曽山一寿短編集 そやまつり

登録日:2020/02/13 (木) 02:13:00
更新日:2024/02/29 Thu 07:45:21
所要時間:約 22 分で読めます




短編集が

でぇ~~~た

ぞぉ~~~~い!!


■目次

◆概要

「曽山一寿短編集 そやまつり」とは、小学館より刊行された漫画作品の一つ。
でんぢゃらすじーさんシリーズ』『わざぼーシリーズ』『みかくにん ゆーほーくん』『神たま』の作者、曽山一寿先生の短編集。
曽山先生が漫画家デビューして初めての連載作品から、新人コミック大賞に送った作品、読み切り作品まで収録されており、作品それぞれに曽山先生の作品に対する想いや裏話が綴られている。


◆掲載作品

探偵少年カゲマン

かつてNHKで放送されていた番組『天才てれびくんワイド』内で放送されていたアニメ『探偵少年カゲマン』のコミカライズにして、曽山先生が漫画家デビューして初めての連載作品。

別冊コロコロコミック2001年6月号~2002年4月号に掲載された。

コミカライズとはいってもアニメの内容、設定は完全に無視されており、カゲマンとシャドーマン、怪盗デ・アールがアホな行動を繰り広げる曽山ワールド全開のギャグ漫画に変貌している。
ある意味下記の「ぼくのおじいちゃん」と並ぶ「でんぢゃらすじーさん」の原型と言ってもよい*1
1話完結ものだが連載の途中でアニメが終了したため、たった6話で連載が終わった。


■登場人物
  • カゲマン
本名は影 万太郎。でんぢゃらすじーさんの「孫」ポジション。
世界一の探偵を目指しているが、シャドーマンに「ムリ×24」と言われてしまっている。
登場人物の中で唯一読者や物語の展開を意識している。
本作で推理を披露したのは「ねらわれた1億円の壺」の冒頭のみ。
時にはシャドーマンとともに一億円の壺を割った罪をデ・アールになすり付けるなど、探偵の面汚しと言ってもいい行動をする。

  • シャドーマン
カゲマンの影*2。でんぢゃらすじーさんの「じーさん」ポジション。
この漫画では1話と2話、最終話の扉絵を除いて影ではなく、単なる黒い人になっている*3
影のくせに『踊る!さんま御殿』を視聴して大笑いしたり、ゲームボーイで『ゼルダの伝説』をプレイしたりと人間臭い一面を持つ。
非常に根に持つ性格で、デ・アールが予告状を送り付けたせいで24時間テレビが21時間しか見れなくなったことに腹を立て、出会い頭にデ・アールを殴りまくるほど。

  • 怪盗デ・アール
狙った獲物は逃さないと言われる一流の怪盗で、カゲマンの生涯のライバル。でんぢゃらすじーさんの「校長」ポジション。
50メートルを7秒くらいで走れるが、80メートルでバテる地味な必殺技「デ・アールダッシュ」を持つ。

作中では、
  • 美術館への道が分からず泣き叫びながらカゲマンに道を尋ね、シャドーマンが書いたてきとーな地図に騙され、警察に逮捕される。
  • カゲマンとシャドーマンに一億円の壺を割った罪をなすりつけられ、警察に逮捕される。
  • シャドーマンに面白い登場をしてみてくれと言われ、次第に調子に乗った彼が全裸でポーズをとった次の瞬間、警察に取り囲まれ、わいせつ物陳列罪で逮捕。
  • 記憶喪失になり、記憶を戻すためにシャドーマンに殴られまくり、人格が「フランス人」「関西人」「犬」「某バレー漫画のヒロイン」に入れ替わった後、デカい一発を喰らって死亡。
  • せっかく盗んだダイヤを通りすがりの野良犬に持って行かれ、それを取り戻すため奮闘するが、犬に殴られたりと散々な目にあう。ようやく犬を追い詰め飛びかかるが、そばにあった犬のフンを鷲掴みに。
  • 最終回でカゲマンとシャドーマンとの最後の決戦が開幕するかと思いきや、「300円貸して──っ(BA-90)」と金をせびり、最後の最後にシャドーマンに殴られる。
…と、かなりひどい目にあわされている

ちなみに曽山先生によると「でんぢゃらすじーさん」シリーズに登場する「校長」のキャラ設定はデ・アールを元にデザインされたとのこと*4


『人の物を横取りするなんて…、とんでもねえやつらであーる!!』
オマエはどーなんだ。オマエは。


■アイテム
  • パンチングガン
カゲマンが開発したアイテム。単3電池一本で使用可能。
引き金を引くと時速200kmの速さでパンチが飛び出し、ホーミング・センサーで自動で敵を追撃し、確実に撃退できる優れ物。
…だが、カゲマンが「コイツがあればシャドーマンの出番はない」と豪語したためにシャドーマンの怒りを買い、使用する前にシャドーマンに「こんなモンいるか────っっっ!!」と空の彼方に投げ捨てられた。

  • 一億円の壺
骨董美術館に展示されている豪華な壺。
カゲマンとシャドーマンはこれをデ・アールの手から守るため警備に付いていたが、シャドーマンがうっかり割ってしまった。


機獣ぎゃぐわーるど ぞいどっ!!

機械生命体ホビー『ZOIDS』を元にしたギャグ漫画。
月刊コロコロコミックのほか、今は亡き「てれコロコミック」にも掲載されていた。
曽山先生が「メカの画力はこの世のありとあらゆる漫画家の中で下から4番目」と言いきるほど機械やメカの作画が苦手で、辛うじて元ネタの面影が残っているくらい。
また、機械生命体のくせにウンコしたりゲロ吐いたりと、今作でも曽山ワールド全開の内容となっている。
しかし「人間がゾイドに跨って行動する」という要素は、「ゾイドワイルド」よりも先に登場している。

本作を書くための資料としてコロコロ編集部からゾイドが大量に送られてきたことと、コロコロの新年会でゾイドが当たった時は「ゾイドに呪われているのではないかと思った」と語っている。

本作は全部で3話描かれたが、「そやまつり」にはページ数の都合で1話しか掲載出来なかった。
ここでは唯一掲載された「てれコロコミック」2002年1月号増刊掲載分の登場人物を紹介する。


■登場人物
  • リク
主人公兼ツッコミ役。らいがーのパートナーである少年。

  • らいがー
リクのパートナーのゾイド。ライオン型。
「らいがーいくす」にカスタム変身する能力を持つが、能力は特に変化なし。
元となったゾイドはライガーゼロ及びライガーゼロ イクス

  • ケニッヒ
リクとらいがーが通り抜けようとした花畑の所有者を名乗る男。
容姿は「金色の長髪を生やして豪華な服を着込み、頭身を伸ばした校長」と言えば大体通じる。
「美しいものを愛するゾイド使い」を自称するナルシストで、うるふるに噛まれた際は「涙の宝石」という名の甘ったるいポエムを読んだ。

  • うるふる
ケニッヒのパートナーのゾイド。オオカミ型。
ケニッヒ曰く「美しきゾイド」とのことだが、口調が荒く、初登場時は花畑で野グソしていたり、ゲロを吐くなど下品な行動が目立つ。
最大の武器は鋭いキバ。

ケニッヒとうるふるの元ネタはケーニッヒウルフ


おやさい戦士 ともゆき

曽山先生が高校3年生の時に執筆し、第40回新人コミック大賞の最終選考まで残った作品。
素人時代に描いた作品の中で一番思い入れのある作品で、描き終えた時に頭の中で「アニメ化」「ゲーム化」とメディアミックスを展開するほど。…取らぬ狸の皮算用言うな。
当時は本人がかなり自画自賛を極めていた時代でもあり、最終選考で落選した際、「小学館もビッグビジネスを掴み損ねたな…」と心中でつぶやいたという。

数年後、当時新人コミック大賞の審査員を務めていた沢田ユキオ先生と出会ったとき、この作品を覚えていたことを知り、涙が出るほど嬉しかったと語っている。


■登場人物
  • ともゆき
主人公。ベジタブル村に住む農家の少年。
小柄だが腕っ節は強く、秀野五人衆を鍬一つで蹴散らすほど。

  • お茶の助
ベジタブル村に住む糸目が特徴の農家の少年。
彼が作る野菜は非常に小さく、虫眼鏡を通さなければ見えないレベル。
ともゆき曰く「ハナクソみたいな野菜」。

必殺技はウ◯コをぶちまけ、相手を怯ませる「まきびし」
連携技はともゆきの唐傘に乗っかり、大道芸の要領で広範囲にウ◯コをぶちまける「ローリングまきびし」

また、
  • 秀野の城に乗り込む際、秀野に300万円もらっているのを理由に共闘するのを断った直後、ともゆきに殴られ、無理やり仲間に入れられる。
  • テトリス風のフロアでともゆきに突き飛ばされ(ともゆき本人は庇ったつもり)、落ちてきたブロックに潰される。
  • 棘が降り注ぐフロアで傘の代わりにされる。
  • 灼熱の溶岩が流れるフロアで船の代わりにされる。
…と、作中で最もひどい目に遭っている。

  • 村長
ベジタブル村の村長。
秀野にあっさり買収されたり、未成年のともゆきに酒を飲ますなど、責任能力があるかどうか問い詰めたくなるレベル。
最後の最後に登場し、野菜の良さがわかった若者が増えたことに感銘し「これからも野菜作りに励むのじゃぞ!」と締めようとしたが、ともゆきに「勝手なことぬかすな!!」とぶん殴られた。

  • 秀野
本作の悪役。
野菜を「あんな不味いもの食えたものではない」と豪語するほど嫌悪している。
ベジタブル村を潰し、ゴルフ場に改装しようと目論んでいた。

高級秀野メカに乗り込み、ともゆきらを『巨大札束パンチ』『時価6億円の黄金招き猫プレス』で追い詰めるが、突如登場したおやさい戦士の反撃にあう。
大根、ピーマンを食べさせられた後、デカい人参を押し込まれ、なんとか完食した後、野菜の素晴らしさを知ると同時に何故かオカマになった*5
数日後、自分も野菜を栽培してみようとベジタブル村に移り住んだ。*6

  • 秀野五人衆
秀野の配下を務めるスーツを着込んだ5人の大男。
ともゆきとお茶の助を始末するため襲いかかるが、彼らの畑仕事で鍛えられた力に返り討ちにあい、お茶の助のまきびしに翻弄される。
躊躇なくまきびしを撒き散らしながら突き進むともゆきらを見た後、「恐るべし田舎パワー…」と呟いた。

  • おやさい戦士
ベジタブル村の伝説に登場する人物。
天の恵みの神の手によって生み出された野菜を守護する勇者と伝えられている。



学べ!! 天才太郎


な わ
ん た
だ し
? は







そう! わたしは天才!!


コロコロコミック漫画大学校銅賞受賞作品。
曽山先生はこの作品で「『ぼぶ』のような、あまり喋らないキャラは意外と面白い」ということを知った。
また、漫画大学校の賞品の特製盾が1年半後に贈られてきたのは、誰の嫌がらせだろうかと考えたという。


■登場人物
  • 天才太郎
主人公。自称「IQ700ペソの奇跡の小学生」。
自身が天才なのを鼻にかけ、周囲を見下すなど、傲慢な性格をしている。
前に在校していた学校ではテストを100点以外取ったことがないという逸話を持つ。

手持ちのノートパソコンで対象物の速度や自身の運動神経を素早く分析・計算出来るが、結果を割り出した後の対処法は無茶苦茶極まりない。

【例】
  • 【(パンチを避けるのは)ムリよ♡】と表示された場合、パンチをまともに喰らう。
  • 【(ボールを)右に避けろコノヤロー】と表示された場合、背負っていたロケットブースターを点火させ、校舎に突っ込む。

髪の毛はヅラになっており、はずすと脳みそがむき出しになっている。
それをぼぶが指で刺激することによって脳を瞬間的に目覚めさせ、凄まじい頭脳を発揮する*7が、押しどころが悪いと脳の組織が破壊され、即死する。
『いやー解けすぎてまいっちんぐ♡』

  • ぼぶ
天才太郎のボディーガードを務めるガリガリに痩せこけた老人。85歳。
凄まじい虚弱体質で、天才太郎が肩に軽く手を置いただけで吐血し、ボールが軽く頭に当たっただけで死ぬほど。
ただ、天才太郎は「そのうち戻るって」とあまり気にしておらず、実際何事もなかったかのように生き返っている。
『はろー』


野球戦士(ベースボールファイター) 陸丸


彼の名は陸丸。
100の魔球を操る伝説の野球戦士(ベースボールファイター)だ!!

別冊コロコロコミックに読み切りとして掲載された作品。
曽山先生はこの漫画を描く際「ひどいけど面白い漫画」と言ってくれる漫画を描こうと決めていた。
また、この作品は『園山和斗』名義で掲載されている*8
漫画を描き切った際、作品の出来に自信を持っていたようだが、いざ掲載されるとあまりの人気のなさに驚いたという。


■登場人物
  • のぶゆき
一日中布団から出ずに過ごしている少年。
野球が好きだが、寒いのを我慢して外に出るくらいなら爆死したほうがマシと言い切るほど、外で遊ぶのが大嫌い。
おまけに『本気を出せば右足の小指で180キロのボールを投げられ、左の鼻の穴でホームラン乱打』『試合の日にはビーダマンを8体置いておけばいい』と言うなど、完全に野球をなめきっている。
「10年以内に布団から出ずにプロ野球選手になる」という野望を掲げる。

  • 10年後ののぶゆき
まだ叶えられてなかった。当たり前だ。
今度は「20年以内に布団から出ずにプロ野球選手になる」という野望を掲げる。

  • 20年後ののぶゆき
まだ叶えられてなかった。おまけに就職すらしていない。
今度は「50年以内に布団から出ずにプロ野球選手になる」という野望を掲げる。いい加減諦めろ

  • 50年後ののぶゆき
何故か叶った。
年相応に老け、頭が禿げて布団を胴体に巻いている。
プロ野球選手になった過程は覚えていなかったが、とりあえず号泣しつつ喜んだ。

  • 野球戦士(ベースボールファイター) 陸丸
干からびて死んでいました♨


ぼくのおじいちゃん


ぼくのおじいちゃんは、
おそろしく元気です。


第47回新人コミック大賞児童部門佳作受賞作品にして『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』のプロトタイプ。
長い間目標にしていた新人コミック大賞だが、前述の『おやさい戦士 ともゆき』のような「作品に対する絶対的な自信」がなかったためか、受賞した際はあまり喜べなかったという*9


■登場人物
  • おじいちゃん
洋助の祖父。98歳。
容姿は『でんぢゃらすじーさん』に登場するじーさんにそっくりだが、こちらは後頭部に髪が生えている。
小学生の「おじいちゃんくん(10)」に変装して小学校に潜り込み、弱肉強食を「かまくらばくふ」「794年に建てられたもの=幕張メッセと的外れな解答を連発する。
社会の授業で第二次世界大戦の話をしている際、「戦争さえなければ…」と号泣していたことから、戦争を経験していたことが分かる。
運動神経抜群の超筋肉モリモリマッチョマンに変身できる「マッスルチェンジ」という必殺技を持つが、一度使用すると反動で寿命が32年縮む

  • 洋助
おじいちゃんの孫。
容姿は「でんぢゃらすじーさん」に登場する孫とほとんど同じ。
名前は後に孫の本名として逆輸入される。
小学生に変装してまで自身に付いてくるおじいちゃんをうっとおしがるが…


ガンガン面太君!!

カゲマン連載前に別冊コロコロコミックで読み切りとして掲載されていた4コマ。
作中に出てくる面太の父はじーさんと酷似している。
たった2Pしかないためか、目次には掲載されていない。

曽山先生が新人時代に描いた漫画。
愛と友情を売っている店の店長を務める老人を取り巻く話…だったが、あまりの話のつまらなさに担当編集者に見せるのが怖くなり、封印した。
本作のコマの切れ端は「そやまつり」のカバー裏の表紙に掲載されている*10
店長のキャラクターデザインは後に執筆する『ぼくのおじいちゃん』のおじいちゃん、そして『でんぢゃらすじーさん』のじーさんの元になった。


■余談

裏表紙に描かれている長いイラストは曽山先生が新人コミック大賞に送った作品をまとめ、勝手に製作した『曽山一壽超短編集』(全10巻)の表紙。
1冊につき、漫画が2~3話載っており、表紙を並べると1枚の絵になる。

カゲマンは後に『絶体絶命でんぢゃらすじーさん』の2巻に収録されている「かくれんぼじゃっ!」と、7巻に収録されている「ショートギャグ大連発じゃっ!」の扉絵にさりげなく登場している。

カバー裏の裏表紙には「第50回小学館漫画賞(児童部門)」を受賞した際、当時コロコロコミックで活動していた漫画家から貰った色紙が掲載されている。



尊敬すべき先輩たちからの色紙、

共に闘うライバルたちからの色紙、


つまりは一生の宝ってこと!









じーさん「ふ──、やっと終わったか……」


オマエが建ててたんかいっっっ!!


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最終更新:2024年02月29日 07:45

*1 曽山先生も『「カゲマン」を描いていなかったら「でんぢゃらすじーさん」が生まれなかったかもしれない』と語っている※「探偵少年カゲマンのこと つづき」より。

*2 アニメでは本来は通りすがりの宇宙人だが

*3 「探偵少年カゲマンのこと つづきのつづき」より

*4 「探偵少年カゲマンのこと つづき」より

*5 おやさい戦士曰く「その辺はオレは知らん!!」

*6 また、オカマも治っていた

*7 ナレーター曰く「天才的荒技」

*8 最初は『曽山田一寿男』だったが、さすがにボツになった

*9 本人曰く「あ──とったわー」

*10 理由は作者曰く「つまらないしページが足りないしつまらないし鉛筆描きだしつまらないし、そして何よりもつまらない」