2012年第60回阪神大賞典

登録日:2021/06/26 (土) 18:36:40
更新日:2024/04/26 Fri 18:02:52
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あんな競馬をしてまでも勝ち切るのか!?

オルフェーヴル、そこまで強いのか!?



2012年第60回阪神大賞典とは、一応ギュスターヴクライが勝ったレースである。


馬番


枠番 馬番 馬名 騎手
1 1 ギュスターヴクライ 福永祐一
2 2 ヒルノダムール 藤田伸二
3 3 トウカイトリック 幸英明
4 4 ジャガーメイル 四位洋文
5 5 コスモヘレノス 柴田大知
6 ナムラクレセント 和田竜二
6 7 ビエナファンタスト 木幡初広
8 コパノジングー 藤岡佑介
7 9 リッカロイヤル 秋山真一
10 ビートブラック 浜中俊
8 11 オウケンブルースリ 安藤勝己
12 オルフェーヴル 池添謙一


荒れ狂う三冠馬

2011年、日本が未曽有の大災害に襲われた年に現れた三冠馬オルフェーヴル。
彼はその高い実力もさることながら、から受け継いだまさしく「暴君」というべき気性難でも有名であった。
新馬戦では装蹄所で暴れ、三冠をとった菊花賞ではゴール後に騎手を振り落とした
それでも彼は強い競馬で暮れの有馬記念でブエナビスタやヴィクトワールピサといった強豪を粉砕し、ナリタブライアン以来となる3歳四冠を達成して2011年シーズンを終えた。
そして2012年の始動戦として迎えたこのレースで、オルフェーヴルは後世まで語り継がれる珍レースを披露する

迎えたレース本番、オルフェーヴル以外は昨年の春天を勝ったヒルノダムールが2番人気にいるくらいで、前走のダイヤモンドS2着で重賞未勝利のギュスターヴクライが昨年の同レースの覇者ナムラクレセントや2年前の春天馬ジャガーメイル、4年前の菊花賞馬オウケンブルースリらを抑えて3番人気になる程度に大したメンツがいない・実績はあっても既に衰え気味という馬が多く、オルフェーヴルの独壇場間違いなしと思われていたが…。


負けてなお強し…?

しかし、なにやらオルフェーヴルの様子がおかしい。随分イレ込んでいるし、パドックや返し馬でもうるさい様子を見せている。なんかちょっと不安もある感じだったが、こいつの気性難は今更な話だし、それでも強い競馬を続けてきたのがオルフェーヴルだったのでさしたる影響はないだろうとオッズ1.1倍の圧倒的1番人気に支持された。

そしてレースがスタート。
リッカロイヤル、ビートブラックといった逃げ馬たちがハナを取り先導する中、オルフェーヴルは終始掛かりっぱなしで走り続ける。
それでも池添騎手が何とかなだめ、3番手くらいの位置につく。
そのままその辺りで折り合いがつくかと思われたが、1000m64.9秒というスローペースにしびれを切らしたナムラクレセントが早めに仕掛けると、オルフェーヴルもそれに乗っかってしまい、口を割るほど掛かってしまう。
池添も必死に宥めるが効果はなく、向こう正面で我慢がきかずに先頭に立ってしまった。

そして第3コーナーの入り口で事件発生。


まさか、まさかのアクシデント発生か!?

オルフェーヴル、脚でも痛めたのか!?後退した!


なんと掛かったままコーナーを曲がり切れずに外ラチへ大逸走、池添が慌てて手綱を引いたため失速してしまう
故障かと思われるほどの失速に場内は騒然、まさか沈黙の日曜日の再来かとファンは肝を冷やしただろう。


なんと、こんな姿だけは見たくなかったオルフェーヴル…!



…しかし、故障なんてことはなく、オルフェーヴルは再び加速、コースに復帰する。
一方ほぼ同じタイミングで失速したリッカロイヤルは本当に故障していた。


もう一回巻き返してくる!

これはすごいレース!とんでもないレースになった!


その後も大外からぐんぐん加速、上がり3F36.7秒の末脚を繰り出してなんとそのまま先頭に並びかけるアンカツ「オルフェ戻ってきよったー!?」
内を通ってロスなく競馬をしたギュスターヴクライに猛然と襲い掛かりこれには鞍上の福永も思わず二度見するほどビックリ、一完歩ずつ懸命に駆け寄る。

…しかし、さすがに疲れてしまったようで、結局ギュスターヴクライに半馬身届かず、オルフェーヴルは2着に敗れた。

レース後、池添騎手は「他の馬より100mは余計に走った」と語り、それでも2着まで巻き返したオルフェーヴルを「化け物だと思った」と言っている。

漫画みどりのマキバオー」、特に珍馬ベアナックルが菊花賞で見せた荒業のような珍レースを見せたオルフェーヴル、その冗談みたいな走りからこのレースは阪神大笑点と呼ばれるようになり、主にネタ的な意味で後世に語り継がれることとなる。
一部のファンはこれがオルフェーヴルのベストパフォーマンスだと言う人も。それはさすがに違うんじゃ…


その後

しかし、さすがにこんなレースをしてJRAのお咎めを逃れられるはずもなく、オルフェーヴルはG1馬としては前代未聞の調教再審査を食らってしまった。
ここは普通に通過したものの、続く天皇賞(春)でも1.3倍の圧倒的1番人気を背負ったが、再審査が響き調整が上手くいかず最悪のコンディションで挑むこととなってしまい、騎手が何をしても全く動かないというあまりにもらしくない大凡走で11着*1に大惨敗約150億円の馬券を紙屑にした。ちなみにこちらは阪神大賞典では10着に終わった単勝159.6倍の18頭中14番人気のビートブラックが差しに来たトーセンジョーダンを退けて逃げ切り、初重賞初G1勝利を飾った。
この連敗により三冠馬としての実力に疑問符が浮かび始めたものの、その次の宝塚記念では当然のように圧勝。汚名返上を果たした。
その後のオルフェーヴルは凱旋門賞でササって負けたりジェンティルドンナにぶっ飛ばされたりしたが全レースで連対という優秀な成績を残した。

一方、勝ったギュスターヴクライはこれ以降も天皇賞(春)5着、京都大賞典3着と好走は続けるも勝利をあげられず、結局この年のアルゼンチン共和国杯で故障により引退。
現在は滋賀県東近江市にある牧場Vigorous Stableにて余生を送っている。

6着となったトウカイトリックはディープインパクトと同期の馬で、今回の出走により三冠馬2頭とレースをした偉業を達成
その後2014年1月まで現役を続け、引退後誘導馬になるための訓練をしていた2014年4月に訓練中の事故により予後不良となり他界した。

準OPでくすぶりながら走り続け、およそ4年ぶりのG2レース出場だったリッカロイヤルはひっそりと競走中止。そのまま引退となった。
種牡馬を経て鹿児島のホーストラストでやはり余生を過ごしている。


余談

最後の直線のシーンをよく見てみると、抜いていった馬の騎手たちがみんなオルフェーヴルを二度見しているのが分かる。
勝ったギュスターヴクライの鞍上の福永騎手に至っては大爆笑である。そりゃそうだ

漫画『馬なり1ハロン劇場』では、単行本『2012春』収録の「6人の逸れる男女」と巻末漫画にて題材に。
内容は大賞典後のオルフェーヴルが逸走の件で法廷に出廷するというもので、題名はオルフェーヴルと彼を弁護しに現れた父ステイゴールドら5頭の斜行経験馬から来ている。元ネタはアメリカのドラマ「十二人の怒れる男」か。

勝ち馬のギュスターヴクライの母ファビラスラフインはエアグルーヴを抑えて秋華賞馬になり、続くジャパンカップでシングスピールとの叩きあいの末に3歳牝馬で2着入賞という実績を残した名牝で、ギュスターヴクライの阪神大賞典が産駒唯一の重賞勝利となった。


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最終更新:2024年04月26日 18:02

*1 ヒルノダムールと同着。