合いを醸し出してくれる事は言うまでもない。
それではここで、そんな紅生姜をたった週間で作る製法を。
①まずはよく洗った生姜を塩漬けにする。新生姜はそのままでも大丈夫だが、古い生姜は皮を剥いた方が良い。
生姜総量の約3〜5%の
塩を全体にまぶして一晩寝かせればOK。
下処理を怠ると究極の紅生姜には仕上がらない。
②さらに翌日一日かけて天日干しにする。生姜はキッチンペーパーなどで水気を十分にとる事。
③干した生姜を瓶などの密閉容器に入れ、ちゃんと全部浸かる量の紅梅酢に一週間ほど漬けておく。
④一週間漬けたら新しい梅酢を入れ直し、もう一週間余り漬ける。この工程で保存性を高める。
漬ける際に赤紫蘇を入れておくとさらに風味が増す。
⑤しっかり色が美しい紅色に染まったら完成。
千切りやみじん切り、薄切りなど好みの調理をしてその味を噛み締めるべし。
甘酢漬けの生姜も素晴らしい味わいだが、梅酢を用いて作られる紅生姜はその風味も栄養価も甘酢生姜とは格段に違う。
そもそも『梅の実を塩漬けにした際に梅から染み出してくる液』である梅酢には、梅が持つポリフェノールやミネラルなどの豊富な栄養価がたっぷりと溶けている。
加えて生姜にも代謝を促進させ、身体を温めたり消化を助けたりといった効果がある。
そんな栄養価の高い液体にじっくりと生姜を漬け込んで作る紅生姜に、果たして栄養がないという事が有り得るだろうか?
単に、普段我々が頂く紅生姜の量が少ないだけなのだ。
しかし、その独特の風味や色味故にハマる人はとことんハマる人一方で、苦手な人にとっては本当に苦手という点があるのもまた事実である。
もちろん、これは何も紅生姜に限った話ではないが、あくまでも個々人の好みの問題であり、自分の好みを相手に押し付けたり、逆に相手の好みをけなしたりするのは御法度である事は肝に銘じておこう。
以下に紅生姜を使った至高の料理をいくつか挙げる。
◆付け合わせ
特有の色や味のため、様々な料理の彩り役や口直し役として使われるが、強いて言うなればそれは紅生姜の有能さ故の事である。
ただし、付け合わせなので食べられる量は基本的に少ない。
◆
天ぷら
関西名物、紅生姜の天ぷら。
薄切りを揚げるもよし、みじん切りや千切りを集めてかき揚げにするもよし。
カリカリの衣をシャオッとかじった後にフワッと口の中いっぱいに広がる風味、スウッと鼻を突き抜ける辛さと酸味はシャキシャキッとした歯ごたえと合間って絶品。
揚げ物では他にも紅生姜の串カツなんてのもあるので探してみよう。
◆紅生姜丼
吉野家でやる人も多いはず。
牛丼の上いっぱいに、肉が見えなくなるまで紅生姜をかけたら
卵を落として一気に掻き込むべし。
また、熱々の白飯に紅生姜だけをたっぷりとかけて食べてみよう。もう他には何もいらない――その至福の瞬間を除いて他には何も。
◆まぜごはん
ご飯との相性が抜群なのは前述の通りだが、どうせならここまでしてしまいたい。
シラス、ごま、刻み青じそと一緒に炊きたてご飯に混ぜ込んでかっ込む。
至福である。おかずなんてなくともお釜がカラになる。
追記・修正は紅生姜丼を食した方のみお願いします。