デイガ/シータ/ネクラ/ラッカ/アナ

登録日:2022/04/22 Fri 23:43:00
更新日:2023/11/18 Sat 00:09:38
所要時間:約 6 分で読めます




デイガ/シータ/ネクラ/ラッカ/アナとは、世界初のTCG『Magic the Gathering』に登場する、5つの謎のギルドのことである。

概要

インベイジョン・ブロックのカードセット「アポカリプス」で登場。いずれもドミナリア次元に存在する魔術師のギルドであり、「自分たちの敵対魔法を研究するという異端のギルド」である。
MtGで「ギルド」と聞くとラヴニカのギルドが有名だが、これらのギルド含めいくつかの次元にギルドが存在する*1*2

異端のギルドであるためか、自分たちの聖域に篭り、敵対魔法を研究していたが、ファイレクシアによる侵略時にドミナリア連合の戦力として活躍した、という設定。
ただし背景小説にはまったく登場しておらず、当時公式サイトでちょろっと言及されただけというヴォーソス(背景世界を好むプレイヤー)でも知っている人の方が少ないめちゃくちゃマイナーな存在。

それぞれのギルドのカードは例外除き3枚で、それぞれがサイクルである。そのため、これらのギルドは3×5=15に例外1枚を加えた16枚のカードでしか描かれていない。
ストーリーでの活躍も乏しく、MtGの広大な歴史に埋もれた存在…であるのだが、じつはとある界隈のおかげで、意外と知名度は高い。詳しくは後述。

ゲーム的にはどのサイクルも単色のカードであるが、「敵対魔法を研究する」という設定にのっとり、自身の対抗色2色に関連した能力を持つという特徴がある。

ギルド一覧

デイガ/Dega

の魔術師が属するギルド、対抗色である黒と赤の魔法を研究している。聖域には祭壇があり、祭壇の上にはたくさんの黒色と赤色の蝋燭がおいてある。
名前の由来については、会議中にホワイトボードに適当に書かれた言葉が由来であり、完全な造語らしい。

シータ/Ceta

の魔術師が属するギルド。対抗色である赤と緑の魔法を研究している。聖域は岩肌を流れる滝の滝つぼのような場所。
名前の由来は、クジラ目を意味する「Cetacean」という言葉より。

ネクラ/Necra

の魔術師が属するギルド。対抗色である緑と白の魔法を研究している。聖域は怪しげな墓地。
名前の由来は、「死体」を意味するギリシャ語の「Neckros」という言葉より。「ネクロマンサー」のネクロの部分などと同じ。「根暗」ではない。

ラッカ/Raka

の魔術師が属するギルド。対抗色である白と青の魔法を研究している。聖域は大きなかがり火で、おそらくシャーマンのように集まっていたのだろう。
名前の由来については、デイガ同様造語だが、「Gnar」という言葉が候補に挙がっていた。最終的にこれは緑の種族「ナール」として利用された。

アナ/Ana

の魔術師が属するギルド。対抗色である青と黒の魔法を研究している。聖域は森の中の水場。
名前の由来は、ラテン語で「魂」を意味する「Animus」という言葉より。候補の1つにほんとうにすごいんだ!「Maro」なんかもあったらしい。

サイクルについて

サイクルはレア、アンコモン、コモンそれぞれに存在する。前述したとおり、いずれも単色で、対抗色2色に関する効果を持つ。

ボルバー

ラッカボルバー/Rakavolver (2)(赤)
クリーチャー — ボルバー(Volver)
キッカー(1)(白)/(青)(あなたがこの呪文を唱えるに際し、あなたは追加の(1)(白)か(青)またはその両方を支払ってもよい。)
ラッカボルバーが(1)(白)でキッカーされていた場合、それはその上に+1/+1カウンターが2個置かれた状態で戦場に出るとともに「このクリーチャーがダメージを与えるたび、あなたは同じ点数のライフを得る。」を持つ。
ラッカボルバーが(青)でキッカーされていた場合、それはその上に+1/+1カウンターが1個置かれた状態で戦場に出るとともに飛行を持つ。
2/2

レアのサイクル。それぞれの対抗色に関するキッカー(追加コスト)を持つクリーチャー。クリーチャー・タイプはいずれもこのサイクル専用の「ボルバー」である。
設定上はギルドの魔道士たちが敵対魔法を練りこんで作り上げたクリーチャーらしいが、前述の通りそもそも5つのギルド自体が背景ストーリーにまったく出てこないこともあり、完全に設定だけ存在しているドマイナーなタイプである。
かれこれ20年ほど一切再登場していないが、最近のMtGはマイナーなタイプの復活がちょくちょくあるので、どこかでひょっこり出てくるかもしれない。

最大の特徴はキッカーコストを2つ持っており(ダブル・キッカー)、どう支払うかによって能力が変わる点。前者は2個、後者は1個の+1/+1カウンターと、色に応じた能力を持つ。
このコスト支払いに応じて「かなり重いが両方の能力と大きなサイズ」「そこそこ重いがどちらか片方の能力とそこそこのサイズ」「それなりに軽いが無能力」を使い分けることができるという極めて高い柔軟性が特徴。
キッカーで支払うマナの量と乗せるカウンターの数がズレているのは意図的なもので、キッカー1つのみで出した際にどちらのコストを支払ったか後々判りやすくするため。「2個乗ってれば能力はこっちだけ」みたいな感じ。
能力はそれぞれ、白マナで「魂の絆」能力、青マナで飛行、黒マナで3点ライフ支払いの再生、赤マナで先制攻撃、緑マナでトランプルとなっている。

トーナメントでの活躍が著しかったのが、赤+白青の《ラッカボルバー》。これは赤白青という色の組み合わせが当時から強く、そこにがっちりハマったからという理由だったようである。
逆に得られるものがしょぼい上にサイズも小さかった青+赤緑の《シータボルバー》は見向きもされなかった。
キッカー持ちクリーチャー全体に言えるが、いずれのボルバーもモミール・ベーシックで出てくるとキッカーを絶対に支払えないためただのバニラとなってしまう。まあ3マナ2/2バニラはスペック的には弱い方とはいえ、とりあえずの戦力になるだけマシか。

聖域

ネクラの聖域/Necra Sanctuary (2)(黒)
エンチャント
あなたのアップキープの開始時に、あなたが緑のパーマネントか白のパーマネントのいずれかをコントロールしている場合、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、1点のライフを失う。あなたが緑のパーマネントと白のパーマネントをコントロールしている場合、代わりに、そのプレイヤーは3点のライフを失う。

アンコモンのサイクル。特定の色いずれか1つのパーマネントをコントロールしていれば効果が誘発し、さらにどちらの色のパーマネントもコントロールしていれば、効果が強力になる。
多色のカードであれば、一発で条件が満たされる。例えば、上の「ネクラの聖域」なら、緑白や黒緑白のカードが1枚でもあれば、強い方の能力が誘発される。
多色カードを使わせることを眼目に置いた効果だったが、いずれもさほど使われたわけではなかった。

信奉者

シータの信奉者/Ceta Disciple (青)
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) ウィザード(Wizard)
(赤),(T):クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+2/+0の修整を受ける。
(緑),(T):好きな色のマナ1点を加える。
1/1

コモンのサイクル。いずれも1マナ1/1のクリーチャーで、対抗色に関する2つの1マナとタップでの起動型能力を持つ。

起動型能力は、白が対象へのダメージ1点軽減、青がクリーチャー1体への飛行付与、黒がクリーチャー1体への-2/-0修正、赤がクリーチャー1体への+2/+0修正、緑がマナフィルターである。

戦闘魔導士

アナの戦闘魔道士/Ana Battlemage (2)(緑)
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
キッカー(2)(青)/(1)(黒)
アナの戦闘魔道士が戦場に出たとき、それが(2)(青)でキッカーされていた場合、プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを3枚捨てる。
アナの戦闘魔道士が戦場に出たとき、それが(1)(黒)でキッカーされていた場合、アンタップ状態のクリーチャー1体を対象とし、それをタップする。そのクリーチャーはそれのコントローラーに、自身のパワーに等しい点数のダメージを与える。
2/2
時のらせんブロックの「次元の混乱」で登場したカード。現在は「アナの戦闘魔導士」のみで、他のギルドには存在しない。

1つ目のセット「プレーンシフト」の戦闘魔道士サイクルが元ネタだが、2つの対抗色キッカーなど、やる事はボルバーサイクルに似ている。キッカーしても+1/+1カウンターが乗らないのが難点か。
次元の混乱では色の役割が意図的に崩されており、青なのに手札破壊したりするのも面白い。

俗称として

楔3色の呼び名として、例えば白とその対抗色の黒と赤、「白黒赤」で構成されたデッキが「デイガカラー」といった感じで一部では呼ばれることがあったが、現在はタルキール次元の氏族「マルドゥ」「ティムール」「アブザン」「ジェスカイ」「スゥルタイ」の名前で完全に定着している。

とはいえ、「デイガカラー」などの呼び名はあまりメジャーにならなかったのか、実際はタルキールの俗称が定着する以前では
青赤白(ラッカ):トリコロール(トリコ) 例:トリコトラフト
黒緑白(ネクラ) :ドラン 例:ドラントークン
青黒緑(アナ):BUG(ビーユージー、バグ) 例:BUGデルバー
青赤緑(シータ):RUG(アールユージー、ラグ) 例:RUGデルバー
のように呼ばれることが多く、特にレガシーではタルキール発売後もしばらくの間はこの俗称がまかり通っていた*3
中には「ジェスカイとトリコロールの違い」について定義しようと頑張っていたプレイヤーもいたほどである。どっちでも同じようなもんじゃろ

これらの俗称ですら通じないことを懸念してそのまま色を書き込んだり、あるいはWUBRGの頭文字を並べたりという手法がとられていたなど、このボルバーサイクルの名前が使われることは実際のところほとんどなかった*4
発売から10年以上経った現在でも「ジャンドコントロール」という俗称が使われているアラーラとはだいぶ事情が異なっている。
タルキールの俗称が素早く定着したのも、「デイガカラー」などがまったく定着していなかったからというのが理由のひとつにある。
あと多分カンフー集団ジェスカイのインパクトのせい

実際にMTGをプレイしていても「デイガ?ラッカ?」などと首をかしげる人の方が昔からかなり多かった。この記事を読んでいる人にもピンとこない人の方が多いのではないだろうか。

その後にイコリア次元において同じ楔3色のトライオームが登場した際も、覚えにくいのもあってかほぼタルキールの氏族で呼ばれるレベルである。これはニューカペナの一家名(土建組等)が出た後もアラーラの断片名(ジャンド等)が使われる弧3色にもいえるのだが。

つまりこの呼称が使われていたのは「インベイジョン時代のブロック構築やスタンダードのデッキについて言及する際」*5くらいの時だけである。つまりMtGの長い歴史の中でも使われていない時代の方が圧倒的に長い。


しかしMtGの弟分、『デュエル・マスターズ』においては事情が異なり、楔3色(に対応した文明)の俗称として使用されている。そのため、現在「デイガ」「ラッカ」などで検索すると、デュエマ関連が目立つ。
友好色では同じインベイジョンブロックに登場したドロマーやデアリガズ等上古族ドラゴンの名称が使われている。

こうなっている理由としては、デュエルマスターズにおいて長い間3色のカードが推されてこなかった…どころかそもそも3色のカード自体がかなり少なかったという事情が挙げられる。
もちろん5種類そろったサイクルなども無かったので、統一した名称が付けられる機会が訪れることも無かったのが大きいだろう。
そして当時のデュエルマスターズwikiがこの俗称を好んで使ったことにより、既成事実的に根付いていったようである。

初心者や他TCGから来たプレイヤーが分かりにくい、意識高いアピールみたいで好きになれないという声と、プレイヤー層の入れ替わりによって現在のデュエル・マスターズwikiでは色表記を優先するように呼び掛けており、解説にも使われている事はほぼない。
その流れもあってかwiki外でも一時期は使用率も低くなっていたらしいが、『デュエル・マスターズ プレイス』の登場以降ネット上でのレシピ公開の都合から再び使われることも増えているようだ。
現在は楔3色の勢力が登場したため、そちらに名称が変わっていくかもしれないが…登場から間もないのであまり根付いていないのが現状である。


余談だが、実は2000年代のカードゲーム関係のwikiではMtGの俗称を使うことが一種の嗜みのようになっていた節がある。
弟分であるデュエマに限らず、ルールが近いガンダムウォーなどでも俗語を流用することがあった。他にも全くルールが異なるポケモンカードでも「スライ」「ウィニー」、遊戯王にも「リクルート」「パーミッション」「ドローゴー」といった俗語が輸入されている。
すでに15年以上前の話になる上にネットを調べても当然当時のアーカイブなんて残ってるはずもなく、「信憑性の高い」情報が出てこないので結局のところ断定できる理由は挙げられないが、これは「先駆者となるゲームに似た概念があるならそこから輸入した方が変な用語が定着せずに済む」というところに由来するようである*6


他人の知識には君が必要としている追記修正がすべてある。問題はどうやってそれを求めるかだよ。

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最終更新:2023年11月18日 00:09

*1 それこそMTGの枠が変わる前にプレイしていたような古いプレイヤーなら《農芸師ギルドの魔道士》などが印象深いかもしれない。背景ストーリーでもこれらのギルドが重要な役割を果たしている。

*2 ただしこのギルドの設定はラヴニカという次元が影も形もなかった頃であり、「ラヴニカ:ギルドの都」が登場した2005年以降は「ギルド」という言葉がラヴニカと強く結びつけられるようになっているため、ドミナリアをはじめとしたこれらのギルドは今ではモダンホライゾンのような特殊セットでも新規カードが登場することが少なくなってきている。3色ならアラーラ、タルキール、イコリア、ニューカペナなどの新しい次元を出せばいいという事情もある。

*3 変わったところではラヴニカの頃の黒赤白(デイガ、マルドゥ)の組み合わせがギルド2つの名前を組み合わせた「ボロドス(ボロス+ラクドス)」と呼ばれた。レガシーでは当時のこの色の組み合わせが頭一つ抜けて弱かったので特段俗称が付いていなかった。

*4 なおこの「そのまま色を書き込んだり、WUBRGの頭文字を並べたりという手法」は3色の俗称が定着した今でもよく使われている。一目でデッキのカラーが分かるのが大きいが、人によっては色の順番がバラバラだったりするという問題がある。

*5 ちなみにそういったストーリー上で多色の区分がある時代のスタンダードやブロック構築においてのみ、多色デッキの名称が変わることは良くある。例えば「赤白アグロ」はラヴニカの回帰やラヴニカのギルドのスタンダード時には「ボロスアグロ」と呼ばれていた

*6 カードゲーム以外の有名な例としてはロックマンエグゼシリーズにおけるプリズムコンボの「オメガレクイエム」、ココロバグ利用の火力底上げテク「インペラーアシッドレイン」など。他にも「スマブラDX」における空中回避を利用した着地硬直キャンセルテクニックの「絶」などがある。これらは原作に欠片も存在しない要素が名前に使われているため、流行当時生理的に受け付けない層も多かった。そのためどうしてもその名前について不毛な論争が起きやすかった。その点MtGなら「まぁ古いカードゲームだから仕方ないか」と納得されやすく、さらに当時はちょっと高尚で手の出しにくいゲームのように見られていた節もあったようである。