とてもゆっくりしたおうち 21KB
悲劇 理不尽 少し昔の田舎が舞台 特にヒネリ無し
・作者リハビリ中
『とてもゆっくりしたおうち』
D.O
ここは、とある山のふもとの農村地域。
森沿いに作られた舗装もされていない農道と、田んぼに水を供給している小川の他は、
木々の緑と田んぼの緑ばかりが延々と続く、のどかな光景が広がっている。
そんな、めったに人の通らない森沿いの、これまた舗装もされていない道路脇に、一軒の物置があった。
物置と言っても、中には床も張られず地面をならしただけ、
木板の壁とトタン屋根も古ぼけた、扉すら付いていない小さな農具入れだが。
物置の中を見てみても、壁に掛けられているカマやクワはすっかり錆つき、
中に置かれた木箱や土のう、コンクリートブロックなどにも土ぼこりが積もっている。
わずかに置かれたワラ束や、麻袋に入ったモミガラも、すっかり乾燥しきっていて、
何年前から置きっぱなしなのかわからないありさまだった。
「ゆ・・・てね」
「ぅ・・・くち・・・てね」
そこに、とあるゆっくりの一家が住みついたのは、いつの頃からだろうか・・・・・・
「ゆ~ん。おちびちゃん、ゆっくりうまれてね!」
「れいむとまりさににて、とってもゆっくりしたおちびちゃんだよー。」
「まりしゃ、もうすぐおにぇーしゃんになるんだにぇ!」
「ゆゆぅーん。れいみゅたのちみー。」
物置の奥隅に、外からは自分達の暮らす様子が覗けないように、
入口の反対側の壁に向かって横倒しにされた木箱の中では、そのゆっくり一家が今日も仲好くゆっくりしていた。
家族構成は、バスケットボールサイズの大黒柱・父まりさと、現在にんっしん中の母れいむ。
母れいむの頭上にはツタにぶら下がった5匹のかわいい実ゆっくり。
そして、両親と一緒に期待いっぱいの視線で実ゆっくりを眺めているのは、ソフトボールサイズの子れいむと子まりさ。
皆肌ツヤもよく、清潔で、現在とても良い環境で暮らしていることがうかがえる。
それもそのはずである。
この物置のすぐ裏の森は、人間の住処に近いということもあり、
他の野生ゆっくりはめったなことでは近づかず、虫も花も木の実も、食料は全部独占状態。
また飲料用にも水浴び用にもなる豊富な水源として、道路沿いにわずか数メートル進んだところに小川がある。
そして何よりこの、風雨にも負けない、とてもゆっくりしたおうちを手に入れたことが大きかった。
「おちびちゃんたちも、こんなゆっくりしたおうちにうまれるんだから、とってもゆっくりできるね!」
「ゆっへん!まりさがみつけたおうちなんだから、あたりまえだよ!」
「「おとーしゃん、ゆっくちー!」」
一見増長しすぎにも見えるが、父まりさの眼にうっすらと光る涙は、
このおうちを手に入れるまでに積み重ねた苦労、別れの悲しみ、手にいれたときの喜びが凝縮されている。
そもそも、この子れいむと子まりさには同時に生まれた姉妹があと7匹もいたのだ。
しかし、以前所属していた群れのナワバリ内では十分な広さと強度を持ったおうちが無く、
木の洞に作ったおうちはいつも、強風や豪雨によって破損しては、雨漏りを起こしておちびちゃん達の命を奪っていった。
そしてたび重なる悲劇に耐えられず、一念発起した父まりさは、
群れのナワバリを離れてゆっくりしたおうちを手に入れるべく行動に出たのであった。
それから数日後。
初めてこの物置を発見した時、父まりさは身震いするような感動とともに、強い疑念も持った。
「こんなにゆっくりしたおうち・・・にんげんさんがつかってるかもだよ・・・」
ゆっくり駆除のための山狩りを経験したこともある父まりさは、人間の脅威を十分に理解していた。
この辺りは人間のナワバリ。ならば、このおうちも・・・。
とはいえ諦めきれなかった父まりさは、それから2週間以上もの間、狩りの途中に時間を見つけては、この物置を覗くことを続けた。
そして、この物置には人間の住む気配が全くないことに気づき、ついに一つの結論に達したのであった。
「ゆー!ここには、にんげんさんはすんでないよ!きっと、にんげんさんもみつけてない、『あなば』だったんだね!」
所詮は野生のゆっくりである。この物置自体が人間の手により作られた物ということには気づかなかった。
そして現在。
物置の中の、さらに奥に置かれた木箱の中には、ワラ束をほぐしたカーペットが敷かれている。
さらに中央にはワラとふわふわの枯れ草を使って編み上げた、鳥の巣のような物まで作られていた。
鳥の巣状のそれは、まもなく生まれおちてくる赤ゆっくり達を受け止めるためのクッションであり、
おうちの中を上手に跳ねまわることが出来るようになるまで、
赤ゆっくり達がゆっくりと寝て過ごすためのベッドにもなる。
「いもうとたち、ゆっくちできてりゅ?」
「ゆふふ、だいじょうぶだよ。おねーちゃんたちもゆっくりさせてあげてね。」
「ゆっ!れいみゅ、がんばりゅよ!」
ぶるっ!・・・ぶるるっ!
そして、新たな命を受け入れるための、万全の環境が整えられたおうちの中で、
ついに待望の瞬間がやってきた。
「ゆっ!まりさ、おちびちゃんたち、うまれるよ!」
「ゆうぅ・・・ゆっくりうまれてね!ゆっくりね!」
ぶるっ・・・ぶちっ・・・・・・ぽとんっ!
「ゆぅ、ゆっく・・・ゆっくちちちぇっちぇにぇ!!!」
「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってねぇぇええ!」
「ゆっくち!ゆっくちちちぇっちぇにぇ!」
「ゆわーい!れいみゅ、おねーしゃんになっちゃよー!」
「ゆっくち!ゆっくち!」
「ゆ~ん、ゆっくりしたおちびちゃんだよぉ。」
「おにぇーしゃん、しゅーりしゅーり!ちあわちぇー!」
「ゆっくちしてね!ゆぅん、すーべすーべしててきゃわいいよ~。」
にわかに賑やかさを増すおうちの中、家族の愛情と、自分を取り巻く世界の優しさを信じて疑わない、
キラキラとした表情を浮かべたおちびちゃんたち。
その姿に、一家は自分達家族の未来が暗示されているかのような思いがするのか、
ますます明るい笑顔になる。
「おきゃーしゃん、おにゃかしゅいちゃー。」
「ゆ!ゆっくりまってね!」
ぷちん。と、父まりさが、先ほどまで赤ゆっくり達のぶら下がっていたツタを母れいむの頭から千切り取り、
ポリポリと噛み砕いてから5匹のおちびちゃんの中央にペッと吐き出す。
「むーちゃむーちゃ、ちあわちぇー!」×5
「ゆわ~。いもうとたち、ゆっくちしてるにぇ~。」
「むーちゃ、むーちゃ。・・・ゆ~ん、まりしゃ、もっちょむーちゃむーちゃしちゃいよぉ。」
「ゆゆっ?ゆふーん!おちびちゃんたち、くいしんぼうさんだね!」
もうすでに体型がなすび型になるほど食べているのに、まだ満足できないらしいおちびちゃん達。
その姿は元気そのもので、なんとも微笑ましい。
「ゆっ!れいみゅおねーしゃんが、いもむしさんをあげるにぇ!」
「まりしゃはおはなさんをあげりゅよ!」
「ゆわーい。むーちゃ、むーちゃ!ち、ち、ちあわちぇー!」
「ゆわーん、れいみゅもたべさせちぇー。」
そんなくいしん坊たちに、自分達も大好物であるはずの、いもむしさんやお花さんを惜しげもなく持ってくる子ゆっくり達。
まだベッドから這い出すことも、上手に食べることもできない妹達に、一口サイズに千切って口移しで食べさせてあげている。
その光景は、両親の心を、餡子の底から暖めてくれた。
「おちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるね。」
「まりさは、こんなすてきなかぞくをもって、せかいいちしあわせなゆっくりだよぉ。」
「ゆふふ、なかないで。おちびちゃんたちがみてるよ。」
・・・・・・こうして、生まれて間もなく存分に甘え、たっぷりと腹を満たした赤ゆっくり達は、
お口の周りをぺーろぺーろと綺麗にしてもらい、両親と姉の愛情たっぷりのすーりすーりを受けた後、
ベッドの中で、何の不安も恐れも存在しない、ゆっくりとした笑顔のまま初めての眠りについた。
子ゆっくり達もそれからまもなく、妹達のゆっくりと眠るベッドの周りにお布団(ワラ)を敷いて、
妹達の寝顔を見守るようにすーやすーやし始める。
安全なおうち、ゆっくりしたおふとん、奪い合う必要なんてない豊富な食糧。
ここには今、父まりさが追い求めた、本物のゆっくりプレイスの姿が存在していた。
そのゆっくりプレイスを温かく包みこむこの物置は、ゆっくり一家に約束された、明るい夢と未来の光にあふれていたのであった。
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2匹の赤まりさと3匹の赤れいむが一家に新たに誕生した翌日。
父まりさは、今日も家族のために、朝から物置裏の森に入って狩りに励んでいる。
一方母れいむと子ゆっくり姉妹は、おちびちゃん達がベッドの中でお昼寝している間に、
物置から出てすぐの草地で日向ぼっこをしていた。
「おかーしゃん。いもうとたちもおそとでぽーかぽーかさせてあげちゃいね~。」
「ゆーん。そうだね。でも、まだおちびちゃんたちにはおそとはあぶないから、もうすこしまってね~。」
「ゆっくちりかいしたよ~。」
仰向けになって日にあたって、この上なくゆっくりしていた一家。
だが、その時突然、とてもゆっくり出来ない音があたりに響いた。
ガァーン!!!ガァーン!!!ガァーン!!!ガァーン!!!
「びっくりー!!!」
「ゆぁぁぁぁああああ!!!なんなのぉぉぉおお!」
まどろんでいた母れいむが音の先を振り向くと、その視線の先に驚くべき光景が映った・・・・・・
バリッ!バリッ!
そこにいたのは、一人の人間さん。
人間さんは、母れいむ達の方など気にも留めず、作業を進めていた。
そう、れいむ達のゆっくりしたおうち、物置を解体する作業を。
「ゆふふ。きょうもたくさん、ごはんがとれたよ。おちびちゃんたち、よろこんでくれるね。」
その頃父まりさは、午前中の間に森の中を駆け回って、
お花や木の実、やわらかいイモムシなどを帽子いっぱいに集め、おうちへと戻ってきていた。
当然一日の収穫量としては十分な量ではあるが、午前中の間にこの量をかき集めるのは、
いかに手つかずの森であっても楽ではない。
これも父まりさが、少しでも早くおうちに帰って、おちびちゃん達とゆっくり過ごしたい、
その一心で一生懸命狩りに励んだ結果であった。
そうして父まりさが森から飛び出した時、その眼前では恐るべき光景が広がっていた。
「な・・・・な、な、なにやってるのぉ!れいむぅぅぅうううう!!!」
「れいむたちのおうちをこわさないでぇぇぇええ!」
ぽよんっ、ぽよんっ、と人間さんのあんよに体当たりをする母れいむ。
「おうちにひどいことしにゃいでね!ぷっきゅー!」
本気のぷくー!を人間さんに向けて行っている子れいむと子まりさ。
・・・それは、父まりさの愛する家族が、人間さんに対して挑みかかるという、戦慄の光景であった。
「みんなやべでぇぇぇえええ!!」
父まりさは、お帽子の中の食べ物をバラバラとこぼしながら、全速力で人間さんと家族の間に割って入る。
その間も、釘抜きを片手に物置のトタン屋根をはがし続ける人間さんの手は、一切休まることが無い。
その人間さんの行動、母れいむ達の発言から、父まりさにもおおよその事情は掴むことができた。
「まりさぁぁぁああ!にんげんさんが、おうぢ・・・!おうぢぃぃいいい!!」
「おとーしゃんもゆっくりとめてね!ぷきゅー!」
だが、父まりさは家族の声には耳を貸すことなく、まずは人間さんに対して最善と思われる行動をとった。
「にんげんさん!ごべんなさいぃぃぃいいい!!」
「ゆゆっ!・・・おとーしゃん?」
人間で言えば、土下座。
額を地面にこすりつけ、ひたすら人間さんに許しを請う姿は、家族にどう映っているだろう。
しかし、父まりさには、自分のプライドなどとは天秤にかけられない、守るべき存在があった。
「にんげんさん!れいむたちがゆっくりできないことしたならあやまります!
まりさのかぞくと、おうちだけはゆっくりさせてくださいぃぃぃいいいい!!!」
「まりさ・・・」
「「おとーしゃん・・・」」
父まりさは、母れいむ達が人間さんに何をやったのか、どうして人間さんがおうちを壊そうとするのか、
そのような事を確認するのは後回しでいいと考えた。
人間さんは強い。敵わない。
だから、もしも厳しい要求をされたとしても、全て譲ろう。
もしも、なにか気に障るようなことをしたのならば、必死で謝ろう。
・・・ゆっくりした家族と、ようやく手に入れたおうち、それだけを守ることができるならば、他に何も・・・
やがてそれは、家族達にも伝わったのか、母れいむ、そして子ゆっくり達も、
父まりさと同様に、顔面を地面につけて土下座を始めた。
おうちを突然壊された怒りに我を忘れていたが、頭を冷やしてみれば、自分達の愚かな行為に後悔せずにはいられなかったのである。
しばらくの間、一家が地面に顔面をこすりつけ続けていたところ、
人間さんの近づいてくる音が聞こえてきた。
もしかしたら許してもらえず、ゆっくり出来ない目にあわされるのでは、
そう思うと父まりさは震えが止まらなかったが、人間さんの足音は父まりさの目前で止まり、そこで屈みこむ音が聞こえた。
もしかしたら噂に聞いたことのある、ゆっくりに優しい人間さんなのかもしれない、父まりさはわずかな希望を抱いた。
・・・・・・。
だが、それから、人間さんは別に話しかけるわけでもなく、
相変わらず土下座を続ける父まりさの前に屈んだまま動く様子を見せなかった。
「?」
段々と、不安が再び大きくなってくる。
高まっていく緊張に耐えられなくなり、父まりさはそっと顔をあげ、
「ゆぅ?」
そして、目の前でコンクリートブロックを振りかぶっている人間さんの姿を見た。
ひゅっ・・・どむっ。
「ゆぷっ・・・!?」
・・・・・・?
「ま、ま、ま・・・、まりさぁぁぁああああ!!!」
「おどーじゃん、ゆっぐぢぢでぇぇぇえええ!!!」
「・・・・・・ゆ゛!?・・・ぼ・・?」
異音に反応した母れいむと子ゆっくり達が目にしたのは、
父まりさが、コンクリートブロックを縦に脳天に投げおとされ、
Uの字に押しつぶされ変形している姿だった。
「おどーじゃん、ぺーろ、ぺーろ!」
「ゆっぐぢぢじぇぇぇええ!しゅーりしゅーりするからぁぁぁ!」
父まりさは栄養状態が良かったおかげで、皮膚が破れて餡子が漏れることはなかったが、
眼球は半ば飛び出し、ブロックにちょうど押しつぶされた形になる中枢餡は、
体内で真っ二つに引き裂かれていた。
生きてはいた。だが、残念ながら致命傷であり、意識こそまだあるものの、
もう二度としゃべったり、動くことが出来ない体になり果てていた。
「けがはないよ!おとーさんはつよいゆっくりだから、すぐによくなるからね!」
母れいむは、自分もそう信じていたので、子ゆっくり達にもそう言って安心させる。
一方、父まりさに非情の一撃を食らわした人間さんは、
子ゆっくり達が必死に父まりさを介抱している間に、
何事もなかったかのようにおうちの解体の続きを始めていた。
バリバリバリバリッ!!
「ゆぴぃぃぃいいいい!!!ゆっくちしちぇぇぇぇええ!!」
「おちょーしゃん、おきゃーしゃぁん!きょわいぃぃぃいいい!!」
「おにぇーちゃぁぁん!たちゅけちぇぇぇぇええ!」
そして、物置の壁が全てはがされ終えた頃、ついにそれまで壁に隠れていた木箱の中、
赤ゆっくり達のいる寝室が、太陽の光の下へとさらされた。
「おちびちゃんたち!にげてぇぇぇえええ!!!」
「いもうとたちにひどいことしないでにぇ!ぷっきゅー!!!」
だが、赤ゆっくり達は逃げられない。
「ゆぁーん、ゆっくちさせちぇー!」
「ゆっくちぃぃ!ゆっくちぃぃ!」
逃げ出せるはずがなかった。
そもそも生まれてまだ丸一日も経っていない赤ゆっくり達である。
満足に跳ねることもできず、その弱いあんよでは、這い進むのがやっと。
ベッドから出ることすら困難なほどなのだ。
しかも、先ほどからおうちを破壊する轟音にさらされていた赤ゆっくり達は、
恐怖が限界に達しており、5匹ともベッドの中央で身を寄せ合って震えることしか出来ない有様であった。
すっ・・・・・・。
「ゆぅぅぅぅぅ・・・。ゆぅ?」
「?・・・しゅーり、しゅーり。・・・ちあわちぇー。」
だが、母れいむ達の予想に反して、人間さんは赤ゆっくり達をベッドごと優しく持ち上げると、
人差し指でそっと赤ゆっくり達の頬をなで始めた。
「?・・・そ、そうだよ!おちびちゃんたちはとってもゆっくりできるんだよぉぉぉ!」
「しょーだにぇ!まりしゃのいもうとたちはとってもゆっくちできりゅんだよ!」
そうなのだ。
家族みんなでゆっくりしていた所に来て、酷いことをする人間さんだって、
なんの理由もなく酷いことをしている訳ではないはずなのだ。
穢れも知らない、誰にも迷惑をかけたわけではない、あんなにゆっくりしたおちびちゃんたちを、
いきなり酷い目に合わせるはずがない。
「ゆっ!ゆっくち!」
「ゆぁーん、れいみゅもしゅーりしゅーりしちぇー。」
人間さんもゆっくりしている。
きっと、可愛い可愛いおちびちゃん達の魅力が、あのゆっくり出来ていなかった人間さんをゆっくりさせてくれたのだ。
「おちびちゃんたち、・・・とってもゆっくりしてるよぉ。」
そして、人間さんは赤ゆっくり達を持ったまま物置を出ると、
そこから数歩離れた所にあった、深さ数cmほどの地面のくぼみに、ベッドをそっと下ろした。
そして、その上に、やわらかく土をかけた。
ばさっ。
「ゆぴっ!?やめち『ばさっ』・・・・!!」
ばさっ。ばさっ。
「・・・・ぴぅ・・!!・・・っ!!」
「・・・・・・お、おちびちゃんたちに、なにじでるのぉぉぉおおおおお!!!」
「ゆぁーん!いもうとたちがちんじゃうぅぅぅううう!」
止めさせようと叫び、駆け寄る母れいむ達。
だが、そんな言葉など聞こえていないかのように、人間さんは赤ゆっくり達の埋められた土山をポンポンッと軽く固めると、
その上にコンクリートブロックを3つ、蓋をするように積み上げた。
「ゆっくちいもうとをたすけりゅよ!ゆーしょ!ゆーしょ!」
「まりしゃもがんばりゅよ!ゆんせ!ゆんせ!」
ブロックは別にそれほど重いものでもないが、それでも3つ積み重なると、
ソフトボール程度のサイズしかない子ゆっくり2匹の手にはあまる。
だが、母れいむの体格ならば、それこそ怪我する覚悟があれば、体当たり一撃でどかすことができるはずだった。
その母れいむが、人間さんに頭を掴まれていなければ。
「やめてね!はなしてね!れいむはおちびちゃんをたすけるんだよ!」
だが、母れいむの懇願は無視され、頭を鷲掴みにされた母れいむは、先ほど重傷を負わされた父まりさの横へと置かれた。
そして、
「おちびちゃんが、おちびちゃんがぁぁああ!!」
人間さんは釘抜きを持った右手を軽く振りかぶると、
「はなしてぇ!れいむのおちび『ざしゅっ』ゆ゛・・・・・びぇ・・」
その右手を母れいむの顔面にめがけて、横一文字に振りぬいた。
母れいむの顔面はちょうど左目のまぶたから右目の脇まで引き裂かれた。
右目周辺の皮と餡子は荒っぽく引きちぎられて、周囲に飛び散った。
釘抜きの先には、母れいむの右目が突き刺さったまま残っていたが、
人間さんがびゅんと軽く釘抜きを振ると、地面にぺしょりと叩きつけられ、原型は残らなかった。
「・・ぼ・・・ぎゅ・・。」
この傷は深く、母れいむもまた父まりさ同様に中枢餡を傷つけられ、
意識はあっても、もはや話すことも、身動きを取ることも出来ない体になり果てたのであった。
一方、人間さんが母れいむを処理している間に、
そんなことなど全く気付いていない子ゆっくり達は必死にブロックをどかし続けている。
人間さんが戻ってきたころには、ブロックを3つともどかすことに成功していた。
「ゆぅ、ゆぅ、おもいいししゃんは、ぜんぶどかしちゃよ。」
「れいみゅ!まりしゃ!おへんじしちぇにぇ!」
すると、ブロックという重しから解放された地面が、もぞもぞと波打ち始める。
次の瞬間、ぴょろりと赤ゆっくり達の舌が地面から突き出し始め、声こそ苦しそうだが、
可愛くか細い呼吸音が5つ、無事に地面から響き始めたのだった。
「・・・っくち・・・。」
「ぁしゅけちぇ・・・ぁーしゃん・・・。」
「ゆー!まだみんなぶじだにぇ!・・・ゆーん、おそらとんでるみちゃーい!」
「ゆっくちたすけりゅよ!・・・ゆーん、おそらとんでるみちゃーい。」
そこに、人間さんが戻ってきた。
子れいむは右手に、子まりさは左手に、それぞれ掴まれ持ち上げられてしまう。
「ゆーん・・・ゆ!こんなことしてるばあいじゃにゃいよ!」
「にんげんしゃん、ゆっくちはなしちぇにぇ!」
だが、人間さんは子ゆっくり達を持ったまま、その場を離れてしまった。
「はなしちぇにぇ!ぷきゅーしゅるよ!ぷっきゅー!!」
「いうこときいてくれにゃいと、おとーしゃんとおきゃーしゃんにいいつけりゅよ!おこるととっちぇもこわいんだよ!」
その両親は、激痛と致命傷によって身動きが取れない中、必死で子ゆっくり達の方に視線を向けて、
絶望の中でほんの僅かに残された期待を、人間さんの背中に向けて、その流れる涙で訴えかけていた。
優しいが芯の強い長女れいむと、活発で思いやりあふれる6女まりさ。
9匹いた姉妹の中で2匹だけ残された、初めて授かった子供達。
とってもゆっくりした子供達、あのきれいな瞳を見れば、きっと人間さんも酷いことなんてできないはず。
子ゆっくり達のお願いが聞き届けられたのか、両親達の祈りが通じたのか、
人間さんはしばらく歩くと、腰をおろして子ゆっくりを持った両手を下ろした。
「ゆっくちりかいしたんだにぇ!」
「おねがいきいてくれちぇ、ありがちょー。」
だが、その両手の行き先は地面などではなく、
・・・・・・ちゃぷん。
いつも一家が水浴びをする、小川の中であった。
じゃぶっ・・・ごぼぉごぼっ・・じゃぶじゃぶ・・ごぽっ・・・・じゃぶじゃぶじゃぶ。
しばらくして、顔と手を小川で洗った人間さんが戻ってきたとき、
その両手に子ゆっくりはおらず、また、あの朗らかな声はどこからも聞こえてくることはなかった。
父まりさも、母れいむも、意識が混濁していく中でなお、おそらくあの可愛い子れいむと子まりさとは、
2度と会うことが出来ないのであろうことを悟り、
「ぎゅ・・・・び・・・ぎゅぅ・・・・・」
「じゅ・・・ぎ・・・・・ごびゅ・・・・」
声にならない叫びをあげながら、もはや焦点の合わなくなった瞳から、涙を流し続けた。
「ぉにぇしゃ『どさっ』・・・」「・・・たしゅけ『のしっ』・・・」
「・・・・・・!!・・・!!」
そして人間さんは、地面から舌をピロピロ出していた赤ゆっくり達の上にブロックを優しく積みなおした後、
バリッ!バリッ!・・・・・・ガンッ!ガンッ!ガンッ!
両親の静かな叫びをかき消すように、
一家のゆっくりとしたおうちだった物置を、乱暴な音を鳴らしながらバラバラに解体していったのであった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
かつて、めったに人の通らない森沿いの、これまた舗装もされていない道路脇に、一軒の物置があった。
そこは、あるゆっくり一家の明るい夢と未来の光にあふれていた、とてもゆっくりしたおうちがあった場所。
しかし現在その場所には、草一本生えていない四角い地面と、なぜか無造作に積まれたコンクリートブロック以外、何も残っていない・・・
挿絵 byキリライターあき
挿絵 byじゃりあき
挿絵 byキモあき
挿絵 byバケツあき
挿絵 by儚いあき
挿絵 by車田あき
挿絵 by余白あき
餡小話掲載作品
本作品
『町れいむ一家の四季』シリーズ(ストーリー展開順・おまけについては何とも言えないけど)
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このSSへの感想
※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
- 生き残したらって言ってるやつさあ…
全滅してるからこそ、穏やかな中にあった賑やかさがすべて消え去った結末にしんみりできるんじゃないか -- 2023-03-04 18:33:08
- 父まりさが狩最中にゆっくり一家が皆殺しになっていたら、ベリーグッドだったのに残念だぜ。でも、素晴らしい作品だっだぜ!ちゃお!!byゆっくり虐殺至上主義者より
-- 2016-11-09 22:27:02
- 素晴らしかった!。欲を言えば、父まりさだけ狩りの最中で生き延びてたら更にゆっくり出来た。 -- 2013-07-03 23:41:11
- すっきりぃぃぃぃぃぃ! -- 2013-03-26 16:32:02
- すすすすスカッとするぜぃえええええええ -- 2013-01-28 05:42:44
- まあゆっくりだしこれが普通 -- 2012-07-14 16:17:05
- コンクリ動かすとか子ゆ凄いな 普通に驚いてしまった -- 2012-03-15 00:34:51
- 4枚めの絵のれいむの顔が必死で、
吹いた -- 2012-03-09 19:46:19
- ↓あなたは蚊の話を聞いてから蚊取り線香をたくの?
農家の方にとってゆっくりの話す言葉なんか鳴き声以下の雑音でしかない -- 2011-10-27 21:57:16
- ↓の↓ 害獣だからって少しくらい話し聞いてやれよ!
-- 2011-10-27 21:00:53
- 皆さんの絵がとってもゆっくりできたよー、わかるよー -- 2011-10-17 01:27:16
- 作業と関係ない赤や土下座まりさまでやけに淡々と殺すとおもったら、そうか、害獣だったね。
駆除はしとかなきゃならないのか。 -- 2011-07-12 22:47:58
- うおあああああああ!キリライターあきさんの絵の様な赤ゆっくり、握りつぶしてええええええ!! -- 2011-05-01 01:05:17
- 考え無しに森の資源を食い荒らすだけでなく無尽蔵に繁殖するようなゲスには相応しい末路 -- 2011-04-21 02:24:28
- 下等生物が!! -- 2011-03-13 13:50:22
- 父まりさは人間の恐ろしさを知っていただけにかわいそうだなw運がなかったなぁ。 -- 2011-01-24 11:06:59
- 虐待してやる価値も無いってカンジが素敵です。 -- 2010-11-21 10:28:32
- 必要以上に虐待するわけでなく
ただただ解体に邪魔な「物」を除けて行く感じが良かった -- 2010-11-07 17:21:25
- うーん、日常的な風景がなんともいえない雰囲気を味あわせてくれます。良かった。
農家の人にとっては、害頭は生かしておく理由がないからなー -- 2010-10-13 20:34:24
- こういうシンプルなのもいいよね。 -- 2010-08-22 10:59:31
最終更新:2009年11月26日 20:50