足4の字固め(プロレス技)

登録日:2019/01/26 Sat 03:01:45
更新日:2022/01/25 Tue 15:53:30
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『足4の字固め(Figure 4 Leglock)』は、プロレス技の一つ。
マット発祥の古典的、かつ代表的な脚部間接技であり、古くからある技であると同時にプロレス界でも屈指の拷問技との評価を受けている。

元祖“野生児”バディ・ロジャースを初めとして、ジャック・ブリスコやリック・フレアーといった歴代世界チャンピオンが得意としてきた技でもあり、チャンピオン御用達の技とも呼ばれていた。

日本では、TVタレントとしても活躍した“白覆面の魔王”ザ・デストロイヤーが持ち込み、それまでの単純な技の攻防に見慣れていた日本人に衝撃を与えたとも言われる。

かつてのプロレスごっこの定番でもあるが、前述の様に上手い人が本気で仕掛けた場合には相当に激痛の走る危険な技である。


【仕掛けかた】

①仰向けの相手の片足を取り、その足を正面から差し入れた自分の片足に後ろから回すようにして絡める。
※ここで、仕掛ける側が回転しながら相手の足を絡めるのが定番ムーヴとなっているが、省略する選手もいる。
②相手の足を絡めた状態で寝転がり、絡めた足の足首を相手のもう片足の足の膝の辺りで交差させる。
③絡めた方の交差させた相手の足首に、自分のもう片足の足を掛けて固定する。
④これで、相手の伸ばした方の足の膝にテコの要領で強烈に負荷が掛かる為、更に力が加わるように締め上げていく。

両手でバンバンと受け身を取りながら後ろに倒れ込んだり、横向きで身体を反りあげる動きを見せる選手が要るのはこの為で、更に負荷を掛けていくため。
また、伸ばした方の相手の足を自分に引き寄せ、上に押し上げて負荷をかけたりもする。

この時の相手の足の形がアラビア数字の“4”に見えることから名付けられたのがフィギュア・フォー・レッグ・ロック。
よって、日本語足四の字固めと表記するのは厳密には間違いである。
差し込む足の関係で4が裏返しになる選手も多いのはご愛敬。


また、ひっくり返すと仕掛けた側が痛いと言われ、足4の字を仕掛けられた際の定番的な攻防となっているが、相手の足首に引っかけた足の足先を、相手の膝裏に潜り込ませる等して更に深くロックした場合等には、ひっくり返しても相手が痛いそうであり、ザ・デストロイヤーも仕掛け方によるとして定説を否定している。


【主な使い手の歴史】
最初に足4の字を得意技とするとして知られるようになったのは、ジャイアント馬場も修行時代に最大の憧れとしていたNWA世界王者のバディ・ロジャース。
足4の字は、他の選手が使っていたフィギュア・フォー・ボディシザースという技から発想を得て、ロジャース自身が生み出したとされている。

尚、ルチャではクルセータ(十字架)と呼ばれており、名も無い複合間接技(ジャベ)が多く存在するメキシコマットだけに、発祥はルチャでは無いか?とする説もある。

ロジャース以降は、ロジャースと同じく歴代の世界最高峰と言われていた時代のNWA世界王者が得意技としており、中でもジャック・ブリスコやリック・フレアーが有名。

特に、フレアーは美しく染め上げた金髪や“野生児”のニックネーム。
試合中に見せる派手なアクションや、巧みでダーティーなファイトスタイルといった多くを、ロジャースの模倣により得ており、実質的な後継レスラーと呼べる存在である。

NWA王者に匹敵する価値を喧伝されていた、往年のAWA王者ニック・ボックウィンクルもフレアーに先駆けてロジャース流のダーティー・チャンプのスタイルを実践していたレスラーであり、フレアーやニックが参戦していた当時の全日本プロレスでは、ファンはそうした本国流のダーティー・チャンプのスタイルを理解できなかったが、前述の様に創始者であるジャイアント馬場が強く感銘を受けていたアメリカンレスリングの王道こそがダーティー・チャンプの深奥であり、彼等の必殺技こそが足4の字固めであった。

一方、元祖のロジャースが遂に現役当時には日本に招聘出来なかったこともあり、足4の字固めを最初に日本に持ち込んだのはロジャース以来の系譜を引き継ぐ世界王者ではなく、白覆面の魔王ザ・デストロイヤーであった。
デストロイヤーはWWAやAWA世界王者にも就いた実力者ながらNWA圏ではチャンピオンとはなれなかった為に、他の得意とする自分以上の格の前述に遠慮して本国では使用していなかった足4の字固めを、米国のテリトリー外の日本で解禁して使用したのである。

1963年の力道山との足4の字を巡る攻防は日本中の熱狂を呼び、最大視聴率64%を記録したとされている。
デストロイヤーはその後も日本プロレス、そして旗揚げ後の全日本プロレスに来日して活躍したことから、日本では世界王者以上に、足4の字固め=デストロイヤーのイメージが長らく定着していた程だった。

90年代以降は、余りにも定番的な技であることから繋ぎ技程度の使用に留める選手が多く失墜していた感があったが、武藤敬司が新日本プロレスとUWFインターとの全面対抗戦にて、高田延彦との決着をドラゴンスクリューからの足4の字固めで決めたことで再び注目が集まる。
…尤も、流行したのはドラゴンスクリューの方であったのだが、以降は現在まで武藤のフィニッシャーの一つとして定着している。
武藤は足4の字の使用や準備段階の足責めについて、若い頃に対戦して辛酸を舐めたフレアーの攻めが参考になったと語っている。

00年代になると、何とフレアーが50代にして現役選手としてWWEに参戦。
異常なコンディションの良さで若手相手に活躍を続け、それと共にフレアーの必殺技として足4の字固めがまたもや脚光を浴びる。

弟子を自称するトリプルHや、クラシカル志向のショーン・マイケルズも持ち技に取り入れる等の動きも。

…そして、10年代となりフレアーの娘のシャーロットが、フレアーのファミリーネームと共に足4の字固めを引き継ぎ、キャリア数年ながら女子部(DIVA)の頂点に。
足4の字のロックをブリッジにより更に強烈にするフィギュア・エイト(8の字固め)は、最新版の進化系と言える。


【主な使い手】

  • バディ・ロジャース
足4の字固めの元祖とされる。
恵まれた体格とは言えないながらも鍛え上げられた肉体と、美しく染め上げたブロンドの甘いマスク、憎らしい程に巧みで、負けそうになりながらも絶対にベルトは落とさない、米国マットの頂点たるダーティー・チャンプのスタイルを後代にも伝えた。
カール・ゴッチに襲撃されたという噂や『プロレススーパースター列伝』での脚色された描写により実力の無い人気だけのレスラーと勘違いされていたこともあるが、ロジャースこそが日本マットの創始者の一人であるジャイアント馬場が最も憧れたレスラーであり、ついぞ来日の敵わなかった幻の強豪であった。1992年、スーパーマーケットで転倒し死去。

  • ザ・デストロイヤー
4の字固めを日本に持ち込んだ最初の選手。
現在の米国マットでも珍しい、覆面姿でチャンピオンにまでなった実力者。
前述のように日本では足4の字固め=デストロイヤーのイメージが定着しており、本人もマット上での活躍やTV出演を経て人気者となった日本に愛着を持っており、自宅には特注の和室まで拵えているとのこと。
2019年に死去。同年日本で開催された追悼大会のメインでは武藤・ライガー・宮原健斗がそれぞれ対戦相手に足4の字固めを決めてフィニッシュ。偉大なる先人を讃える勝利を飾った。

  • ニック・ボックウィンクル
70年代から80年代にAWA世界チャンピオンとして長く君臨。
本人が父から受け継いだ「相手がワルツを踊れば私もワルツを踊り、ジルバを踊れば私もジルバを踊る」という名言の通り、相手のスタイルに柔軟に対応し、最後はルールを利用した反則負けによる防衛を繰り返すスタイルはダーティー・チャンプと揶揄されたものの、これこそが昔ながらの世界王者のスタイル*1であり、その理詰めのレスリングはトリプルHが参考にしたことでも知られている。
ジャンボ鶴田が日本人初のAWA世界王者になった時の相手として有名だが、基本的に鶴田の挑戦を退け続け、本国ではAWA時代のハルク・ホーガンも寄せ付けなかった。2015年死去。

  • ジャック・ブリスコ
レスリング出身の実力派で、NWA世界王者にも君臨して、日本でも馬場や鶴田といった名だたる実力者を退けた。2010年に死去。
ブリスコの足4の字は派手な回転の動きが無く、寝るまでの間に折り畳むように極めるのが特徴。
弟のジェリー・ブリスコ(ジェラルド・ブリスコ)も実力派のプロレスラーで、WWEアッティチュード時代にはパット・パターソン共々ビンスの腰巾着としてヘイトを買い、女装でリングに上がったこともある。2020年の新型コロナの影響で解雇された。

80年代を代表するNWA世界王者で、ビジュアルも含めてロジャース流のスタイルを踏襲した二代目“野生児(ネイチャーボーイ)”となった。
近代プロレス最高のテクニシャンとの評価を受けており、フィニッシュにしない場合でも足4の字に至るまでのエゲつのない足責めを攻撃の基本としていた。

  • テッド・デビアス
ファンク道場出身のテクニシャンで、全日本プロレス時代にはファンクス譲りのスピニング・トゥー・ホールドから移行してフィニッシュとした。
WWEではミリオンダラーマンのニックネームで選手、マネージャーとして活躍。
三人の息子達もプロレスラーである。

  • ジョニー・パワーズ
新日本プロレス旗揚げ当時の、NWA、WWWF(WWE)、AWAの三大王座との繋がりを持てなかった時代の代表的な外国人エース。
実力はあるがレスラーとしては壊し屋的なスタイルであったり、人格にも問題があると言われたりと大成したとは言い難いが、足4の字固めを必殺のパワーズ・ロックと呼んでアントニオ猪木初期のライバルとしてぶつかり合った。
パワーズ・ロックはフックした自分の足の先端を相手の膝裏に潜り込ませる等、ガッチリと締め上げるのが特徴で、日本では4の字の二倍痛いと評され8の字固めとも呼ばれたが、後述のシャーロットのフィギュア・エイトとは無関係。

  • ジェフ・ジャレット
WWEから転出した後は、反WWEとも言うべきレスラー人生を送っていたが18年にWWE殿堂に迎えられたダブルJ。
ギターを壊し続けてきた人。
派手に見えてクラシカルなレスリングを基本としており、師匠が“偽”リック・フレアーのバディ・ランデルであることから足4の字固めも得意とする。

WWEの顔役で、古くからのダーティー・チャンプのスタイルを踏襲して業界のトップヒールまで登り詰めた。
スタイルで参考にしていたのはニック・ボックウィンクル。
共に組むようになった後はリック・フレアーの後継者を自称している。
4の字固めの他、インディアン・デスロックの名手でもある。

復帰後は飛び技を控えていたショーンにとっては定番的なムーヴの一つ。
相手の足の組み方を逆にした変型足4の字も好んで使用していた。

  • ザ・ミズ
曲者的なキャラクターで長らくWWEに定着している実力者。
フレアー直伝の足4の字をレパートリーに組み込んでいる。

  • シャーロット・フレアー
リック・フレアーの実の娘であり、父親の必殺技である4の字固めも引き継いでいる。
更に、4の字(フィギュア・フォー)を仕掛けた状態から自らブリッジして負荷を掛けていくフィギュア・エイトをオリジナル技としており、大一番での決着に使用している。

95年に高田を破った試合以降、主なフィニッシャーとして定着していた。
武藤の場合はドラゴンスクリューからの連携も合わせての技と言える。
低空ドロップキック等、フレアーを意識した多彩な足責めも見せるように。
なお『テラフォーマーズ(漫画)』のミッシェル・K・デイヴスの戦闘シーンで入った「足四の字をかけられて2分間我慢すると足が折れる」
というナレーションの真偽を書籍『テラフォーマーズ最新調査報告』のインタビューにて聞かれた際に
「二分もかけたことはないがもっと早く折れそうだと感じてやめたこともあるので、折れるのではないか」
「ただし体質的に個人差が大きく、猪木さんは折れそうになかった」
と回答している。


この他、クラシカルなスタイルを好む選手がレパートリーの一つとして使用している場合が多い。





追記修正は足をとって回転してからお願いします。

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最終更新:2022年01月25日 15:53

*1 各地のテリトリーを周り、地方のチャンピオン相手に防衛戦を繰り返すのが当時の世界王者の仕事であった。