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ポートピア連続殺人事件」を以下のとおり復元します。
&bold(){※本作はパソコン版『ポートピア連続殺人事件』と、家庭用移植版であるファミコン版『ポートピア連続殺人事件』について記載しています。}
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#contents(fromhere)
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*ポートピア連続殺人事件
【ぽーとぴあれんぞくさつじんじけん】

|ジャンル|アドベンチャー|&image2(po-topia.jpg,height=200)|&image2(po-topia_x1.jpg,height=200)|
|対応機種|PC-6001、PC-8801、PC-8001mkII、FM-7、X1、MSX|~|~|
|発売元|エニックス|~|~|
|開発者|堀井雄二((氏がプログラム・シナリオ・グラフィック全てを一人だけで開発した。ちなみに当時のPCゲーム制作は複数人による分業がまだ確立されていなかった。))|~|~|
|発売日|【PC88】1983年6月&br()【PC60】1983年8月|~|~|
|定価|【PC60/PC88】3,600円|~|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~|
|>|>|>|CENTER:''堀井ミステリー三部作''&br;''ポートピア連続殺人事件'' / [[北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ]] / 軽井沢誘拐案内|

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**概要
堀井雄二氏が手がけたアドベンチャー(ADV)ゲーム。~
ADVゲームの黎明期において宝探しもの、冒険もののゲームが主流な中、''ミステリーをテーマとしたADVゲーム''として発売された((海外では、ハイレゾADV(グラフィックADV)の祖である『ミステリーハウス』(1980、シェラオンライン)があった。(日本の同名作品であるマイクロキャビン版は、単なる宝探し。)))。~

**ストーリー
1980年代の神戸。~
黒い噂の絶えない金融会社「ローンやまきん」の社長である山川耕造が何者かに殺された。~
主人公は早速捜査に乗り出すが、耕造が殺された場所は中から鍵がかけられており完全な密室であった。~
部下とともにこの事件の真相を暴くに連れ、舞台は京都にも広がり、さらには容疑者が殺される連続殺人事件へと発展してしまった。~
はたして真犯人は誰なのか?そして共犯者と犯人、被害者の関係は?

**特徴
-冒頭で述べたように本作は''ミステリーをテーマとしたADVゲーム''である。
--物証を元に人間関係を探って紐解いてゆくため登場人物達へのアプローチが冒険ものよりも多い。もっとも聞く内容自体はやや定型的だったが。
--本作は事件の調査に携わる刑事(=プレイヤー)こと「ボス」が、部下である「ヤス」こと真野康彦と共に事件解決へ向かう構図。

-システムは当時一般的だったコマンド入力式。ただし、英語入力のゲームも少なくなかった当時での日本語入力となっている。
--入力は名詞と動詞の組み合わせで行う。「上司が部下に命令する」という形式であるため、コマンド入力後のメッセージはプレイヤーのパートナーである部下ヤスの視点で描写される。
--コマンド自体は比較的少なく、コマンド入力式にありがちな言葉探しはそう手間がかかるものでもなかった。またよく使われる用語はファンクションキーに割り当てられているため、コマンド入力をある程度省く事ができた。

-グラフィックは現在から見ると拙いものだが、当時としては平均的。

-BGMは基本的には流れず効果音のみ。

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**評価点
-当時としては珍しい、ミステリーADV。
--そのため当時のゲームとしては数少ないストーリー性が色濃く出た作品と言える。
--各人物の描写もしっかりしており、解明される事実に関してヤスが一言行ったりプレイヤーの変なコマンド命令に対して突っ込んだり追い出そうとしたり、喜んで行動しそうになる。事件とは無関係だがメッセージが表示される電話番号等事件とは脱線する部分の描写もしっかりとしている。
--推理物ADVを形にして、以後後継作に影響を与えたことから、パイオニアと評しても過言ではない。

-推理物としても完成度は高い
--散らばられた伏線に、二転三転する展開と容疑者、考えられたプロットなどゲーム抜きにしても完成度の高い推理モノの作品として仕上がっている。

-現在にも通用するゲーム性
--典型的なADVに見えるが、間違った推理を誘導するなどのゲームとして色々なギミックが仕掛けられており、単なるコマンド式のADVだけではない選択肢も多い。
--ただのギャグ選択肢と思われる選択肢も実は重要な場面で発揮するなどの現代のプレイヤーも驚かされる仕掛けが用意されている。

-パートナーがいるという独特のADV。
--この二人三脚の構図がミステリーの色合いを強くしている。さらに時々、関連他部署からの情報がもたらされ、組織で捜査しているという雰囲気を作り出していた。

-何かとテンポの悪いコマンド入力式だが、ファンクションキーを使うなど、本作ではプレイしやすような配慮が窺える。

**賛否両論点
-ある箇所にて暗号文が出てくるが、機種ごとに内容が異なっている。
--答えとなる言葉も機種ごとに違うため、同じゲームなのに機種が違うと友達と情報の共有が出来ないという事態になった。
--機種ごとに考えさせようとしただけで、違うこと自体はむしろ評価点とする意見もある。

-シナリオの結末に関して
--むしろこの作品の代名詞にもなる本作の結末についてだが、「ノックスの十戒」(ミステリー小説を書く際の目安)等では禁じ手扱いされているものである。((尤も、これを提唱したノックス自身も十戒に背いた作品も書いており、ネタ半分らしいのだが。))
---ただし、作者自身はこれは限られた容量の中でいかにプレイヤーを驚かせるかを考えた上のことでもあるとしている。

**問題点
-一部機種の暗号難易度。
--上記の通り暗号は機種によって内容が変わるが、小学生でも解けるような鏡文字のようなものからパソコンの16進数を理解してないといけなかったり、ダミー文字のある暗号文だったりと難度はピンキリ。
---簡単な方はまだしも16進数表記を理解しないと解決できない物等は前知識がないとヒントがあっても厳しすぎる。
--なお、MSX版にはペンダントが(その持ち主を含め)登場しないなどの違いもある。

-セーブ機能がない。
--ボリューム自体はそう多いものでもないのだが、自由度が高く、攻略の時間がかかるため、プレイしながらこまめにメモを取っておく必要がある。その上クリアまでぶっ続けで遊ばなくてはならないので少々きつい。

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**総評
ADVの黎明期。テキストADVや英語入力のADVもあった頃。冒険ものにせよ宝探しにせよ、もっぱら探索ものが多かったADVの中に現れた本格現代ADVだった。そのミステリーという方向性は当時にしては新鮮なもの。~
またコマンド入力式のわずらわしさを、なんとか解消しようとしてる所も無視できないポイントである。

ただ残念な事にやはり当時の主流は冒険や探索もの。この頃の代表的なADVの1本ではあるが、知名度は一歩落ちるものだった。~
ゲーム自体の知名度の向上は、後続のファミコン移植版を待つことになる。
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*ポートピア連続殺人事件(FC)

|ジャンル|アドベンチャー|&image2(po-topia_fc.jpg)|
|対応機種|ファミリーコンピュータ|~|
|発売元|エニックス|~|
|開発元|チュンソフト|~|
|発売日|1985年11月29日|~|
|定価|5,500円|~|
|判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|
|ポイント|システムの異なるPC版とFC版&br()ゲームで最も有名な犯人|~|
**概要(FC)
PC版のファミコン向け移植版。FCソフト初のADVゲームとなり、大ヒットとなった。~
シナリオはオリジナル版を踏襲しているが移植にあたってシステムの変更や、テキスト面・謎解き面で変更が施されている。

**オリジナル版からの変更点
-シナリオはオリジナル版と同一であるが、ファミコンにはキーボードが標準搭載されていないため、PC版『オホーツクに消ゆ』から導入されたコマンド選択式のシステムを採用している。
-脱線したり間違った容疑者を犯人としてしまった場合に上司が推理ミスを指摘し捜査を再開させるようになった。
--これにより、バッドエンドになって最初からやり直す可能性はなくなり、コマンド入力型のPC版よりも難易度が下がった。
---このため「そうさ やめろ」は完全な遊びコマンドとなっている。

-マップ内を直接調べて証拠品を発見する探索要素や3D迷路が追加された。
--捜索時の証拠品の当たり判定がドット単位だったりと、シビアな部分が多い。
//--携帯アプリ版では簡略化され、自分で探す必要が無くなっている。

-PC版にあった暗号はFCオリジナルのものに変更され、その紙があったそばにあるものを使うのが正解となっている。
--ただしゲーム発売当時は「あるもの」は現代ではほぼ無くなった旧式のものが多く、現在用いられている方式を知らないと悩むこととなった。

#region(「あるもの」のネタバレ)
-そのあるものというのは「プッシュ式電話」である。昔はダイヤル式の黒電話が多く、プッシュ式の電話がやっと普及し始めたころで暗号の「こめいちご」は短縮番号の「*15」だったというトリックだった。
-また「そもそも短縮ダイヤルそのものを知らない」という人も(特にFCのメイン層である子どもには)多く、「*」(アスタリスク)と「米」は厳密には形状が違う事もあり、トリックの難易度は非常に高かったといえる((なお、正確には「*」はアスタリスクではなく「星印(スターマーク)」。正確な形状も*を90度回転させたもの。「#」も、シャープではなく「井桁(番号記号、ナンバーサイン)」である。))。
--一応、FC版は電話をかける際プッシュ風のボタンが表示されるので勘のいい人は解ると思うが…。
#endregion

-容量の都合で変更になった証拠品がある。
--具体的には「ペンダント」が「ゆびわ」に変更されている。これは容量を少しでも節約するために、カタカナは良く使われる文字と、物語上どうしても必要な「ポートピア」「ボス、ヤス」「ローンやまきん」に使われる文字以外は収録していない為、ひらがなでも違和感のない「ゆびわ」に変更された。((後に発売されたドラクエでは、「ヘ」をひらがなの「へ」で代用する手法がとられたが、今作ではされていない。))
--これは漫画「ドラゴンクエストへの道」で語られたエピソードだが、オリジナルのPC版にはペンダントは(その持ち主含め)登場しないため、正確にはFC版のシナリオ構想段階で「ペンダント」だったものを「ゆびわ」に変更したものと思われる。

**評価点(FC)
-コマンド選択方式の導入により、オリジナル版と比べてとっつき易くなった。
--言葉探しというゲーム性ゆえの難易度の高さが緩和されて純粋にストーリーと謎解きに集中できるようになった。

**問題点(FC)
-オリジナル版同様、BGMが一切なく効果音のみで寂しい。

-セーブ機能はおろかパスワードすら無い。
--一応スタッフも考慮していたようで、説明書のQ&Aに「電源を切るとデータが消えるので、再開時のために捜査手順を覚えておいたり、メモをとるようにしましょう。」ときちんと記載されている。

-現場を調べる「なにか しらべろ」コマンドに一部不親切な点がある。
--現場にある物品は、選択肢から直接名指しするか、選択肢で「むしめがね」を選んで場所指定することで調べられるが、選択肢からの名指しで玄関や机を調べさせてもその場に落ちている証拠品を発見できない。一箇所だけ選択肢からの名指しでもそこに何かがある事が判る場所があるが、虫眼鏡の使用を促されるのみですぐにその証拠品を調べられないうえに、無視しても物語の進行に問題が無い。
--「むしめがね」による場所指定も当たり判定が狭い事が多く、例えば証拠品の入った引き出しを調べてもカーソル位置によっては「あやしいところはありませんでした」と言われる。そのくせ劇場の看板は全域に当たり判定があったりする。
--証拠品が落ちていても画面上に表示されないケースも多く、前述の点も相まって重要な証拠品を見落としやすい。
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**総評(FC)

コマンド入力型が主流であったゆえにパソコンユーザー向けのマニアックなジャンルであったアドベンチャーゲームを、メジャーな家庭用機種であるファミコンに移植したことによって一般層にも浸透させることに成功した。~
コマンド選択型の導入によってハードルが下がったことで遊びやすくなり、反射神経いらずのテキスト主体の思考型ゲームであるADVのおもしろさをぐっと身近にした。~

これ以降、ファミコンにおいてアドベンチャーというゲームジャンルが定番として定着していくことになる。~


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*余談
-堀井ミステリー三部作の最終作『軽井沢誘拐案内』にて本作のヒロイン「ふみえ」がゲスト出演している。

-現在はガラケーアプリにてファミコン版ベースのリメイクがプレイ可能。

-ファミコン版の発売に関する経緯
--エニックスは、当初は本作ではなくファミコン初のRPG(後の『[[ドラゴンクエスト]]』)を出す事を計画していたのだが、プロデューサーの千田が「まだアクションゲームしか知らない子供たちに、いきなりRPGをやらせるのはハードルが高過ぎる」と判断した事で、まずはコマンド選択式のゲームに慣れてもらいたいという理由で、ADVである本作が制作される運びとなった。

-堀井氏とチュンソフト、エニックスの関係は後に『[[ドラゴンクエスト]]』という国民的RPGを生み出すこととなる。
--その『ドラクエ1』の中において「ねえ わたしの ぽーとぴあと あなたの ドラゴンくえすとを かえっこしてよ。((原文ママ。本来カタカナが入るべき名称にひらがなが混ざっているのは、本作同様にスペック上の制約の都合で、一部のカタカナしか使えなかったため。))」と話す住民がいる。

#region(日本一有名なネタバレ(ネタバレ注意))

-&color(red){''犯人はヤス''}
--FC版から一気に広まったこのスラング。これはプレイヤーのパートナーである刑事の「ヤス」こと間野康彦が犯人だという意外性がネタとなったもの((ただし世界的に有名な探偵小説で既に使われていたりする。当時はこのオチに賛否両論だったとか(否定派は「推理物としては卑怯」としていた)。))。
--アドベンチャーゲームに限らず、推理ゲームにおいて犯人の名前をネタバレしてしまうのは言うまでもなくご法度…なのだが、本作のネタバレの場合あまりに簡潔かつ衝撃的な内容であったためあっという間に広まってしまい、''あまりに有名になりすぎて、本作をプレイした事がなくても犯人が誰なのか知っている人が多数いる''という珍現象も起こっている。
--近年はパロディとして事件が起きるたびに意味もなく「犯人はヤス」と言うフレーズが使われる事も少なくない。例え登場人物に「ヤス((康彦に限らず、靖子や保夫なども含む。))」が居なくても。
--また他の推理ゲームに対する話題でもこの『犯人は**』というフレーズをもじってネタにされることもある。([[かまいたちの夜]]の犯人など)
--実はこのスラングが生み出された原因はラジオ番組『オールナイトニッポン』にて放送されたビートたけし氏による実況プレイで、氏がFC版プレイ中に「''犯人はこいつ(ヤス)じゃねえの?''」と感づいたことからとされている。
--補足として、本作のこの結末は意外な犯人を指名して終わりという陳腐なものではなく、堀井雄二のゲームデザインの巧みさが垣間見えるものであると付記しておく。
---本作に纏わる有名なデマとして「ゲーム開始後、即座にヤスを尋問すれば数分(または数十秒)で速攻クリアできる」というものがあった。この話を信じ込み「ポートピアはクソゲー」などとのたまう輩もいたが、実際には捜査途中で重要な情報を得たか否かがフラグ管理されているため、きちんと手順を踏まなければ告発は無理である(ただし、数分は無理としても手順さえ知っていれば10分足らずでクリア可能)。
//http://web.archive.org/web/20030429013609/http://www.intara.net/og/portpia2.shtml~

#region(本作の「犯人」について補足)
-上記の通り、本作のシナリオ自体の知名度に対して「犯人はヤス」というフレーズ及び事実の方が一人歩きして知名度が高くなってしまったこともあり、''本作の事件には共犯者がいる''ということは未プレイヤー層には認知されていない。
--厳密には殺人そのものに直接の関与はなく、犯人を庇うために捜査を撹乱させるためのわずかな工作を行った程度。
---詳細はあえて省くが、ヤスと共犯者との関係やファミコン版で追加された被害者の真意などは本作の見所であるので、是非自分でプレイして確かめてほしい。
//-上記の通り、本作のシナリオ自体の知名度に対して「犯人はヤス」というフレーズ及び事実の方が一人歩きして知名度が高くなってしまったこともあり、''ヤスは主犯ではない''ということは未プレイヤー層に認知されていない。
//--つまり殺人は行っておらずく、真犯人を庇うために捜査を撹乱させる工作を多少行った程度でしかない。
//--詳細はあえて省くが、主犯とヤスの関係やファミコン版で追加された被害者の真意などは本作の見所であるので、是非自分でプレイして確かめてほしい。
//エンディング見ればわかる通り主犯はヤス。嘘に書き換えないように。

-FC版のパッケージイラストは港町の情景をバックに「ヤスが憂いの表情を見せる事件関係者を気遣う」という構図になっているが、実はヤスと共犯者の関係を示唆したさりげないネタバレになっている。
--公式絵で物語終盤に関わる事例をさりげなくネタバレするというこの大胆な構図は後年に発売されたドラクエI及びIIのFC版でも踏襲されており、こちらではパッケージ絵に堂々とラスボスが載せられている。

#endregion

-双葉社からゲームブック版が発売されていた。同シリーズではこれに先駆けて『ドラクエ1』のゲームブックも出ていたが、そちらでは最初の町で「ポートピアの犯人はヤスだ」という台詞が登場している。
--双方の著者は別人だが、『ポートピア』の著者は実は『ドラクエ』のゲームブックの奥付に「制作者」の1人として名前が載っていたりする




#endregion

復元してよろしいですか?