ふたば系ゆっくりいじめ 683 あんらっき~を乗り越えて

あんらっき~を乗り越えて 23KB


虐待-普通 観察 自業自得 仲違い 駆除 ツガイ 現代 うんしー jiltukuri



『雪』
それは個人が持つ価値観によって扱いが全く異なる代物。
山に降ればスキー場経営者が喜び、街に積もれば邪魔者扱い。

所有する土地の積雪に対する反応は、年齢を重ねれば重ねるほど拒絶を示す傾向にある。
何故ならば、雪かきという半強制的な苦行が待ち構えているからだ。

これが、中々の重労働。
だが、やらない訳にはいかない。
この雪の量では自動車を道路に出す事もままならないからだ。

「……めんどくさい」

俺はスコップを片手に持ちながら呟く。
目の前には真っ白な銀世界が広がっている。
昨夜、急激な寒波が訪れて、予報もされていない想定外な豪雪注意法が発令された。
だからと言って対策など何も出来るはずも無く、家の中であまり振らないように祈るしか方法は残されていない。

寝る前に祈りを捧げた効果を確かめる為に、俺は軽く純白に輝く雪にスコップを差し込んだ。
積雪量自体は、それ程多くない部類に入る。
だが、スコップの先に感じる氷の感覚が、これから行う雪かきの厄介さを予見しているようだ。

「重っ!?」

俺は雪をひとすくい持ち上げる。
予感的中。
新雪の下には氷の層が出来ていた。

前日の暖かい気温でほどよく溶けていた名残雪。
それが、深夜に訪れた氷点下によって再氷結した為に出来たやっかいな代物。
その厄介者は、ガラスの腰が軽く砕けそうな重量感をこれでもかと主張してくる。

「あーあ、めんどくさい……」

嫌々ながらもスコップを動かす。
この駐車場に積もる雪を排除しなければ車も出せない。
自然が及ぼす変化に文句を言った所で何も状況に変化は訪れる事は無いだろう。
でも、愚痴は自然と口から毀れる物なので、これもやむを得まい事情があるのだ。

「……」
「ゆ?」
「ゆゆ?」

ザラザラザラ。
自動車に被っている雪を地面へと落とす。

「……」
「ここはゆきさんがないよ?」
「とってもゆっくりできそうだよ!」

ザッコザッコザッコ……。
重い重い雪の塊を投げ捨てる。

「……」
「ゆ~ん! とてもきにいったよ!!」
「ゆっくりできそうだね!?」

ペンペンペン。
雪を一箇所に集めて小山を作る。

「……」
『『 ここをゆっくりぷれいすにするよっ!! 』』

ガサガサガサ。
ゆっくり達は、ダンボールを手早く広げてお家を作り上げた後、宣言を完了した。

「うるっせぇええええええええええええっ゛!?」
『『 ゆぅううううううううううううっ゛!? 』』

お兄さんの振り降ろしたスコップの先が、駐車場に無断進入していたまりさの体の端を掠める。
そのままスコップの勢いは衰える事はなく、闖入者の設置してあったダンボールを貫通した。

「あああああああああっ゛!? いのちがけでかちとった、まじざのだんぼーるさんがああああああっ゛!!」
「れいむだぢが、ゆっぐぢふゆごもりするだめの、ゆいいつのきりふだがあああああああああっ゛!?」

まりさ×れいむのお馴染みコンビ。
理想的なプレイスを求めて移動していた野良家族。
やっと辿り付いたかと思いきや、一瞬で大事なダンボールが半壊状態。
泣く理由に十分値する苦難のゆん生と言う茨道を歩いてきたまりさ達。

「どぼじでごんなごどずるのぉおおおおおおおおおっ゛!?
 べんじょうじろおおおおおおっ゛!! おばがぁあああああああああっ゛!?」
「れいぶのおいじいきのみざんだぢが、ばらっばらになっでるぅうううっ゛!?」

だが、そんな悲惨な目にあってきたまりさ達のゆん命など、お兄さんには関係ないことだった。
駐車場に進入してきて住居を設置した愚か者。
それも、苦労して除雪した部分に我がもの顔で居座ろうとしたのだ。
お兄さんが怒り狂うのも無理はない。

「ごごに、おおあながあいでるううううううっ゛!?
 せなかがすーすーずるよぉおおおっ゛!! ざむいいいいいいいいいっ゛!?」
「いやああああああっ゛!? ゆっぐぢできないいいいいいっ゛!!」

当然、ゆっくり達もお兄さんの気持ちを推し量る事はなかった。
今後について考えるべき重要な問題点は、ゆっくりプレイスが崩壊寸前に追い詰められた事、唯その一点のみ。

まりさ達の現状は最悪の一言。
持ち込んだ食料も粉々にされて泥と混じり合っている。
今夜を過ごす事さえも不可能に近い緊急事態に追い込まれていた。

「まじざだじのゆっぐりぶれいずに、なんでごどずるのおおおおおおっ゛!?」
「ゆっぐりせずにべんしょうしてねっ!?」

まりさ達は、大声をあげながらお兄さんに迫る。
別に不可解な行動ではない。
プレイス宣言をした後の場所は、何処であろうと自分達のテリトリーだと盲信している。
それは、野良や飼いゆに限定されるべき事項ではなく、ゆっくり達の本能に近い考えとも言える。

つまり、このまりさ達も自分達のゆっくりプレイスに無断進入してきた敵に吼えているのだ。
目の前に立つ人間へ、抗議行動としての考えを揺るがせる事無く、大声で捲くし立てる。

「何で弁償しなければいけないんだよ?」
「まじざのだんぼーるざんごわじだでじょおおおっ゛!? なんで、そんなごどもわがらないのおおおっ゛!!」
「まりさっ!! このにんげんさんは、あたまがかわいそうなんだよっ!?」

互いに侵入者として見据えた対立。
そこには、引くという事を知らない罵り合いが繰り広げられる。
絶対的有利を確信しているゆっくり達は、相手との力量差を計る基本的行動は二の次だ。
まずは、言葉で圧倒する行為を実行する。

「ゆ! そうなの!?
 それじゃあ、わかりやすくいうよっ!! ゆっくりとりかいしてねっ!?
 にんげんさんは、だんぼーるさんをこわしたでしょ? ごはんさんもどろどろにしたせきにんをとってね!?」
「ゆゆーっ!
 とってもわかりやすいよっ!! さすが、まりさだねっ!! ほれなおしちゃうよっ!!」

れいむがまりさを褒め称える。
まりさは頬をピンク色に染めて目尻を下げながら、嬉しそうに体を左右に揺らす。
その二つの塊を見下ろすお兄さんの眼差しは、冬の寒風よりも冷ややかだった。

「ゆんゆ~ん!! あたらしいだんぼーるさんがてにはいるよーっ!!」
「あまあまもってきてね!? たくさんでいいよっ!!」

そんな凍てつく視線に物怖じすることなく要求し続ける、空気の読めない哀れなまりさ達。
いや、逆に空気を読んでいるのかもしれない。
『この家無き子になった不幸を、幸運に変えるチャンスなのかもしれない』
そう頭の中に打算的な思考が一杯に詰まっているとも考えられる。

自分が有利な状況を信じて疑わないまりさ達。
そんな狭い視野で見据えた未来は、当然不幸の入り口しか開かれていない。
空気を読む技量を得る前に、このまりさ達には大事な物が欠けていた。

「いつまでまたせるきなのっ!? まりさおこるよっ!!」
「れいむはおこってるんだよっ!! ぷくーっ!!」

短気なれいむは丸い体に大気を詰め込み、頬の部分が通常の二倍以上に膨れ上がる。
例えて言うなら、食べ物を詰め込んだリスの頬に似ていた。、
しかし、れいむの全身が僅かに膨らんでいる為、風船のような形に近い状態とも言える。
その威嚇の行動は相手を怯ませる効果は皆無。
行為としては、ゆっくり達が思うような成果は望めず、人間達を正反対の行動に走らせる結果となる。

「ゆんやああああああっ゛!! いだいよおおおおおっ゛!!」

膨れたれいむの頬を裂くように、スコップを横に凪いだお兄さん。
風船のように盛り上がっていた肌の部分を容赦なく切り裂き、圧迫されていた勢い良く餡子が流出し始める。
流れ出した黒い餡の水分は多め。
雪の道を歩いて、身体に吸収したのが原因なのだろうか?
お汁粉のような緩さをした餡が、半崩壊したダンボールの上に小さな染みを広げていく。

「まじざのはにーがあああっ゛!? どぼじでごんなごどずるのおおおおおおっ゛!!」
「だずげでえええっ゛!! まじざああああああああっ゛!?」

お兄さんから見て、左にまりさ、右にれいむがダンボール内に身体を収めていた。
最初の一撃でまりさの左部分のダンボールを破壊し、二度目の攻撃ではれいむの右側を切り裂いた。

結果、既に水分が浸透してふやけていた小さめのダンボールは、
天井部分を支える機能を失い、地面に向けて垂れ下がった状態になった。
それがまりさ達へと、プレイス崩壊寸前の危機感を悪戯に植え付ける。

「うわああああああっ゛!? まじざのゆっぐりぶれいずがああああああっ゛!!」
「まじざあああっ゛!! べーろべーろじでよおおおっ゛!?
 ごのままじゃ、あんござんがながれて、れいぶがじんじゃうでじょおおおおおおっ゛!!」

新しいダンボールを要求していたまりさが、古いダンボール崩壊を見ながら泣き叫んでいる。
かなり滑稽な状況に感じるだろうが、この旧プレイスには思い出というものがあるので仕方がない事だった。

このダンボールは勝者の証だったのだ。
雪が降り積もる前の争奪戦で勝ち取った奇跡の素材。
引越しの行く先々で、好奇や嫉妬の視線をその身に受けて優越感に浸っていたまりさ。 
それが、目の前で崩れ落ちていく。
まりさは生きてきた全てを失うような悲しみに襲われていた。

当然、深い悲しみで涙を流し続けるまりさに、他の状況へと意思を向ける余裕は無い
まりさの隣で騒ぐれいむも、今まさに危機的状況に陥っていた。

頬からの餡子の流出が止まらないのだ。
一刻も早く、ゆっくりの唾液などで傷を塞がなければ、今後の生命活動に暗い影を落としかねない。
れいむは頬を流れる命の源に恐怖を感じていた。

「ゆわああああああっ゛!? かわいいれいぶをだずげでええええええっ゛!!」

その胸の奥から絶え間なく湧き上がってくる絶望に近い感覚は、涙腺を難なく崩壊させる。
顔を左右に振りながら、周囲に透明な雫を振りまくれいむ。
その深い絶望は、れいむのある部分の元栓を決壊させた、

「ゆううううううっ゛!! ゆああああああっ゛!! じんじゃうよおおおっ゛!!」

れいむの下腹部から大量のしーしーが漏れ出す。
漏らしている自覚は全く無い。
右頬の大怪我に一杯一杯のれいむは、身体の調整を維持できない程の錯乱状態になりつつある。

泣き叫ぶまりさとれいむ。
それぞれの悲しみの根源は全く違うものだが、悲痛な感情はどちらも負けてはいない。

「ゆっくりなおってね!! だんぼーるさんゆっくりしていってね!?
 ゆうううっ゛!! どぼじでなおらだい……? つっツッ!?」

舌を懸命に伸ばし、ダンボールの崩壊を食い止めているまりさ。
足元に水分が流れてくる感触を受けて、その不意打ち気味の衝撃に身体を大きく振動させる。
視線は、小川が流れてくる上流へと自然に向けられる。
そこで見たものは、大事なダンボールの床の部分に豪快なしーしーを染み込ませているれいむの姿。
まりさは悲しみから怒りに変えた後、れいむの丸い体へと突進していく。

「だんぼおぉるざんに、ゆっくりできないことをした、れいぶはじねぇえええっ゛!?」
「ゆぶうううっ゛!? ああぁああっ゛!! ゆがばがああああああっ゛!?」

寄り添うような幅で、仲睦まじく並んでいたまりさ達は、互いに大きく距離を取り始める。
まりさは大事な宝物を汚したれいむに対して、制裁行動の体当たりを行った。

れいむは予想していなかった打撃に抵抗することも出来ず、慣性に身を任せて転がっていく。
ようやく回転が止まった時のれいむの姿は、全身泥だらけの醜い風貌となっていた。
右頬の怪我は悪化の一途を辿り、大量の黒い餡子が駐車場へと流れていく。

れいむの足元は雪解け水でうっすらと水溜りが張っている。
あんよは、先程漏らしたしーしーの影響もあり、既に使い物にならないほど緩んでいた。
無理矢理移動を試みれば、地面に足の部分を残して、胴体とは離れ離れになってしまうだろう。

「どぼじでれいぶをつきとばずのおおおおおおっ゛!? 
 うがあああっ゛!! がわいいれいぶをうらぎっだまじざはじねえええっ゛!!」

口だけは流暢に文句を言い放つれいむ。
しかし、れいむは恐怖で動ける状態ではなかった。

愛するまりさからの体当たり。
それは、確実に殺す為に繰り出された、躊躇など全く感じられない慈悲無き一撃。
れいむは絶望を感じ取っていた。

「れいぶがぴんちだよっ!? このままじゃゆっくりしちゃうよっ!!
 ゆっくりゆるしてあげるから、たすげでねっ!?」

それでも慈悲を求めずにはいられない。
助けてくれた後は仲直り、これだけ可愛い自分だからきっと捨てるのは惜しいはず。
何も心配はいらないのだと、湧き上がる絶望を押し込める様に、まりさへと救いを求めたれいむ。

「ゆっくりしんでねっ!! れいむはゆっくりできないゆっくりだよっ!!」

れいむのそんな甘い考えは、相方の拒絶と死の宣告で切り捨てられる。
ゆっくり達が、"ゆっくり出来ない固体" と、認識した相手に関してはとても厳しい態度をとる。
それが家族だろうと何だろうと関係ない。
制裁と言うオブラートに包んだ暴力行為で排除行動を行う。
潰した後は見下すのみ。
そこに救済は存在しない。

「ゆうううっ゛!? にんげんざん!! あのげすまじざを……?」

不利と悟ったれいむは人間に助けを求める。
先程、自分勝手に要求をしていた相手に援護を頼む。
愚かなどとは言ってはいけない。

何故ならば、れいむの餡子脳の中にある順位では、遥か下方の部分にあのお兄さんがいるからだ。
そのピラミット型にある優先表の、底辺カースト部分に位置付けられたお兄さん。
お兄さんはれいむ達とは離れた場所で、もくもくと雪かきの作業を進めていた。

「……」
「そんなところにいたのっ!? でも、ゆっくりゆるすよっ!!
 まじざをせいさいしてねっ!! ゆっ!? そのまえにれいむをたすけてねっ!!」

サクサクサクサク。
大きな雪の塊を横に放り投げるお兄さん。

「はーっ……腰いて」
「どぼじでむじずるのおおおっ゛!!」
「ゆぷぷぷぷ!! にんげんさんはまりさのみかたなんだよっ!!」

完全に無視されたれいむ。
まりさは口を窄めながら、勝ち誇った笑みと言葉を漏らす。

しかし、先程までまりさは、人間に助けを求めたれいむに脅威を感じたみたいだった。
顔面蒼白(のような状態)で震えていたのだ。
人間がれいむの味方をしたらどうしようと、解りやすいほどに焦燥しきっていた。

「ゆふふふふふふっ!!」

それが杞憂となったまりさは喜んだ。
目の前に転がるのは、汚くてゆっくり出来ないれいむ。
勝利は掴んだも同然の様に高笑いを始めた。

「いやあああっ゛!? れいぶの…れいぶのすでぎなあんよざんがあああっ゛!!
 ゆぎいいいっ゛!? ほっべざんのあんござん、ゆっぐぢどまっでねえええっ゛!!
 びぃやばあああっ゛!? れいぶじにだぐない……じにだくないよおおおおおおっ゛!!」

れいむは死期を目前にして、最後の抵抗を行う。
訪れる未来は何も変わらないと言う、その無駄な努力に満ちた悪あがきと呼べる行為を。

前後左右に身体を動かす事によって餡子が漏れ出すスピードが早まり、
中身と皮膚が外部に崩れ落ちる結果を齎し、死が予定の時刻より短くなっていく異常事態に気づかない。

全身の痛みは増すばかり。
泣きながら大口を開け悲鳴をあげていた最初の頃とは比べ物にならない激痛が走っている。
現在は硬く歯を食いしばり、瞼はこれ以上広がらない開放を行っていた。

「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ゛!? ああああああああああああああっ゛!!」

眼球を外部に晒し、周囲に走る血管に似た赤い線を無数に張り巡らせ、真っ赤に染まっていくその瞳。
黒目の部分は、焦点を合わす行動を放棄したように、細かく振動していた。

「……ゆげぇえっ……えれえれえれえれっ もっど…ゆっぐぢ……じだ…げぼぉおっ」

れいむは、口から大量の餡子を吐き出す。
激痛などの過度なストレスを受けた体が悲鳴をあげた結果だった。
そして、同時に生きる事を放棄した選択でもある。

れいむの死期は、まだまだ先にあったのだ。
この苦しみのピークを迎えるのは数分後。
そこまで生きる事を望まず、れいむは激痛が支配する頭の中で、無意識の内に死を望んだ。

ゆっくりしたかったハズなのに、ゆっくり出来るか解らない死を求める。
でも、この痛覚で埋め尽くされた現状から逃れる為には、唯一残された他に選びようがない選択肢。

そんな矛盾を込めた言葉を死の間際に放ったれいむの心境は、
死ぬ直前まで、後悔だけを残したゆっくり出来ない悔しさで一杯だっただろう。
駐車場に、生気を感じないれいむの身体から、緩い餡子が広がっていく。

ここでれいむのゆん生は幕を下ろす。
そのゆん生は、お世辞にも幸福だったとは言えないものだった。





まりさは、崩れかかったダンボールの内部から、苦しみに顔を歪めるれいむを見ていた。
助けを求めるれいむを見下すかのような冷たい視線と、嘲笑うかのような笑みを浮かべながら。

このまりさは、れいむに対して制裁を行ったと信じて疑わない。
その信念には理由がある。
同属殺しを回避するための、かなりグレーな方法。
それが、制裁。

主に奇形種、下種、レイパーや赤ゆなどの同属殺しに使われる行動をまとめて制裁と言う。
時には、このまりさのように、大切な物を汚されたという理由だけで実行されるケースも少なからずあった。

群れをしていた時のなごりとも言われているその習性。
同属を潰した死臭を誤魔化す為に使われた嘘が発端とも言われている。
だが、その真相はわからない。
物証が何も残されていないからだ。

とりあえず、制裁の言葉が餡子に染み付いているから使っているのは確か。
長年の生活と進化で身に付けた、忌むべき風習。
だが、これもゆっくりとしたゆん生を送るべき知恵のひとつなのだろう。
ゆっくりの生態や行動は、未だ謎の部分が多い。





完全に動かなくなったれいむを踏み潰したい感情に襲われていたまりさは、
身体をムズムズと震わせながら、飛び出さんとする行動を賢明に抑えていた。

今、ダンボールの外へと出て行けば、れいむの二の舞になると考えたのだろう。
先程のしーしーを吸い込んだ足の部分も、しっとりと濡れていたのでは尚更だ。

「じまんのあんよさんをゆっくりふいてねっ!! やさしくだよ?
 らんぼうにしちゃだめだよ! ゆんゆ~ん! ゆっくりきれいにしてねっ!!」

まりさは迷わず人間へと助ける求める行動に出た。
れいむより自分を選んだと言う自信がそうさせたのだろう。
幾分、上から目線で命令に近い言葉を発するまりさ。

「……」
「ゆ?」

まりさは濡れた足の部分を、気持ち上へと浮かせて待っていたが、お兄さんからは返答も行動も無し。
お兄さんは振り向きもせずに雪を平らにならしていた。

「ゆ? おみみがきこえないの? まりさのあんよさんをふいてねっ!!」

聞こえなかったのかと思いながら、再度大声を張り上げるまりさ。
それでも、お兄さんはまりさの方を見ようともしなかった。

まりさの疑問と不安は苛立ちへと変わっていった。
制裁によりれいむを排除した際の優越感は無くなり、人間への怒りが色濃くなっていく。
自分の状態を自覚すればする程、不遇の箇所が餡子脳へと的確に伝わってくる。
まりさの下腹部に広がっている染みは、背中にも侵食し始めた。

それに、これは、しーしーなのだ。

まりさはその事を考えた時、唐突にゆっくり出来ない感覚に包まれる。
怒りと高揚感は一瞬で消え去り、直後に強烈な嫌悪感に襲われた。
大きく口を広げ、だらしなく舌を外部へと垂れだしながら、喉の奥にあたる部分から声無き声を発し始める。

全身から感じるしーしーの匂い。
まるで自分が汚物の塊に変化してしまったかのような悪臭。

「うわあああっ゛!? しーしーさんはゆっくりできないいいいいいっ゛!!
 ぐざあああああああああいっ゛!! まりさけがされちゃったよおおおっ゛!?」

まりさは考えてしまった。
理解してしまったのだ。
しーしーは臭いと。

余りにもゆっくりしすぎている感覚だと思う。
だが、れいむに制裁を加えているまりさは満ち足りていた。
とてもゆっくりしていたのだ。

その対象が居なくなった時、初めて違う事例へと目を向けたまりさ。
自らに及ぼす不幸をしっかりと理解した。

「ゆぎいいいっ゛!? どぼじでええええええっ゛!!
 まじざはどっでもゆっぐぢできるゆっくりばのにいいいいいいっ゛!!」

まりさの体はれいむと同じくグズグズの状態だった。
れいむが内部に漏らしたしーしーだけで濡れた訳では無い。
ダンボールの上に釣り下がった氷柱から水滴が落ちていたのも原因の一つ。

その氷柱は屋根にぶら下がり、暖かくなった気温で少しずつ溶け出していた。
水の粒が滴り落ちる場所は、まりさ達のゆっくりプレイスの丁度真上の部分。
崩壊した屋根からダンボールの内部に入り、まりさの背中を濡らしていた。

数滴の落下まで時間の差が大きかった先程に比べ、今は断続的に降り続いている状態になっている。
半分仰向けになっていたまりさの背中が水浸しになっていく。
もう起き上がれない。
背中に全く力が入らないのだ。
無理に動けば裂けると考えたまりさは、動くことすら出来きずに身体を硬直させた。

「あっあああっ゛!? づめだいよおおおおおおっ゛! 
 ゆっぐぢいいいいいいっ゛!! ゆっぐぢざぜでよおおおおおおっ゛!?」

ガタガタ震えながら泣き叫ぶまりさ。
ダンボールの屋根部分は、既にその役割を果たさず、直にまりさの顔面へと水滴が落ちる。
冷たく凍えるような水の玉を、氷柱から流れ落ちる瞬間から、自分へと落下するまでの動きを強制的に見せられたまりさ。
水を極端に恐れるゆっくり達にとって、拷問のような時間が続いていく、

「やだああああああっ゛!? あめざんごないでねっ!!
 あっちにいっでねっ!! どぼじでまじざにおぢでぐるのおおおおおおっ゛!?
 こんなに、おでがいじでるのにぃいいいいいいいいいいいいっ゛!!」

冷え切った水分がまりさを濡らし、身体を少しずつ削り取っていく。
小さなガラス玉がまりさに降り注いでいるかのようなその光景。
肌色の表面で球体が弾けて皮膚の表層を容赦なく抉り取っていき、まりさの全身が虫食い状態に黒ずんでいった。

豆粒位の穴の大きさは、落水が強まるにつれて徐々に広がりながら、内部に向かって深く深く掘り下げていく。
まりさの顔面付近は、自身の餡子で滲んだ黒い水の穴溜まりを無数に作り、水滴が跳ね上がる度にダンボールの側面を汚していった。
部屋中真っ黒に染まっていく現状と、弄られているような激痛にストレスを感じていくまりさ。
身体の奥から何かが込み上げてくる感覚に腹を捩る。

その時、まりさは視線の先で希望を見た。

「ゆっ゛!? ゆぐぶっ!! ゆぶううっ!!」

声にならない呻き声をあげながら、小さな希望に期待するまりさ。
吐き出そうとした餡子を強制的に身体の奥へと押し込んだ。

目線の先にあるのは、お水が絶え間なく落ちてきて、ゆっくり出来ない氷柱が揺れ動く姿だった。
その動きは微小で、じっと見ていたまりさで無ければ気づかなかっただろう。
まりさは、これで冷たい雨は降らないと希望を得たのかもしれない。
その様な儚く、哀れな期待を持ってしまったまりさは、生への執着を強めてしまった、

しっかりと見据えたまりさの目に映ったのは、お兄さんの自宅の屋根から滑り落ちてきた雪の塊。
氷柱部分と一緒に高い空から放たれた、まりさの命を狩り取る死神の姿。

「いやぁあああああああああああああああああああああっ゛!?」

最後の言葉となる咆哮を周囲に響かせたまりさ。
大きく開けた口の内部に、硬い氷の部分と柔らかい新雪が文字通り飛び込んだ。

綺麗に生え揃っていた白い歯を容赦なく砕いて喉の部分へと進入する異物。
その総量に耐えられなくなった頬の部分が横に裂けて、まだ蹂躙し足りないかのように塊は更に奥へと潜り込む。

全身を奪われていく感覚。
自分の中身を犯されているような苦痛。
叫びたくても声が出せない役立たずとなった自分の口。

ゆっくり出来ない軋む音が全身から響いてくる。
まりさの体は雪で覆われていたので、れいむのように餡子を吐いて終焉を迎えることも出来ない。
滲み出していく餡子が雪を黒く染めていく。

屋根から落ちてきた雪の氷結部分が、もう少しまりさを巧く砕いてくれたならば、即死の道を辿れたのかもしれない、
何処までも運に見放されたまりさの体は、徐々に体温を下げながら遺体なる運命を歩んでいく。

そして、埋もれた体を一際大きく跳ね上げたのを最後に、まりさは雪の中で死んだ。
まりさの宝物であり、誇りとも言えたダンボールのゆっくりプレイスは、泥と餡子に塗れて風格など何処にも無かった。
誰が見ても立派なゴミと認識されるだろうが、間違っても宝物だと言う人はいないだろう。

「……やっと雪かき終わった。よしっ! お前ら遊んでやるぜ……?」

お兄さんはスコップ片手に、意気揚揚と現場に足を踏み入れる。
そこで見たものは、駐車場にれいむが潰れて平たくなっている姿と、
同じく駐車場に存在していた、汚いダンボールと黒く滲んだ雪の小山。

「え…え? おいいいいいいっ!! 何勝手に全滅してんだよおおおっ゛!?
 うわああああああっ! ゆっくりできないいいいいいいいいいいいっ゛!?」

全てを理解したお兄さんは頭を抱えて取り乱す。
辛い雪かきで溜まったストレスを発散させようかと意気込んでみれば、ゆっくり達の姿は既に無く、
目の前に飛び込んできた状況を察すると、残されたの仕事が増えただけという最低な現実。
お兄さんはヒャッハーする事が出来ずに益々ストレスを抱え込む羽目になってしまった。

肩を落としながら自宅へと戻ったお兄さんは、
この悲劇を繰り返さない為に、悔し涙を流しながら今年の抱負を書初めに記す。


" 美味しいものは先に食べる "


お兄さんは、その会心の出来具合に多少溜飲が下がったのか、微かな微笑みを見せる。
文字を見ながら何度も頷いた後、自室へと飾るため動き出したその時、外の駐車場から声が聞こえた。

「ゆゆゆ? ここはゆきさんがないよっ! とってもゆっくりできそうだよっ!!」
「そうだねっ!! ここにおうちをつくろうねっ!!」

がさがさと何かを広げる音と、ゆゆゆの声。

『『 ここをゆっくりぷれいすにするよっ!! 』』

プレイス宣言を聞いたお兄さんは直ぐに自宅を飛び出していった。
お兄さんは進入者に対して抗議を行うこともせず、大きな氷柱を手でへし折った後、その目の前にある丸い塊に尖った先端を向ける。

体を膨らまして威嚇をする二体のゆっくり。
お兄さんは、全ての鬱憤を晴らすかのように、地面にいる一体目掛けて氷の槍を投下した。
強気だったゆっくりが弾けて、周囲に中身が醜く広がる。
先程とは一転して叫び声と謝罪を撒き散らす、生き残ったもう一体のゆっくり。
それを聞いたお兄さんは、死んだゆっくりから甘くなった氷柱を引き抜きながら、満足そうに微笑んだ。

抱負を有限実行する為に残りの侵入者も美味しく頂きます。
甘くなった数本の氷柱を、生き残ったゆっくりの口に含ませて見ると、早速でました。

「あまあまをもっとちょうだいね!?」

その満面の笑みに、お兄さんが振り上げたスコップの背が、勢い良くぶち当たる。
綺麗な金属音が辺りに響き、衝撃がゆっくりの歯を細かく砕いて眼球を潰す。
咳き込みながら地面へとだらしなく体を広げるゆっくり。
虫の息で口から餡子を吐きながら、濁った遺言をぶつぶつとを呟く。

「…えれえれえれ…もっぢょ……ゆっぐぢじだがっ……だ…」
「いやっほおおおっ! すっきりいいいいいいっ!! 新年明けましておめでとおおおっ!!」

お兄さんの歓喜の声でゆ虐新年の幕が上がる。
周辺の民家からも同じような魂の叫びが昼間の空に吸い込まれていく。

今年は良い年になりそうだ。








 ・ちょっぴり不幸なまりさとれいむとお兄さんのお話
  内容はよくある自滅っぽいものでした


過去作
ふたば系ゆっくりいじめ 665 基本種 れいむの受難
ふたば系ゆっくりいじめ 638 ばうんてぃはんたー
ふたば系ゆっくりいじめ 612 かってにはえてくる
ふたば系ゆっくりいじめ 593 迷作劇場
ふたば系ゆっくりいじめ 572 ぎゃんぶらー
ふたば系ゆっくりいじめ 507 火の用心
ふたば系ゆっくりいじめ 500 駄目だよ?
ふたば系ゆっくりいじめ 458 ドゲスー
ふたば系ゆっくりいじめ 449 希少種の価値 2
ふたば系ゆっくりいじめ 448 希少種の価値 1,5
ふたば系ゆっくりいじめ 443 希少種の価値
ふたば系ゆっくりいじめ 398 ゆっくり達を必殺技で葬る物語
ふたば系ゆっくりいじめ 382 穴だらけの計画とその代償
 ・他、5点


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感想

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  • 段ボールがゆいいつのきりふだか… -- 2011-03-07 01:42:40
  • ゆっくり共の愚かさがしっかりと書かれたいい作品ですね! -- 2010-09-01 14:04:33
  • 絶望するゆっくりの心情が、しっかり描写されてて、
    とても素晴らしいです。 -- 2010-07-20 17:13:24
最終更新:2010年03月14日 09:34
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