SCP-2048-JP

登録日:2020/06/20 Sat 20:37:05
更新日:2024/02/15 Thu 03:39:39
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確率は目に見えない。異常性などもってのほかだ。


SCP-2048-JPは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。

概要


オブジェクトクラスは暫定的にSafeが与えられている。現在は別のオブジェクトクラスを割り当てるかどうか議論がなされているが、なぜなのかは後述。

SCP-2048-JPの外見は、何の変哲もない10円玉である。当然、変哲がないのは外見だけであることは財団のお約束だ。

この10円玉は、コイントスとか、財布から落としたときとか、落下させたときに特定の確率(これをSCP-2048-JP-1と命名する)で表向きになるという異常性を持っている*1

…え?それは普通の10円玉と同じじゃないかって?

実はこの10円玉、SCPオブジェクトとして登録される前はAnomalousアイテム*2「必ず表の出る10円玉」として管理されていた。だが、定期点検時に誤って落とした結果、初めて裏が出たことが確認され、その後の実験を経てオブジェクトとして登録された。

実験記録2048-JP


以下はSCP-2048-JPの異常性を調べるために行われた実験である。

実験記録2048-JP-1

実験担当者の望月博士は、まず一人のDクラス職員に4000回コイントスをさせた。そして500回ずつ表裏に出た回数を記録した。こういう精神的苦痛を伴う単純作業には酷使されるのも財団のお約束だ。

結果の詳細は元の記事に譲るが、周期的にSCP-2048-JP-1が変化していることが判明した。

最初の500回は当然、表向きに出ることが多いが、次の500回から徐々に減っていき、2000回から2500回目に至っては完全に裏向きに出る回数の方が多くなった。
最後の500回の時点では再び表向きの回数が多くなっている。

普通の10円玉ならこんな現象はありえないはずなので、よほどの偶然ではない限りはSCP-2048-JPとしての異常性は確定したといえる。

実験記録2048-JP-2

続いて別のDクラス職員に同じ方法でコイントスをさせる実験を行った。前のDクラスに何があったのかは不明である。

やはりSCP-2048-JP-1は増大、減少を繰り返すが、ここで回数を重ねるごとにその周期が短くなることが判明した。現に、元記事の表では、400回ずつの記録となっている。

その後の詳細な実験記録は省略されているが、ここまで望月博士が行った累計19000回の試行を基に、グラフが作られ、その異常性が明らかになった。


引用先:http://scp-jp.wdfiles.com/local--files/scp-2048-jp/graph2.png ,by HN_410
この画像は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

計測されていない、つまり収容以前の試行については無視されている。*3
丁度音の波形のような、振動するようなグラフとなっているのがわかる。しかも、その密度は徐々に濃くなっていき、最終的に周期はほとんどわからなくなっている。

…天才の皆さんはここで「ん?」となったかもしれない。あるいは嫌な予感が走ったかもしれない。だがもう少し説明を読んでほしい。先に言うと、その疑問符は正しい。

15000回以降に関しては、変化が急すぎて実測値とグラフで食い違いが起こるレベル、さらに18000回以降では最早周期的な変化を観測できなくなってしまっている。

このため、信頼できるデータは10000回目まで、また15000回目までの一部のデータであり、残りは完全に推測である。

補遺


さて、望月博士の行った実験だが、その後に問題が生じた。

というのも、ここまで周期が短くなってしまっては、その時点で何回SCP-2048-JPを投げたかが分からない限り、実質的にSCP-2048-JP-1は50パーセントになってしまうのだ。

計測結果からすればSCP-2048-JPはSCPオブジェクトとしてまぎれもなく異常性を持っているが、実際に投げてみればランダムに表を向くため、諸君の財布に入っているような普通の10円玉とは一切の区別がつかないのだ。

もっと言えば、SCP-2048-JP-1が(実質的にだが)ランダムに変化してしまうのなら、このオブジェクトが現在異常性を持っているのかどうかの証明は不可能なのだ。

これは財団のやらかしなのか、それとも現代科学、および数学のやらかしなのかは不明だが、SCP-2048-JPはその異常性を失っていない筈なのに、オブジェクトクラスをNeutralizedに変更すべきか議論されている。

つまりどういうことよ


まとめると、このオブジェクトは
「投げた時に表が出る確率が、回数を追うごとに周期的に変化する」
という異常性と、
「その周期は回数を追うごとに短くなり、最終的に観測不能なレベルに達する」
という異常性を持っているのである。

財団(というか望月博士)はこのオブジェクトの異常性を暴いた結果、この「観測不能なレベル」に至らせてしまった。その為、SCP-2048-JPは本当に異常性を持っているのかどうか確かめようがない、ということである。

前まで持っていた異常性が、現在でもあることが推測でしかないなら、


SCP-2048-JP - 普通のコイン

それは確かめるすべもない、ただの硬貨なのだろう。

ルーキーコンテスト


元記事はSCP財団の新人歓迎イベント、ルーキーコンテスト2020に合わせて制作されたものである。
終了時点で、次点のSCP-2050-JPから50評価を上回り、SCP-JP部門と完全新人部門で優勝している。


追記・修正はコイントスをしてからお願いします。


CC BY-SA 3.0に基づく表示

SCP-2048-JP - 普通のコイン
by HN_410
http://ja.scp-wiki.net/scp-2048-jp

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最終更新:2024年02月15日 03:39

*1 ※補足。平等院鳳凰堂が描かれている方が表面、「10」と製造年が記されている方が裏面である。

*2 SCPオブジェクトというほどではないが、不思議アイテムという感じの分類

*3 要はどうせ表しか出なかったんだから影響も何もないだろという話