一撃必殺!居合いドロー

登録日:2021/02/26 Fri 18:37:53
更新日:2024/01/12 Fri 20:49:24
所要時間:約 9 分で読めます





アニメ『遊戯王デュエルモンスターズGX』に登場したカード。

登場したのは第91話「ワンターンキルの死神」。

一撃必殺!居合いドロー
通常魔法
フィールド上のカードの合計枚数だけ自分デッキからカードを墓地へ送る。
その後カードを1枚ドローする。
そのカードが「一撃必殺!居合いドロー」だった場合、そのカードを墓地へ送り、フィールド上のカードを全て破壊する。
破壊して墓地に送ったカード1枚につき相手プレイヤーは1000ポイントのダメージを受ける。
このカードが発動した時、魔法、罠、モンスターの効果で破壊、
及びこのカードの効果を無効化することはできない。
フィールドのカードを全て破壊し大ダメージという厨っぽさロマンを感じるカード。
アニメ版世界のルールでは初期ライフポイントは4000ポイントなので、(発動した「居合いドロー」自体は除く)自分と相手合わせて4枚以上のカードがフィールドに存在していれば勝利できるということになる。
しかしそのためにはフィールドのカードの枚数分デッキトップから墓地に送った後で同名カードを引き当てなければならない。
考えずともこれが簡単なことではないことは分かるだろう。


橘一角


くらえ!!ワンターンキルゥ!!!

CV:中田和宏

デュエルアカデミアにて開催された大会「ジェネックス」に参加した「死神デュエリスト」の異名を持つデュエルアカデミアノース校の生徒。
死神に憑りつかれて以降は目の下に深いクマができた人相の悪い風貌。
ぶっきらぼうな声の演技もあってどこか声のかけにくさを感じさせる人物。
ワンターンキルに病的な執着を見せている。
元々は効率や勝利よりも「夢とロマンに溢れたデッキを皆に披露したい」というデッキへの愛情でデュエルに取り組んでいたファンデッキガチ勢。
一角もこのカードにロマンを感じデッキに採用、ワンターンキルコンボを成功させるべく工夫を凝らしてデッキを構築していた*1
だがいくら工夫や努力を重ねても引きに恵まれず、周りからも小馬鹿にされ苦悩する日々を送っていた*2

そんな彼はとうとうノース校に封印されていた「死神のカード」と契約し、自らの魂を犠牲にドローパワーを強化するという禁じ手に出てしまう。
そうして死神のドローパワーの宿った右手で1ターンキルを確実に成功させ続け、ジェネックスを荒らし回っていた。

その最中、死神デュエリストの噂を聞きつけた十代達が現れる。
主人公補正「天然のドローパワー」を持つ十代の存在を知っていた一角は嫉妬心から激昂し、十代にデュエルを挑む。

死神の力により後攻1ターン目にして早くも「居合いドロー」を成功させる一角。
しかし「破壊して墓地に送ったカードに応じてダメージを与える」効果であった故に《ヒーロー・メダル》*3によって1ターンキルを回避されてしまった。
さらに返しのターンでは十代が持ち前のドローパワーで《融合》を引き当て、すぐさま反撃を許してしまう。
これを見た一角は

いいよなぁ・・・ドローに恵まれてるやつはよ・・・

と恨み言を零す。
デュエルを見ていた万丈目からは死神と契約し、魂を犠牲にしてまでジェネックスで勝ちたいのかと非難される。

だが対戦していた十代は非難しなかった。
むしろ一角が「魂を賭けるほど自分のデッキを愛している」ことを指摘。
「勝利が欲しかったのはデッキを認めてほしかったから」だということ、そして「対戦相手をワクワクさせたくてデッキを構築していた」ことを見抜く。
そして十代は「お前ほどデッキを愛しているなら、デッキは応えてくれる」と言葉を贈る。
それにより一角は自分がどんな想いでデッキを構築していたのかを思い出す。

そうだ・・・俺はただ、夢に溢れたデッキを作ることに真剣だったんだ・・・
この、愛するデッキをみんなに見せたかっただけなんだ!

十代の言葉を受け、自分のデッキが応えてくれることを信じると決めた一角は首から下げていた死神のカードを引きちぎり、夜空へ投げ捨てながら叫ぶ。

俺はデッキを信じたい!デッキが俺に語り掛けてくる!
デッキとデュエリストは一心同体!他人が入る余地はないとな!!

さらにデュエルディスクを付け替えて死神の力が宿っていない左手でドロー、見事「居合いドロー」を引き当てることに成功した。

ありがとう、俺のデッキ!

不器用な人間の、だが確かな愛情を感じるシーンである。


ファンデッカーのあり方や努力やその苦悩、デッキとの絆・向き合い方を描いたこの回はGXでも屈指の人気回の一つ。
このカードのOCG化を望む声も多かったが、単発のゲストキャラの使用カード故に長らくそれは叶わなかった。

しかしPSPゲーム「TAG FORCE」シリーズでは一部のアニメオリジナルカードが使用可能となっている。
「一撃必殺!居合いドロー」も「TAG FORCE 2」から登場した。
こちらでは初期ライフがOCGと同じく8000ポイントのため1ターンキルの難易度はアニメ以上に高い。
しかし墓地を肥やしながらドローできるというだけでも十分に強力であり、専らそちら目的で利用されることが多かった。
その性能をスタッフもしっかり危惧していたようで、TF版のこのカードには発動時に手札1枚を捨てるコストがつけられている。

OCG化


アニメでの登場から12年、「COLLECTORS PACK 2018」にて遂にファン待望のOCG化が実現した。

一撃必殺!居合いドロー
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):手札を1枚捨てて発動できる。
相手フィールドのカードの数だけ自分のデッキの上からカードを墓地へ送り、
その後自分はデッキから1枚ドローし、お互いに確認する。
それが「一撃必殺!居合いドロー」だった場合、
それを墓地へ送り、フィールドのカードを全て破壊する。
その後、この効果で破壊され墓地へ送られたカードの数×2000ダメージを相手に与える。
違った場合、自分はこの効果でデッキから墓地へ送ったカードの数だけ、
自分の墓地のカードを選んでデッキに戻す。

ダメージがOCGの初期ライフに合わせて倍化。アニメと同様に1ターンキルも狙いやすくなった。
だがそれに加えて墓地肥やし+ドロ―という性能がやはり危険視されたか、TF版同様に手札コストが付けられている。
さらに墓地送り枚数を決める際の参照先は相手フィールド上のカードのみになった。

また「居合いドロー」のドローに失敗すると墓地のカードをデッキに戻す効果が追加され、単純な墓地肥やしカードとしては使用できなくなった。
ただし戻すカードは「居合いドロー」の効果で墓地に送ったカードである必要はない。
墓地にあった方がいいカードとデッキに戻した方がいいカードを選択できるのでこれはこれで利用価値がある。

なおトークンやペンデュラムモンスターは破壊されても墓地へ送られないため、墓地送り枚数にはカウントされるがダメージにはカウントされない。
効果破壊に耐性を持つモンスターもやはりダメージ源の方にはカウントされない。


運用方法

当たり前だが、考えなしに発動しても成功率は極めて低い。
「デッキの一番上のカード」を操作するカードはそれなりにあるが、このカードの場合は最初にデッキトップのカードを墓地に送る処理が挟まる。
1ターンキルを狙うなら「デッキの上から5枚目以降のカードを居合ドローにするコンボ」が必要となる。

ただあれから12年の間にカードプールも変化し、「ディフォーマー」や「森羅」などデッキトップ操作を戦術に組み込めるデッキも登場した。

またこの手のロマンカードには珍しく、外れてもドローしたカードを捨てるなどのリスクはなく、負うディスアドバンテージは1枚分のみ。
そのため「相手フィールドのカードの数まで、デッキトップのカードと墓地のカードを入れ替える」カードとみなすこともできる。
ヴォルカニック」でバレットやバックショットを回収しつつマガジンが落ちればラッキー、みたいな運用も可能。
意外なところでは不死鳥軸の【ラーの翼神竜】デッキにも入る。
そちらでは手札コストも含めて墓地肥やし能力で不死鳥を墓地に送り、デッキに戻す効果で墓地の《ラーの翼神竜》を戻す、とかなり理想的に噛み合う。

このように「デッキと墓地を操作するカード」とみなす場合は、ドロー成功時のバーン効果は当てにしなくても良い。
極論を言えばデッキに1枚しかなくても使い道はある。夢とロマンは犠牲になったのだ……
ただし墓地肥やしとして見た場合は、枚数は手札コストの1枚しか増えない点、相手依存で不安定な点は注意が必要。

このようにまずまずの確率で1ターンキルを成功させることもでき、失敗しても墓地操作として利用できる等、案外悪くない評価を受けていた。
その他、デッキを掘り進めまくった後に《ゴブリンのやりくり上手》などのデッキボトムを操作するカードを使用。
確実に「居合いドロー」をドローするという戦法も考案された。
総合すると1キル特化カードにありがちな「1キルしかできなくて嫌われる」要素が意外と少ないカードと言える。
むしろ1キルも狙える面白いコンボカードでありながら、原作再現もできる良カードになっている。

そうしてリアル橘一角らの研究の元、ロマンカードとして愛されていた。


日本では。



未界域との遭遇

OCGでの《一撃必殺!居合いドロー》の登場から少し後のことである。
海外の遊戯王TCGでは「Danger!」というシリーズカードが登場していた。
後に日本で「未界域」と名付けられたこのカード群はデッキ圧縮・墓地肥やし・大量特殊召喚に優れた凶悪なデッキとして環境を席巻した。
そしてこれにデッキボトムを操作できる《鎖龍蛇-スカルデット》が組み合わさるとどうなるか。
デッキを掘り進めて残り枚数を調整し、「居合いドロー」の効果でデッキボトムに仕込まれた「居合いドロー」をドローすることが容易となったのだ。
OCGとのカードプールやリミットレギュレーションの違いも加わり「Danger!」デッキは大増殖。
《一撃必殺!居合いドロー》は文字通りの一撃必殺の強カードとして猛威を振るうようになってしまったのである。

その結果、なんと2019年1月に海外のリミットレギュレーションで制限カード入りをしてしまった。
このカードでダメージを与えるにはほぼ必然的に2枚以上デッキに投入することが求められるため、事実上1ターンキルが封じられたことになる。
何らかの方法で発動後チェーンして「居合いドロー」をデッキに戻してやれば一応可能にはなるが、狙ってやるのは極めて難しい。

後に「未界域」は日本でもOCG化されたが、このコンボを警戒されたのか*6、来日直後に《鎖龍蛇-スカルデット》が制限カードに指定された。
この改訂では他にも「未界域」と相性がいい《ソウル・チャージ》も禁止カードに指定されている。
海外とは諸々の事情が違うためか「未界域」はあちらほど猛威を振るうことはなく、コンボ自体は危険視されつつもロマンカードの部類に収まっている。



追記・修正は死神の手を借りることなく自力でワンターンキルを達成してからお願いします。

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最終更新:2024年01月12日 20:49

*1 彼のデッキにはデッキトップのカードの順を並び替えられる《大王目玉》やそれを補助する《月の書》《太陽の書》、「居合いドロー」を再利用するための《魔法再生》《デスグレムリン》《現世と冥界の逆転》、万が一トドメを刺しきれなかった場合のための《不死のデスロード》とそれをリクルートする《キラー・トマト》といったカード、デスロードを始めとしたモンスターの火力補助の《巨大化》、墓地のモンスターを再利用するための《死者転生》、用途は不明だがおそらく名前繋がりかつ運次第で相手モンスターを破壊できる効果で採用された《一撃必殺侍》が投入され、コンボ成功に特化させつつもそれで勝てなかった場合も折り込まれた見事な構築になっている。

*2 作中の描写を見るに、ファンデッキ制作時にありがちな「あれもこれも入れたくなってコンセプトが迷走する」病に罹っていた様子。

*3 破壊された時、墓地へ送られずデッキに戻りその後ドローする効果を持つ罠カード。なおこのカードはOCG版では墓地に送られた後でデッキに戻る効果に変更された。

*4 魔法カードの発動に対して発動し、自分フィールドのカードを全て除外する。その後カードを1枚ドローし、除外したカードの中にドローしたカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)のものが存在していれば、その中から1枚をフィールドに戻すことができる。

*5 ただしOCGのルールだとこの場合、チェーン処理が完了するまで《緊急回避》はフィールドに残ってしまい、「居合いドロー」の効果で破壊されるためそのダメージで十代は敗北してしまう。

*6 「居合いドロー」がなくともそもそも「未界域」との相性が良いカードであった。