冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた

登録日:2016/09/11 Tue 11:30:00
更新日:2023/11/10 Fri 10:42:45
所要時間:約 9 分で読めます




「私はいつになったらお父さんのところに帰れるんだ……!」

概要

「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた」小説家になろうで掲載されている小説。作者は門司柿家。
アーススター・ノベルから書籍化がされており、11巻で完結。書籍のイラストはtoi8。
2018年5月からはコミカライズもスタート。作画担当は漆原玖で、2022年11月現在で既刊6巻。

世界観としてはいわゆる「ハイファンタジー」であり、冒険者のランク付けこそあるものの、「ステータス」「スキル」などのゲーム的要素は存在しない。
ファンタジー世界での農村や都市での生活が丁寧に描写されているのが特徴。

実のところタイトルに関してはほぼ冒頭部分でオチており、本編はアンジェリンとベルグリフが様々な事件に巻き込まれ、それを解決していくのが話のメインである。

2023年秋にTVアニメ放送予定。情報が解禁されたタイミングが2023年の父の日という、なんとも本作らしい計らいとなった。

あらすじ

一旗揚げようと都会へ飛び出したものの冒険の最中に魔獣に襲われて片足を失い、失意のうちに冒険者を引退して故郷へ戻った元冒険者、ベルグリフ。
故郷のトルネラで畑仕事や山での魔獣退治などを行っていたある日、山の中で捨てられていた赤子を拾う。
アンジェリンと名付けられたその子はすくすくと育ち、かつて父ベルグリフがついていた職業、冒険者に憧れるようになり、12歳の時に村を旅立った。
それから5年。剣の才能とベルグリフからの薫陶もあってアンジェリンは冒険者として最高のSランクに昇りつめていたが、それは忙しく、中々故郷へ帰れない日々が続くということでもあった……。


登場人物

主要人物

本作主人公の一人。無造作に伸ばして後ろで束ねた赤髪と、獅子を思わせる顎鬚が特徴的……な、 百姓 である。*1
Eランク冒険者であった頃に魔獣に襲われて右足の膝から下を失い、以後は義足で過ごしている。
それでも暫くは冒険者としてやれないかと粘っていたが、1年ほどで見切りをつけて冒険者を引退。17歳で故郷のトルネラ村に帰ってきた。
トルネラ村で日々を送る中、25歳の時に山中で捨て子を拾い、アンジェリンと名付けて自分の娘として育てた。
謙虚で穏やかな気性で、その実直さと包容力から父性に飢えている人間を引き寄せることが多い、「みんなのお父さん」

村に戻った後も村の仕事を手伝いつつ鍛錬を続けており、村の近くの山に発生する魔獣退治も請け負っている。
この過程で腕も相当磨かれたらしく、現在ではB級魔獣を単独撃破できる程度の腕はあり、他人から見ても「動きが自然でぱっと見では義足と分からない」レベルの動作が可能。村の子どもたちや若手に、護身・防衛の手段として冒険者の技術と戦い方の手ほどきもしている。

しかし彼の真価は戦闘力ではなく「人を支える力」にある。
事前調査と準備を十分に行い、理不尽な怒りをぶつけにくい気性からパーティの人間関係を調整できる潤滑油としても機能しており、現役時代ではパーティの頭脳・司令塔として機能していた。*2
後年に軒並み高ランクの冒険者となったかつてのパーティの仲間たちから「自分の知る限りベルグリフ以上の冒険者はいない」と口を揃えるほどの厚い信頼を得ている。

アンジェリンが冒険者となってからも村で暮らしていたのだが、アンジェリンが『赤鬼』という二つ名を勝手に広め始めた頃から、少しずつ騒動に巻き込まれ始めることとなる。

本作のもう一人の主人公。ストレートな黒い長髪が特徴で、『黒髪の戦乙女』の異名を持つ。
元々は山の中に捨てられていたところをベルグリフに拾われ、剣と冒険者としての心得を教えられて12歳の時に冒険者となり、わずか5年で最高のSランクまで上り詰めた。現在はオルフェンのギルドに所属している。
その剣の腕は本物で、ワイバーンだろうが巨大アリだろうが剣一本で斬り捨てていく。不平を述べながらも困った人を見捨てずに助けることから、オルフェン周辺での評判は高い。
かなり重度のファザコン。それで「ベルグリフのために」とあれこれやったりするのだが、それが地の文で「斜め上の親孝行」と評される辺りお察しである。
(代表例:元Eランクで異名などもっていなかったベルグリフのことを勝手に「赤鬼の」ベルグリフとして広める)
どうやら出生にはなんらかの秘密があるようなのだが。

トルネラ村の人々

  • ケリー
トルネラの村人で、ベルグリフの幼友達。いわゆる豪農で、単に人を使って畑を広くしているだけでなく新しい産業を起こそうと試行錯誤をしている。
面倒見のいい性格でベルグリフにも何くれとなく気を回している。

  • バーンズ
ケリーの息子。
ベルクリフに師事を受ける村の若者の一人で、冒険者にあこがれている。




冒険者

アンジェリンのパーティ

  • アネッサ
アンジェリンとパーティを組むAAAランクの弓使い。
真面目な性格で、暴走気味のアンジェリンやミリアムのブレーキ役。
ミリアムとは同じ孤児院で育った昔馴染み。

  • ミリアム
アンジェリンとパーティを組むAAAランクの冒険者。
大魔導の一人であるマリアに師事した魔術師で、強力な雷撃の魔法を得意とする。
実は猫の獣人で、頭頂部には猫耳が映えているのだが、獣人であることへの差別や憐れみを受けることが嫌で、いつも帽子を深く被っている。
ゆったりした服を着てるため普段は分かりづらいが、立派なものをお持ちらしい。

オルフェンの冒険者ギルド

  • ライオネル
オルフェンのギルドマスター。
一応元Sランク冒険者らしいのだが、アンジェリンからの訴求を「不在」と逃げたり、試験の時にはアンジェリンに一撃で負けてたりと、うだつの上がらない風体と相まって、威厳やカリスマなどといったものとは無縁。
……実のところ初登場時点では魔獣の大量発生の原因を探るために不眠不休で動き回っており、「不在」は本当にギルドを空けていただけ。くたびれた様子なのも実際に疲労困憊していたからである。
とは言え能力はあっても問題を全て自分で抱え込んでしまう辺りは典型的な「有能な働き者」であり、あんまり組織の長に向いた人物とは言えないのも事実なのだが。

  • チェボルグ
元Sランク冒険者で、二つ名は『撃滅』。
齢70近い今も尚、筋骨隆々の体格を維持しており、アンジェは「マッスル将軍」と呼んでいる。
年齢を理由に引退していたが、オルフェン周辺の魔獣大量発生に伴い、ギルドからの要請を受けて現役復帰した。
体に刻印した魔術式によってブーストした筋力で全てをなぎ倒すパワーファイター。
流石に歳のせいか耳が遠く声がでかく、そして脳筋なのが玉に瑕。

  • ドルトス
元Sランク冒険者で、二つ名は『しろがね』。チェボルグとは腐れ縁。
年齢を理由に引退していたが、オルフェン周辺の魔獣大量発生に伴い、ギルドからの要請を受けて現役復帰した。
二つ名にもなっている白金(おそらくプラチナとは別の特殊な金属)でできた、並の大人なら二人掛かりで持ち上げねばならない槍を軽々と操り敵を屠る。
チェボルグと違って割と常識人。

  • マリア
元Sランク冒険者で、二つ名は『龍殺し』。登場時点で68歳。ミリアムの師匠。
凶悪な魔獣退治だけでなく、有用な魔法の術式開発でも成果を上げている。
その魔力で肉体の老化を止めているが、呪龍の返り血による呪いで咳や寒気が止まらなくなる呪いがかけられた。

ボルドー家

トルネラ村を含む一帯を治める伯爵家。
土豪上がりで民の方を向いた施政を行っており、民衆や同じような興りを持つ家からの評判は高い一方、中央と繋がりの深い貴族からのウケは悪い。

  • ヘルベチカ
ボルドー家の長女。本編開始して間もなくに亡くなった父に代わって新領主についている。
内政面で優秀な手腕を持ち、いかにも貴族のお嬢様然とした立ち居振る舞いとは裏腹に、清濁併せ呑める気質の持ち主。
唯一にして最大の欠点は某人材マニア並みの優秀な人材への執着心。
実際に連れてきた人物が領地で活躍しているのだが、無理やり連れて来たことも2,3度あったらしい。

  • サーシャ・ボルドー
ボルドー家の次女。
内向きの仕事は向いていないと割り切り、冒険者とボルドー家の軍事面の責任者の二足の草鞋を履いている。
冒険者としてはAA→AAA。
竹を割ったような潔い性格をしており、礼節をわきまえながら若干人の話を聞かない面も持っている。
一度挑んで負けたベルグリフを「師匠」と呼んで慕っている。

  • セレン・ボルドー
ボルドー家の三女。登場時点で15歳。眼鏡をかけている。
病床の父に会うために少数で向かった際に盗賊に襲われ、攫われそうになっていたところをアンジェに助けられた。
ヘルベチカと比しても純粋に内政面での能力を持っている。
基本的には穏やかな人柄なのだが、姉二人が暴走を始めた時は強く諫めることも。

その他

  • シャルロッテ
オルフェンでヴィエナ教の弾劾とソロモンの帰還を説法していた聖女。アルビノの容姿が特徴。
しかしその時売っていたお札とやらは何の効果もない偽物であった。
その後はボルドーに現れ、墓場から湧きだしてきたアンデッドを強大な魔力を振るって撃滅する。
なおボルドーの件はマッチポンプ。ヴィエナ教内部の権力争いで両親を殺され、復讐心をソロモンに関する「何か」をやろうとしている連中に利用されることになる。
優れた魔力の資質を持っているのは事実だが自分では扱いきれず、「サミジナの指輪」というものを使用して凄い力があるように見せかけていたに過ぎない。
紆余曲折の末、サミジナの指輪が壊れ、また自分が本当に欲していたのは復讐ではなく「親の温かさ」であることを自覚し、ソロモンの巫女の立場を捨てる。

  • ビャク
シャルロッテの従者をしている少年。
魔術式自動障壁を操るなど、年齢離れした高い魔術の能力を誇る。
その一方で「自分がどうしたい」というものはなく、シャルロッテに付き従うことを自己の務めと定めている。
……こう書くとなんだか自分のない寡黙なキャラっぽいのだが、性格の方は一言で言うと「反抗期のクソガキ」である。
どうも「魔王」と呼ばれる存在を内に宿しているようである。

世界観

組織

  • 冒険者ギルド
「冒険者」と呼ばれる存在を統括する組織。
冒険者はEからA、AA、AAA、Sランクまでランク付けされており、功績によって昇格する様子。
作中のベルグリフの言から「BからCで終わる冒険者が大半」であり、Aランク以上はエリートと言えるようだ。
ちなみにベルグリフさんはEランクであった。
このランク付けは魔獣に対してもなされており、討伐できる目安としても用いられているようである。

冒険者ギルドは中央の統括する存在があるようなのだが体制の硬直化が進んでおり、「緊急時の動きが鈍い」という現実がある。
また、国家の枠を越えての連携もあるが、同時に地元の有力者を無視し得るほどの権力は持っておらず、立場は中々に難しい。

  • ヴィエナ教
この世界の主流の宗教。
トルネラ村などでは神父も人々から敬意を受けており皆もごく自然に女神ヴィエナに崇拝を捧げる一方、中央は権力闘争が激しく腐敗が進んでいる、という我々の世界の近世ヨーロッパにおけるキリスト教に近い存在。

  • オルフェン
エストガル公国の大都市。若かりし頃のベルグリフやアンジェリンが冒険者として活動の中心地にしている街。
「一般的なファンタジーの街」を想定してもらえばそう大きく外れてはいない。

  • トルネラ村
ベルグリフとアンジェリンの故郷。エストガル公国の北に位置しており、一言で言えば「辺境の村」である。
ただ土地は豊かなのと為政者であるボルドー伯が優秀なので、暮らし向きは厳しくはない。
とは言え北の山を越えればエルフ領でここより先に人の住む土地がなく、街道もあまり整備されていないというまごうことなき僻地であるのも確か。
また北の果てということもあって冬は雪が深い。
この辺の条件も相まって、アンジェリンは一度の帰郷にも難儀していたりする。

用語

  • ソロモン
かつて存在したと言われる大魔導師。
その強大な力で一度は世界を支配したが、ある時なんらかの理由で世界から去ったとされる。
彼が作成し行使したホムンクルスが、彼の制御を離れた後に「魔王」と呼ばれる存在になった、と言われている。

  • 魔王
ソロモンが作成し行使したホムンクルスが、野に解き放たれた存在。全部で72体いたとされる。
「本当にいたのか」ということ自体があやふやなのだが、各地に魔王を鎮める祠などがあったりするのも事実である。

追記・修正は岩コケモモを食べた後でお願い致します。

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最終更新:2023年11月10日 10:42

*1 冒険者を引退しているため、公的身分としては村人Aでしかない。

*2 アンジェの仲間であるアーネとミリィいわく「側で戦って(指示を)貰ってると安心感がハンパない」