イロウル(新世紀エヴァンゲリオン)

登録日:2021/04/17 Sat 00:28:02
更新日:2024/02/21 Wed 14:19:14
所要時間:約 9 分で読めます





人工知能により、自律自爆が決議されました。


始まったの!?


自爆装置は、三者一致の後、02秒で行われます。


自爆範囲は、ジオイド深度マイナス280、マイナス140、ゼロフロアーです。


特例582発動下のため、人工知能以外によるキャンセルはできません。


イロウル(IRUEL)とは『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する謎の生命体「使徒」の一体。
登場したのはTVアニメ版のみで、漫画版・新劇場版には登場しない。

+ 目次

基礎データ

呼称:第11使徒
天使名:イロウル
全高:増殖する為、特定の大きさがない。(1体1体は超小型)
体重:全高同様に増殖する為、特定の重さがない。*1
象徴:恐怖
能力:自己進化・侵食


概要

第3新東京市地下のNERV本部にて、彼らを敗北寸前まで追い詰めた使徒の一体。
名前の「イロウル」はキリスト教ユダヤ教の伝承にある「恐怖の天使」である「イロウエル」の名に由来する。実際作中でイロウルが行った行動は「恐怖」以外の何物でもない為、モチーフに非常にあっていると言える。
ただし他の使徒同様劇中では天使名で呼ばれることはなく、主に「第11使徒」と呼称される。

本編では時折赤や橙色に発光する黒い染みといった形でしか見られないため、当時のカードダスなどでのデザインは模擬体を乗っ取った時の赤黒い体色に欠損部位からは絡み合ったコードのようなものが露出しているトルソー型の姿が採用されているが、『新世紀エヴァンゲリオン2』の説明書*2では染みではなく腕そのものといった容姿で掲載されているのでこちらが本来の姿かもしれない。
いずれにせよ「恐怖の天使」という事をよく表した風貌だろう。

能力

この使徒の能力は
  • 増殖
  • 異常な速さの自己進化による学習と環境適応
  • ハッキング
の3つである。

単一の個体ではなく、細菌サイズの使徒の集合体でA.T.フィールドも他の使徒と異なり、複数の小さなフィールドが張られるという形で使われている。
コア等がどこにあるのかは不明。というか、コアへの攻撃で倒す場合は増殖したイロウル1体1体に攻撃するのか、それとも母体となる存在がいるのかは不明。
始めは蛋白壁上に十数個の小さな染みとして登場し、接着部の温度や伝導率を多少変化させる程度だったが、自己の能力を併用しつつ壁を侵食しながらどんどん増殖していった。

しかし増殖以上に恐ろしいのが自己進化能力。
発見当初は不得手としていたためにオゾンの噴出箇所へ近寄らなかったが、集中的な注入を受けた事から短時間で自身の体質を変化させ、オゾンが害にならなくなったどころか、逆に自己の増殖の為に積極的に摂取し始めるというとんでもない芸当を見せる。

また侵食と自己進化のなせる業か、最終的にはコンピュータの電子回路を自身の肉体で再現し己の肉体をスーパーコンピュータ化。
ナノマシンの様に電子デバイスに取りついた後にものすごい速度でハッキングを開始し、NERVのシステムの大半を短時間で乗っ取る事に成功している。

「サイバーテロ」という、これまでの使徒と全く異なる角度からの攻撃に、NERVはパニック状態に陥ることとなった。*3

またこの侵食という性質上、直接コアを狙って攻撃することになるエヴァの攻撃は恐らく有効打にはなりにくいと思われる。それどころか逆に侵食に成功すれば形勢があっという間に逆転してしまうため、迂闊に手を出すことが出来ない。

ぶっちゃけゼルエルが物理面における最強の使徒ならば、イロウルは知能面における最強の使徒と言っても過言ではない。
むしろ、ゼルエルが司令部を破壊してもサードインパクトまで更に時間を要しただろう点を考慮すると、総合的なサードインパクトへの到達具合はそのゼルエルを差し置いてダブリスに迫るものと思われる。


増殖

短時間で爆発的に増加する。
弱点すらたちまち克服してしまう為、変に駆除を試みようものなら逆にその手段を増殖の手助けとしてしまう可能性が高い。

侵食

対象に取りつき、その機能を乗っ取る。
作中ではこれを電子デバイスに対して使用し、ハッキングを行っていった。

自己進化

イロウル最大の能力。
自身の弱点の克服やハッキング速度の向上など、極めて高い知能によって自己の進化を促進している。

A.T.フィールド

使徒の共通能力。
イロウルの場合、大きく強力な1枚のフィールドではなく、比較的脆弱で小さいフィールドを複数枚同時に張っている。
また形状も独特で、他の使徒が八角形なのに対してイロウルは正六角形のフィールドを展開する。(他の事例としてはラミエルのA.T.フィールドも六角形に展開された事がある。)


劇中での活躍

TVアニメ版

第拾参話に登場。

NERV本部内に3日前から設置されたシグマユニットD-17の第87蛋白壁にくっついており、プリブノーボックス内でパイロットたちが模擬体による実験をしていた所で行動を開始。

当初壁の異常に青葉達が気付いた際は劣化による「浸蝕」が原因だと考え、そのままにしていたが、浸蝕部は増殖し、汚染警報が発令。
テストを中止してパイプの一部閉鎖して対応を試みるが、増殖は止まらない。

それどころかレイの模擬体を侵食されてコントロールを奪われかける(リツコの外部操作で腕部を引きちぎった為、未遂に終わったが)といった異常事態も起きる。
そこからパイロット側の安全を考慮してエントリープラグを強制射出し、そのままレーザー迎撃を行う。しかしイロウル側がA.T.フィールドを展開し、これによりその正体が使徒だと露見する。

被害を抑えるため、セントラルドグマからシグマユニットを強制隔離。

碇ゲンドウは使徒のNERV侵入を許してしまった事実が外部に漏れないように工作する事を指示しつつ、エヴァ3機が侵食される事態を避ける為に無人状態で機体を屋外へ排出*4


大深度施設はイロウルに占拠され、エヴァでの戦闘は現状不可能。
NERVは「人の力」のみでイロウルと対峙することとなった。


初めイロウルは殺菌用にオゾンが散布されていた区画を避けていたため、オゾンの注入を開始。
始めこそ減少しつつあったが、すぐにそれを克服。なんと逆にオゾンを自らの増殖のために利用し始めたのだ。

イロウルの猛攻は留まる事を知らず、今度はNERVのサブコンピューター内に侵入し、システムのハッキングを開始。この際イロウルの光学模様が変化し、光のラインが電子回路の様な物に変化している。*5


サブコンピューターからコンピューター内に侵入したイロウルはメインバンクを介してMAGIシステムへの侵入を開始。
I/Oシステムをダウンを試みるもやはり上手く行かず、イロウルは手始めにMAGIの3つの人工知能のうちMELCHIOR(メルキオール)に侵入。
イロウルは乗っ取ったMELCHIORを通じて「自爆決議」を提訴するも、他の2基の反対で否決。今度はそのBALTHASAR(バルタザール)とCASPER(カスパー)を乗っ取って可決に持ち込み、NERVの自爆で邪魔者を排除した上で悠々とアダムへの接触する事を目論む。

それによりBALTHASARがじわじわ浸食されていく中、リツコがBALTHASARのロジックモードをシンクロコード15秒単位にする事で演算速度を落とさせる。『浸食速度が乗っ取る相手の演算速度に比例している』とリツコは推測したのだが、果たしてその通り、侵攻は鈍化した。
とはいえこれもあくまで時間稼ぎ。2時間もすればイロウルの侵攻はBALTHASARの完全な乗っ取りで元の速度へ戻ってしまう。


イロウルへの対抗方法を模索するゲンドウたち。
ミサトは「死なばもろとも」が最も確実としてMAGIの物理的消去でイロウルを道連れにする案を出すが、それは「本部の破棄」に近いアクションであるため、リツコたちは反対。
今回の一件は技術部の責任であるとして、別の案を提案。
それは「進化の促進」である。
進化を促進するプログラムをイロウルに適用させることで、進化の終着点、即ち「死」へと至らしめる。
より具体的には現状唯一侵攻されていないCASPERを使徒に直結、逆ハックを仕掛けて、イロウルが完全に占拠しきる前に自滅促進プログラムを完成させ、送り込むというもの。
作戦通り死滅させることができなくとも、イロウルが死を効率的に回避するためにMAGIと共存すること選び無害化する可能性も期待できる。
防御壁の解放はリスキーな選択だが、現状これ以外の対抗策はない。

リツコは秘匿されていたMAGIの格納エリアを開放。
その中にはMAGIに関する情報等がメモ書きされていた。(「碇のバカヤロー!」といったメモまであったが。)

これらの情報を元に、リツコはマヤと共に活動を開始。


一方、イロウルの活動がついにBALTHASARを完全に乗っ取った事で再び活性化し、、CASPERもあと20秒で完全に占拠されるという絶体絶命な状況に。


電子音声が無情にカウントダウンを進めていき、10秒を切る。


リツコ、急いで!!

自爆装置作動まで、10秒、

大丈夫。1秒近く余裕があるわ。

9秒、8秒、

1秒って……

ゼロやマイナスじゃないのよ。

7秒、6秒、5秒、

マヤ!

行けます!

4秒、3秒

押して!

2秒、1秒、0秒、



リツコは時間ギリギリで進化促進プログラムを完成させ、即座に実行。
その結果……。
















人工知能により、自律自爆が解除されました。


なお、特例582も解除されました。MAGIシステム、通常モードに戻ります。







侵攻は止まった。

イロウルは進化の果てに待つ死へと追いやられたのか、それともMAGIとの共生によってそのトゲを抜かれたのか、どちらの道をたどったのかは定かではないが、いずれにせよ危機は去ったのだった。

因みに全裸のシンジ達3人はエントリープラグ内から出してもらえなかった為、イロウルの襲撃を受けたことさえ知らずにいた。

リツコはミサトの入れたコーヒーを飲みながら、MAGIの秘密を打ち明ける。

MAGIは開発者であり、リツコの母親である赤木ナオコが、自身に内在し、せめぎ合っていた「科学者としての人格」「母親としての人格」「女としての人格」をそれぞれMELCHIOR、BALTHASAR、CASPERに投影したもの。

最後まで持ちこたえたCASPERに対してリツコは「最後まで女でいることを守った」と回顧したのだった……。


生き残った使徒?

この項目内にも記した通り、劇中で示唆された可能性は「進化の終着点である『死』に到達する」、もしくは「MAGIと共生する形で自身を無害化させる」の2択があるが、イロウルがそのどちらの道を辿ったのかは明確に記されていない。*6
もし後者の選択肢を取っていた場合、イロウルは滅びることなくMAGIの中で生き延びていた事になる。自身の弱点克服の早さを考えれば十分あり得る物である。
ただし、あくまで旧劇以前までの話であって、サード・インパクトによる人類補完計画後には大地は更地へ、建物跡は瓦礫へと変わり、共生相手だったMAGIも跡形もなく消え去っていることを考えるとイロウルも死んでいるものと考えられる。


他作品での活躍

新世紀エヴァンゲリオン2

チュートリアルシナリオの『使徒、襲来』以外だと庵野AIがシリアスモードの時のみ襲来。
原作通りエヴァでの戦闘ではなくリツコが対応する事になるが、リツコのA.T.が低いとプログラムの作成が上手く行かず滅茶苦茶苦戦する事になる。
幸いその性質上、襲来してからしばらく猶予があり司令部とマギシステムエリア間は移動可能でNPCとの会話もできるので、パイロットシナリオの場合リツコのA.T.を上げるようにしたい。
序盤はA.T.もインパルスも低いのでできるだけ中盤以降に襲来するように調整したい所だが最難関シナリオの『シバムラティックバランス』では序盤からシリアスモードが連発しやすくなっているため、序盤に襲来し、NPCの心理状態も最悪なためA.T.を上げる事もできず……といった状況に陥り、事実上詰む事があるので序盤に襲来したらリセット推奨。

エヴァンゲリオンANIMA

他の使徒達のほとんどがエンジェルキャリアーの使徒幼生*7として復活する中、唯一作中に登場せずに登場人物からの言及もされないという不遇な扱いを受けている。
最も使徒幼生として復活するには一度完全に滅ぼされていなければならず、MAGIの中で生き延びていた為に登場しなかったという可能性もある。


余談

侵食を利用する使徒はこの後もバルディエルアルサミエルと続くが、「エヴァ本体を狙わない」「サイバーテロ」「エヴァと戦闘しない」「人間に倒された初にして唯一の使徒」など、他の使徒に比べるとイロウルには異質な点が多い。

あまり関係ない話だが、MAGIの決議方式が全会一致だった為に今回の勝負に勝利することが出来たが、もし仮に全会一致ではなく多数決であった場合、MELCHIORとBALTHASARを乗っ取られた時点で自爆が決定するという恐ろしい事態になっていた。

「女としての自分を守った」ことで自爆を免れたCASPERだが、AirではそのCASPERが、同じく「女としての自分を守った」ことによってリツコが絶望へ叩き落されている。しかもその際に再び自爆を阻止している。
もしイロウルが生きていた場合、もしかするとこの時に何かしらの暗躍をしていた可能性も……。






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最終更新:2024年02月21日 14:19

*1 サイズ的に見て、かなり軽いと思われる。

*2 全ての使徒のデザイン画が掲載されている。

*3 物理的な攻撃手段についてはイロウル自身にはないが、未遂で終わったとはいえプリブノーボックス内のエヴァの模擬体に取りついての攻撃を試みている。

*4 この際、排出順として初号機を優先する事を指示し、最悪の場合零号機・弐号機は破棄する様に指示している。

*5 NERV側は当初このサイバー攻撃を外部の人間の仕業と考えたが、逆探知によって使徒がそれを行っていると知って驚愕していた。

*6 発光部が消える演出があるが、これだけでは死んだとは断言できない。

*7 要は再生怪人