禰衡

登録日:2015/04/04 Sat 11:18:29
更新日:2024/01/12 Fri 10:06:29
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むかしむかし、中国の後漢という時代に禰衡という男がおりました。
禰衡は並外れた才覚の持ち主で、儒学の祖である孔子の末裔・孔融の親友でもありました。
しかし、周囲の人をすぐに馬鹿にすることが非常に多かったため、ほとんどの人からは嫌われておりました。

ある日、24歳の禰衡は孔融の推挙により彼の友人・曹操のもとを訪れます。
しかし禰衡は、曹操とその配下が大勢控えている前へ来ると大声をあげて嘆きました。
「ああ、天下はこんなにも広いのに、どうしてまともな人材が一人もいないのだろう」
曹操は尋ねます。
「それはどういうことかな?」
禰衡は曹操の部下たちを一人一人指名しながら答えます。


「荀彧は弔問に行くしか能がありません。
 その甥の荀攸は墓守でもしていればよいのです。
 趙融は食うことしか頭にないデブです。
 程昱は老齢ですから門番しかできないでしょう。
 郭嘉は手紙を読んでいればいいのです。
 張遼は太鼓でも叩いていなさい。
 許チョは牛や馬の管理をする仕事ならぴったりでしょう。
 楽進は帝からの命令を伝えるだけでいい。
 李典はただの伝令で十分です。
 呂虔は刀を打つことしかできません。
 満寵は酒桶を作ってその粕を食っている姿がよく似合います。
 于禁はただの大工でしかありません。
 徐晃は牛や豚を殺して肉屋でも開いていればよいのです。
 夏侯惇は手足があるだけマシなカ○ワの将軍です。
 曹仁はお金に執着することしか知らない卑しい男*1です」


突然現れた謎の若者に、ここまで馬鹿にされたのですから、曹操の部下たちは黙っているはずがありません。
しかし曹操は落ち着いてこう答えました。
「お主の太鼓叩きの腕前は素晴らしいものだと聞く。そこまで言うのなら、一つ太鼓を叩いてみてはくれないか」
禰衡はこれを引き受け、曹操らの前で太鼓叩きを披露しました。
その腕前は、怒りを覚えていた部下たちもそれを忘れてしまうかのような見事なものでした。
太鼓叩きには間違えるとその場で服を着替えるという掟がありましたが、禰衡は間違いを指摘されるとその場で素っ裸になって着替えて見せ、
「私の体は潔白です、貴方のように汚れてはいません」
と答えました。

曹操は答えます。
「お主の才能はよくわかった。お主にはその実力以上の名声があるのだろう。
 ここで私がお前を殺せば、私は天下から名のあるものを身勝手な理由で殺したと誹りを受けるだろう。
 私にはお前を受け入れるほどの能力はない。荊州に劉表という男がいるから、その者ならお主の才能もいかんなく発揮できるだろう」
こうして禰衡は劉表のもとへ向かうことになりました。
旅立ちの日、曹操らは「彼が別れの挨拶に来ても、我々は常に寝たふりをしておこう」と計画しますが、その場にやってきた禰衡は
「別れの挨拶に来たのに、ここには棺桶と死体しかない。こんなに悲しいことがありましょうか」
と泣いてみせました。

劉表のもとへやってきた禰衡は、主君には下手に出ていましたが、その部下たちにはやはり傲慢な態度をとりました。
やがて劉表も禰衡の目に余る態度に辟易し、部下の一人である黄祖のもとへと追い出します。
始めのうちは黄祖とも良い関係を保っていましたが、次第に禰衡は傲慢になっていきました。
ある日禰衡は黄祖にこう言いました。
「貴方はまるで社の神様のような人ですね。だって供え物を貰うだけ貰って、供えてくれた人には、何の利益も与えていないのですから」
この言葉に黄祖は怒り、ついに禰衡を殺してしまいました。
禰衡の死を聞いた曹操は、「変人らしい最期だな」と笑ったといいます。



とっぴんぱらりのぷう










禰衡は中国後漢の末期の人物で、平原に生まれた。
読み方はデイ コウあるいはネイ コウとも。字は正平。

上記の話は小説『三国志演義』において脚色された部分もあるが、だいたい史実通りである。
大きく違うところといえば、曹操の部下たちを彼らの眼前で軒並み舌鋒でなで切りにしたぐらいか。
実際に馬鹿にしたのは荀彧と趙融くらいで、ついでに言うと趙融の名前は史実でもこの悪口の中にしか出てこない*2(故に演義には未登場)。
ついでに言うと、禰衡が指摘した「銭ゲバ野郎」は曹仁ではなく曹洪の間違いである。
他にも、後に曹操に仕官する陳羣や、関わりのあった司馬朗のことも見下している。

そんな禰衡でも、自分を推薦してくれた孔融の他、楊修の2人だけは認めていた。
しかしこの2人も、後に曹操の怒りを買って処刑されている。
類は友を呼ぶ、といったところか。

政治的な実績は何一つ作らぬまま、三国志の舞台から退場した人物だが、歴史上屈指の煽り野郎として三国志ファンの間では有名。
特に、当時圧倒的な権力を持っていた曹操に対して真っ向から罵倒し、彼から出された難題を次々とクリアしていく痛快ぶりは、現在の中国においても人気が高い。
彼を主人公とした劇の演目が存在するほどである。



<メディア作品での扱い>

  • 三国志(コーエー)
初登場はⅤで、知力は92と軍師としては申し分のない数値を誇る一方、魅力は23と最悪に近い数値。
政治力も高水準をマークしていたが、Ⅶで爆下げ。*3
知力も凡軍師以下まで低下し、Ⅸで武将としてはリストラされてしまった*4
才能はあっても実績がゼロなため、数値設定が難しかったものと思われる。

  • 三国志大戦
これだけ人を煽る才能を見せつけておきながら、持ってくる計略は挑発系ではなく悉く知力低下計略。
相手を怒らせて冷静な判断を失わせるという意味だろうか…?
Ver3.0ではR軍師カードとして登場。範囲内の敵の知力を下げる陣略持ちで、地味にSR徐庶の相棒として活躍した。
再開後は群雄でなく漢に所属しているが、相変わらず知力低下計略を引っ提げている。
1コストの方はかなりスペックが高い上に知力を下げた相手が計略を使うと武力が上がるという、より相手が怒るような計略にされている。
追加された2コストの方は自分以外の味方諸共知力を下げる漢鳴計略という全てにおいて癖の強い性能をしている。


  • 三国志パズル大戦
勢力は群雄、兵種は鬼謀、CVは井上和彦。
肩書は「毒舌詭弁(★4)」⇒「破天荒(★5)」⇒「皮肉の権化(★6)」。
敵全体を猛毒状態するスキルを持ち、指南クエスト等では重宝する。
回復がやや低い点以外は中堅クラスのステータスを誇っている。





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最終更新:2024年01月12日 10:06

*1 実際に金に執着してたのは曹洪なので間違えていると思われる

*2 だが同名の人物が後漢にも蜀にもいて紛らわしい

*3 ただし「鬼謀」「神算」というレア特技を有しており、そのままでは二流軍師でしか無いが、ゲームの仕様を熟知したプレイヤーが使うと大化けする。なお、他の特技は「罵声」だけである……。

*4 ただしイベント等で登場する事はあるし、内部数値も設定されている。凡軍師クラスだが…