ふたば系ゆっくりいじめ 630 かいゆっくりじゃなくてごめんね!! 上

かいゆっくりじゃなくてごめんね!! 上 44KB


虐待-普通 制裁 愛護 パロディ 理不尽 自業自得 差別・格差 自滅 家出 同族殺し 飼いゆ 野良ゆ 捕食種 都会 現代 虐待人間 愛護人間 長いので二回に分けさせてもらいます。




 ・色々と無茶ある展開がありますが仕様です。

 ・俺設定あり。

 ・ゲス制裁ものですのでゲスしか死にません。






天然あき





「まりさ、ごはんだよ」

男は傾いた犬小屋に向けて話し掛ける。
すると、
「ゆぅ…」
ずーりずーりと一匹のゆっくりまりさが明らかに不調そうな感じで出て来る。

「む~しゃ…む~しゃ…」
全然幸せそうにない感じでまりさは与えられた食事(人参山盛り)を食うまりさ。
その身体にはベルトが食い込まんばかりに巻かれており、更に鎖に繋がれていた。

「さて、それじゃあ散歩に行こうか」
「ゆ!!?」
生気を感じられない状態で食事していたまりさの身体がビクッ!と震える。

「や、やなんだぜ!!
まりざはここでゆっぐりしてるからおざんぼはひどりでじでるんだぜ!!!」
まるでこれから拷問でもされるかのようにまりさは恐怖している。
しかし男は屈託のない笑みで、
「何言ってるんだい、行くよ」
男はリードを付け替え、iPodで音楽を聴きながらまりさを引っ張って外へと連れていった。
「やじゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
男には届かない、まりさの悲痛な叫びが響いていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



数日前…。

「むきゅうう…こわかったわ…」
成体のぱちゅりーが死ぬかと思ったみたいな口調で呟く…。

「あのありすたち…もうゆっくりできないでしょうね…いなかものとはいえちょっとかわいそうだわ…」
成体のありすが何かを心配するように呟く。

「そんなことよりおなかすいたね!ごはんにしようよ!!」
空気の読めない発言の成体のれいむ。

「でもにんげんはひどいんだぜ!
あそこまでするひつようはないんだぜ!!」
意味のない義憤に駆られる成体まりさ。

「わかるよーあれはきっとぎゃくたいおにーさんなんだねー!!」
無駄に明るい声でいう成体のちぇん。

計五匹のゆっくりが野良にしては格段に広いおうちの中で話し合う。
この五匹は元は飼いゆっくりであったが若気の至りで家出をして帰れなくなってしまったのだ。
飼い主も少し待てば帰ってこれるだろうと犬と同じように判断して結局放っておいてしまったのだ。
ゆっくりに犬のような帰巣本能はないのだから戻れる訳はない。
こうして五匹は名実共に野良となってしまった。
捨てられたのではないから銀バッジを付けたままで野良生活を送る事になり、飼いゆっくりに手を出したらどうなるか知る小賢しいゲス飼いゆっくりから襲われる事もなく、
五匹という数も味方して野良のゆっくりから食事のおこぼれを貰ったり、奪ったりしていた。
気付けば身体も大きくなり、五匹は辺りから恐怖の対象となっていた。
去勢済みな為、無意味なすっきりをする事もなく、五匹はますます増長していった。
しかし五匹がいくら野良の中で力を持とうとそれは所詮野良の中での話。
五匹の心は未だに飼いゆっくりであり、その地位に戻る事を未だに考えていた。
まぁ簡単に言えばこいつ等は元飼いゆっくりのゲスで、飼いゆっくりになりたがっている。という事だ。
それは別に何処にでもある話だ。何の不思議でもない。
だが問題はそこではない。
問題はゆっくりではなく人間の方にある。

ただそこにいるだけでゲスを引き寄せ、結果的に死に至らしめる…そんな天命を担っているのではないかと思わせるような男がこの五匹の住む町にいるのだ。
ゲスである限り…例え飼いゆっくりであろうとも逃げられないゲスゆっくりにとっての悪魔が…この五匹のすぐ側まで迫っていた…。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
「さっさとそのあまあまをよこすんだぜええええ!!!」
「おちょうしゃんをはなぶぇ!!?」
「ゆ?なにかふんだきがするよ」
「きっとごみなんだねわかるよー」
「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛おちびじゃんがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
「ふん、みにくいこえね。
そんないなかものにこのあまあまはふさわしくないわ!」
「むっきゅっきゅっきゅ♪ぶざまね!」
次の日、五匹はまりさとれいむの家族を襲い、集めた食糧を強奪していた。
先日この公園をのさばっていたゲスなまりさが人間に連れ去られて以来五匹の天下だった。
もはやこの五匹にしても逆らうゆっくり等おらず、好き放題していた。

「ゆるじでぐだばい!!ごれがないどおぢびじゃんがじんじゃうんでずう゛う゛う゛う゛!!!」
「うるさいんだぜ!!」
必死に懇願するまりさを五匹は体当たりで吹き飛ばす。
「ゆぎぃッ!!?」
「まりざあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
ボロボロになったまりさとれいむ。
潰された子まりさと恐怖に震える子れいむ二匹。
「これはまりさたちがむ~しゃむ~しゃしてやるからかんしゃするんだぜ!!」
「いなかものにはもったいないあまあまね!!」
五匹はまりさ一家を嘲笑しながら菓子パンを貪る。
銀バッジになるまでに教育された礼儀作法はもはや記憶の片隅にも残っていない。

「ゆうぅ…」
「だいじょうぶ…れいむ?」
菓子パンを食べ終わって五匹が去った後、自分がボロボロにも関わらず、つがいのれいむにすりよるまりさ。
「おちょうしゃんきょわきゃっちゃよおおおお!!!」
子れいむが親に駆け寄る。
「ごべんね…おとうざんがじっがりじてないばっがでぃに…」
「そんにゃきょちゃはにゃいよ!おちょうしゃんきゃっきょよきゃっちゃよ!!」
慰め合うまりさ一家。

「大丈夫かい?」
すると騒がしく泣き叫ぶまりさ一家に話し掛ける誰か。
「ゆゆう!?にんげんしゃんだあ゛あ゛あ゛!!?」
「ごべんなざいおちびじゃんだけでもゆるじでぐだざい゛い゛!!!」
人間を見るなり即座に謝罪するまりさ。

「いや…とって食う訳じゃないからそうビビらないでいいよ…」
ゆっくりの反応に若干引き気味となる背広姿の男性。

「ところで君達どうしたの?野良にしてもぼろぼろじゃないか」
「ゆ、ゆうそれは…」
男に向けて怯えた目を向けるまりさ一家。
「大丈夫、俺は君達に危害は加えない。
ただどうしてそんな怪我なのか知りたいだけさ」
男は屈託のない笑顔を向ける。
邪気が無い事がゆっくりにもわかった。
まあ邪気がないのがこの男の厄介な点であるのだが…。
「ゆうぅ…実は…」
親まりさが事情を説明する。

「それは災難だったね…」
男はまりさ一家の境遇に深く同情する。
これが演技でもなく本気なのが男の異常な所だ…。

「そうだ、これをあげるよ」
男が自分の鞄から取り出したのは潰れたメロンパン。
後で食おうと思っていたのだが鞄に入れっぱなしだったので潰れてしまっていたものだ。

「ゆうう!?メロンパンさんだよおおお!!?」
途端に目が爛々と輝くまりさ一家。
とんでもない喜びように男も顔を綻ばせる。
基本的に善人でお人よしなのだ。
ただ思考が常人よりぶっ飛んでるだけで…。

「おにいざんありがどうございまず!!!」
顔面を地面に擦り付ける親まりさ。

「いやいいって。さ、早く食べなよ。
持って帰ると他の奴にとられちゃうかもしれないからここで食べた方がいいよ」
確かに人がいるすぐ側で奪うなんて愚を犯せばどうなるか野良のゆっくりならばわかって当然だろう。

「む~しゃむ~しゃし、しししあわせえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
耳がつんざく激烈な歓喜の絶叫を聞きながら男は笑みを崩さない。
基本的に細かい事は気にしないのだ。
悪い方向に…。

「ん?何だ餌付けか?」
すると男の目の前に背の高い男性が話し掛けてきた。
「あれ?研兄じゃん。久し振り」
どうやら男と背の高い男性は知り合いらしい。

「そうだな…直接会うのはお前が大学卒業して以来だな…。
近所なんだからたまには顔出せよな」
「それはお互い様。で、どうしたの?散歩?」
男はメロンパンをゆっくりと味わうまりさ一家を見ながら尋ねる。
研兄と言われた男性はそれに答える。
「いや、ちょっと野良れいむを探しててな…。出来れば家族じゃなくて独り身の…」
「それでわざわざ公園に探しに来たって訳ですか…」
「そうなるな…。やはり素材は自分で調達するのが一番信用出来る」

「ゆっくりごちそうさまでした!!!」
研兄が言い終わった直後、親まりさがメロンパンを食い終わった宣言をする。

「そういえばこいつ等…お前のペットか?」
研兄がまりさ一家に興味を抱き、男に尋ねる。
「いいや、他のゆっくりにボコられてたんでちょっと慈悲の御手を…」
「何だ、まぁたお前は野良に餌やってんのか…。
捨て犬猫とか何回も拾ってその度に親にどつかれてたもんな。お前ん家周りから動物園って言われてたよな」
「う…小学生の頃の話を持ち出さないでくれよ…。
それに拾った奴はちゃんと里親見つけたし、飼ってた奴もちゃんと天寿全うさせたっての…」
「まぁそれはいい…。
で、こいつ等どうすんだ?」
「どうすんだって…」
男はまりさ一家を見る。
「おにいさんどうもありがとうございました!!」
「おにいしゃんのおきゃげじぇとっちぇもゆっきゅちできちゃよ!!ありがちょうございましゅ!!」
満面の笑みを浮かべて男に感謝するまりさ一家。
「……………」
「…このままはいさよならって出来るタイプの人間じゃなかったよなお前は…」
男の顔がちょっと罪の意識に苛まれたのを見越して研兄が意地悪っぽく言う。

「けど…俺…ゆっくりの飼い方なんて知らないし…」
「そんなん犬飼った時みたいにすりゃあいいんだよ。ちゃんと飯食わせて躾ければ何の問題もない」
「ブリーダーの台詞とはとても思えないな…」
「ブリーダーはあくまで副業だ。
本業は研究者だ。ま、虐めるのはここまでにするか…さてと」
研兄はまりさ一家を見下ろす。

「ゆ…おにいさん…どうしたの?」
新たな人間がこちらに意識を向けた事で若干恐怖するまりさ一家。

「ふむ、このままじゃこいつ等、他の野良ゆっくりの嫉妬の八つ当たりで死ぬぞ」
「えええ!!?」
「ゆゆゆううう!!?」
男とまりさ一家は同時に驚く。

「人間から食い物貰っていい目みたんだ…逆恨みされてもおかしくない…」
「やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛じにだぶない゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」
「いくら何でもそんな…」
男は研兄の言った事が信じられないようだ。

「信じるも信じないも御自由に…けどま、こっちも見付けちまった以上見過ごすのは趣味じゃない…」
そう言いながら研兄はしゃがみ、目線を親まりさの高さに合わせる。
端から見れば随分面白い体勢だが当人は大真面目だ。
「ゆ、ゆぅ…?」
研兄の行動に戸惑う親まりさ。
今まで人間に見下ろされた事はあっても同じ目線に立たれた事は無かったからちょっと不安げだ。

「まりさ…一度しか言わないからよく聞け…お前俺の飼ってるれいむと友達になってみないか?」
「ゆ?」
親まりさはその言葉をよく理解出来なかった。
「言い方が悪かったな。
お前達、飼いゆっくりになりたくないか?」
「ゆ…ゆうううううううッ!!?」
それはまりさからすれば願ってもない事だ。
生ゴミを漁り、明日をも知らぬ日々から脱せられる…。
自分はそれでも構わない…けどおちびちゃんはゆっくりさせたかった親まりさか
らすれはまさしく救いの手だ。

「ただし、お前の子供はお勉強して金バッジ…少なくとも銀バッジはとれるよう
になってもらうぞ」
「ゆ、ゆううううう!!?」
喜びのあまり声にならない叫びを放つ親まりさ。

「返事は?」
「ゆ!?おねばいじばずおにい゛ざんんんッ!!!」
「れいむからもおねがいじまずううううッ!!!」
つがい揃って顔面を地面に擦り付ける。
頭を下げているイメージなのだろうがそうは見えない。

「いいのか研兄?」
男が尋ねた。
「別に構わないさ。シングルれいむを探すついでだ。弟分の不始末位はしといてやるよ」
研兄はそう言って笑う。
「全く…弟分っていつまでも小学生の頃の話持ち出さないでくれよ…」
「でもお前だって研兄って呼んでくれてるじゃんか」
「それはそれ、これはこれだよ」
「ま、いいさ。
こいつ等は俺が連れてくので構わないな?」
「ああ、でも出来れば変な実験に使ったりしないでくれよ」
「それはこいつ等次第だ。飯食わせるんだ、その分の基はとらせてもらうよ。ほら行くぞお前等」
「ゆ!わかったよ!おちびちゃん、おにいさんにゆっくりついてきてね!!」
「おにいしゃんありがちょうございましゅ!!」
「おにいしゃんのおきゃげでゆっきゅちできちゃよ!!」
「どう致しまして。お前等も見限られないようにしっかり勉強しろよ」
素直に感謝されてむず痒い感覚を感じながらも男は笑顔で答える。
「プ…勉強しろよって…お前が言うなよな…ククク…」
「うっさいなもう!!いいからさっさとれいむ探しにどっかいけえええ!!!」
笑い出す研兄に対して顔を真っ赤にして叫ぶ男。
「…ああわかったわかった。
ま、以後は気を付けろよ。
“情けは人の為ならず”って言うだろ。それじゃ行くぞ」
「ゆ!わかったよおにいさん!」
「しんじゃったおねえしゃんもいっしょだよ!」
「そうだね、おちびちゃんはまりさのおぼうしにおちびちゃんをはこんであげてね」
こうして、研兄はまりさ一家を引き連れて男から去って行った。

「研兄…情けは人の為ならずって情けが人の為にならないんじゃなくて、人にした情けが周り巡って自分に返ってくるって意味だぞ…」
マジボケなのかどうかわからず、ツッコミするタイミングを逸した男は一人呟いていた…。



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「むっきゅううううん!!?どうぢであんなぐずどもががいゆっぐりになるのお゛お゛お゛お゛お゛!!?」
「あんなのよりまりざのほうがゆっぐりじでるんだぜえ゛え゛え゛え゛!!!」
「わがだらないよおおおおおおッ!!?」
「あのめろんばんざんはでいぶのぼのなのに゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!?」
どうやら一部始終を五匹のゲスゆっくり共は盗み見ていたようだ。
おそらく男が見ていなければまりさ一家からメロンパンを強奪していただろう。

「あのじじいたちはみるめがないわ!!
こんなとかいはなありすがいるのにあんなきたないやつらをつれていくなんて!!」
ボロボロにしたのはお前等だろうが、とツッコミを入れる者はいない。

「むきゅ…でもこれはちゃんすかもしれないわ…」
「ゆ?どういうこと?」
冷静さを取り戻したぱちゅりーが呟く。

「あのじじいはあんなゆっくりできないやつにどうじょうしておいしそうなあまあまをあげるようなばかよ。
ぱちぇたちならよゆうでかいゆっくりにするわよ!」
どういう理論の飛躍でそうなるのかわからないが、そういう考えが意外と上手くいくのがこの男と相対するゆっくりの常だ。
それが決して幸福等ではないが…。

「でもあのいなかもののじじい…どこかでみたきがするわ…」
ありすが何となく不安げに呟く。
何かしら嫌な予感がするのだろう。
それは正しい。生き残りたくばその予感に従うのが正しかった…。
しかし、
「むきゅ、だいじょうぶよ!ぱちぇのずのうとまりさのぱわーならあんなじじいになんてまけないわ!!
じじいのおうちをのっとってぱちぇたちのゆっくりプレイスにするのよ!!」
「そのとおりなんだぜ!!」
男を一度でも見た時点で生き延びる事等出来る訳もなかった…。

「ゆう!じじいはまりささまをかいゆっくりにするんだぜ!!」
すると突然男の目の前に五匹とは別のゆっくりまりさとれいむのつがいが姿を現した。

「ゆゆう!?さきをこされたんだぜええ!!?」
「はやくあのまりさたちをせいっさいしないとだねわかるよー!!」
「むきゅ、ちょっとまって!?ようすがへんよ!!」
先を越され、焦るまりさとちぇんをぱちゅりーは止める。
男に何か変化があったのだ。
それはつがいのれいむがある言葉を言った直後の事だった。
「かわいくってごめんねー!!」
「!!?」
突然男の身体が強張る。
そして…、
「…謝らなくって…いいんだよ…」

男は号泣しながらそう告げた。
その後はもうテンプレだった。
髪の毛を毟られ、男の価値観で「可愛くなくなった」れいむ。
そんなれいむを助けようとして返り討ちに遭って蹴り一発でボロボロにされるまりさ。

「ひ、ひどいんだぜ…」
その一部始終を見てた五匹も絶句している…。
まさかあんな甘ちょろいジジイがあんな事をするとは思ってなかったのだろう。

「むきゅう…これはすこしさくせんをねらないとだめね…」
だがメロンパンという甘い誘惑は五匹にとっては絶対に譲れないものだった。
あの光景を見ても意志を変えない辺りは流石ゆっくりと言うべきだ。

「それじゃ、頑張ってね」
男はれいむの成れの果てとボロボロになったまりさ…すなわちボロまりさに一瞥すると去って行った。

「ゆうううう!!?いっちゃったよぱちゅりー!!?」
「はやくあとをおうんだぜ!!」
急いで後を追おうとするまりさ。

「まってまりさ!!」
それをありすが止める。
「どうしてとめるんだぜありす!!」
「おもいだしたわ!あのにんげん!このまえまりさとありすをゆっくりできなくさせたやつだわ!!」
「ゆゆう!!?」
「むきゅう!!?」
ありすの言葉に残り四匹が驚愕する。
ありすの言うまりさとありすとは最近この公園で好き放題していた二匹のつがいの事だ。
「ゆっくりしていってね!!」の言葉や口に隠した石等を利用して公園の数多くの野良ゆっくりを血祭りに上げたこの公園に住むゆっくりからは恐怖の象徴であったゆっくりだ。
五匹も二度しか出会っていなかったがその数少ない遭遇の一度目で五匹の中で最も強いまりさはその恐怖の象徴まりさに敗北していた。
そして二度目の遭遇、と言うか覗き見した時にそのまりさとありす、そしてその子供達は一人の人間に敗北した。
恐怖の象徴まりさは家族を見捨てて逃亡し、ありすとその子供は今目の前にいるつがいのれいむのように「可愛く無くなって」いた。

その結果この公園のゆっくりの勢力図は変わり、この五匹が好き放題するようになった。
それは今はどうでもいい。
問題はあの男がゆっくり出来ない人間であるという事だ。

「ゆ、あのときまりさはゆだんしてたんだぜ!!いまはあんなゆっくりしてないまりさなんかすぐにころせるよ!!
だからあのまりさみたいにあんなじじいにまりさがまけるわけないよ!!」
だが、無駄にプライドの高いゆっくりが自身の恥部を認める訳がなく、今なら大丈夫という根拠のない自信が男を忌避しようとする正しい判断に辿り着けない。
そこまでゆっくりからすれば男はカモに見えるのだ。
自分達がアンコウの持つ光に近付く哀れな小魚と同じだとも気付かないで…。

「むきゅ、おかしいわ。ゆっくりできないにんげんならあのまりさたちにあまあまなんてあげないわ」
ぱちゅりーが男の行動に違和感を感じて考え込む。
元飼いゆっくりだけあって疑い深いようだ。
「そうね、もしかしたらべつじんかもしれないわ」
「たとえおなじでもこんどあったらぎったんぎったんにしてやるんだぜ!!」
だが十か一しか区別出来ないゆっくりに人間の多面性が理解出来る訳もなかった。

なので、
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛!!?」
「いぢゃいよおおおお!!?」
「さぁかくさないでさっさとはくんだぜ!!」
「かくしてもむだなんだねわかるよー」
当事者であるゆっくり達に聞く事にした。

「むきゅ、かたほうだけいきてればいいわ」
「わかったんだぜ!ゆっくりできないくずはさっさとじねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」
「ゆぎゅぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」
まりさは可愛くなくなった元れいむを踏み潰す。

「でいぶう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」
「うるさいんだよー!!」
「げぶる!!?」
騒ぐボロボロになったボロまりさをちぇんは体当たりして黙らせる。

「むきゅ、これからまりさにはぱちぇのしつもんにこたえてもらうわ」
「もしぱちぇのしつもんにうそをつくようないなかものならさっきのれいむみたいに…」
「せいっさいするよ!!!」
「わかったー?」
「ばい゛い゛い゛い゛わがりまじだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
踏んだり蹴ったりなボロまりさは泣き喚きながら答えた。

「むきゅ、それじゃきくわよ…」
ぱちゅりーはそう宣言して質問を始めたのだった…。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「むきゅ、なるほどね…」
ぱちゅりーは大体の話を理解した。
結論からすれば「ごめんなさい」と謝ったから謝らずに済むようにしただけだという事だ。
つまり、
「むきゅ、あなたたちはばかだったことね!!」
ぱちゅりーが嘲笑しながらボロまりさに告げる。
「まりざはばがじゃないよおおおおおおお!!?」
「うるさいんだぜ!!」
「ゆべぇ!?」
反論するボロまりさをまりさは体当たりで黙らせる。

「むきゅ、ぱちぇはけんじゃなめいあんをおもいついたわ!!
これであのじじいからゆっくりプレイスをとりもどせるわよ!!」
「ゆゆう!!?ほんとう!?」
「わかるよー!みんなでゆっくりできるんだねー!!」
「とってもとかいはよぱちゅりー!!」
めいあんの内容すら聞いていないのに勝手にもう男の家を奪い取れたかのように騒ぐゆっくり。

「ゆぐ…もぅ…おうぢがえぶぅ…」
一方ボロまりさは身体をず~りず~りと引きずりながら逃げようとする。

「どこへいくつもりなんだぜ?」
だがそうは問屋が卸さない。
まりさがボロまりさに立ち塞がりボロまりさの移動を邪魔する。
「ゆ、ゆぅ…まりざは…じづもんにぢゃんどごだべまじだ…だがら…ゆるじでぐだばい…」
ボロまりさは目に涙を浮かべて懇願する。
つがいのれいむは死に、自分も無事ではない怪我を負っている。
つがいのれいむの仇をとるなんて余裕もない。
生き残る事で精一杯だ。
つがいのれいむの仇に命乞いしてでも生き残りたかった。
だが、
「むきゅ、そいつはもうようなしよ。まりさ、さっさとせいっさいしてね」
だがぱちゅりーはどうでもよさそうにまりさにボロまりさを殺すように告げた。

「どぼぢでえ!!?
じづもんにごだえだらだずげでぐれるんじゃながったのぉ!!?」
話が違うと叫ぶボロまりさ。
それに対して、
「むきゅ、クズのぶんざいでわめかないでね。ぱちぇのおみみがくさっちゃうわ」
お前等に耳なんかねえだろうが、とここに人間がいたらツッコミを入れていたが今は残念ながらゆっくりしかいない。

「それに、こたえたらせいっさいしないなんてだれもいってないわ。いなかものはこれだからやだわ」
確かに答えなかったら殺すと言ったが答えたら助けるとも言っていなかった。
だがそれはあまりに暴論だ。
強者が弱者に対しての力を振りかざしてのあまりの暴論だった。

「うるさいんだぜ!!
くずはゆっくりしないでさっさどじねえ!!!」
「ゆびゅう゛う゛う゛う゛う゛う゛!!?」

ボロまりさはまりさに反論する間も与えずに踏み潰された。

「まったくゆっくりしてないまりさたちだったよ!れいむをみならってほしいよ!!」
「わかるよー、ちぇんたちにせいっさいされたほうがよのためだったんだねー!」
まさに目糞、鼻糞を笑うを地で行く光景だ。
それはさておきボロまりさから事情を聞いて得意気になっているぱちゅりーが皆に向けて発言する。

「むきゅ、これであのじじいからゆっくりプレイスをとりかえせるわ!!!」
「さすがぱちゅりーなんだぜ!!せかいいちのてんさいなんだぜ!!」
「むーきゅっきゅっきゅ!!それほどでもあるわあ!!」
「やったよ!これであまあまたべほうだいだよ!!」
「もうこんなとかいはじゃないところなんておさらばね!!」
「わかるよー!!もうかったもどうぜんなんだねー!!」
何もしていないのに勝ったと騒ぐ五匹。
肝心の男がまたここに来るかもわからないのにやかましい程に騒ぐ。
「むきゅ、それじゃあつぎにあのおとこがきたらさくせんけっこうよ!!」
「「「「ゆおおおおー!!!」」」」
男が来るかもわからないのに何時までもこの五匹は騒ぎ続けていた。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



翌日。
五匹にとって幸運か不幸なのかわからないが男は次の日も公園に立ち寄っていた。
会社からの帰り道に公園を突っ切った方が早いからだ。
「菓子パン買い過ぎる癖は直した方がいいな…」
男はまたもやパンを鞄に入れているようだ。まあそんなのはどうでもいい。


「むきゅ、それじゃあさくせんをかいしするわ!」
男を見つけた五匹はぱちゅりーの言葉に頷く。
「わかるよー!こんなさくせんをおもいつくぱちゅりーはてんさいなんだねー!!」
「こんなとかいはなともだちがもててありすもはながたかいわ!」
「これであまあまたくさんたべれるね!!」
「ぱちゅりーはせかいいちゆっくりしたゆっくりだぜ!!」
「むきゅ、それほどでもあるわ!」
どうやらぱちゅりーの“さくせん”とやらは余程のものらしく皆ぱちゅりーを褒め讃える。

「むきゅ、それじゃいきましょう!」
「「「「ゆおおおー!!!」」」」
五匹が声をあげて男へ向けて跳ねていき、
「ん?」
五匹に気付いた男に向けて、
「「「「「おにいさん、かいゆっくりじゃなくてごめんねー!!」」」」」
一斉に宣言した。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ぱちゅりーの考えた名案であり作戦は簡潔だった。
「かわいくってごめんねー」と言ったら「かわいく」なくせられた。どうして男がそんな事をしたのかぱちゅりーにはわからなかったが、「かわいくって」と言ったら可愛くなくせられた。
なら、「かいゆっくりじゃなくてごめんねー!」と言えば飼いゆっくりにしてくれるかもしれない。
そう考えたのだ。
その結果は、
「さ、ここが俺の家だよ」
ほぼぱちゅりーの望み通りであった。
男は「謝らなくって…いいんだよ…」と言いながら号泣し、五匹を自宅へ連れて来た。

「さすがぱちゅりーのさくせんなんだぜ!!こんなうまくいくなんてすごいんだぜ!!」
「はやくあまあまもってきてね!!ぐずはきらいだよ!!」
「とってもとかいはなおうちだわ!ありすにぴったりね!」
「むっきゅっきゅっ!あとはこのじじいをせいっさいするだけね!」
まさに計算通り、といった笑みを浮かべるぱちゅりー。
この世の春といった感じで喜びを噛み締める五匹。
後はこの男を殺すだけ…ともう半ば望みが叶ったつもりでいた。
だが、
「それじゃ、今日からここが君達のお家だからね」
「「「「ゆ?」」」」
「むきゅ?」
男が案内したのは家の中ではなく、かつて四匹の赤ゆっくりが騒音によって苦しみ死んでいった犬小屋だった。
「なにいってるんだぜ!?まりさたちのおうちはあっちなんだぜ!!」
まりさは目線を男の自宅に向けながら叫んだ。

「え?室内で飼うの?ごめんね、それはちょっと準備してないから無理って事で我慢してね。野良だし大丈夫だよね」
「なにいっでるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?あっちがでいぶのおうぢだよ!!ばがなじじいはざっざとそっちにづれでげえ゛え゛え゛え゛!!!」
「いやあっちは俺の家だから…あっそうか一つじゃ狭いもんね」
男はそう言うと、物置よりも離れと言うべき場所から別々の犬小屋を二つ取り出した。

「これで大丈夫だよ。二つ足りないけど、それはちょっと我慢してね」
計三つの、成体ゆっくりが一匹ぎりぎりで通れる横幅の入口の犬小屋を並べた男は笑顔で告げた。

五匹はここでようやく理解した。
この男は本気で自分達を犬小屋で飼う気だと…。

「ふざっけるんじゃないんだぜえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛ッ!!!」
まりさがぶちギレた。
「?」
男はまりさの怒りが理解出来ない。
何故なら男は徹頭徹尾大真面目だからだ。
男は五匹を飼うつもりだった。
だが男はゆっくりを飼った事もないし、飼い方も知らない。
だから昨日旧友に会った時の言葉を思い出した。

“「そんなん犬飼った時みたいにすりゃあいいんだよ。ちゃんと飯食わせて躾ければ何の問題もない」”

兄貴分兼親友の研兄はそう言っていた。
だから男はその言葉に乗っ取って飼う事にした。
大真面目に犬を飼うようにして…。
だから五匹に対しては怒らせるような事はやっていないと思っていた。
「も゛う゛がばんでぎないんだぜ!!ふざけたごどぬがぶじじいはまりざがぜいっざいじどやるんだぜえ゛え゛え゛え゛!!!」
今まで納得のいかない事は自分の力で捩伏せてきたまりさは我慢出来なかった。
「えーと…何で怒ってんの?」
男の疑問に対してまりさは体当たりで返す。
しかし、
「おっと」
男はその体当たりを難無くでかわす。
「ぶべぇ!!?」
回避されるとは想定もしていなかったまりさは顔面から草木生い茂る地面に突っ込む。
「まりさあああ!!?」
れいむが叫ぶ。
まさか無敵のまりさの攻撃を男が回避するとは信じられず、驚きを隠せない。
実際はこの男によって痛め付けられたまりさにも敗北しているので無敵でも何でもないのだがれいむはまりさの「ゆだんしていた」をマジに受け取っていたのでそう思い込んでいた。

「よくもまりざをおぉ!!!」
れいむが男に向かい体当たりをまりさの仇だとばかりに繰り出す。
「え、俺のせい?」
男からすれば勝手に突進してすッ転んだようにしか感じなかった男はいつの間にか自分のせいにされていた事に驚くが、それでもゆっくり程度の攻撃に当たる訳もなく、難無く回避する。
「ゆぶぁああ!!?」
まりさの二の舞となるれいむ。

「何で怒ってるんだろ?ま、いいや」
男は気にしない事にして作業に移る。
一旦家に戻り、
「ゆ!?なにするの!?はなしないこのいなかものおおおお!!!」
ありすを掴み、
「流石にこれじゃ無理か…仕方ない」
口と目の間の位置に男自身が使っていたベルトを巻き付けた。
「ゆぎゅい゛い゛い゛!!?」
外れないようにきつく締める。
その痛みにありすは奇声を上げるが男は全く取り合わない。
軽く食い込んだ所でようやく男はベルトを絞めるのを止める。
「ゆぎぃ…ゆふぃ…」
顔を締め付けられて軽く瓢箪みたいになったありす。
「あとはこれをっと…」
男はそんなありすを鎖に繋げ、しっかりと固定された杭に繋げた。

「む…きゅ…?」
あまりの訳のわからなさにぱちゅりーは呆けてしまう。
強かった筈のまりさは無様に地面に突っ伏し泣き喚いている。
ありすは「ゆい゛ぃ…ぎゅひ…」とか奇声を上げながら痛みに苦しんでいる。
れいむはどうでもいい。
無事なのはもはや自分とちぇんしかいない。

「わきゃらない゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」
いや、そう考えている内にちぇんもありすと同じにされていく。

「猫っぽいけどゆっくりだから同じでいいよね」
何だか男が言っているが、ぱちゅりーには届かない。
僅かな時間で無事なゆっくりはぱちゅりーしかいなくなった。

「む、むきゅううううう!!?」
訳がわからなかった。
さっきまで何もかも上手くいっていた筈なのに…。
後はこの男を殺してお家を奪うだけだったのに…。
いや、それよりもまずは逃げなければならない。
使えない能無しなんてどうでもいい。
そう考えてぱちゅりーは逃げようとし、
「はい、次は君の番♪」
「むぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
スタートするよりも早く捕まった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――







「いぢゃいよ゛ぉ…」
「むぎゅ…」
「わが…だ…ない…」
「あま…あま…」
「ぐひぃ…」
五匹全てが仲良くベルトで代用した首輪に繋がれている。
締め付けられる痛みで動く事も出来ない。

「ペット飼うのは久し振りだから上手くいくか不安だったけど…まぁ何とかなったね」
何処をどう見れば何とかなったのかわからないが男はとりあえず満足そうだ。
五匹の全てが男に対して殺意が篭った眼をしていながら男はそれに気付く様子もない。

「それじゃ、ご飯持ってくるから待っててね」
男は最後まで五匹の殺意に気付かず家へと戻っていった。

後に残るのは瓢箪みたいな形になった五匹。
特にありすが酷い。
「ぐぴ…こぺ…」
口からカスタードを漏らし始めている。

「どうじで…ごんなべに…」
まりさが呟く。
今頃はあの男を殺してゆっくりしている筈なのに…。
それが妄想でしかないと気付く事はない。

「む゛…ぎゅ…み゛ん…な゛…ごれを…どるの…よ…」
こんなベルトで締め付けられたままじゃ身動き一つする事も出来ない。

「はやぐ…どっでね…」
「むきゅ…ぱぢぇの…どりな゛ざい…」
「わがらないよ…どう…じで…ごないの…」
「ざっざど…まりざのを…どれ…」
「ぐぴ…ぃ…」
しかし痛いのを我慢して誰かの所まで動く事を自分最優先のゲス達がする訳がない。
結局誰も動かず事態も好転しないまま時間だけが過ぎていく。
「ときゃ…ぺひゃ…」
段々とありすの首輪から上がパンパンになっていく。
圧迫されている証拠だ。
ありすが危険な状態になっているのだが、他の四匹は自分の事ばかりで気付きもしない。

ありすは言い難い痛みと苦しみを味わっていた。

『いじゃいいじゃいいじゃい゛い゛い゛い゛い゛!!?ごんなのぜんぜんとがいばじゃばいわ!!?
じじいはゆっぐりじないでざっざとありずをだぶげろぉ゛お゛お゛お゛お゛!!!』
「ぐひ…」
もはや喋る余裕すらないありすは心の中でのみ雄弁となっている。
しかしそれも段々と弱まっていく。
周りのゆっくりも、ありす自身も限界に近づいている事に気付いてはいない。

「ごはんもってきたよ」
すると男が五匹の食事を持って来た。
「あれ、何かさっきと違わないか?」
男が五匹の危機的状況に陥っているのに気付いた。
「ああ!ちょっときつく締めすぎちゃってたのか!!」
その原因が判明して男は慌てて、戒めを緩める。
「ゆうう…」
流石にすぐに男に襲い掛かれる程の余裕はなく、苦しげに呻くしか出来ない。
とりあえず命に別状は無いようだ。
ただ一匹を除いて…。
「ぷごべぇえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!?」
最後にありすのベルトの拘束を解いた瞬間濁流のように中身のカスタードを目、口、あにゃるから噴き出し始めた。
今まで圧迫されていた部位が緩んだ事により中身が一気に動き、その勢いと圧迫されていた事による吐き気が上手い具合に作用してしまった。
そしてそのショックにありすの身体が耐え切れず、他の部位からカスタードが漏れだしていく。
様々な偶然が悪い方向に作用した結果がありすの中身が漏れ出すという結果になった。

「グヒ!!ケパァ…!!?」
「あ…りず…?」
あまりにも奇怪な現象に他の四匹は呆然としてしまう。
ありすから中身の流出は止まらない。
穴の開いた水風船は空になるまで水を出し続けるのだ。

「おお…すげえ…」
男はありすの自分の中身を使った命懸けの水芸に対してそう呟く。
まさかベルトをきつめに締めただけでこんな事になるなんて予想出来る訳がない。
「…あ…りず…」
「…むきゅ……」
「ぴゅぎい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!!!」
ありすはもはやまともに喋る事も出来ず、糸の切れた人形のように断末魔の叫びを上げた後動かなくなった。
カスタードまみれで顔は男達からはよくわからなかったが、その表情は幸せとは程遠いものだった。

「わきゃら…ないよぉ…」
「む…きゅ…」
「あ…りず…」
「もう…やば…」
物心ついた頃から共にいた形式上は仲間のあまりにも悲惨な末路は四匹を絶句させた。

「……死んじゃってる。一体なんで…?」
男はありすの死因が自分にあるとは気付いていない。
ゆっくりの脆さを理解出来ていなかったのだ。

「とりあえず埋めてあげないと……」
このままありすの残骸を放置しておくのもよくない。
ベルトが一つ無駄になったけど一々気にする事もなかった。
「よ゛ぐも…ありずを…」
まりさが男を睨み付ける。
まだ動けるまで回復していないのだ。
ありす程では無いにしろ四匹とて無傷ではない。
睨み付けるしか出来ない。
だが、ゆっくりの殺意で人が殺せるならとっくの昔に人間なんて滅んでいる。
男は気にせず再びまりさにベルトを巻き付ける。
「ゆひいいい!!?やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
ベルトを見るやいなやまりさは叫び声を上げて逃げようとするが逃げ切れる訳もなく、そのままあっさりと捕まってベルトを巻き付けられる。
しかし今度はキツすぎず、さりとて緩すぎもしない絶妙な案配で…。
というかそれが出来るなら最初からしろという話だ。
「ゆぐぁ……」
ベルトを再びされたショックでまりさは泡をふいて失神してしまう。
どうやらトラウマになってしまったようだ。

「むぎゅう゛う゛う゛!!?」
「わぎゃら゛ないよおおッ!!?」
「ゆんやあ゛あ゛あ゛あ゛!!?」
その間に手際よくベルトを残りの三匹に巻き付ける。
どうやらコツを掴んだらしい。


「じねぇ…じじいはじねぇ…」
れいむが恨めしげに男に呪詛を呟き続ける。
当然ながら男はそれに気付かない。
気付いても気にしないが。
でも何やら五月蝿かったのでれいむだけは少し緩めにしてあげた。
「かわいそうに…何か病気だったんだな…。
気をつけないと…」
男はありすを庭に埋めながら呟く。
何が原因かわからないが自分がゆっくり出来ない何かをしたのだとは理解していたようだ。

「やっぱり研兄に相談した方がいいかな…」
まさか初日、しかも飼い始めて一時間もしないで反乱、一匹死亡という状態になるとは思わなかったのだろう…。
一応はゆっくりの使い方のプロである兄貴分に相談しようか考え混んでいた。

「わからないよ…どうしてありすがしななくちゃいけないのかわからないよ…」
一方ちぇんはどうしてこんな事になったのか理解出来なかった。
今までぱちゅりーとまりさがいれば大丈夫だった。
今回だってぱちゅりーの言う通りに上手くいっていた。
だけどその結果ありすは死んでしまい、今はお世辞にもゆっくり出来るとは言えない状況だ。

「わがらないよー…」
ちぇんはその言葉を言うしか出来ない。
今まで散々頼ってきた分面と向かって批判も出来ない。
ただ目の前にある山積みの人参を食うしか出来ない。
「ゆゆ!!なにかってにれいむのごはんたべてるの!!?」
「ゆぎゃ!!?」
すると突然れいむがちぇんに体当たりをする。

「これはぜんぶれいむのものなんだよ!!!ばかなちぇんにあげるぶんなんてないよ!!」
あまりにも横暴な物言い。

「むきゅ…だめよれいむ。いまこそみんなで…」
「うるさいよッ!!」
「むぎゅ!!?」
れいむの横暴を諌めようとしたぱちゅりーを体当たりで黙らせる。

「これはぜんぶれいむのものなんだよ!!!やくにたたないぱちゅりーはひっこんでてね!!!」
どうやら山積みにされた人参を独り占めするつもりのようだ。

「……………」
肝心のまりさはまだ失神したままだ。
他の三匹に比べて精神が弱いのかもしれない。
まりさがこの様では今のれいむの横暴を止めれるものはいない。
「む~しゃむ~しゃじあわぜぇえ~!!!」
瞬く間に人参を消費していくれいむ。

「むきゅ…どうじでごんなごどずるの…?」
いきなりのれいむの横暴にぱちゅりーは理由を問い掛ける。

「うるざいよッ!!!ぱちゅりーのぜいでごんなべになっだんだがらざっざとじんでね!!!」
「むぎゅあ゛!!?」
「なにがにんげんをごろじべおうぢをのっどるだよ!!
きずひどづづげられながっだじゃないがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「むぎゅい!!?ぺぎぃ!!?」
「ぼうおばえだぢのいうごどなんでぎぐがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
鬱憤晴らしと八つ当たりをぱちゅりーでするれいむ。
男自体は考え事していてそれに気付いていない。
実は寝てるんじゃないかと勘違いしそうな程だ。

「むぎゅ…」
「ゲラゲラゲラゲララゲラゲラゲラ!!!いいざまなんだね!!れいむをゆっくりさせないからそうなるんだよ!!!」
ボロボロになったぱちゅりーを嘲笑うれいむ。
「だいじょぶー?いたいんだねわかるよー」
ボロボロになったぱちゅりーをぺーろぺーろして慰めるちぇん。
「むぎゅう…」
どうやら死んではいないようだ。

「これはぜんぶれいむのものだよ!!ばかなちぇんとぱちゅりーはそこらへんのくさでもたべててね!!」
ゲラゲラ笑いながら五匹分の餌の人参を食っていく。

「やっぱり自分の力で頑張ってみよう!!」
れいむが一匹だけで五匹分の人参を食べ尽くした時点で男は考え事の目途がついたようで我に返る。
男はどうやらその場にいながら四匹の状態に気付いていなかったようだ。
無駄に高い集中力だ。
というかわざと無視しているとしか思えない。
だがマジなのが始末に負えない。

「ゆ!じじい!ぜんぜんたりないよ!!ゆっくりしないでさっさともってきてね!!」
体積が増えたれいむはおかわりの催促をする。
しかし、
「駄目だよ。食べ過ぎはよくないからね」

男はそれだけ言うと罵り続けるれいむを気にも留めず何故か裏口を使わないで玄関から家の中へ入っていった。

「までえ゛え゛!!!でいぶをむじずるなあ゛あ゛あ゛!!!」
男に体当たりしようとするれいむ。
しかし、鎖がれいむの進行を邪魔してベルトの部分が食い込む。
「ゆぎゅう゛う゛う゛!!?」
自分の跳ねた勢いが全て自分に返って来たれいむは地面に倒れ込む。
「ゆ゛ぅ゛…いぢゃいよ゛ぉ…」
基本痛みに弱いゆっくり種であるためれいむは簡単に痛みに喘ぐ。

「ゆ、ゆぅ…なにがあったんだぜ…」
ようやく目を覚ますまりさ。
だれもかれもゆっくり出来なくなっていた。
っして異変はその時起こった。

「うーうー♪」
「「「「ゆう゛う゛う゛う゛ッ!!!?」」」」
それは人間にとって無駄に陽気な腹立つ声。
しかし通常種にとっては何よりも恐ろしい声だった。

「れ、れ、れみりゃだあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」
れいむが餡子の髄に刻まれた恐るべき存在の名を叫ぶ。
そこに現れたのは胴有りれみりゃ。
街中ではあまり見ないれみりゃ種。
身体が肉の為犬や鴉に襲われて数が少ないのだが、近年れみりゃブームが来て嵐のように急速に去っていった為比較的数がいるのだ。
まあそれでもこうして姿を見るの珍しい事だが。

あの男に会ったゲスゆっくりには不幸しか訪れない。
四匹を狙っていたのだが男がいたので手を出せなかったのだ。
だがもう男はいない。
れみりゃは待ち望んでいた食事に喜び勇んで襲い掛かった。
「ゆうううう!!?」
「わがらないよーー!!?」
「むっきゅうううん!!?」
「はやくあのこやににげるんだぜえ゛え゛え゛!!!」
まずはまりさがいち早く逃げ、それに足(?)の速いちぇんが続き、ぱちゅりーがその後に続いた。
男に体当たりしようと離れた距離にいたれいむが逃げ遅れる羽目となった。
「うーあまあままつんだど~♪」
羽根をパタパタさせて追いかけるれみりゃ。

「ゆ、ゆうう…とりあえずこれでひとあんしんなんだぜ…」
「わ、わかるよー…たすかったんだね…」
「むきゅ…ゲホゲホ!」
何とか犬小屋の中に逃げ込めた三匹。
三つの犬小屋に綺麗に一匹ずつ逃げ込む。

「いれでね!でいぶもゆっぐりじないでいれでね!!!」
れいむもそれに続いて犬小屋に逃げ込もうとする。
が、
「ゆうううううう!!?はいれないよおおおおおおおおお!!?」
れいむは犬小屋に入る事が出来なかった。
五匹分の食糧である山積み人参を食べた事による体積の増加で横幅が犬小屋の入
る穴のスペースをオーバーしてしまったようだ。
男が親切心で軽く緩めていたせいでベルトが窮屈にならず、れいむもその事に気付かなかった。

「どうじではいれないのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」
切迫した表情で何度も犬小屋に体当たりするれいむ。
だが通る事は出来ない。
横暴のツケがあまりにも早く来たのだ。

「あまあまつかまえたんだど~♪」
「ゆひぃ!!?」
遂にれいむがれみりゃに捕まった。

「や、ややややややややめてね!!!れいむおいしくないよ!たべたかったらそこのぱちゅりーをたべてね!!!」
「むぎゅ!?」
れいむの命乞いで売られたぱちゅりーがビクッと反応する。
だが古今東西、ゆっくりが他のゆっくりを売った後に許してもらう事等まず無い。
れみりゃもれいむの命乞いに耳はかさず、
「いただきまずだど~♪」
「ゆぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!?」
中身を吸われていくれいむ。
だが吸うスピードはゆっくりであり、存分に甘味が出るようにしていた。
そのせいでれいむは本来ならすぐに死ねる所をゆっくりと苦しむ羽目になった。
「おぜうさまはゆっくりごはんをたべるんだど~♪」
「ゆぎ…たずげろ…」
コトンとれいむを束縛していたベルトが落ちる。
だが今更自由になった所でもう遅い。
もうれいむはれみりゃのごはんになるしかないのだから…。

「ざっざどたずげろ……」
喰われていく中れいむは犬小屋の中にいる三匹に命令する。
れいむの中で、今まで共に過ごしていた四匹は都合のいい道具だった。
“ゆっくりしたれいむのためにどれいのじじいはくれたあたらしいどれい。
だからゆっくりしたれいむをゆっくりさせるのはとうぜんだ”、という事を無意識に思い込んでいたれいむは犬小屋に隠れて助けようともしない三匹は許しがたいものだった。

「はやぐだずげろお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!おばえらばいばばででいぶのおがげでゆっぐりじでぎだんだろうがあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
ざっざどたずげろおお゛お゛お゛お゛!!!」
火は燃え尽きる寸前に勢いよくなるようにれいむは最後の力を振り絞るように罵声を浴びせる。

ちなみにれいむははっきり言ってまりさとぱちゅりーの金魚の糞みたいなもので、我が儘放題し、周りはそれに辟易しており、三匹、いや今はもいないありすを含めて四匹は一度もれいむでゆっくり出来た事等無かった。
つまりはれいむの勝手な思い込みである。

「ごのうらぎりぼのお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」
先に裏切ったのはお前だろうが…。
だが三匹はそれについて文句を言う事もなく犬小屋の奥で次は我が身かと震えている。

「う~、うるさい!」
れいむの叫びのやかましさに少しいらついたれみりゃはれいむの顔面に拳をぶち込む。
「ぶぎゅう゛う゛!!?」
痛みで罵声を上げる余裕のなくなったれいむを見て満足そうに食事を再開する。
「やだ…おう゛ぢ…がえ…ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛、ゆ゛…」
喋ることも出来ず痙攣しだすれいむ。
こうなってしまえばもう助からない。
あっという間に中身を失い、ぺらぺらとなってしまう。

「こんなものぽーいだどー♪」
ぞんざいに投げ捨てられるれいむの成れの果て。
ぺしゃりと地面に落下する。
「うーまだたりないんだどー♪」
それは犬小屋にいる他のゆっくりを襲う宣言も同意だった。

「う~はやくでてくるんだど~♪おぜうさまにたべられるんだど~♪」
れみりゃは犬小屋の入口手を伸ばして奥に潜むまりさを捕まえようとする。

「くくくくるんじゃないんだぜえ!!?まりさはおいしくないんだぜ!!」
「う~あまあま~!どうしてとどかないんだど~!?」
身体が入口に引っ掛かって手を伸ばしても届かない。
胴無しなら入れるだろうが犬小屋のような狭所では羽根が邪魔になってしまうので不利になるからあまり意味は無い。。

「むきゅうううううう!!?
こっちこないでぇえええええ!!?」
「わがだないよお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!?」
このままなられみりゃは諦めるだろうがその間のゆっくり達は生きた心地はしない。
「う~あまあま~!!!」
「ゆぴいいいいいい!!?」
人間に勝てると言っていたのが嘘のようにしーしーを漏らして恐怖するまりさ。
「う~!!あまあま~!!ざっざとおぜうざまにたべられるんだど~!!!」
まりさ達にとってはとても長い時間だった。
そしてそれの終わりはあっさり来た。

「う~そうだど~♪このへんなひもをひっぱればあまあまをとれるんだど~♪」
「ゆひぃ!!?」
まりさはそれに戦慄する。
それと同時に鎖が引っ張られる。
「ゆあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
まりさはれみりゃの引っ張りに死ぬ気で耐える。
舌を出して床にはいつくばり、摩擦を大きくしている。
「あまあまはやくでてくるんだど~!!れみりゃがおいしくたべてあげるんだからかんしゃするんだど~!!」
「やじゃあ゛あ゛あ゛…!!」
必死で引っ張りに耐えるまりさ。
だが手足のあるれみりゃに地力には勝てず、
「ゆんやあああああああ!!?」
まりさは犬小屋から引きずり出された。
「やじゃあ゛あ゛あ゛あ゛じにだぶない゛い゛!!?」
恐怖に眼を閉ざすまりさ。
しかし、何時まで経ってもれみりゃに襲われる気配はない。
不審に思い眼を開けてみる。
すると、
「う~?」
れみりゃは何かに捕まり、無理矢理犬小屋から引きはがされていた。
「う~あまあまがにげていくど~!?」
自分が犬小屋から離されたとは思いもしないれみりゃは早く犬小屋を追おうとじたばたと手足をばたつかせるが意味はない。

「ねぇ…」
れみりゃの背後から声がする。
「う~?」
その声に反応してれみりゃは後ろを振り向く。
そこにいたのはまりさ達をあそこに縛り付けた張本人である男だった。
そりゃ庭先で騒いでりゃ来るのは当然といえば当然だ。

「にんげんがれみりゃになんのようだど~!?はやくぷっでぃんもってくるんだど~!!」
折角の狩りの邪魔をされてご立腹のようだ。
だが男はそんなれみりゃの様子を一切無視し、
「これ…君がやったのかな?」
れみりゃを掴んでいる手とは逆の手に持つれいむの成れの果てを見せた。

「う~それはいらないからぽ~いしたんだど♪いいからざっざどぷっでぃんもってくるんだど~!!」
「それは食べたと判断していいんだね」
「う~いいからさっさと…」
そこから先はれみりゃは言葉を紡ぐ事は出来なかった。
男の拳がれみりゃの顔面にぶち当たったからだ。
「ぶひゃ!!?」
歯が何本も折れて地面に落下するれみりゃ。

「どうしてこんな事するのかな?」
「ぶぐぅあ゛…いぢゃい゛ぃ…ど…」
「同じゆっくりだよね…?」
男は痛みに喘ぐれみりゃしゃがみながら見下ろし、尋ねた。

男は知らなかった。
捕食種というものを。
ゆっくりの特徴は本で調べたが種族全てを知っていた訳ではない。
れみりゃと通常種であるまりさ達をマルチーズとチワワ程度の差としか思わなかった。
だから本来の狩る狩られるの関係を知らず、れいむを食べたれみりゃを許せなかった。
れみりゃの行いを自然の摂理ではなくゆっくり殺しと判断した。
ゆっくり殺しは問答無用で制裁。
それと男は似たようなものだった。

「ぶぎぃ!?ぼべぇ!?」
男は無表情なまま何度もれみりゃを殴打する。

「わ、わわわ…」
「む…きゅ…」
「うそ…なんだぜ…」
それは三匹にとって信じられないものだった。
街ではれみりゃの姿はあまり見かけないにしても餡子の中の記憶の奥底に刻まれたれみりゃに対する恐怖は三匹にも深く根付いていた。
それが今無残に男に痛め付けられている。
それは自分達の価値観、勝手な思い込みでしかないのだが自分達が人間よりも強いという考えが本能に刻まれた勝てない恐怖の対象のれみりゃを一方的に蹂躙している。

「ごべ…なざ…ゆるじ…くばざい…」
五体満足だが顔は二倍近く腫れ上がり、足は変な方向へ曲がり、羽根はボロボロで飛べそうにない。
むしろここまでしたのなら殺した方が慈悲なような気がする。
「ああ…御免、少しやり過ぎちゃった…ここまでやるつもりなかったのに…」
男はれみりゃの様子を見てやっとこさ気付く。どうやら夢中になると止まれないタイプのようだ。

「これじゃ…生きていけそうにないな…」
「ざぐやぁ…ざぐやぁ…」
とりあえずそのままにしておく訳にはいかない。
だがれみりゃは飼うのが難しいと男は同僚から聞いていた。
その同僚はれみりゃ種とふらん種を飼っており、その可愛さをよく周りに言っていた。
周りはそれに辟易しているのだが基本的にお人よしな男は嫌な顔をしないで聞いてあげる事が多かった。
しかし大半がれみりゃとふらんの可愛らしさの溺愛っぷりを言っているだけでれみりゃの生態の事等一切説明しなかったから男に捕食種に対する知識は養われなかったのだ。

「そうだ、あいつに聞いてみよう」
男はその同僚に相談することに決め、
「それじゃ、悪いけど一緒に来てね」
「う…う゛?」
男は優しくれみりゃを抱える。
そしてそのまま、裏口へ向かう。
三匹は男があのれみりゃを家に連れていくつもりだと理解する。

「ま、まつんだぜ!!」

まりさが若干ビビりながらも男を呼び止める。

「ん?どうしたの?」
男はいつもと変わらない表情で三匹を見る。
しかし、先程のれみりゃへの暴行を見た三匹はむしろそれが言いようのない恐怖を感じさせた。
だがプライドの無駄に高いまりさはそれでも男に要求した。
「そ、そのれみりゃはれいむをころしたんだぜ!!
そんなやつをおうちにいれないでまりさたちをおうちにいれるんだぜ!!」
「え?君達のお家はそれだよ。どうして入れるの?」
そう言いながら男は犬小屋を指差す。
「なにいってるんだぜ!!こんなのまりさのおうちにふさわしくないんだぜ!だからさっさとそのおうちをよこすんだぜ!!」
喉元過ぎれば熱さ忘れる。
男が手を出して来ないとわかると段々と調子に乗り出してくるまりさ。

しかし、
「駄目だよ。ここは俺のお家だからね。君達はそっちの方で我慢してね」
男はそうとだけ告げると後は取り合わずそのまま裏口から家の中に入っていった。

「ま、まつんだぜ!!そこはまりさのおう…」
バタンと扉が閉じられ、三匹だけが残される。

「むきゅう…」
「どうしてなんだぜ…そこはまりさのおうちなのに…」
「わからないよー…」
一日足らずで長年共にいた仲間を二匹も失った三匹は茫然とするしかなかった。




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最終更新:2009年12月26日 15:48
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