登録日:2021/08/11 Wed 23:45:52
更新日:2024/04/11 Thu 17:24:23
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あまり知られていないが実は人間の脳はその容量の10%しか使っていないんだ
残り90%の空いてる容量には意識的に知覚できる以上の―――「無意識の情報」が記憶されている…

あ その説間違ってるってネットで見たよ?
最近の研究だと脳は普通にちゃんと容量全部使ってるって…

え…
じゃあこれなんなんだよ?

いや知らないよ…



脳とは、生物の神経中枢である。


概要

内的には感情・思考などの精神活動、外的には生命維持や全身の神経からもたらされる様々な情報の統御を司る臓器。主に頭部に存在する。
心臓と並んで生物にとって最も重要な部位。本wiki閲覧者の大半を占める脊椎動物は脳を破壊されると生命活動を停止、死に至る。
「臓器」であっても「内臓」ではない*1

脳の構造

代表として人間の脳を解説する。

主に大脳・脳幹(間脳、中脳、脳橋、延髄)・小脳の三種から構成されており、これらは表面を覆う髄膜と頭部全体を満たす脳脊髄液*2、そして頭蓋骨で保護されている。

大脳

脳の8割を占める主要器官。一般的な人が脳と聞いて連想するものは概ねこの部分だろう。
大脳は右脳左脳に分かれ、脳梁という一際太い神経線維の束で繋がっている。
女性は右脳型で男性は左脳だとか、右脳は感覚的な部分、左脳は論理的な部分を担当していて、脳の発達の差異によって考え方が変化する……なんて話は有名だが、実は科学的な根拠は無い。
じゃあなんでそんな考えが広まったの?というのは後述の脳梁を参照。

特徴的なしわは脳溝という名前。これにより凹凸を作ることで、脳はサイズに比して広い表面積と大量の神経細胞を確保している。

脳幹

脳と脊髄を繋ぐ連絡口。延髄斬りで有名な延髄も脳幹の部位の一つ。
単体でも呼吸や心拍など生命維持を制御する重要な部位で、ここの機能が停止した状態がいわゆる脳死と判断される。
「確実に殺すなら脳幹に向けて二発」という言葉があるように、脳の中でも一番の急所。銃を口に突っ込んで自殺しようとするなんてシーンも脳幹を確実に破壊することが主な目的である。

小脳

大脳と脳幹に挟まれて後頭部の下側に位置する脳。名前は小脳だけど中脳より大きい。
肉体運動やバランス感覚の調整などを担当していて、ここが壊れると死にはしないが体がまともに動かせなくなって日常生活をこなすこともほぼ不可能になる。空気じゃないよ。
実は大脳より細胞の数が多い*3


脳梁

右脳と左脳を繋げる分厚い神経の束。
右脳と左脳の情報の受け渡しをしており、片方の脳が得た情報をもう片方に伝えることができるのはこれのおかげ。
重度てんかんや脳腫瘍の患者の一部は治療のために脳梁を切断する手術を行う*4ことがあるが、それをすると左脳と右脳の繋がりが断たれるために様々な不思議な症状を引き起こす。

重要なのは「基本的に言語中枢*5は左脳に存在する」「右脳左半身を、左脳右半身を制御している池袋駅の東武と西武みたいなややこしい仕様」の二点。
分離脳の人は左脳との繋がりを断たれている左半身で得た情報を理解や表現はできても言葉にできないという研究結果があるのだ。
これを「言語で表現できない=論理的思考ができない」と単純化した結果、左脳=論理的の考え方が広まった。そのため右脳左脳で機能がまったく同じなわけでもなかったりする。
また、分離脳の人を利用し、絵を見た時の絵の内容を理解する速度と文字を読んだ時の内容を理解する速度を右脳と左脳で比較すると、絵の内容を理解する速度は右脳の方が速く、文字の内容を理解する速度は左脳のほうが速いということが分かっている。
このことから右脳が感覚的思考で左脳が論理的思考という迷信を産んだのかもしれない。
あくまでもこの結果は解析機能の差であって思考形態の差を意味するものではない。


脳の10%神話

人間は普段脳の10%しか使っておらず、未使用の部分を解放することで凄まじい潜在能力を発揮するという有名な話。そしてこれまた都市伝説である。

もっとも科学的根拠が無いわけではない。脳の90%を構成するグリア細胞が神経系の活動は行っていなかった、という昔の検証が誤解から一人歩きした結果ではある。
現在では栄養の供給や神経細胞の固定など、脳の役割を保つためにグリア細胞が働いていることが検証されている。
逆に言えばグリア細胞を必要としない、あるいは神経細胞と機能を両立するなどで脳の全てが神経細胞としての役割を果たせたら、潜在能力の発露を実現できる……のかもしれない。

脳の機能代償

脳がなんらかの形で失われた場合どうなるか。

人為的なものとしてはロボトミー手術などに例があり、著しい人格の変容を起こしてしまうケースが見られた。

一方、事故で失われた脳が持っていた機能を残りの部分で代替したケースや、臓器移植によって嗜好が変化したケースもある。



フィクションにおける脳

創作でも脳に関わる要素は多い。
登場人物全てがロボットでもない限りまず存在しているんだから当然といえば当然だが。擬人化は脳も人間同様になっているようなものだし。

脳が持つ力

脳の10%神話が都市伝説なのは先述したが、フィクションではそんなことはお構いなしである。
SPECPSYRENSCARLET NEXUSのような超能力が関わる作品では脳の力は欠かせないし、一般人が30%しか出していない力を100%まで引き出す北斗神拳も脳のリミッターを外す面で近い性質を帯びている。
ニュータイプ脳量子波などの精神感応も宇宙への進出や人類の革新に伴う脳の進化として挙げられる。行き過ぎた人体研究が悲劇を招くこともあるが……。
こういった超常的な能力に限らずとも、瞬間記憶能力のような例もある。
魔力の類が無い世界観では、脳こそが最大のファンタジーにして一線を画する力の根源なのだ。

弱点としての脳

脳はデリケートな部位の上に、筋肉のような一目でわかる鍛え方も難しい。そのため、ダメージを受けたらヤバいし破壊されたら疑いようもなく死んでいるのを示すパーツとしてもしばしば用いられる。
中世の分厚い鎧相手にはメイスで鎧越しに衝撃を与えるのが有効だったり、格闘マンガで顎に打撃を加えて脳震盪を誘発したり……なんてのがわかりやすいか。
後者の例はパーマンの脳細胞破壊銃やFFでマインドブラストを食らった際の「のうみそを すいとられた!」。フレーズだけで食らったらアウトなインパクトを醸し出している。
まあ意外と大脳や小脳であれば破壊されても命への別状はなく、脳を銃弾や鉄骨が貫いたが生還したなんて人もけっこういたりする。
ただし当然ながら知的能力や精神、小脳なら運動機能に重大な悪影響があるために生き延びたものの悲惨な末路に陥った人も多い。その一方で全く後遺症がなかったなんて人もいたりするのが不思議なところである。
なお生命維持に関わる脳幹が破壊されると確実に即死する。

また肉体と違って、脳は物理に限らず精神へのダメージにも直結する。
強靭な肉体の持ち主でも洗脳には抗う術が無いケースは多いし、優れた精神魔法の使い手が放つ精神破壊は一撃必殺に等しい。ていうか強力過ぎるので展開の都合や格の差で封印されやすい。
三国志演義版諸葛亮の必殺技を食らった相手が陥る「憤死」も、要するに脳溢血である。

脳みそセーフ

一方で脳が残ってればドバドバ大量出血したり腕や足が千切れたりしても生命活動はしてるからセーフ、という風潮もある。簡単に失血死やショック死していたらメインキャラはやっていられないようだ。
心臓を撃たれても人工心肺で補ってるからセーフ」とか「額に銃弾を受けたけど実は脳がコンパクトに出来ているので頭蓋骨を滑って掠めたからセーフ」とか、さらにおおらかな時代だと脳死には至らなかったので再登場したり脳質にされてた脳を戻して生き返ったりしてる。

脳のメモリー

脳は記憶を司る部位でもあるため、そういった面でもクローズアップされやすい。
記憶喪失も言うなれば脳障害の一種であるし、外傷や(心因性を含む)病による周期的な記憶障害はサスペンスやラブストーリーの主軸にもなっている。
辛い記憶、捨てたい過去などがある場合は自分から記憶を捨てるパターンも。話としては消した記憶が付きまとうとこまでがお約束。
一方で異世界転生みたいな魂の概念が存在するジャンルでは記憶の領分を魂に譲っているとも言える。

なお記憶に関わらない病が創作で扱われることは少ない。
これは命に直結したり呂律に関わるようなクリティカルな病状が多いためと思われる。真に迫った理由付けでも無いと、セリフが読みにくい、聞き取りにくいのは単純に扱いづらい。

最小の構成物

個の核を成す性格や感情を形成する脳は、合理的に考えれば最小の『生体』である。
SFの分野に多い利用法で、身体の一部、あるいは脳を除く全ての部位を機械化するのが代表的。
ブラックなものになると、扱いやすさ能力を利用するためだけに人としての尊厳を蹂躙されることも……。
???「いえいえ、彼らには感謝しませんと」
永遠に生きるために」または「永遠に瞑想をするために」といった理由で脳を生命維持装置に繋げてしまう作品もあったり。

脳の処理能力

情報処理という観点から脳はコンピュータと比して見られることも多い。
機械が無い世界観では小型生物の脳が制御コンピュータの代用品になるし、心の通じ合う仲間として戦うガオガイゴーのようなケースもある。
だが敵役や黒幕が関わるとロクなことにならないカレンデバイスはみんなのトラウマ。

大きいほど賢い?

チブル星人MARVELコミックのM.O.D.O.K.のように頭部が大きい=脳が大きい=知能が優れているというのも定型的な表現の一つとなっている。
また知能に限らず、人体より広い空間で脳を活動させることで大きくなった脳が常人以上の能力を発揮する、といった作品もある。
実際のところ人間と同じ条件でサイズだけ大きくなったとして、それで遥かに高いスペックを得られるかというのは不明。

脳内物質

β-エンドルフィン、チロシン、エンケファリン、バリン、リジン、ロイシン、イソロイシンといった脳内から放出される化学物質。
フィクションでは文字通りの映画シリーズもあるアドレナリンが馴染み深いか。これの量を操作できるのが強さの理由付けになっているキャラもいる。
また性別・種族を問わず親密な相手とのスキンシップで分泌されやすくなる愛情ホルモン「オキシトシン」も近年では知名度を上げている。

欠落者・異常者

一般人目線だと、自分とは違う、というのは潜在的な恐怖を助長するものである。
そのため脳の欠損心的外傷による感情の欠落も常人とは違うアクセントとして扱われやすい。
脳がはちきれそうだぜぇ~~~!!とか言ってるのは脳は脳でも欠落者というよりキチガイ異常者だが、一癖ある厄介な相手の個性付けとしては同類と言える。

脳と異生物

人間の脳を食らって肉体を乗っ取る寄生生物、脳に当たる部分が極めて小さい地球外生命体、複数の頭部に加えて首元にまで脳がある宇宙怪獣、頭部を切り離しても胴体が独立して動いて頭部と接合するゴキブリなど。
これらは頭部が脳の存在する中枢である現実の常識があるからこそ、常識外れの架空の生物として強い印象を与えている。
え、ゴキブリは架空の生物じゃない?またまたそんな。

生理的忌避感

脳の形状は非常に独特であり、また原則的に露出していない、生命に関わる部位となっている。
そのためマジマジと眺めるには生理的忌避感を伴う傾向もあり、描写される作品がR-18Gになることもままある。
ハカイダーの造形やポックルの拷問はよく年齢制限無いなってくらい代表的。あとノウゲルゲとかキモい。マジ怖い。



脳と俗語

ある意味で人間にとってもっとも馴染み深い仲である脳。それにまつわる俗語も数多く存在する。
深く考えず行動する明るいマッチョキャラを脳筋、思考停止な行動を本来の意味とは別に脳死と呼ぶのが代表的。
低能をもじった低脳なんて言い回しや、近年では寝取られなどで情緒に甚大なダメージを受けた状態を「脳が破壊される」と表現したりも。
また特定の事物に執着する様が「○○脳」と呼ばれることもある。具体例は追記・コメントともに控えてね。

食材としての脳

牛、豚、羊などの家畜の脳は食用として海外では普通に販売されている。
中国では猴頭と言って猿の脳が食べられている。
脳料理も参照のこと。
脳の大半は脂肪分でできており、チーズの様な味であるとか。チーズ好きのCharlotteがマミさんをマミらせたのも、もしかするとチーズのような味の脳を狙ったからなのかもしれない。



最後に。
脳の機能や構造は分析されつつあるが、未解明の分野は未だに多い。
もっとも身近でもっとも未知なる存在、それこそが脳なのである。

追記、修正はの~みそこねこねしてからお願いします。

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最終更新:2024年04月11日 17:24

*1 内臓は胴体にあって取り出しても生きていられる臓器のみを指す。そのため実は心臓も内臓には含まれない

*2 いわゆる脳漿。

*3 大脳の細胞は150億個なのに対し、小脳の細胞は700億個と、5倍近くも多い。

*4 これを施された脳を分離脳と呼ぶ

*5 これがある方を優位半球と呼ぶ。