ふたば系ゆっくりいじめ 692 素晴らしい贈り物

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観察 自然界 虐待じゃなくてごめんね!

『素晴らしい贈り物』
 作者:タイポあき
 作成日:2010年01月05日(火)

虐待じゃなくてごめんね!


※成分表
 ・通常種 2.997×10^8 メートゆ/びょうっ
 ・餡子脳 1.602×10^{-19} ゆーロン
 ・野生 6.626×10^{-36} ゆール・びょうっ
 ・観察 0.529 オングゆトローム
 ・誤字脱字 1/137 ゆんやぁ(無次元量)


 - 1 -

見渡す限り、一面の銀世界。
全裸の俺。
――寒い。

こういうと何か勘違いされそうだが、俺は全裸で野山・街中を駆け回る変態紳士ではない。
もちろん男である以上、彼らに憧れる心は持ち合わせている。
だがあいにく、俺はそこまでのレベルには達していない。
彼らのような偉大なる《到達者》になれるのは、選ばれしほんの一握りのみ。
理性を崖下に向かってブレインバスターできるほど、ピュアな心を持つ《伝説の勇者》のみだ。
俺のような普通のお兄さんに許される領域ではない。

では、何故?
なるほど、当然の疑問だ。
しかし同時にトリビアルな疑問でもある。
何故なら、君もここにくれば俺と同じ行動をとるだろうから。
なにせここからドス5匹分先からは、湯煙が立ち上がっているのだから。

そう、ここは温泉だ。
目の前にある看板にもそう書いてある。
「ゆっくり極楽! ゆんやぁっ地獄温泉」と。
まあ意味を考えると、軽くカリスマブレイクしている内容だが。


 - 2 -

極楽、極楽。
やはり温泉はいいものだ。
辺りが寒いだけに、そのありがたみが身体に染み渡る。
加えて湯の中からは、絶景が眺められる。
素晴らしい。

この温泉の素晴らしいことは、それだけではない。
目を近くに戻せば、湯船に浮かぶもふもふ。
温泉に入りに来たお猿さんである。
人に慣れているのか、一緒の湯船に入っても動じない。
気性もいたっておとなしい。
他では見られない光景だ。
今は俺しかいないが、これを目当てにくるお客さんも少なくない。
隠れた名湯という奴だ。

これで湯船にお酒でも浮かべて一杯やれれば文句はないのだが、流石にお酒は置いていなかった。
残念、極まりない。
とは言え、それでお湯そのものの価値が下がる訳でもない。
今はお湯と、絶景と、もふもふを楽しむとしよう。
それに、まだ一番の目玉は残っている。


 - 3 -

「ゆううぅぅぅっ! さぶいいいいいいぃぃぃっ!」
「ゆっ! 何だがこっちの方が温かいよ!」
「ゆっくりできそう!?」
「できそうだよ!」
「ゆっくりー!」
「ゆっくちー!」

途端に辺りが騒がしくなる。
この温泉の一番の目玉がやってきたようだ。
ゆっくりである。

しかも都会ズレしておらず、ゲス化していないゆっくり。
いまどき珍しい、希少なゆっくり達だ。

もっともその分、餡子脳全開な個体ばかりでもある。
なにしろ寒さに弱い癖に、雪が積もる真冬の真っ只中にお散歩をするのである。
加えて、雪のせいで目印が分からなくり、巣を見失う。
結果としてこの温泉に流れ着くのである。

温泉に集まるのは、ゆっくりできる所を感知できる本能に由来しているらしい。
しかしその本能に、巣は引っかからないらしい。
そういうあたり、ゆっくりらしいと言えばらしい話である。

「お兄さん、そこはゆっくりできるの?」
そんなことを考えているうちに、ゆっくりが話しかけてきた。
金髪に黒い三角帽子。まりさ種だ。
その隣には黒髪に紅白カラーのリボン。れいむ種もいる。
そして子ゆっくりたち。
れいむとまりさの番だ。
珍しくもない組み合わせだが、こういう純粋な問いかけは聞かなくなって久しい。

だから正直に答えてあげることにした。
「ああ、温かくてとってもゆっくりできるよ」
これを聞いたゆっくりたちは大喜び。
「よかったね!」
「ゆっくりしよう!」
「ゆっくち!」
『ゆっくりしていってね!』
キレイに声を合わせた挨拶をすると、一斉にお湯の中に飛び込んできた。


 - 4 -

「あったかいね!」
「ゆっくりできるね!」
「ゆっくちー!」

ご機嫌なゆっくりたち。
だが世界はそれを許さない。

「ゆっ、なんだか体がむずむずするよ!」
始めは子れいむの一匹だった。
お湯につかったために体が痒くなってきたらしい。
血も流れていないのに、血行がよくなってきたのだろうか。

「ずーり、ずーり。すっきりー!」
あんよや背中を岩にこすり付けている。
その表情は満足そうだ。
しかしその代償は高くつく。

「ゆんぎゃあああぁぁぁぁっ! どぼじでれいむのあんこさんがでてるのおおおおぉぉぉっ!」
ふやた饅頭皮を岩にこすりつけたら、こうなるのは当然である。
「ゆっ、れいむ!?」
れいむを心配する家族だが、こうなってはどうしようもない。
「もっど……ゆっぐりじだがっだ……」
あっというまに餡子を流しつくして《永遠にゆっくり》してしまった。

「ゆわあああぁぁぁぁぁんっ! れいむうううううぅぅっ! どぼじでぇ!」
泣き叫ぶ家族たち。
どうしても、こうしてもない。
水に溶ける饅頭。
それも温度が高いほど良く溶ける饅頭。
長時間お湯につかればこうなるのは当然だ。

子れいむだったものに駆け寄る家族たち。
急いでぺろぺろすればまだ間に合う、とでも思っているのだろうか。
しかしそんなに焦ったらどうなるか
「ゆぎゃぁぁぁぁっ! まりしゃのあんよしゃんがぁぁぁ!」
案の定、子まりさの一匹が石を踏んでしまった。
石といっても、角はとれている。
人間が踏んでも怪我をするのは難しいような難しい代物だ。
だがふやけた饅頭には致命的だ。
しかも踏んだのは子まりさ。
瑞々しい子ゆの餡子は、次々とお湯に流れ出してゆく。
あれよあれよと言う間に、体の半分以上を失ってしまった。

「ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ、ゆ゛っ」
痙攣しだす子まりさ。
最早、死の一歩手前だ。
慌てて子まりさへと向かう二匹の親ゆ。
子れいむが無理でも、子まりさならまだ間に合うという冷静な判断にみえる。
しかし実際は、複数のことを同時にできないだけである。
それにそんな行動も意味は無い。
湯船に立つ波にもまれ、子まりさの体はあっという間にバラバラになってしまった。

「ゆああぁぁぁぁああああっ、おちびちゃんっ!」
目の前の悲劇に絶叫する親ゆ。
しかしそれだけでは済まない。
子まりさに駆け寄ったときにできた波は、子れいむの一匹もバラバラに砕く。
「おきゃ……あしゃ……ん……たしゅけ……」
だが助けを呼ぶ声は、親ゆたちの悲鳴にかき消される。
結局この子れいむの死は、誰にも気づかれることは無かった。


 - 5 -

「ゆううっ! もうおうち帰るっ!」
そういって湯船から飛び出すゆっくり達。
残っている個体は比較的成長しているためか、まだまだ動けるらしい。
こんなゆっくりできないところには、これ以上一秒たりとも居たくない。
そう言わんばかりに、ゆっくりしてない速さで雪上を跳ねていった。

「おきゃーしゃん、おとーしゃん! まっちぇー!」
おや、と思って湯船に目を戻す。
するとそこには一匹の子れいむ。
一家全員がお湯を飛び出したかと思ったが、残っていたらしい。
波で砕かれるほどふやけてはいないが、あんよの機能は失ってしまったらしい。
見捨てられたというより、気づかれないまま置いていかれたのだろう。
家族全員が脱出に必死だったのだから。
加えて、3以上の数を数えられないゆっくりの性質も、これを後押しした。
もっとも子れいむには、何の慰めにもならないが。

「やめちぇ、やめちぇ! いちゃいー! ゆぐっ!」
ためしに指でつついてみると、何の抵抗も無く子れいむ頬に吸い込まれていった。
「ゆっ!? ゆあああぁ、だめええぇぇぇっ! れいむのあんこさん、出て行かないで!」
穴が空けば、当然お湯が流れ込む。
その反動で中身が漏れ出す。
この子れいむも、もう長くないだろう。
別に殺すつもりは無かったのだが、こうなってしまえばどうしようも無い。
子れいむには無視を決め込み、放置することにした。

「お兄さん、おでがいじばず助けでぐだざい!」
そう言う子れいむだが、あの様子では持ち上げたとたん、全身が崩れてしまうだろう。
もう子れいむの運命は決まっている。
この状況になってなお、ゲス発言をしないのには感心したが、これは人間でも無理である。
子れいむは俺の目の前で悲壮な表情を浮かべ、ゆっくりと苦しみぬいて溶けていった。

子れいむが溶けきったころ、家族が戻ってきた。
「ゆうううううぅぅぅっ! 寒いいいいいいぃぃっ!」
しかし、子れいむを助けに来たわけではない。
寒さに耐えかねて戻ってきたようだ。
濡れたまま雪の中を走り回れば、そうなるのは当然のことである。
お湯は怖いが、それ以上に寒かったようだ。

目を凝らせば、遠くに黒や赤の点がころがっている。
大方、温泉まで戻れずに力尽きた子ゆっくりたちだろう。
もしかしたらまだ生きているのかもしれないが、すぐに溶けた家族の後を追うだろう。
饅頭が凍死とは奇妙極まりないが、ゆっくりは凍死するからだ。
ゆっくり内部で成長した氷が、中枢餡を傷つけるである。

お湯の中にいれば体が溶ける。
外に出れば寒さで凍死。
この一家は見事に、袋小路にはまってしまったようだ。


 - 6 -

温泉と雪上の往復運動を繰り返す一家。
その段々と失われてゆく子ゆっくり達。
だが、途中から溶ける子ゆっくりが少なくなっていく。
お湯の中に溶けた餡子の砂糖のためである。
オレンジジュースに漬け込んでも溶けることが少ないのと、同じ様な理由だ。

「ゆっ、よく分からないけどお湯の中にいても大丈夫だよ!」
親まりさもそれに気がついた様だ。
お湯の中でゆっくりし始める。
餡子の甘い香りの漂うお湯の中で、くつろぐゆっくり。
なんとも滑稽なものである。

もちろん、このまま一家を見逃すほど、ゆっくりの死神は甘くない。
事件が起こったのは、その直後だった。
「ゆぎゃあああああああっっっ! いだいぃぃぃぃっっ!」
いきなり大きな叫び声を上げるまりさ。
見ればもふもふのお猿さんの腕が、まりさの脳天に突き刺さっている。
お猿さんは、中身をかき混ぜるように腕を動かし、その後にゆっくりと引き抜く。
その手には沢山の餡子。
それをうれしそうに舐めとっていた。
思わず笑みを浮かべてしまうような、可愛らしい光景だ。

もちろんそれで終わりな訳がない。
一匹のもふもふが餡子を舐め終わると、次のもふもふが餡子をかき出す。
すぐに殺さずに痛めつけている辺り、経験的にゆっくりの性質を知っているのだろう。
すぐに一家を殺さずに温泉と雪上を往復させてたのも、いい具合になるのを待っていたのだろう。
この段階になれば、中の餡子は極上の甘さであり、同時に逃げ出す体力も無いからだ。

「ゆああああっ! おとーしゃん! 助けて!」
「ゆぎぎぎ、まりちゃは美味しくないよ!」
「ゆぴぴぴぴぃぃぃい! れいみゅを食べないでええええぇぇぇ!」
もちろん子ゆっくりも無事ではすまない。
次々と捕らえられ、丸かじりにされる。
親まりさに助けを求めるが、当の本ゆんが頭の中をかき回されているのだ。
助けられるはずが無い。

「ゆぎっ! ゆ゛ぐう! ゆげえ゛っ!」
親まりさの言葉がだんだん不明瞭になってきた。
もう《永遠にゆっくりする》のも時間の問題だろう。


 - 7 -

「ゆあああぁぁぁっ! お兄さん助けてぇぇぇぇえっ!」
親まりさ痙攣し、苦しみぬいて《ゆっくり》したころ、俺の方に親れいむが《走り》こんできた。
目には涙を浮かべ、頬はパンパンに膨らんでいる。
残った子ゆを退避させているのだろう。
自分が敵わないのが分かっているのか、俺に助けを求めてきたのだ。

一目散に逃げ出さずに、子ゆを助けた親れいむ。
確かに、良い意味での母性をもっている親れいむだ。
最近ではなかなか見れなくなった、素晴らしい光景だ。
しかし、いくら善良とは言え所詮はゆっくり。
もふもふと比べれば、もふもふが優先されるのは当然のこと。
今俺が親れいむを抱えてお湯を出れば、親れいむは助かるだろう。
だが、そんなことをする理由は無い。
ついでに言えば、まだ温泉を楽しみたい。

とは言え、あえて親れいむを蹴りだしたりすることもしない。
面倒だからだ。
真剣な目でにらみ合う、もふもふと親れいむ、という構図が面白いというのもある。
結果として、親れいむは俺のそばに張り付いていることができた。
それが抑止力になったらしい。
もふもふと親れいむは、俺が温泉をでるまでの間、ずっと睨み合っていた。


 - 8 -

「なるほどねえ。そういう意味だったんだ」
服を着た俺は、出来立ての温泉饅頭を食べながらそう呟いた。
目の前には「ゆっくり極楽! ゆんやぁっ地獄温泉」という例の看板。
カリスマブレイクした文言かと思っていた。
だがなんのことはない、単に事実を書いただけだったのだ。

人間やお猿さんにとっての極楽。
ゆっくりにとっての地獄。

それらが同時に起こるというだけのこと。
極楽と地獄。
相反する二人が手を取り合って協力できるのも、この温泉ならではなのだろう。


 - 9 -

そうそう、一つ忘れていた。
これを言わないと、みんなに怒られてしまう。
素敵な温泉饅頭を作ってくれた親れいむには、感謝の言葉を捧げる。
白黒・紅白の素晴らしい温泉饅頭を作ってくれたのだから。

残念なことに、俺が湯から上がることにはすっかり消耗してしまい痙攣を始めていた。
溶けることは無くても、熱に強くなったわけではないのだろう。
だがそんなになってまで、親れいむは仕事を全うした。
最後にその身をもって、お猿さんに甘味をプレゼントしたのだ。
ここまで他人に尽くせる存在は、そうはいないよ。

温泉の目玉でもある、名物の温泉饅頭。
とっても美味しかったよ。
素晴らしい贈り物をありがとう、れいむ。


 - The End -



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感想

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  • 設定に対して疑問符だらけの作品だったな。 -- 2018-01-11 11:46:31
  • サルのいる山にゆっくりが入ったらあっという間に絶滅させられるだろうなw -- 2011-06-19 10:18:26
  • というか温泉の深さどうなってんだ? -- 2010-11-24 22:37:33
  • 実は今家の近所に猿が出没してるんだ…ニュースになってると思うが -- 2010-09-12 23:37:07
  • サルは甘いもの好きそうだからな…れみりゃ・ふらん以上の脅威になりそうだ。 -- 2010-07-12 01:32:36
  • お湯に溶けた餡子がべたべたしそうだが・・・ -- 2010-06-29 15:09:53
  • もふもふは結構危険なんだが・・・ -- 2010-03-24 18:25:25
最終更新:2010年01月15日 22:07
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