芹沢達也

登録日:2020/08/06 Thu 10:36:00
更新日:2024/04/14 Sun 14:11:58
所要時間:約 46 分で読めます


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いいか、ひと言忠告しといてやる。
オマエはただのラーメン好きとしては、味を分かってるほうだ。


しかし、プロを目指す身としては、なにもわかってない。


ラーメンのことも客のことも商売のことも、

なにもかもだ。




芹沢(せりざわ)達也(たつや)とは、料理漫画ラーメン発見伝』シリーズに登場するキャラクターである。

演:鹿賀丈史(SPドラマ『発見伝』)、鈴木京香(連続ドラマ『才遊記』)



【概要】

「ニューウェイブ系ラーメン*1の頂点」と評される都内の大人気ラーメン「らあめん清流房」の店主。
同時に他のラーメン屋をプロデュースするフード・コーディネーターを兼業し、「清流房グループ」各支店を纏める社長も務める敏腕経営者でもある。
類稀なるセンスでニューウェイブ系ブームを牽引するカリスマラーメン職人として絶大な人気を誇り、ラーメン自体の腕に加えてテレビなどのメディア出演の多さからその威名は日本全土に轟いている。


ぶっちゃけ1作目・2作目の主人公2人よりも抜群にキャラが立っており、まず間違いなく主人公2人分合わせたよりも知名度が抜群に高い御方
その人気は制作側にも伝わっており、彼が活躍する回のみをフィーチャーした傑作選コミックスが出る他、彼の名言と顔がプリントされたTシャツやアクスタといったグッズが販売されるほど。


【人物】

表向きは低姿勢で愛想のいいおじさんだが、本性は冷徹・高慢・陰険、ついでに歯に衣着せぬ毒舌家。
この手のキャラにありがちな「一見悪役ポジだけど根はいい人」では一応あるのだが、かなり歪んだ性格をしている。

まず利益第一主義を貫くリアリストで、料理人でありながら9割の人間の舌を全く信じていない。
そればかりか「大半の人間は単純な味しか理解できない舌バカ」「味の分からない客は製造経費を運ぶための働きバチ」と徹底的に見下し、悪意を持って弄ぶことも躊躇しない。
優れた才能を持つ人や努力を惜しまない人など、「見どころのある人間」に対しては目をかけて情のある所を見せるが、そうでない人間は鼻で笑い、特に「ラーメン評論家」や「ラーメン通」と称する人種を激しく嫌悪している。
劇中の解説役にして屈指の人格者・有栖涼に対しても「評論家にしては味を分かってる方」と認めつつ、裏では「ラーメン膨れのオタクデブ」と陰口を言う場面もある*2

ステマという概念の無かった時代にステマ紛いの工作を考案したり(ある意味先見の明があるとも言えるが)、ラーメンマニアを利用した裏工作も平然と実行したりするなど、グレーな手段も厭わない。

しかし同時に「自身が求める理想の味の追求と提供を決して怠らない情熱家」としての顔も持っている。
真に味の分かる一握りの客は馬鹿にすることなく尊重し、「味の分かる客のためにより味を磨きたい」と語るなど、あらゆる客を見下しているわけではない。
加えてダーティな経営戦略も単に辞さないだけで、犯罪行為や他人を貶めるような卑劣な行為などはしておらず、ラーメンへの向き合い方自体は普通に真摯。敵対関係である藤本の最大の弱点である『副業禁止の会社で屋台を引いていること』をある一件で察してからも、それを種に脅すということもしない。
ただし思いっきりコケにされた場合は悪意満々な相応の報復を仕掛ける*3
また「あらゆるジャンルに貴賎はない、だが、ジャンルの中には厳然として貴賎が存在する」という村松友視がプロレスのエッセイで残した言葉を己の座右の銘として好んでいる。

それでいて、表向きはこれらの本性を笑顔の仮面で完全に覆い隠しており、接客時やテレビなどのメディア出演時には厳しくも優しい人情家のラーメン店主であるかのように振る舞う
その低姿勢ぶりは、本性を知る人間からは「白々しい」と悪態を吐かれるほど。
また実は音楽とプロレスが好きで、銭湯のサウナの後に冷えた生ビールで一杯やるのが至福という意外な一面もある。


ラーメンハゲ

ビジュアルは常に愛想笑いを浮かべたスキンヘッドの細身の男性で、キツネ目・薄い唇も相まってかなりの悪人面。

読者からは「ラーメンハゲとの愛称で親しまれているが、実際はきっちり剃り上げている。調理中の毛髪混入を万が一にも防ぐためである。
『発見伝』では藤本から「ハゲオヤジ」と内心毒付かれることもあったが、後に作中でも低年齢層を中心に「ラーメンハゲ」というあだ名で認知されていることが判明した。
当然ながら面と向かって「ハゲ」呼ばわりされるのは嫌なようで、実際に言われた時には「オレのはハゲじゃないって言ってるだろっ!!」と声を荒らげている。
決してハゲているわけではないのだ。念のため*4


【らあめん清流房】

芹沢が1996年に開いたラーメン屋。新宿に本店を置き、支店は劇中5店舗まで確認できる。
店頭や店内に「鮎の煮干し」を大々的にPRする木製の看板が置かれているのが印象的。

芹沢の職人としての拘りもあってメニューは下記の「淡口らあめん」「濃口らあめん」の他、1100円のチャーシュー麺しか売られていない。
150円追加で大盛りにできるが、餃子や炒飯といったラーメン屋定番のサイドメニューは置かれていないかなり強気な商品ラインナップである。
だが常時2品しかない訳ではなく、たまに期間限定のラーメンも限定的に売っていたり、発見伝時代は関係者向けに試作した創作ラーメンを振る舞う「試食会」も開いていた。

『才遊記』の段階では小型のビル1棟を丸ごと買い上げてフード・コンサルティング会社「(株)清流企画」が立ち上げられており、そこで清流房各店もまとめて運営しているようだ。
ビル内には専用の調理場もあり、そこでラーメンの試作を行うこともできる。

  • 麵屋せりざわ
月替わりで芹沢本人が考案した実験的な創作ラーメンを提供するアンテナ・ショップ。
「(株)清流企画」の1階に店舗がある。


【職人として】

ニューウェイブ系の旗手としてどこまでも既存の構造を疑い、理想の味を追求するフロンティアスピリットと、舌バカ相手だろうと決して手を抜いたラーメンは作らない、プロとしての矜持・芯の強さを併せ持つ。
後述のように店を潰しかけてもなお自分の追い求める理想の味にこだわったり、酒に酔った勢いで「古臭いラーメンを有り難がる連中なんかみんな死ねばいい(要約)」と言い放つなど、クールでシニカルなようでいて、根っこの部分では紛れもなく熱いハートを持った職人気質の男である。

そもそも無化調ラーメンの巨匠と言われてはいるが、『才遊記』終盤で「別に無化調にこだわっている訳ではなく単純に化学調味料の味が好みじゃないから使ってないだけだし、場合によっては使う」と断言している。
かつての部下に言わせれば「冷徹なリアリストに見えて、実はビジネスという鎧で理想を守ってるロマンチスト」

そんな彼が抱くラーメンの定義とは、(ある人物が掲げた「ラーメンとは偽物」という定義*5を肯定した上で)「フェイク」から「真実」を生み出そうとする情熱そのもの
更に『ラーメン』という料理が旨さのみを追求して急進化し続けてきた歴史から「ラーメンにあるべき型など存在しない。常に変化し、進化し続けていかなくてはならない」という持論を掲げて、固定観念を最大の敵とまで言い切っており非常に意識も高い。
これ以上に的確な芹沢の人物評はないと言って良く、まさに「酸いも甘いも噛み分けた」を地で行く人物と言えるだろう。性格と口が悪いのは確かだが。

また、ラーメン以外にも和洋中の多様な料理や食材の知識に精通しており*6、大抵のラーメンなら一口二口食べただけで構成から隠し味まで見抜いてしまう卓越した味覚を持つ。
『再遊記』では加齢もあっていくつかのパンを食べて満腹になっていたが、次郎系と家系を同時に食べられるほどの胃袋を持っている(さすがに食べ切るのには一苦労したが)。

『発見伝』主人公・藤本浩平に対しては度々「優秀なラーメンマニア」と皮肉っぽく呼んでからかいつつ、彼の秘めたる素質を評価している。
「経営者としての視点が足りない」「既存のラーメンの模倣や改良は得意だが独創性に欠けており、新しいラーメンを創作することができない」などの弱点を的確に指摘し、成長を促していった。
一方で、藤本との衝突を利用し、自らも技量と創作意欲を高めようとする克己的な一面を持つ。
「店をやるということは、常に時代の嗜好の半歩先を行く姿勢が必要だ」という彼が終盤で藤本に入れる喝は、常に自ら体現していると言える。
このためこの手のキャラにありがちな「プライドが高くて自分より下の立場の人間からの意見や改善案を聞き入れない」といった隙も無く、むしろ新しいものや自分にとって未知の領域の知識も、若者から意見を聞いて柔軟に取り入れていく。*7

そして不味いラーメン屋に対しても、嫌ってはいるものの食べる時はしっかり食べた上で客観的評価を下せる公正さも持っている。


【物語での活躍】

『ラーメン発見伝』劇中では、ふとしたきっかけで主人公の藤本と知り合って以降、事あるごとに対決することになる。
ちなみに『発見伝』時点で42歳。

ラーメン屋としての素質はずば抜けているが、経験が浅く店舗経営にも疎い藤本は、職人としてもビジネスマンとしても芹沢に毎回やり込められてしまう。
名実ともに藤本の最大にして因縁のライバルであり、ある意味では師匠的存在。
大抵の料理漫画には『美味しんぼ』で言うところの海原雄山ポジションの人物がいるが、本作では芹沢がその役回りである。

物語中では散々藤本を小馬鹿にしていたが、シリーズ3作目で実は彼も元々は藤本と同じ脱サラ系ラーメン職人だったことが発覚した。
……ついでにバツイチだったことも。

昔はそれなりにいい大学を出て、それなりの優良企業で働き、それなりにいい女性と家庭を持っていた。
しかしラーメン屋になる夢を捨てきれず、衝動的に会社を退職したことで妻に見放され離婚された模様。
おまけにラーメン屋を成功させた経緯*8もまともに考えて只のギャンブルであったことも踏まえ、武田のおっさんからは「イカれたラーメン馬鹿」とまで評されている。


外伝・スープが冷めた日

今でこそ「日本一のラーメン屋」と呼ばれるほどの栄光を手にしている芹沢だが、実はラーメン屋としての経歴は当初から順風満帆という訳ではなかった。

学生時代から独学でラーメンを作っていた芹沢は、就職し結婚してもなおラーメン屋をやる夢を捨てられなかった。
会社員という安定を捨て、妻も消えた中で、「『大衆料理としてのラーメン』とは一線を画す『何の枠にも囚われない自由な創作麺料理としてのラーメン』」というコンセプトを掲げて1996年に店を開く。
しかし開業当初は「化学調味料を使わない繊細で複雑な味を売りにした理想のラーメン」である淡口らあめんが客に理解されず大苦戦、大赤字による不渡りを出して一時は店を潰し掛けてしまう。

「こってり味ばかり求める客への苛立ち」「もうこのままでは後がないという憔悴」に加え、客から「エサの補給」「コクの無い薄っぺらい味」と不躾に侮辱された結果、完全にキレて一線を超えてしまう

ヤケクソになり、「そんなに脂を食いたければ食わせてやる!!」と淡口らあめんの繊細な味をぶち壊す大量のラードをぶち込んだこってり系ラーメンを即興で作って客に出すが、芹沢の意図に反してこれが大ウケ。
そしてラード入り淡口らあめんを改良した「濃口らあめん」を売り出してみるとまさかの大ヒットを叩き出し、店を大きく盛り返すことに成功した。

しかし
  • 自分の理想を曲げて屈辱的なラーメンを作らなければ店が繁盛しないジレンマ
  • 自分の理想の理解者と思っていた友人*9すらも、鮎の風味など欠片も残っていないはずの濃口らあめんを食べて「鮎の風味を感じる」などと宣う、自身がバカ舌と見下していた客と同レベルの味覚だったことへの失望
  • 自身の理想が誰にも理解されないまま現在の地位を築き上げたことへのやり切れなさ
といった要因がトラウマとなり屈折。


(誰にも理解できない理想のラーメンに、いったいなんの存在価値がある!?)

クックックッ ハーハッハッハッハ!!


悪意は無かったとはいえ、友人からの「裏切り」を受けた芹沢は、「理想と現実は違う」というある種の諦めを胸に刻み付けるようになってしまった。
そうして5年掛けて「日本一のラーメン屋」と呼ばれるまでにのし上がったが、同時にそれ以降は「味を分かってくれる一握りの客に理想の味を提供するために、舌も頭もバカな客に『情報』を食わせて金を稼ぐ」というスタンスを貫くようになる。
一応、補足しておくなら油分には味蕾を鋭敏化させる作用がありその為、繊細な味を増幅させて味覚が未発達の人間にも知覚させる作用があり、カレーにコーヒーを入れる様な感じで隠し味としては機能する。


(あの頃は、オレも青かったな。うまいラーメンは誰にとってもうまいはずだなどと信じていたんだから…)

(オレの名は芹沢達也。念願かなって、今では日本一のラーメン屋だ──)


ラーメン発見伝

店の看板商品である「濃口らあめん」をめぐる些細なトラブルから主人公である藤本と因縁を結ぶと、実力派フードコンサルタントとして度々登場。
自然食レストラン「大地」における藤本とのラーメン商品コンペを始め、時にはラーメン対決のプロデュースを行ったり、
藤本の依頼でラーメン屋の経営立て直しの相談を請けたり、自身の店の店主の器を図るための試金石代わりに利用したりと、腐れ縁にも似たライバル関係を築き始める。

終盤にてラーメンテーマパーク「六麺帝」をプロデュースしたことで藤本と完全に敵対。
藤本が勤務するダイユウ商事が手がけたラーメンテーマパーク「拉麺タイムトンネル」との6本勝負の大将役を務め、遂に藤本との最終決戦に1910年から始まったと言える日本ラーメン100年目に相応しいラーメンを創作し挑む。
自ら畢生(ひっせい)*10の出来映え」と豪語した淡口(うすくち)らあめん (きわみ)で勝負をかけたが──

審査員たちの大半*11が、藤本のラーメンに軍配を上げた。

この無惨な結果を受け、初めて感情的に声を荒げて審査員達に抗議するも、
「鮎の煮干しの味を最大限に引き出したラーメンというコンセプトなのに、僅かに入れた鶏油(チーユ)が味を損ねている
と冷静に言い返され、藤本のラーメンを食べるよう促される。
食べた後、唐突に自身が客の味覚を信じなくなった経緯を語り出し…


『らあめん清流房』の成功はオレが客を信じることをやめたところから始まったわけだ。

だが、それからラーメン界も変わった。今の客なら、オレの理想の味を理解してくれるかもしれない。
そう考え、今回、『淡口らあめん 極』を編み出したわけだが…

確かに、どうしてオレは鶏油(チーユ)なんか入れてしまったんだろうな?

有栖クンらに指摘されて、気づきかけてはいたんだが…
この藤本クンのラーメンを口にして、オレが余計な鶏油を入れた理由がハッキリ分かった…

藤本クンのラーメンには、一点の迷いも感じられない。
自分がうまいものは、客だって、うまいはずだという信頼感に溢れている…


しかし、いや、やはり、オレは…

客を信じ切れなかった…


オレの……負けだっ!


…自らの敗北理由を悟り負けを認め、2人の因縁に終止符が打たれることになった。

なお、自他共に認める完敗ではあったものの、千葉からは藤本の勝因について「藤本が本当の客の怖さを知らないがゆえ」とフォローされている。

以後は脱サラして開業した藤本のラーメンに改良案を出したりと、毒舌はそのままながら、藤本を案じる素振りも見せた。
藤本もこれまでの自分の研鑽の裏には芹沢のさりげない導きがあった事に気付き、彼に宿敵ではなく師匠として心からの礼を送った。


らーめん才遊記

ラーメン発見伝から約2年から3年後。【ラーメン発見伝の最後の対決が2009年で新東名高速道路開通が2012の為】
「らあめん清流房」のセカンドショップとして、創作ラーメンを月替わりで提供する「麺屋せりざわ」店長や、フードコンサルティング企業「(株)清流企画」社長を兼任。
このため、かつてのように表舞台で暴れ回る機会はめっきり減った。

しかし2代目主人公・汐見ゆとりの上司兼師匠というポジションに就き、『発見伝』とほぼ同じ立場で活躍する。
新たに、自分にとっての師匠というべきラーメン職人である石原玄二郎や、右腕として信頼を寄せるも横領に手を染めて自身を裏切った元部下・安本高治などが登場した。

最終話では汐見の案内で藤本が開業した「らーめん藤本」に偶然行く機会が発生。
藤本の店に「本物のラーメン屋だ」と最大級の賛辞を送る一場面もあった。


らーめん再遊記

『発見伝』の初期前後から約20年後、重度のスランプに陥り、これまであった覇気を完全に失うとんでもなく落ちぶれた姿を披露。
ミドルエイジ・クライシス*12を患い、これまでの創作意欲と熱意をめっきり失ってしまう。
結果、自身の創作ラーメン披露の舞台であった「麺屋せりざわ」の業績のみが低迷*13
挙句にこれまで自身が忌み嫌っていたはずの不味くて古臭いラーメン屋に入り浸り、不味いラーメンを満喫しながらダラダラ飲んだくれる醜態を晒し、ファンや読者に強烈なインパクトを与えた。

これは
  • 『天才』
  • 『カリスマ職人』
  • 『ラーメンハゲ』*14
といった肩書付きで他人から見られ続けるうち、「そうあらねばならない」というプレッシャーが積もり積もって悪化したものだったが、武田のおっさんの発破を受けたことで悩みを解消。
自身の進退を賭けたラーメン対決で勝利し、ラーメン職人として無事再起を果たした。

……と思いきや、今度は「自分の好きなようにラーメンを作るだけのラーメンバカに戻る」と宣言し、いきなり社長職引退を決意
自分以上の才能と発想力と若さを持った汐見ゆとりを次期社長として抜擢しそのまま退いてしまった。

そして「年を食って衰えた自分にはこれ以上自分の個性を突き詰めたラーメンは創作できない」と悟り、代わりに「醤油ラーメンや塩ラーメンのような、万人に広く愛される普遍的な"ラーメンの形式"を新たに見つけ出す」ことを決意し、新たな人生の目標と定める。

引退後は「広く愛されるラーメン」に繋がるヒントを得るため、
  • 素性を隠し、人気ラーメンチェーン店でアルバイトとして裸一貫働いてみたり
  • 大学で客員講師をしたり
  • 休日には図書館に繰り出したり
  • サウナや昼飲みを満喫したり
など、大学生活を彷彿とさせる自由気ままな半隠居生活をエンジョイするように。
この時見せた「ラーメン屋のアルバイトで上司に笑顔でヘコヘコし、仕事終わりに同僚と仲良く宴会する、外面だけはとんでもなくフレンドリーなラーメンハゲ」という新鮮な姿もまた読者に強烈なインパクトを与えた。
とはいえ、その同僚たちを内心では「愚かな若造ども」「低レベルな人材」と貶していたり、同僚たちの人間関係のトラブルを酒の肴にして気持ちよくビールを飲み干したりなど、(それとなく案じるそぶりも見せてはいるとはいえ)性根の悪さは相変わらずである。
年をとって社長業のような社会のしがらみから解放されたこともあり*15、以前まであったビジネスに対する過激的な面はやや薄れ、柔軟性を見せるようになった。そのためフットワークも軽くなっている。

また、主人公に昇格したこともあって、今まで描かれなかった芹沢の私生活や庶民的な一面も発覚。
  • 学生時代はメタリカ来日コンサートに参加して熱狂
  • 嫌なことがあればサウナでストレス発散
  • 昔からの大のプヲタであり、プロレス本の中にあったフレーズを座右の銘に挙げる
  • 自分でも普通の味と感じてるはずの中華料理チェーン店のタンメンにドハマりして学生時代の頃から通い続ける
    • 更には機会があれば聖地巡礼のために本店まで食べに行こうとする。
  • 成功してから、一時金持ちらしく生活してみたものの「得るものはあったが、所詮は見栄っ張り」と自分でもガラでもなかった*16と自虐
  • 前々から興味があった電動自転車を購入し、その快適さに大ハッスル
    • そして交通法規は守っているが米倉の目の前で勢いよくドリフト
  • 自分の好きな寿司を10貫ずつ注文して舌鼓を打ちながら「本格懐石の板前からしたら独学でラーメン屋始めた自分なんてコスプレしたこけおどし野郎だ」と過去の自分を顧みる
  • 小学生時代は『荒野の少年イサム』を愛読。電子書籍版を大人買いしたものを(風邪ひき予防の対策もかねて)風呂場で読む
  • チャルメラを少年時代から還暦を迎えるまでずっと愛食しており、独自の風邪ひき予防を編み出すほどの信者。作中に出てくるラオタのように感情的にならないが、チャルメラが不遇な扱いを受けると内心やや不機嫌になる
などなど、割と親しみの湧く過去や好奇心旺盛な一面が明らかになっている。
こうした結果、前作までは基本的に冷静な面持ちか悪辣な笑みを浮かべることが殆どだったが、プライベートにおいては作中のリアクション役である有栖顔負けのオーバーリアクションを行うことも。


【作ったラーメン】

代表作

  • 淡口(うすくち)らあめん
ウチの“淡口ラーメン”なあ、あれはまさにオレの理想のラーメンなんだよ

芹沢が求めた理想の和風醤油ラーメン。1杯850円。
化学調味料は一切使わずに、高知の水産加工会社から取り寄せた鮎の煮干し(特注)でダシを取っているのが最大の特徴。
その鮎の煮干しダシのスッキリとした清涼で滋味溢れる風味を軸に、比内地鶏の鳥ガラ・鹿児島県産黒豚のトンコツ・有機栽培野菜でスープを取っている。
醤油タレは国産大豆と小麦だけで作った有機醤油、麺はスープと相性をギリギリまで追求した特注麺を採用。具は自然養鶏卵で作った煮卵、チャーシュー、ネギ、メンマとシンプルなもの。
3部作全体を通して多くの登場人物に影響を与えたニューウェイブ系ラーメンで、芹沢自身「本物ばかりの素材の持ち味が絶妙に調和したラーメン」と並々ならぬ情熱を注ぐ。

ただし、その上品で繊細で複雑な味わい故に一般受けしにくく、一部の舌の肥えた味の分かる人間や、同じく舌の肥えたラーメンに詳しい人間しかその本当の味を理解できない。
いわば上級者向けのラーメン
また、このラーメンだけでなく「淡い(薄い)」味付けの料理全般に言えることだが、薄い味付けで客が美味に感じる料理を出すには、相当の技量が必要になる。
なので淡口ラーメンも芹沢本人が全て仕込んで作るのと、支店のスタッフがマニュアルで作るのとでは、鮎の持ち味が全く違うレベルに仕上がる。

『外伝』~『発見伝』の時代は「物足りない」「薄っぺらくてコクがない」と大衆からの評価に恵まれず、味を理解してくれる客は10人に1人か2人程度のものだった。
だが『再遊記』の時期にはかつて芹沢自身も語った「客のレベルアップ」もあってか「淡口らあめんの方が好き」と公言するファンがプロ・アマ問わず見られるようになった。
米倉との対決の際の紹介などから、「淡口らあめんこそが芹沢達也の本命」というのもこの頃には広く知られているようである。
良くも悪くも「生まれる時代が早すぎた」というのがこのラーメンの本質だろう。


  • 濃口(こいくち)らあめん
「らあめん清流房」の看板商品。1杯850円。
上の『淡口らあめん』のスープにニンニクを揚げた牛脂(ヘット)を浮かせて作る。
ニンニク風味の牛脂が生む「ラーメンらしいコッテリとした重厚感」と鮎の煮干しの「鮎の鮮烈で上品な風味」が絶妙に調和し、それらが同時に味わえる極上の和風醤油ラーメン。


『発見伝』初出

  • 塩ラーメン
『発見伝』において、今後長く続いていく藤本とのラーメン勝負、その始まりの一品。
「塩ラーメン」というお題に対して考案したもので、トッピングにチャーシューとメンマ、そして細かく刻んだシソと白髪ネギを乗せている。
これまた鮎の煮干しから取った香り豊かなスープにシソの鮮烈な香りが合わさった洗練された味わいが特徴。
チャーシューはスープに使われている塩ダレと同じ味付けがなされており、うまく調和しているが、
これは今回のラーメン勝負のきっかけとなった藤本のラーメンの問題点の指摘も兼ねていた。


  • 醤油ラーメン
自然食レストラン「大地」でのコンペ対決で、「アッサリ系醤油ラーメン」というお題に対して考案した。
材料は淡口らあめんのものに類似しているが豚骨の代わりに牛骨を採用。
醤油ダレに加えて昆布から取った塩ダレを使い、醤油ダレをギリギリまで減らし適切な塩分量を計算して味付けされている。
ただしうっかり希少で安定供給の難しい鮎の煮干しを使ってしまったため*18勝負はやり直しに。

2度目は味わいを保ちながら安定供給可能なカレイの干物を代わりに使ってダシを取った。
このため鮎の鮮烈な風味は無くなったが、魚の旨味を凝縮したような重厚な味わいが特徴。
「極上の味わい」と「安定供給」の2つを両立させたプロ意識が光る。

その後の「らあめん大河」では藤本がこのラーメンをベースに塩ダレではなく薄口醤油を使い、大地干を炙って香りを出すという改良を行ったものを提供している。


  • 味噌ラーメン
試食会で作られたラーメン。
具は煮卵、チャーシュー、そして推定野菜炒めらしきものが乗っている。
スープには大地魚干しで取ったダシを使用。味噌ダレと醤油ダレをブレンドすることで味噌の味が支配的にならず、スープに使われているいろんな素材の旨味を楽しめる品。


  • 塩ラーメン(2回目)
「大地」でのコンペ対決で、「スープを新しく作らない塩ラーメン」というお題に対して考案した。
スープは、既にレストランで調理された複数のスープをブレンドして作っている。
これは「大地」では多数の品を作る都合上、手間とスペースを取るラーメンスープを新たに作る余裕がなかったため*19
既存のスープを混ぜるだけなので、調理スタッフに大きな負担をかけずに新メニューを増やせるのが売り。
この時点で完成度の極めて高かったスープに、リンゴの木のチップでスモークし香りづけしたフランス産の自然塩を混ぜることで完成。
スープに僅かに足りなかった香りと風味をプラスすることで、より完成度を増した一品。


  • つけ麺
「大地」でのコンペ対決で、「夏向きのラーメン=つけ麺」というお題に対して考案した。
「麺とつゆの温度差により料理そのものがぬるく、不味くなる」というつけ麺の欠点に着目。
イタリアンやフレンチのデザートに着想を得、麺つゆは極端に熱く麺は歯にしみるほど冷たくすることで温度差を拡大・強調した。
醤油に唐辛子を漬け込んだものをタレに用い、辛味を利かせることでスープの熱さを強調しつつ夏向きに調整。
表面にラードを浮かせて熱さを封じ込めるという工夫もされている。
加えて麺は表面を高加水、内部を低加水という二重構造にすることで、誰が茹でても絶妙な茹で加減になるようコントロールしつつ、メリハリの利いた独特の食感を実現させた。


  • 七つの味のラーメン
自身がプロデュースしたラーメン屋「麺屋 朱雀」で考案した醤油ラーメン。
「スープや麺、タレ、具に工夫するラーメン屋は多くあっても『香味油』に工夫を施す店は少ない」という盲点に着目。
スープはそのままに7種類の香味油によって7種類の味のバリエーションを持たせている。お値段一律700円。
  1. 煮干し
  2. カツオ
  3. エビ
  4. 唐辛子
  5. 香味菜(ニンニク、ネギ、エシャロット)
  6. ホタテ
  7. 木の実(クルミ・アーモンド・ヘーゼルナッツ)
という7種類の味わいを楽しむことが可能。
これらはスープや具材は変えておらず、香味油を変えるだけなので料理人の腕前が低くても手軽に味を演出できるという利点も併せ持つ。
独創性と発想のスケールの違いを見せつけたものの、店自体は調子に乗ったオーナーが余計な色気を出したことで失敗に終わる*20


  • エスプーマ・ラーメン
「大地」でのコンペ対決で、「夏野菜フェアに適した夏野菜を使った創作ラーメン」というお題に対して考案した。
スペインから輸入したソーダサイフォンを利用してホワイトアスパラガス、シシトウ、トマトのムースを乗せた冷やしラーメン。
スープは煮干しや鶏ガラ、トンコツを使った濃厚な醤油スープ。
香味油は大豆白絞油でニンニクを揚げたものを使っている。
野菜の旨味だけを抽出したきめ細かい3種のムースが甘・辛・酸を絶妙に演出し、スープと一緒に啜ることで複雑かつ誰も味わった事のない新体験の旨さを味わうことが可能。


  • 味噌ラーメン
藤本とのコンペ対決で「動物系食材を一切使わないラーメン」というテーマで作ったラーメン。
上質の信州味噌をベースに、調味料、香辛料、果物で味を整えた味噌ダレを使用。
煮干し、カツオ節、アジ干し、アゴの焼き干し、昆布でタップリ出汁を取ることでスープを作成し、更に小鍋で味噌ダレをスープを合わせた後エビの頭とアサリを投入しひと煮立ちさせることで強烈な魚介の香りを漂わせた魚介系味噌ラーメン。
コンペ対決は引き分けに終わったが、本質としてはクイズ大会『ラーメン・マニア・キング』の優勝賞金1000万円を手に入れ浮かれ切っていた藤本に「自分の本当に作りたいラーメンがない」という最大の欠点を浮き彫りにさせるためのラーメンである。


  • 時間差ダブル・スープラーメン
恒例の藤本とのコンペ対決で「氷を必ず使う冷やしラーメン」というお題に対して考案。
表面にラー油を浮かせた牛コンソメベースのスープに、甘エビを焼き臭みを取ってから煮込んだスープを凍らせた氷をトッピングしたラーメン。
具にはローストビーフ、まこも茸の炭火焼、パクチーの薬味を乗せた。
時間差で氷が溶けてスープと混ざりドンブリ内で調理が行われ、洋風な味からトムヤムクンのようなエスニック風の味に変化していく時間差ダブル・スープが特徴。


  • 激辛ラーメン
テレビ番組での藤本との対決企画で「激辛ラーメン」というお題で考案。
濃縮したムール貝のダシに唐辛子、鰹節粉末、煮干し粉末を混ぜたペースト、濃縮した昆布ダシで作った塩ダレ、鶏ガラと煮干しと鰹節から取ったスープを使用。
痛烈な辛さの中に、辛さに負けない重層的で複雑な味わいの濃厚スープが畳み掛けるようなラーメン。
辛味と旨味の精密なバランス取りの結果、ほとんど油分がないにもかかわらず唐辛子の刺々しさがなく、一種の清涼さすら感じさせる点もポイント。
昨今の激辛ラーメンが抱える「『激辛ラーメン』を謳いながらも実際のところはその店のラーメンに既存の辛味調味料を入れて激辛味に仕立てただけで、基本的な味の構造はどれも似たり寄ったり」という問題への回答として作られている。
ただし分かりやすい味わいのラーメンではなく、油分が少ない分コッテリ派には物足りないので、淡口らあめんと同じく優れた味覚がなければその真価は感じ取れない。


  • 丸鶏とハマグリのラーメン
ラーメンテーマパークでのイベントにて「Wテイスト」というお題で考案。
ベースは丸鶏のみからダシを取ったシンプルな塩ラーメン。麺もシンプルな細麺を使用。
具もチャーシューともやし以外見受けられない、極めてシンプルな作り。
最大の特徴はWテイストを生む仕掛けであり、仕組みとしてはドンブリ側ではなくレンゲの裏面に3重構造のゼラチン*21が塗りつけられている。
スープの熱でゼラチンが溶けるに従い、最初の丸鶏のシンプルな旨みの味わえるスープから時間経過で醤油とハマグリの味わいが加わった膨らみのある味わいに変化、最後に柚子の清涼な風味に変化していく。
必要最小限の工夫でスマートに研ぎ澄まされた味と演出を実現。ハマグリの豊かな味を膨らませて最後は柚子の風味と味わいでスッキリとした後味と引き締め効果を狙っている。
ただしこちらも淡口らあめん同様ギリギリまで無駄を削って本質的な部分だけで成立している料理なので、「味の分かる人間」でなければ物足りなく感じてしまう作り。
テレビ局のプロデューサーからの八百長依頼に応えて一般大衆の投票では負けるものの、本当の味では勝利を収めるという「試合に負けるが勝負には勝つ」ことを体現したこだわりの品。


  • ニュー札幌・醤油ラーメン
ラーメンテーマパークでの6連戦の2戦目「札幌醤油ラーメン対決」で急遽土壇場のテコ入れで作ったラーメン。
ベースはスープに火入れしたラードを浮かべたトンコツ主体の醤油ラーメン。
醤油ダレに毛ガニの味噌をたっぷり入れて深いコクを演出し、北海道産の地粉で作ったクセのない平打ち中麺を使用。
具にガゴメ昆布の三杯酢あえを使い、ネバネバ食感と磯の香りがアクセントになっている。

元々は毛カニの殻を揚げて作ったカニ風味のラードであったが、藤本の関与したラーメンの味を予測した結果自陣が負けると悟ると土壇場でメニューを考案。
山椒、ニンニク、ネギを中華鍋で炒めて作った「山椒風味ラード」を作り、カニ風味ラードから変更することで味のインパクトを高めた。
山椒、ニンニク、ネギの強烈な香りでファーストインパクトを与え、そこからスープや麺の奥深さを味合わせる仕組みである。


  • 淡口(うすくち)らあめん (きわみ)
ラーメンテーマパークでの6連戦の最終戦、藤本との最終決戦で「ラーメン誕生100年目に相応しい醤油ラーメンの進化型」という課題を受けて製作した和風醤油ラーメン。
「ラーメン界の店も客もレベルアップしてようやく時代がオレに追いついた」とし、自ら「畢生の出来映え」と豪語した、当時の芹沢の最高傑作と呼ぶべき品。

使用する食材を徹底的に鮎のみに絞っているのが最大の特徴で、スープは鮎の煮干しではなく大量の焼き鮎から取った出汁のみに限定。
薄口醤油・酒・みりん・うるか*22を混ぜた醤油タレを使用し、〆に適度なこってり感を加えるべく鶏油(チーユ)を少し浮かせることで完成した。
具も白髪ねぎと糸唐辛子くらいしか分からないなど極めてシンプル。麺もスープとの自然な調和を追求すべく北海道産の地紛を使った自家製麺でスッキリとした味わい。

素材を全て鮎に統一することで味の一体感も高まり、淡口らあめん以上の鮎の上品な風味に溢れんばかりの鮎の旨味、鮎の煮干しとは違った鮎の鮮烈さ、うるかの強く深い芯のある味わいが加わる事で、アッサリとしていながら物足りなさや散漫さを感じさせない極上の味わいとなった。
有栖曰く「必要最低限の調理で最大限の旨味を引き出すことをもって尊しとする『和食の精神』が息づく格調高き味わい」
その味は芹沢に内心反感を抱いていた六麺帝の店主達をも絶句させ、「同業者として脅威以外の何ものでもなかった」「あんな凄いラーメンと戦わなきゃならない相手に同情する」とまで言わしめたほど。

しかし過去のトラウマから客の舌を最後まで信じられず、最後に加えた鶏油が蛇足となって統一感が乱れ、味の完成度が「99.99…%」といった具合に極僅かに下がってしまっており、それに気が付かなかった事が敗因になった。

なお続編には全く出てこない事をたまに突っ込まれるが、明らかに「鮎を使いすぎで採算が取れない」「味が繊細で調理が難しい」「淡口ラーメン同様一般ウケが狙いにくい*23」ラーメンなので、あくまで「勝負」用なのだと思われる。
また、「客を信じきれずに負けたことの反省として封印している」という可能性も考えられる。


『才遊記』初出

  • 肉だし清湯麺
「麺屋せりざわ」で出した創作ラーメン。
たっぷりの鶏と豚のミンチを煮込んで卵白と鶏胸肉でしっかりアク取りして仕上げた本格派清湯スープに、国産小麦100%のストレート細麺を合わせたラーメン。
肉の旨味が凝縮され、一切の無駄が排除されたシンプルで研ぎ澄まされた上品な味わいを持つ。
ただしベクトルとしては淡口らあめんに近いものがあったため一部改善の余地があった点を汐見に突かれている。


  • フグ出汁麺
こちらも「麺屋せりざわ」での創作ラーメン。
自家製ゴマフグ干しから出汁をとり沖縄産の海水塩で味付けした塩ラーメン。
スープに少々浮かせたオリーブオイルで、フグ鍋のような贅沢かつ気品ある味わいが特徴。


  • もやしめん
寂れた中華料理屋の再建に考案したラーメン。
ゆとりの初めてのコンサルタントのヘルプ時、「コンサルタント予算3万円」*24という制限の中、既存のメニューを片っ端から味見し、光る所のあった「もやしめん」をアレンジしたもの。
ラードでもやし、各種野菜、豚挽き肉を炒め、塩胡椒醤油で味付けしたもやし炒めを鶏ガラベースの薄いスープと合わせたシンプルな構成。
元々店にあったもやしめんと比べて野菜炒めの量を大幅に増量、コッテリ感とメリハリの効いた味わいを実現させ、旨みが大幅に増した。
調理の簡単さに加えて現在流行りの「ボリューム系(二郎とか)ラーメン」らしさを演出し、原価率の問題も品数をもやしめん・ラーメン・餃子の3品に絞ることでクリア。
店自体も徹底的な清掃と、古い内装を活かしたシンプルな装飾にとどめることで「レトロをコンセプトとした店」と演出した。
ただし芹沢自身は元々あったもやしめんを「偶然の産物」と冷徹に見ていた。


  • 濃口(こいくち)らあめん・解
濃口らあめんの欠点である「鮎の必要性の薄さ」を突かれたカッコウ戦術*25を打ち破るために開発。
昔デパートのラーメンフェアで3日間だけ販売し、以後作る事は無かったという「伝説のラーメン」がベースになっている*26
最大の特徴は骨抜きした鮎の身と腹ワタを丸ごと磨り潰したものを醤油とみりんと一緒に煮て一週間熟成させた醤油ダレ。
これにより味わいの統一感を崩さず、従来の濃口らあめんではほとんど感じられなかった鮎の煮干しの風味を強烈に打ち出すことに成功している。
更に香味油に鮎料理から着想を得た蓼油*27を採用しており、鮎の煮干しダシの複雑さ、鮎ダレの濃厚さ、蓼油の鮮烈さが緻密に構成された逸品。
加えて価格設定をあえて950円に引き上げることで高級感を演出し*28、見事カッコウ戦術を打ち破るヒットとなった。
なお、その過程でゆとりの決め台詞「ピッコーン!」を決めポーズごと真顔で披露してゆとりをドン引きさせている。


  • 濃厚煮干し麺
煮干しを安価なカタクチイワシのものに変更した、廉価版(700円)の濃口らあめん。
従来の濃口らあめんをこのメニューに替えることで、芹沢の黒歴史の象徴であった濃口らあめんを乗り越えると共に、安本のカッコウ戦術を完全に叩き潰した。


『再遊記』初出

  • ビールラーメン
スランプに陥った芹沢の職人人生を賭けた、「お酒を使ったラーメン」という課題に対する起死回生の一品。
醤油の代わりにスタウトビールで豚肉を煮込んで豚の旨味を移し塩を入れ、醤油と同じ塩分濃度にしたビールタレを採用。
IPA*29を適量入れた鶏ガラとカツオ節ベースのスープを作り、チャーシューにはスタウトビールで煮た豚肉をランピックに漬けこんだものを使っている。
ランピックはベルギー産だが、IPAとスタウトは知り合いから特注したものを使用。麺も風味豊かな全粒粉を使い相性も抜群である。
ウマ苦、甘苦を軸とした複雑で中毒性の高い新感覚の味わいが楽しめる。


  • ベジシャキ豚麺
芹沢が引退後にアルバイトとして入ったラーメン店「ベジシャキ豚麺堂」の看板メニュー(芹沢が考案したメニューではないが、敢えてここに記述しておく)。
あっさり目の茶濁豚骨スープに加水率高めで伸びにくい中太ちぢれ麺をベースに、チャーシューと一緒に塩・味噌・醤油・カレー・オイスターソース・激辛版の塩/味噌/醤油の合計七種類もの味の野菜炒めを選んでトッピングする。
原理としてはかつて芹沢が作った「7つの味の香味油」の野菜炒めバージョン。
あっさり味のラーメンに野菜炒めの味が上乗せされる仕組みで、野菜炒めの味がラーメンに溶け出し味の変化を愉しむことが可能。
日々の食事としてのラーメンに主観を置いており、ボリューミーな内容と近年のヘルシー志向に綺麗にマッチング。
とびきり旨い訳ではないが、マニュアルに従えばバイトであっても作れるくらいに調理が容易と、マニア向けでない、普段の食事としてのラーメンとしては芹沢も「正解」と認めるクオリティを誇る。


  • 牡蠣だし担々麺
「ベジシャキ豚麺堂」の創作ラーメンコンペに飛び入り参加した際に考案した一品。
具に肉味噌ではなく細かく切った牡蠣を使った担々麺。
「近年流行り出した担々麺専門店もダシには注力していない」という着眼点から追いガツオの要領で牡蠣のダシと鶏白湯スープを合わせている。
小鍋一杯分の鶏白湯スープをレンジにかけ、細かく切った大量の牡蠣をスープに投入、牡蠣の風味を限界まで引き出してから芝麻醤と辣油を入れて仕上げたスープが最大の売り。
芝麻醤と辣油と鶏白湯というアクの強い食材を調和させつつも牡蠣だしの風味が3食品を従えるような存在感を発揮。
立体的でメリハリの効いた旨さを実現した。
審査をした社長曰く「ゴマ風味の豊かな芝麻醤と、花椒を効かせたシビカラ味の辣油を使い担々麺の王道の味わいは抑えつつ、ベースとなるダシが未だかつて味わったことのないもの」

なお、創作ラーメンコンペに飛び入り参加した理由は「険悪な関係にあった若者二人を焚きつけてコンペで対決させてみたら、二人が想定以上に成長して爽やかなライバル関係になった」ことを「なんか、つまらんな…」と感じて叩きのめしてやりたくなったから。
早い話が有望な若手をちょっとイジメたくなったから*30


  • あっさり醤油ラーメン
自販機茶屋での「自販機で作れるラーメン」という課題によるラーメン対決で考案した醤油ラーメン。一杯400円。
ラーメンを作る自販機の設計上、作られるラーメンが非常に限定され、多くても最大2種類しか作れないのが特徴。具はシンプルな焼豚一枚のみ。
メインとなるラーメンは鶏ガラ、かつお節、昆布から出汁を取ったシンプルながらも上品で味わい深いあっさり味。麺は平打ち縮れ麺を採用している。

そして最大の特徴は別の自販機で別売りの追いスープ(価格は100円)を購入して好みの味へと自由に味変させることが可能な点。
これにより自販機でありながら5種類のラーメンの提供に成功した。
追いスープの変化の内容は
  • 味噌スープ:山椒の効いた味噌ラーメン
  • 魚介豚骨スープ:旨味たっぷりのドロっとした魚介豚骨醤油ラーメン
  • 麻婆スープ:流行りのシビカラ麻辣味ラーメン
  • 海老香味油:エビの風味たっぷりの魚介系ラーメン
になり、ベースとなるあっさり醤油スープも存在感が消えることなく、しっかりと味の引き立て役になっている。
加えてどの追いスープを入れてもチグハグ感の一切無い「完成度の高い美味しいラーメン」が成立しており、知らなければどの味も全く違うラーメンにしか感じられないほどのクオリティの高さを有している。
自販機という厳しい縛りの中でも創作性と商業性が両立した芹沢らしいラーメン。


  • 背脂チャッチャ☆チャーハン
その昔トラブルで犬猿の仲になってしまった背脂チャッチャ系ラーメン店の店主との和解も兼ねて提案したチャーハン
そもそもラーメンではなくチャーハンを提案したのは「店主は惰性でラーメンを作っていただけなので、別にラーメン屋に拘る必要はない」「(店に近い)駅周辺のラーメン店はもう店が増えすぎて過当競争気味であり、客もラーメンに対して食傷気味」という身も蓋もないシビアな視点によるもの。
なので再建案もラーメン屋としての再建ではなく「チャーハン専門店への転向」が主体。
ちなみに店主も内心は中華料理人志望で中華料理に愛着を持っていたこともあり、この方針転換には非常に意欲的だった。
またこれまでのラーメン屋としてのノウハウも活かせる上に、普通に中華料理店をやるよりも費用が安上がりで済むなど多くのメリットを持っている。

肝心の味は、香ばしいニンニク醤油風味の黒チャーハンにたっぷりの白い背脂が振りかけられているのが特徴。
チャーハンの塩辛さに背脂のまろやかさが絶妙に調和、食欲をそそる甘辛コッテリ味という食べ盛りの若者向けの味付けになっている。
物珍しさから客によるSNSでの拡散も行われ、背脂チャッチャ系が元々持つパフォーマンス性の高さや、店主のチャーハンの腕前の良さも相まって見事大盛況の売上を博した。


  • 牛清湯らあめん・二色あんかけ仕立て
外食コンサルタント・小宮山との「小宮山が10年前に作った牛清湯らあめんの改良作*31というお題で作成したラーメン。
ビジュアルは牛清湯らあめんに黒と赤の2色の餡が掛かっているあんかけ麺。
黒い餡は「カツオ節が効いた濃厚魚介風味の醤油餡」、赤い餡は「中華スパイス満載の四川火鍋風の激辛餡」の2種類。
具は餡の他はチャーシュー代わりのローストビーフのみ。

牛ミンチをコンソメの技法で煮込んだ和風コンソメ風の上品な醤油スープが持つ、牛の風味と旨味を純粋抽出したかのような深みのある上品な味をベースとし、
黒い餡と一緒に食べると強烈な魚介風味が加わり複雑で奥行きのある味わいに、赤い餡と一緒に食べるとスパイシーな激辛味をスープの旨味が下支えする立体的な味わいに変化。
そして最後は2つの餡が混ざり合い、動物系+魚介系の旨味たっぷりのスパイシーな醤油ラーメンへと変化する4つの味変ギミックを備えた脅威のラーメン。
3つの異なる味わいが混ざり合っても散漫にならず調和するようまとめられた優れたバランス感覚の光る逸品である。
「昨今の町中華ブーム故に、これまで異端だったあんかけ麺もラーメンの1つとして認められ始めている」という発想から作成された。


  • チャルメラ(風邪予防仕様)
雨に打たれて風邪をひきかけた際、風邪対策として作ったインスタントラーメン
ベースとなるのはそのまんま袋麺のチャルメラ(しょうゆ味)*32で、仕上げにチューブのニンニクとショウガ、コショウとラー油、九条ネギのみじん切りなどの薬味がたっぷり投入されている。
作り方自体は袋に記載されている通りだが、本来あらかじめ丼に入れておく粉末スープを沸騰中の鍋に投入することで、湯気とともに立ち上がる粉末スープの香りを楽しむという工程(?)が存在する。

これを日本酒の熱燗と一緒に摂取した後、布団蒸し状態で寝ることで大量の発汗を促し、引き始めの風邪を徹底的に体内から追い出すのが若い頃から続けている芹沢流の風邪予防対策。
しかし現実にはこうした大量発汗による風邪予防は身体に負担をかけるだけで意味がないとも言われており、芹沢自身も「あくまでも自己流の荒療治であり、真似して何かあっても責任は負えない」とカメラ目線で読者に予防線を張って忠告している。

余談だが芹沢自身は小学生時代から50年以上もの間チャルメラを啜っており、熱心なチャルメラ信者であることが明かされた。
そのため人気袋麺トップ10でチャルメラが7位だと知った時は「何かの間違いでは?」と心の中でボヤキながら眉をしかめた。


  • 熟成干中華 寧麺
創作ラーメンフェスへの参加を要請された際考案した、芹沢のあくどさが久々爆発した醬油ラーメン。
これまでの章でピックアップされた「ブランドイメージにより感じる味の変化」「乾麺技術の発達」に着想を得て、「これまで日本に定着してしまった乾麺の固定観念を破壊する」という目論見で立案された実験的作品。
具体的には
  1. 「いかにも長い歴史を感じさせる長ったらしい謳い文句」でブランド感をアピール。なお歴史に関してはギリギリ嘘ではないが本当ではないグレーゾーンの謳い文句。
  2. 料理人経験のある売れない舞台俳優(50歳フリーター)をアルバイト店長として雇って熟練の職人感をアピール
  3. 乾麺を「干麺」という謳い文句にして、ブランド麺に見せかけアピール
といった感じでほぼ大部分を虚構で塗り固めた、創作ラーメンの皮を被った羊頭狗肉の一品。
麺はブランドでもなんでもないディスカウントスーパーで買った無名メーカーの安物。1kg350円と馬鹿みたいに安い。
一応スープは芹沢が手掛けており、自然養鶏の丸鶏をベースにしたシンプルな醬油スープは万人受けしやすい味わいで有栖達にも好評だったが、麺はハイレベルどころか安物だったのでコシも滑らかさもイマイチと酷評された。
これも「安物をポジティブなイメージで塗り固めたらどうなるのか」という芹沢の意図によるもの。

虚構のイメージに騙された一般客はありもしない味を感じて満足しており、イベントでのアンケートも21店中4位と中々の好成績。
虚構で満足している客を見た芹沢は「いいお客さんだ…」と下衆みたいな顔でニヤニヤしていたが、当然味の分かる人間からすると詐欺同然の品としか感じられないのが問題点。



【名言】

  • 「ヤツらはラーメンを食ってるんじゃない。情報を食ってるんだ!」
  • 「よく覚えておけ。ラーメンは伝統料理と違って、セオリーもマニュアルもない。“常識”に囚われているようでは、まだまだだな」
  • 「ラーメンの場合、下手なマスコミの記事よりネットを信用する“情報バカ”が多い」
  • 「なんの制約もなければ、素人でもそれなりにうまいものを作ることはできる。だが、どんな状況でも最善を尽くしてうまいものを作るのがプロだ」
  • 「助けてほしければ金を出せ」
  • 「『うまいラーメン』で満足しているうちは、アマチュアに過ぎない。『うまい店』を目指してこそ、プロなのだ」
  • 「新しい何かとは、構造を疑い破壊することなくしては生まれないのだ!」
  • 「行列で迷惑をかけたから店を畳む?そんな根性なしはとっととラーメンから足を洗うといい」
  • 「馬鹿を言うな!!ラーメンに枠などない!!」
  • 「要するに、オマエには本当に作りたいラーメンがないんだよ」
  • 「勝負を決めるのは、ラーメンの腕だけじゃない」
  • 「店をやるということは、常に時代の嗜好の半歩先を行く姿勢が必要だ」
  • 「いいものなら売れるなどというナイーヴな考えは捨てろ」
  • 「料理をうまいと感じる際、そこには 未知への感動と、既知への安堵という両側がある」
  • 「お客様は神様などではありません。お客様とは…人間です」
  • 「『やる』というクライアントに『やるな』という助言だけはしてはならないのだ」
  • 「『金を払う』とは仕事に責任を負わせること、『金を貰う』とは仕事に責任を負うことだ。金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになる」
  • 「ラーメンとは…フェイクから真実を生み出そうとする情熱そのものです」
  • 「ここなら昔一度、来たことがある…。いい店だ。本物のラーメン屋だ」
  • 「武田のおかげで目が覚めた!!俺はカリスマでも天才でもない!!好きなラーメンを好きに作りたいだけの、イカれたラーメン馬鹿だっ!!」
  • 「俺は社長も社員も同じだと思ってる。報酬と労働を交換しているだけなのだからフィフティフィフティ…役割が違うだけで、上下関係もない対等な人間関係だ」
  • 「若き日の小さな勲章は、時として大いなる呪いと化します。その者を増長させ、自己評価を歪めさせ、進む道を誤らせる」
  • 「自惚れた勇者よりも、賢い臆病者の方が強いんです」
  • 「商売ってのは、どれくらいの儲けで手を打とうが、それで成り立っている限りはみんな正解なんだ」
  • 「こいつらは誰かさんと違って、最後の1台が無くなるその日まで1杯25秒のラーメンを作り続けるでしょうね」
  • 「いくら手が動いても頭を動かせない者にオリジナルないいものは作れない」
  • 「やはり…全ては昔話か…」
  • 「お前の改良は、実験的な失敗作の角を丸め、ありがちな佳作に小さくまとめたに過ぎない、いわば妥協の産物…。だが俺なら、失敗作のエッジを尖らせ、画期的な傑作へと昇華させんと挑む。それこそがニューウェイブ系の精神(スピリット)だ」
  • 「「やりたいこと」と「やれること」がズレている時、人はやりたいことをやれる様努力する訳だがそうそう上手くはいかない…極端な例が「野球選手になりたい」「サッカー選手になりたい」とかだ。いくら頑張ろうが、恐らくは99%の子供達、若者達の夢は呆気なく潰える。そんな失敗確率の高過ぎる『夢』なんぞに賭けるより、「やれること」をやり続け、成功体験を歓び、自信を積み重ね、それを「やりたいこと」に変えて行った方がよはど上手くいく」


迷言

  • 「オレよりうまいラーメンを作り、オレより儲けてる奴がいるなら、お目にかかってみたいものだ」
  • 「いいか?行列店にわざわざクレームをつけてくるようなヤツは、無能ゆえに暇を持て余していて、そのくせ無闇にプライドだけは高く、嫉妬深いクズのような人間だ」*33
  • 「オレのはハゲじゃないって言ってるだろっ!!」
  • 「(あんのクソアマッ!!トンコツで袋叩きにしてやりたいっ!!)」
  • 「そんなことは、ま っ た く あ り ま せ ん。」
  • (社長としてこんなことを思ってはいけないのだが…汐見ザマァ〜〜ッ!!!こいつの泣きっ面がこんなに気持ちいいとは…!!)
  • 「ピッコーン。」
  • 「私は別に、見知らぬ女の子たちがスポーツで勝ったからといって何も感じませんでしたけどね」
  • 「ラオタにはマザコンが多いからな」
  • 「殺してこい」
  • (ロクな食材も使ってないしうまくもまずくもないが、それがいいんだ。もう"複雑で奥行きのある味わい"とか、"こだわりの高級食材"とか、疲れたよ…)
  • 「日本中のラーメン屋はこれから夜営業だというのに…。愉快、愉快!!俺はさながら上級国民だっ!!」
  • 「(現実を前にして夢は無残に破れ、恋人たちの明日への誓いは儚く潰える…か…)青春の蹉跌は、蜜の味だな♪」
  • 「俺のお膳立てによって、悩める若者たちは救われ、和解する理想的展開に…」
    「なんか、つまらんな…」
  • 「3年前に板倉さんはこんなことおっしゃってましたよねぇ。『(中略)大江戸せあぶら軒は今や本店支店で全10店!!らあめん清流房の10倍繁盛しているんだから10倍うまい!!』と。
    ウチは今日3162杯売れたんですが、10倍おいしい大江戸せあぶら軒さんなら…31620杯くらい売れたんじゃないですかぁ?」
  • 「俺の店に向かって土下座して詫びろ。地べたに額をこすりつけてな。そしたらスタッフは戻してやるよ」
    「クッ…ククッ…ヒャ~~ッハッハッハッ!!ハハハハ〜〜!!ヒャハッ!!ヒャハッ!!ヒャハハハ〜〜ッ!!ヒャハハハ〜〜ンッ!!ハ〜〜ンッ!!」
    *34
  • 「いやー俺も歳だな。人を土下座させておいて完全に忘れているとは…。」
  • 「映画やドラマではよく『復讐なんて虚しいだけ』なんてセリフが出てくるが、あんなのは良い子ぶったタワゴトだ。完膚なきまでの復讐ほど気分爽快、ストレス解消、かつ自己の尊厳を回復させるものはない」
  • (俺や米倉のようなラーメン屋が、どれだけ苦労してラーメンを創作料理の域にまで高めたと思っている!!お前らは一生、安物を食い続け、無知と怠惰の楽園の中で死ぬがいい!!)
  • 「うぇーい!!」
  • 「あいつらはラーメンを食う以外は何もできない原生動物の一種だ。学名はラオタ」
  • 「富士山に電動アシスト用のサイクリングロードを作るべきだ!!」
  • 「女でもナンパしてチョメチョメしてるんじゃないか」
    「チョメチョメしてたのか?」
  • 「やっぱり、あいみょんでも聴くか」
  • 「ふっふふ…。ビッグ・ストーンが奴隷商人たちを皆殺しにするシーンは今読んでもシビれるぜ」
  • 「俺の荒療治を正当化するつもりはないし、真似をして何かあっても責任は負えないのでそのつもりでな(カメラ目線)」
  • 「クッ クッ クッ いいお客さんだ…」


【余談】

一時期ネット上で流行した「ハゲメガネモード発動」のbokete画像の男性こそがこいつである。
作中では、芹沢が他の登場人物を極めて冷徹かつ現実主義的な正論でぶった切るシーンがいくつも登場するのだが、
某大手BBSで料理漫画を語るスレが建つと結構な確率でそのようなシーンの画像が貼られ*35、その説得力溢れる話術などから原作未見の人間からも「正論」「ハゲのくせに有能」と評価されることが多い。
さらに最近ではSNS上にも彼のセリフ画像がアップされ、大きく拡散されることがちょくちょくある。
2000年代に描かれた漫画で、後に社会問題となる「金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになること」や「伝統という言葉を盾に新規事業制度を開拓しないこと」が触れられているのだから、原作者の先見の明が極めて優れていた証左だろう。

なおドラマ2作目『行列の女神 ~らーめん才遊記~』ではまさかの女体化を果たした(演:鈴木京香)。役名は「芹沢達美」。
「スキンヘッドの中年男性が若い女性を正論でいびる」というのは漫画ではともかく、実写ではパワハラっぽさが出てしまう色々キツい表現に見えるが、それを女性にすることで絵面をマイルドにし、原作を知らない視聴者も受け入れやすくする無難な選択だったと言える。

このような大きい設定変更は普通なら何かと炎上しがちだが、この作品に限っては
  • 「原作のラーメンハゲはクレームをつける人間をボロクソに貶している」
  • 「原作のラーメンハゲならマーケティングの都合上ドラマで自分を女体化することも平然と認めるはず」
という説得力のある意見が大勢を占め、ファンからは概ね受け入れられたようである。
変更したのは外見設定だけで、言動自体は概ね原作を再現していたのも大きいだろう。

でもそれはそれとして実写版の男性ハゲ(本当の坊主頭)を見たいという声もあったりする。いつか実現するだろうか。




追記・修正とは…クソ項目から良項目を生み出そうとする情熱そのものです。

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最終更新:2024年04月14日 14:11

*1 1990年代頃から流行した、無化調ラーメンをはじめとする、従来のジャンクフード路線を脱して本格的な料理たらんと志向するラーメン。

*2 もっとも、この評価は『発見伝』でも初期の方で、以降は評論家としてかなり信頼を置いていることが窺える。

*3 かつて自分を貶めたラーメン職人に対しては、個人的な復讐のために裏で手を回して営業妨害や嫌がらせをしたことはある。

*4 2作目では髪がフサフサだった時期の想像図が登場するが、中々に端正な顔立ちである。3作目では結婚の場面で遠目の姿が、過去の回想場面でボサボサ頭の学生時代の姿が描写されている。深夜のゲームセンターに通い詰めていたようだが、この頃からラーメンにハマっていた。

*5 これは少なくとも表向きにはラーメンを批判した言葉ではなく、ラーメンの歴史を省みた時にこれらを構成する要素が代用品をもって成立している事実を指摘した定義である。言った本人も「全てを本物で作ったラーメン」を食べさせて味が良くない事を見せた上で「フェイクだからこそ美味しい」と評価している。

*6 過去のイザコザから背脂系ラーメンはろくにチェックしてなかったと語る場面もある。

*7 ただし、あくまで年齢で差別はしないだけで愚劣で無能な若造に対しては対応は違ってくる。

*8 1作目で脱サラ系ラーメン職人の欠点を語り、「それは藤本の事でもある」と冗談めかしながら言っていたが、その欠点はかつての芹沢にも当てはまっている。過去の自分への反省や自虐も含まれた考えなのかもしれない。

*9 信用金庫の職員。ラーメン職人・芹沢に惚れ込み、売れない時代の彼を支援したり味の好みも似ていたが……。

*10 最高傑作という意味。

*11 有栖ら上級審査員(満場一致)+一般審査員の大勢

*12 分かりやすく言えば頂点を極めたが故の燃え尽き症候群に近い。

*13 清流房の業績は安定しているものの、こちらは昔からのネームバリューによるところが大きく、新機軸は久しく打ち出せていないのが実情だった。

*14 本当にこう書かれている。

*15 ただし、社会的な人脈を無くさない為にフード・コンサルティング自体は行っている。

*16 『発見伝』のワンシーンが現在の芹沢らしくない事へのセルフツッコミも兼ねている。

*17 上述の「客は情報を食っている」案件で自信喪失していた藤本が小池さん含めた面々の言葉で再起した際に考案した「嘘は食べさせず、鮎の煮干しの魅力が分かるラーメン」という芹沢へのリベンジも込めた一品である。

*18 コストが掛かりすぎる上、1年を通して安定供給が難しい食材を使った料理を、レストランの常設メニューに加えることは難しい。鮎の煮干しは「らあめん清流房」だからこそ使える食材だった。

*19 これは藤本の「甘さ」と言える部分であり、芹沢としてはそんな藤本へのアンチテーゼも兼ねている。

*20 この時、芹沢は調子に乗ったオーナーに、珍しく声を荒げて「失敗するぞ」と忠告したが、聞き入れられなかった。

*21 外周から順に「丸鶏の出汁」「ハマグリを使った醤油ダレ」「柚子の搾り汁」をそれぞれゼラチンで固めている。

*22 鮎の内臓の塩辛。某ラブコメ漫画のヒロインとは無関係。

*23 芹沢もこのラーメンを勝負に出した時、一般審査員からの支持は得られない事を織り込んおり、初めから票の配分が大きい舌の肥えた審査員の票を狙っていた。

*24 まだ世間知らずのゆとりが超安請け合いしてしまった。

*25 競合するチェーン店に、同品質で低価格の商品をぶつける戦術。

*26 「麺屋せりざわ」は元々、濃口らあめん改良のための試行錯誤の場という意図もあって始めていたが、当時も濃口らあめん自体は好評で店も繁盛していたため、下手に看板メニューを変えるのはリスキーと考え、この時はレギュラーメニューにはならなかった。

*27 『蓼食う虫も好き好き』の諺で有名な、鮮烈な辛味と香りが特徴の香草。鮎の香りや苦みと相性がよく、特に塩焼きには擦りつぶして酢で伸ばした『蓼酢』が添えられる。

*28 それまでの濃口よりコストがかかるため、同じ値段で出すのが元より不可能だったという事情もある。

*29 インディア・ペールエール。イギリス発祥のビールで、淡い色とホップの強い苦みが特徴。

*30 もっとも、この若手二人はコンペの結果に納得しており、むしろ良い刺激を得て更なるやる気を見せることになった。

*31 スープ・麺・具はそれぞれハイレベルだが、スープのとろみが薄いため麺との絡みが弱く、一杯のラーメンとして統一感に欠けるという欠点があった。

*32 チャルメラである理由は「昔から一番好きなインスタントラーメンだから」。

*33 ネットではこの台詞から「行列店に」の部分を消した画像が出回っているが、これはコラ画像なので注意。

*34 三部作において最も笑っているシーン。

*35 有名なものとしては「金を払うとは責任を負わせること、金をもらうとは責任を負うこと」という台詞