SCP-2845

登録日:2020/11/22 Sun 22:52:24
更新日:2024/04/17 Wed 19:05:46
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崇め、奉れ。不朽なる彼方の来訪者


SCP-2845とは、シェアード・ワールド「SCP Foundation」において登録されたオブジェクトの一つ。
オブジェクトクラスは極めて危険な「Keter」。
さらにフランス支部で考案された脅威レベルは、危険度最高の「黒」という、まさに規格外のオブジェクトである。


概要

SCP-2845は、大きさ2.9m、重量815kgの肉体に人面を併せ持つシカのような実体シシガミ様じゃないよ

頭の周りには、金属ヘリウムと金属水素で構成された、直径1.7m、厚さ35cmの氷粒子の環が7つ浮遊しており、1.6秒毎にグルグルと回転している。どうやって回転させてるかは不明。


SCP-2845の異常性は、あらゆる物質を法則を無視して、自由自在に変換・再構築させること。視界に入ったら最後、標的となった個体は、以下の通りになってしまう。

  • 物体→固体・液体状態の水素、ヘリウム
  • 大気→水素、ヘリウム、アンモニアの混合物
  • 植物→半金属を基盤とした生命体
  • 人間→ゴム状で黄緑色の皮膚をもつ高さ2.4メートルの六角柱(以降、SCP-2845-1と呼称)
    なお、六角柱に変換された人間は、内臓等が存在していないのにも関わらず、生存している。


またSCP-2845は何も無い所から、ばかデカイ円柱や円錐を生み出し、最大で10km以上も離れた相手に、正確に攻撃することが出来る。しかも敵味方どころか、民間人といった非戦闘員も進んで攻撃するという危険を秘めている。


発見

2011年11月27日、通称「ラヴジョイ彗星」が地球に接近した際、彗星から分離する形で、巨大な「隕石」が地球に飛来。
アメリカ西海岸から離れた場所に墜落した。それこそがSCP-2845だと推測されている。

以降、アメリカに上陸したSCP-2845は大量殺戮を開始、これを世界オカルト連合の支援を受けた財団部隊が迎え撃つが、物質再構成によって瞬く間に全滅してしまう。


その後、16時間ほど休眠状態に陥ったSCP-2845の隙をついて財団上層部が収容プロトコルを構築。絶え間ない砲撃を繰り返してSCP-2845を封じ込めエリアに誘導し、何とか封じ込めることに成功。

以降、封じ込めエリアはサイト-100として、SCP-2845収容専門の施設に構築された。


儀式

さて、SCP-2845の特別収容プロトコルに移りたいと思うが、これがまた長い。まずは施設の構造をふくめた説明から。

  • 肝となる中央チャンバーにSCP-2845と216個体のSCP-2845-1を収容しろ。内部を水素96.3%、ヘリウム3.25%、アンモニア0.45%の大気で満たした後に、温度-110℃、圧力2.3バールに保て。
  • 中央チャンバーを中心に9つのリングに繋げる形で、中央チャンバーを囲うように0°、60°、120°、180°、240°、300°の6箇所に専用チャンバーを宛がう。
  • チャンバー全体を真上から、鉛を用いた継ぎ目の無い六芒星に仕立てろ。

ここまでが施設の内容。ここからは、6ヶ所のチャンバーにてSCP-2845を抑えるための儀式について記載する。

........そう、儀式なのだ。最先端の技術と知識を兼ね備えた財団が、あろうことか超常的技術によって封じ込めを行っている。何故ならば、SCP-2845の収容には、科学的技術が無力に等しいから。

財団が如何にして後述の儀式を考案出来たかは定かではないが、上記のことからSCP-2845が、科学的アプローチでは解明することが出来ない、より高度な異常実体であるという証になる。


以下は、SCP-2845を封じ込めるための儀式、その大まかな内容である。


  • 手順410-コンスタンティン:(60°)
封じ込めスペシャリストが仮面(喜び、悲しみ、怒り、無関心、恐怖、愚者)を被り、儀式コンスタンティン-Aを演じる。
6人の人物がふとした誤解から互いを貶し合い、愚者(回答者)が謎かけの裏をかいて自分自身を王だと宣言させるゲーム。儀式の後にサイコロを用いたゲームを行い終了。
ゲームの勝ち負けは関係無し。


現代的には、人狼に近いものと考えればよいだろうか。



  • 手順420-ペリナルド:(120°)
フルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ティンパニ、バスドラム、そして奏者が儀式ペリナルド-Aと指定された特定の振り付けと歌唱を合わせて行う演奏会。
録音では効果を失う


みた所、何かを称えるかのような印象がかいまみえる。



  • 手順430-エピメテウス:(180°)
封じ込めスペシャリスト同士による贈り物の交換。
贈り物自体はなんでもよいが、全ての品は4.28米ドル(日本語で444〜445円程)を超えてはならない。
手順全体を通して儀式エピメテウス-Aの朗唱を行い、封じ込めチャンバーの周囲に穀物をばら蒔く。


穀物ということから、豊穣を願う意味でも込められているのだろうか。



  • 手順440-カシエル:(240°)
両足を羊毛で縛られた封じ込めスペシャリストが儀式カシエル-Aを朗唱、0.5リットルのオリーブ油を飲み干す。その後に儀式カシエル-Bを朗唱しながら、約200kgの岩をハンマーで砕く。


........一般的なペットボトル分のオリーブ油を飲ませられるスペシャリストの方、まじですごい。
で、これなんの意味があるの?



  • 手順450-カイロ:(300°)
青いマント、王冠、王笏を着せられたDクラス職員を用意する。腹部には、白金ベースの溶液によってあるシンボル(1個の点を円で囲み、円の90°の位置から上向きの矢印を引く)を描き、椅子に拘束した後に儀式カイロ-Aを朗唱する。
続いて封じ込めスペシャリストの持つ手鎌によって去勢・精巣を塩水を満たしたボウルに捨て、儀式カイロ-Bを朗唱する。


........もはや安定の財団クオリティ。Dクラスの人、ちょっと不憫過ぎませんか?



  • 手順460-オムファロス:(0°)
儀式オムファロス-Aを朗唱、生後3ヶ月以内の乳児を擂り潰した後に、儀式オムファロス-Bを朗唱しながら乳児を消費する。
続いて、胃石の上で儀式オムファロス-Cを朗唱し、その胃石を呑み込んで吐き出すプロセスを踏んで、儀式オムファロス-Dを朗唱する。


これら上記のよく分からない儀式を、64時間毎に行わなければならない。
もしも何れかが失敗すると、サイト-100の核弾頭が起爆した後に、手順2845-XK1「あの月を打倒せよ」が執行されるという徹底ぶり。


よっぽどSCP-2845を恐れていることが伺い知れる。
で、これらの儀式について、職員らの間でも疑問が絶えないようであり、なぜこれ程多くの儀式を行わなければならないかという質問が、多く寄せられていた。


これについて、サイト管理官から厳しい返事が示されている。


(略)
儀式は、科学のように特定の法則に則った形で機能することはありません。儀式は、それが儀式であるから機能するのです。厳格な注意によって特定の基準が満たされているからこそ機能するのです。これらの基準を満たすという信念が特定の水準に達した時、儀式には力が宿ります。

無意味に見える行為でも、今ではその反復適用を通じて確固たる意味が割り振られています。

あれは神です。そして、これは一柱の神を封印する手段です。私は財団がこの用語を承認しないことは知っていますが、それが適当でない場合もあります。
あの鹿は神です。それも、取るに足らないような地元の神ではありません。人間の信念によって拘束されるような地球の穏やかな神々でも、弱い精霊でもありません。

(略)
ですが、あの鹿はそうしたいと考えれば今すぐにでも脱走できることに注意しておかなければなりません。その考え次第で、この施設全体が水素の蒸気と化す可能性もあります。鹿が脱走したいと考えた場合、我々にそれを止める手段はありません。

(略)
あれは脱走を考えることはおろか、戦略を変えようとさえもしないでしょう。そのような考えがその心に去来することすらもないでしょう。あれはその概念を理解できません。我々が考えるような考え方はしないのです。

手順の一つでも失敗すればデッドロックは破れ、全てが失われます。移動不可能な物体でもなければ止められない力が解放されます。

儀式は無意味に見えるかもしれませんが、あれは私の占いによって最善の行動であると判明しているものです。そこには強力なシンボルが存在し、あなた方や私がその状況を適切であると思うかどうかは無関係です。
私は変換を受けた者の声に耳を傾け、その歌の中から鹿の言葉の反響を拾い上げてきました。彼らはもはや人間ではなく、苦しんでもいません。彼らは完全に変化したのです。

この儀式は現在の状態に維持されます


財団には数多くの様々な知識を結集させた研究者らが、数多く在籍している。その中で、SCP-2845の特別収容プロトコル作成に深く関わった管理官の言葉を踏まえて説明すれば、
  • SCP-2845は惑星外から飛来した超常的な神的実体である。
  • 倫理や法則といった現実の領域では、その真意や存在を解き明かすことは不可能。
  • 故に科学的アプローチは意味を為さない。
  • 唯一、特定の神を崇め奉る行為、即ち儀式をおこなうことによって行動を抑制、静めることが可能
ということなのだ。


ちょっと考察

ならば、SCP-2845の正体とは何なのか。存在を解き明かすことは不可能だと記載したが、憶測を建てることが出来ないとは書いていない。
よって、ここからは、筆者の推測を記載したい。ここはこうだとか、もっと他の意見がある方がいたならば、ドシドシ追記してほしい。


まずSCP-2845の周りに浮遊している物質。ヘリウムと水素だが、それをSCP-2845の周りを回っているという点に注目して頂きたい。
これらの要素を全て併せ持つ惑星が、一つ存在している。

そう、土星である。

そして儀式に記載されていた名前に、手順440-カシエルというものがあったが、このカシエル、孤独と涙を司り、「永遠の王国の統一を説く」天使だとされており、オカルト的逸話では"土星"を司る能天使とされている。
また、同じく儀式の手順430-エピメテウスは、土星の衛星"エピメテウス"から取られたと思われる。
そして手順460-オムファロス、父が子供を喰らうという内容と、土星というキーワードから、一つの考察が浮かぶ。


SCP-2845はローマ神話の主神サートゥルヌスではないか?
土星を司り、農耕神として知られるローマ神話の主神。それこそがSCP-2845の正体ではないか?

手順コンスタンティンとペリナルドは、ローマにおいて最も盛んとされた、サートゥルヌスを奉る祭り、サートゥルナーリア祭を模したものであり、
手順エピメテウスとカシエルは、サートゥルヌスが司る土星から捩ったものである。

ならば手順450-カイロと手順460-オムファロスの内容は何か。
これにも推測できることが一つ。

ローマ神話において、主神サートゥルヌスはギリシア神話の神クロノスと同一視されていたとされるほど繋がりが深い。


このクロノス、自身の父親であるウラノスを去勢して殺害した後に主神の地位を得るも、死に際に「お前も子供に殺されるから覚悟しとけよ」と罵倒を残されてしまい、不安になったクロノスは生まれてくる自身の子供を次々と飲み込んでしまうというもの。有名な絵画である『我が子を食らうサトゥルヌス』がこれである。
後にこれを憂いた妻、レアが最後の赤ん坊を石とすり替え、布に包んでクロノスに飲ませたため、最後の子供は無事成長し、クロノスを倒した。これが後々に変態ジジイと化すゼウスであった。

神とは、人の信仰によって成り立つもの。それを忘れ、傲れるあまりに敵対すれば、当然向こうの怒りを買うことになる。
ましてや此方は人間。神に敵対するには、あまりにも脆すぎる。故に財団はこの神を収容しなければならないのだ。

信仰さえし続ければ、何の危害も犯さない。ある意味では、財団世界の中でまだ救いのあるオブジェクトと呼べるだろう。




SCP-2845


鹿神様(THE DEER)




類似オブジェクト

インディアナ州のとあるモール内に広がる異常空間。
中には人間に敵対的な異常実体がうようよしており、さらに奥に広がる自然空間には、とあるカルト集団が呼び出した神的実体、SCP-4971-▽が居座っている。
犠牲を司る神様らしく、世界中の生け贄等の概念を吸収してパワーアップ、いつか財団世界に進行してくると考えられる。
止めるには世界中の儀式をやめればよいのだが、それには財団の特別収容プロトコルも含まれるらしく、かといって封印するのにもとんでもない代償が........。


余談

記事の最後に、SCP-2845が収容された後を記したTale「October 15th, 2012」を軽く紹介する。

SCP-2845を収容することに成功したものの、あまりの被害のデカさに世界が揺れ動き、とうとう財団や異常実体の存在が明らかになってしまった。

物語の結末は、異常存在を何とかしろと声高にする人々と財団上層部との間に揺れ動き、うちひしがれたサイト管理官の姿を写し、暗い先行きを思わせるものとなっている。

また、SCP-2845の記事の最後から飛ぶことが出来るため、これが正式な記事とするには、あまりにも財団の世界観にそぐわないとして、(ブライト博士の中の人も含めた)多くの作者が、この記事をDVしている。
それでも、現在400を越える数のUVを獲得していることから、このような記事があっても良いという認識で収まっている。


追記・修正は神へのお祈りを済ませてからお願いします。


SCP-2845 - THE DEER
by Djoric
www.scp-wiki.net/scp-2845
ja.scp-wiki.net/scp-2845(翻訳)
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最終更新:2024年04月17日 19:05