ナタル・バジルール

登録日:2012/01/31 Tue 15:10:59
更新日:2024/04/23 Tue 00:14:25
所要時間:約 5 分で読めます





軍には厳しく統制され、上官の命令を速やかに実行できる兵と、それに広い視野で情勢を見据え的確な判断を下すことのできる指揮官が必要です。

でなければ、隊や艦は勝つことも生き残ることもできません



機動戦士ガンダムSEED』の登場人物。

CV:桑島法子
種族:地球人(ナチュラル)
年齢:25歳
身長:174cm
体重:60.5kg
血液型:AB型
誕生日:C.E.46年12月24日
髪の色:黒
瞳の色:紫
所属:地球連合軍
階級:少尉→中尉→少佐

【概要】

アークエンジェルの戦闘指揮官。 艦長マリュー・ラミアスの副官として戦闘を取り仕切る。


【人物】

軍人の家系の生まれで、自分にも他人にも厳しい性格。
ブリッジでも軍帽を日頃から着用しており、身なりもキッチリしている。
まだ若いがかなりの堅物で、「軍人」としての姿勢に拘る余りにその融通の利かなさから反発される事も多かった。

保護したラクス・クラインを人質に取った事件を始めとして、マリューとは度々対立することになった。
終いには、どうしても納得行かないマリューの行動を記録に付けて後で地球軍本部到着の際に提出する為の報告書に纏めたりしていた。
これには流石にマリューも大きな溜め息をついている。

また、勝手にラクスを解放した罪*1キラ・ヤマトが軍事法廷に掛けられた際、ナタルの行動も大前提として「艦と乗員を守る為」という思いだったとはいえ、
前述のラクスの扱いの是非は条約の特例を取り上げて問題は無かったとしつつ、半ばムキになって徹底的にキラを批難する姿が見られた。

これら一連の描写を見るに、キラ達の良き兄貴分的存在で、軍事法廷の際には弁護人としてキラを庇うムウ・ラ・フラガや、戦争に巻き込んだ負い目からかはたまた生来の性格故か、人情的な人物として描かれるマリュー*2等とは対になっているといえる。

また、後の砂漠での戦闘の際にバクゥの群れに襲われたストライクを援護する為、PS装甲があるから大丈夫」という理由でストライク諸共バクゥにミサイル攻撃の命令を下している。*3

それを見た敵側のバルトフェルド「パイロットに優しくない指揮官だなぁ……それとも信頼しているのか?」と評する等、作中前半はとにかく融通の利かない人という点が強調されていた。

ただし彼女が所属する地球連合軍(大西洋連邦)においては、ブルーコスモスの影響を受けて過激な反コーディネイター思想・ナチュラル至上主義を掲げ、コーディネイター殲滅のためなら一般市民や友軍に被害が及ぶ作戦であれ躊躇わないような軍人が多い。
そのためナタルは堅物でこそあれ軍人としては比較的まともであるともいえる。

他のクルーと同じく非ブルーコスモスであり、アークエンジェル内で浮いた考えの持ち主だったわけではない(親しい関係の人はいなかったかもしれないが)。

『良くも悪くも軍人としての合理性に極めて忠実』な人物であり、理由もなく非戦闘員や一般人を巻き込んだり、攻撃したりすることはない。
ただし、『必要とあらば何でも、何としてでも使う』ため、『それしか方法がないのであれば、民間人を巻き込んだり、傷つけることも已む無し』というスタンスの人物である。

これが最も分かりやすいのはハルバートン提督との関係。
地球降下の際、本来なら除隊させて軍から解放する事になっているキラのMSパイロットとしての能力を惜しみ、
軍に引き留めて戦わせ続ける為に「キラの両親を人質に取る」という非情な策を上司に当たるハルバートン提督に提案したことがる。この時にはマリュー同様に人情家寄りの彼から即座に厳しい叱責を受け、直ちに案を取り下げている。
ただし反りが合わないだけであり、ナタルもハルバートン提督達の身を挺してアークエンジェルを守った行為にしっかり敬意を表している。

また、砂漠編でバルトフェルド隊への攻撃の際、周辺に多大環境汚染を及ぼすローエングリンの使用許可を求めたが、マリューに汚染被害への懸念から拒否される。
一度は食い下がったが、彼女から「命令です!」とまで言われた時には潔く諦め、他の対処法を採っている。

彼女の行為はひとえに『艦のクルー全員の命を預かる立場にいる』ことへの強い責任感からで、たとえ自分の考えとは相反していても、上官であるマリューの言い分が尤もと感じれば従っている。

この様に冷徹な判断はアークエンジェルの副長としての任を全うしようとする彼女の生真面目さ故のものだと分かる。
マリューも彼女の心情や判断は理解と感謝をしており、転属の際の会話にそれが表れている。

なお、実は密かにムウに想いを寄せていたが、彼女自身もアークエンジェルの操舵手であるアーノルド・ノイマンに想いを寄せられていた。

甘党らしく制服にお菓子を隠し持つ可愛らしい一面もあり、 泣いている子どもにお菓子をあげて宥める優しい面もある。
それを見た他の子どもに群がられてしまい、戦場で次々に適切な指示を飛ばす副長としての姿とは打って変わって、対処に困ってしまう姿も描かれている。

「そんなには無いんだ、困ったな…」

また、
  • 着地地点の地下に大空洞が多数ある事が判明した際に周囲から「大丈夫ですよね?」と聞かれて「……(無言でドリンクを飲む)」という対応を取る
  • ムウからの質問に「わ、私に訊かれても……」と困惑する、ムウ・マリュー・サイーブとの四人で酒を飲んだ時に一人だけ咽る、
  • 正体を隠して町に行った時、キラをヤマト少尉と言いかけて「ヤマト少……年」赤面しながら訂正する
等、砂漠編ではいつもの厳しい副長ではない、親しみやすいナタルの一面が描かれており、それまでとのいい意味でのギャップを感じた視聴者も多かったことだろう。


【終盤の活躍】

中盤、地球連合軍上層部の転属命令でアークエンジェルを離れ、新造艦であり、アークエンジェルの姉妹艦でもあるドミニオンの艦長に任命される。
この異動の後、アラスカ基地からの連絡船に乗っていたナタルは基地が味方ごと爆破されるという噂を聞き、
基地に居残ったマリューや他のクルーを心配してか血相を変えて噂をしている軍人に詰め寄る姿も描かれていた。

結果としてアークエンジェルはアラスカ基地の爆破からは逃れていたものの、彼らが連合軍から離反して第三軍として動き始めたことで、かつてのクルーたちと敵対することになった。

その上、途中からドミニオンにオブザーバーとして乗り込んできた盟主王ことムルタ・アズラエルの、軍の常識などを無視した無茶振りに振り回されたり、
薬中の存在に眉を顰めたりと、見ているこちらの胃も痛くなるような環境に置かれてしまう。

なお、人間扱いされない薬中トリオのこともナタルは比較的マトモに人間扱いしており、オルガにフレイの回収を命じたときはちゃんと「サブナック少尉」と呼んでいる。

このこともあってか、砂漠編の頃の親しみやすい一面は再び影を潜め、厳しい軍人・艦長としての姿が描かれるようになった。

そんな終盤のナタルだが、ザフト軍の捕虜となった後、戦争を終わらせるという「鍵」を持たされて戦場の真っ只中に解放されたフレイ・アルスターが自艦に保護された際には、
彼女が持ってきた「鍵」とやらにしか興味を向けないアズラエルや、知らない顔ばかりの戦艦に収容されて戸惑う彼女を気遣う優しさを見せている。

なお、この時のナタルとフレイのやり取りは、桑島女史の演じ分けが神懸っているので、必聴。

あの人…これで戦争は終わるって言ったのに…!

…確かに終わるさ。 敵であるものを全て滅ぼせばな

それからもヤキン・ドゥーエ攻防戦まではオブザーバーであるアズラエルの指示に従って戦うが*4、次第にジェネシスによる被害に起因する戦力差から追い詰められていく。

その最中、プラント侵略に失敗した事でアズラエルから理不尽な言い掛かりを付けられた末、フレイ達ドミニオンの船員を退艦させたが、アズラエルに銃撃されてしまう。
暴走するアズラエルは自ら起動したドミニオンのローエングリンでアークエンジェルを撃沈させようとするが、ムウのストライクに文字通り盾となって防がれる。

大破したストライクの爆炎が晴れた後――未だに健在で、ローエングリンをこちらに向けるかつての母艦を見たナタルは、かつての上官を鼓舞するかのように叫んだ。


貴方は此処で死すべき人だ…。 私と共に…!

撃てぇぇぇぇぇッ! マリュー・ラミアスゥゥゥッ!!


そして照射されたローエングリンの光を満足気に見遣りながら、ナタルはアズラエル、ドミニオンと運命を共にした。
その壮絶な最期をアークエンジェルのブリッジで目にしてしまったノイマンの心中は想像を絶するものであろう。

しかし、ナタルが逃がしたフレイたちドミニオンクルーが乗る救命艇はクルーゼが駆るプロヴィデンスによって破壊され、全員殉職した為、
最期の最期、身勝手なオブザーバーから命がけでクルーの命を守ろうとした艦長の真実を知る者は、最早誰もいなくなってしまったのであった……。

軍務に忠実な軍人でありながら、非情に徹しきれなかった彼女は、SEED本編においては一番人間らしいキャラだったのかもしれない。

尚、SEEDシリーズにおいては「桑島法子氏が声を担当したキャラクターは戦死する」というジンクスが有名だが、最初に死亡したのはナタルである。

因みに、32話にはナタルのシャワーシーンがある。

死後の時系列であるSEED FREEDOMでは「戦術バジルール」なる名前が登場。
このような形で名前が残っていることから、改めて軍人として優秀だったことがわかる。

【ゲームでの活躍】


第3次スーパーロボット大戦α~終焉の銀河へ~
民間人であるラクスを人質に取った時は自軍から非難されていた他、その苛烈さも民間人協力者が多い事もあってかαナンバーズの面々からは快く思われておらず、少々浮いた立場にいた。

今作ではロンド・ベル所属の地球連邦軍の正規軍人にして熟練兵(そして階級上上官かつ年上)となっているアムロからも、
正論が先行して人心を掴めていない事を窘められた事がある他、
一部のメンバーからは「一歩間違えれば三輪防人の同類になるのでは?」とまで言われてしまった*5

原作では地球降下シークエンスに入る少し前に発艦させていた避難民を乗せた降下艇は、本作ではナタルの指示で降下直前、ザフトの攻撃を受けている真っ最中に発艦させてしまっている。

迂闊かつ危険過ぎるタイミングで降下艇を出した事を周囲から激しく糾弾されつつ「条約違反になるから攻撃される事は無い」とタカを括るなど*6、原作以上に杓子定規過ぎる感があった。

「やめてよね」や『Z』でのAA組の扱いにも言えるが、原作とスパロボでは状況が違い過ぎるため、
迂闊に原作と同じムーブをするとかえってキャラがズレていく例と言える。

中断メッセージではアズラエルと「勇気」について漫才したり、某ライオンロボと戦う際に対抗心を燃やしまくる彼を制止したりする苦労人。
最終決戦では、霊魂としてマリュー達αナンバーズに力を貸した。


スーパーロボット大戦J
原作通り…なのだが、ナデシコ勢の空気に馴染めず、同じ艦長(かつ声)のユリカとはとことんウマが合わなかった。

そのせいか、敵対した時はナデシコを墜とそうと躍起になる場面も。
その点をアズラエルに「私見が入ってません?」等と突っ込まれ、漫才を繰り広げる様は第3次αとまるで逆の構図である。
ツンデレ冥王様との漫才は必見。

ちなみに、アークエンジェルのメインパイロットをナタルにすることもできる。
永久離脱するナタルを使うユーザーは少ないだろうが。

スーパーロボット大戦W
第二部から登場。ラクスを人質にした件でカズマと口論になりかけるも、ムウの仲裁で互いの事情を知り和解。 カズマからは「厳しいが悪い人ではない」と評価されている。

終盤ではアズラエルに殺されかけていた所をに助けられる。 マリューとも和解を果たし、軍内部のブルーコスモス派の横暴を告発した。

また、同じく『艦長』の立場にいるルリと対峙した際には、
「良い声をしてますね。 私の目指す人とそっくりです」「貴女ならきっと良い艦長になれます。 道を間違えなければ…」
といったやり取りをする場面もあり、結果的に生存フラグに繋がった。
ルリの言う「目指す人」とは、恐らくユリカの事と思われる。

スーパーロボット大戦DD
原作通りドミニオンに転属されるが、最終決戦の直前にW同様にドカスカ自軍部隊がドミニオンに乗り込んできたため、アズラエルの毒牙に罹る事なく無事に救出される。
その後、マリューからの懇願を受けてAAに戻り、副艦長としてマリューを支えることとなる。


◇機動戦士ガンダムSEED 友と君と戦場で。
ifルートを通る事で生還する展開になるが、その際にあろう事かドミニオンにアズラエル一人残して退艦という、バレたら艦長としてはマズそうな事をしている。
元々アズラエル自体が軍規を無視しているようなものなので大丈夫(?)かもしれないが。

退艦後、ナタルも乗った救命艇はアークエンジェルに回収され、ナタルは嘗てのクルー達と再会を果たすが、
フレイは別の救命艇に乗っていた為、桑島氏が声を担当した二人が両方生存する事は叶わなかった。

因みに、ノイマンの恋心を知ったトール達がその恋を実らせる為に奮闘するゲームオリジナルシナリオも存在し、
彼等の奮闘の甲斐も合ってか、生存した場合にはノイマンと恋仲になる。
やったな、ノイマン。


◇SDガンダム GジェネレーションDS
平成ガンダムルートではほぼ原作通り。
ライバルルートでは、自軍の旗艦の艦長として実質の司令官として活躍。

最初はアズラエルのもとで三馬鹿やジェリドやセレイン等の跳ねっ返り達を纏める中間管理職だったが、
途中でシーマ様の自分の様に都合のいい駒にならない様にとの説得に応え、アズラエルから離反し、自らの意志で人々の為に戦う事を選ぶ。

そして寡兵(ライバルルートは他のルートに比べ人員が少なく育成する時間が短い)を率いて、レギオンや木星帝国を退けた。


【台詞集】


「この軟弱者共!」

「平和なものだな…」

「(ノイマン)少尉…いつまでも無重力気分では困るな」

「ここで戦死されたいのですか!!」

「つくづく君は、落とし物を拾うのが好きな様だな」

「解らないのなら黙っていて下さい」

「ゴットフリート照準! 当てろよ! てぇー!」

「何も私は個人的な感情で貴女(マリュー)を非難しているのではありません」

「艦長! クルー全員に死ねと仰るつもりですか!?」

「貴方はここで死すべき人だ…。 私と共に…!」

「貴方の負けです…!」

「撃てぇぇぇぇぇッ! マリュー・ラミアスゥゥゥッ!!」





つくづく君は追記・修正をするのが好きな様だな。

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最終更新:2024年04月23日 00:14

*1 地球連合軍に於いて、捕虜が対象なら銃殺刑にも匹敵する本来重大な軍規違反。ただしラクスは捕虜ではない民間人なので実際はこの前提も異なり、アークエンジェル内としてもラクスに対して軍規を無視したかったわけではなく引き渡せない状況故に扱いに困っていた。

*2 ラクスの無断返還についても、最終的に「本来なら銃殺だが、キラはあくまで民間人であり、『軍事法廷』で裁ける対象ではない」として厳重注意に留めた点からもうかがえる。 但し、軍事法廷の途中でムウが軽口を挟んだ際には流石に苦言を呈した

*3 結果的に小回りが利くバクゥには当たらず、不慣れな砂地に戸惑うストライクだけが被弾する結果を招いた

*4 アズラエルは大西洋連邦上層部と癒着しているため、本来軍人ではないのにこういう役職を付けて乗り込んできて艦長より上の立場として振る舞っていた。そのためナタルも反抗できなかった。

*5 ナタルは時に冷徹・冷酷さを見せる事はあるが、本質的には悪人や外道ではない点で異なる。

*6 結局原作通り攻撃を受けて撃墜されている。イザークが既に撤退している場合はザフト一般兵が攻撃する。