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チャタンヤラクーシャンク - (2020/11/24 (火) 23:34:55) の編集履歴(バックアップ)


チャタンヤラクーシャンク

【ちゃたんやらくーしゃんく】

ジャンル 格闘ゲーム
対応機種 アーケード
発売・開発元 ミッチェル
稼働開始日 1992年
プレイ人数 1~2人
判定 なし
ポイント 格ゲーもう一つの顔
グラフィックも高評価


概要

スポーツ格闘をモチーフにした格闘ゲーム。
当時大流行だった『ストリートファイターII』形式のゲームとは一味違うものとなっている。

タイトルの「チャタンヤラクーシャンク」は琉球空手の型(演武)の一つ。漢字にすると「“北谷屋良公相君”」。 ちなみに本作の企画は四井浩一氏が担当している*1

システム

  • 通常の格闘ゲームと異なり、キャラクターの個性がない。主人公は白い胴着(2P側は黒)を着た空手家である。
    • CPUも同じ性能の空手家だが、プレイヤーと違い防具を付けており、胴着も色とりどり。
  • 難易度を「白帯」「茶帯」「黒帯」から選択可能。順に難易度が上がっていく。
    • 白帯・茶帯を選択した場合でも、後半になると上位の帯を締めたCPUが出てくる。
    • 白帯なら茶帯、茶帯なら黒帯に昇級(昇段)した時点でエンディングとなる。
    • プレイヤー同士の対戦でも乱入時に帯の色を選択するが、帯の色による性能差やハンデなどは存在しない。
  • スコアシステムはシンプル。技を当てた時にしか入らない。
    • 勝利時などのボーナス点は一切存在しない。
  • ライフは数値制を採用。キャラクターには6マスのライフが設定されている。
    • プレイヤーはライフ残機制。1ステージにつき2~3人の相手との連戦という形式で、全て勝ち抜くとステージクリアとなる。スコアに応じたエクステンド(残機増加)は存在しない。
      • 対戦プレイではお互いに残機1の状態で試合が行われ、実質2ラウンド先取制となっている。
    • 試合時間も設定されており、時間切れで判定となる。 CPUとライフが同値で時間切れとなった場合は、CPUの勝ちとなる。
  • レバーで移動、Aボタンで攻撃、Bボタンでジャンプ、A+Bボタン同時押しで大技(二段攻撃)を繰り出す。
    • ジャンプは一般的な格闘ゲームとは異なり常人の範疇の高さしか跳ぶことが出来ず、少し跳ねるだけ。実質、下段攻撃の回避や飛び蹴り用と言っていい。
    • レバーを前に入れながらBボタンを押すと前方にステップして踏み込む(飛び膝蹴りに似た動きだが攻撃判定はない)。レバーを後ろに入れながらBボタンを押すとバク転をして距離を取る。
  • レバー位置に応じて9通りに構えが変わり、攻撃方法も変化する。
    • レバー前後で遠・中・近の構えを、レバー上下で上・中・下の構えを取る。常に前者と後者を一つずつを組み合わせた構えとなるため9通り。
    • 遠の構えではリーチが長いが攻撃が当たるのが遅いため見切られやすい。逆に近の構えでは攻撃が当たるのが早く見切りにくいがリーチは短い。中はその中間。
    • 攻撃には上段・中段・下段の属性があり、例えば上の構えで出す攻撃は上段攻撃で、また上の構えを取っている間は上段攻撃をガードすることができる。
    • 上段・中段・下段は「上段>中段>下段>上段」の3すくみになっている。
      • ちなみに、同じ構え同士で攻撃し合うと相殺(両者ガード成立)となる。
  • こちらの攻撃を相手に当てると「技あり」と判定され、ライフを1奪う事ができる。
    • 本作の特徴として、特定の条件で攻撃を決めると相手を強制的にダウンさせ「やめ」の指示ががかかり、お互いに初期位置に移動後に判定が下されたうえで仕切り直しとなる、というシステムが存在する。
      • 大技を二段ともヒットさせるか、小技同士もしくは小技と大技の二連コンボを当ててダウンさせると、二発目の攻撃が「一本」と見なされライフを2奪える。一発目は通常の技あり判定なので、大技やコンボが決まれば合計3ライフ(全ライフの半分)を一気に奪えてしまう。
      • 対空ヒット時やカウンターを当てた場合も相手はダウンするが、このときは技あり判定で仕切り直しとなる。
      • 一本・技あり問わず最後の攻撃で相手のライフを全て奪った場合にもダウンが発生し、相手はそのまま起き上がらず試合終了(勝利)となる。
    • 通常の格闘ゲームは攻撃をする際は隙が発生するが、本作では攻撃をしながら防御する事ができ、防御をしながら攻撃もできるため、「硬直時間の隙」を突くのではなく「ガードの隙」を突くという攻略が要求される。
  • 画面端に移動すると「場外」になり、警告を受けたうえで初期位置からの仕切り直しとなる。2~3回警告を受けるとライフが1没収される。
    • 他にも攻撃を当てないでいても警告を受ける。
    • 警告の回数はランダム。

評価点

  • 他の格闘ゲームにはない独特の操作感、攻略方法は本作のウリである。
    • キャラクターの個性をなくす事でゲームバランスを整えている。
      • 一見すると単なる退化要素にも思えるが、対等の条件であるからこそプレイヤー各々の戦法やクセがストレートに反映されやすくなっており、同じキャラなのに実に多種多様なスタイルとなって表れる。AIにも同様に個性があり、好みとする構えや攻撃が異なったり、超反応の有無が異なっていたりする。
    • レバー+ボタン2つというシンプルな操作体系で複雑なコマンド入力も必要なく、頻繁に仕切り直しを挟むことで一方的な展開も生まれにくいなど格ゲー初心者にも優しい設計。システムさえ理解してしまえば上級者と初心者の差が少ないのも特徴である。
  • 背景やBGMは美しく、キャラクターのモーションも滑らか。
    • 登場キャラクターはモーションキャプチャーを使用しており、大変滑らかに自然な動きを見せる。
    • 背景は大変緻密に描き込まれており、幻想的な風景を生み出している。
      • …のだが、そこでやっているのは般若の面を被った歌舞伎役者の姿をした審判*2の下で空手の試合という、ある意味バカゲー的なシュールな光景が本作の味。画面遷移時に必ず爆発エフェクトが入るなどセンスもおかしい。
      • 背景自体も海辺や夜桜などならまだ分かるのだが、沈没した軍艦付近やら未来都市らしい機械的な街並みやら珍妙なものも多く、本作のシュールな世界観をより一層際立たせている。
    • 絵には輪郭線が無く、独特の質感がある。ドット絵でブラー(残像)を表現しているなど技術力も高い。リアル志向のためキャラの描写自体は地味だが、ダウンした時の吹き飛び方が躍動感あるものになっているなど地味一辺倒にはなっていない。
    • 性能は同じではあるものの、プレイヤーキャラとCPUキャラの描写もちゃんと差別化されている。比較的礼儀正しく振る舞うプレイヤーキャラに対し、CPUキャラは試合前後の一礼が微妙に浅く、プレイヤーを倒した直後に残心の構えをとらず勝手なポーズをとるなど、リアクションの節々で舐めた態度を見せる。
      • ゲームオーバーになると笑い声とともにメンホーを取り、親指を下げてくるのがなんとも憎たらしい。ちなみにメンホーの下の素顔も相手によって違うという無駄な徹底ぶり。

問題点

  • 見た目がかなり地味。
    • キャラクターも実質1人しかおらず、必殺技も飛び道具も無い。
  • 残機表示がやや分かりにくい。
    • ライフゲージ隣に小さく「×(数字)」と書かれているのみであり、試合に敗れ残機が減った際の表示などもない。
  • 「格闘ゲーム」としてのノウハウが生かせない。
    • 格闘ゲームと言うジャンルではあるものの、従来の対戦型格闘ゲームとは異なる祖先を持つ、収斂進化のゲームである。
    • そのため、ジャンル名がユーザーを選別してしまう一方で、格闘ゲームファンからしても他とは勝手が違う、ややとっつきにくいものであった。
  • BGMが少ない。
    • 序盤の相手との対戦時はステージ毎の環境音。ステージ最後の相手との試合や対戦プレイでは専用BGMがあるものの、やや重苦しく地味な曲調となっているうえ、全ステージで共通。その方が緊張感があって良いのだが。

総評

当時は本作に限らず、多くの格闘スポーツゲームが作られているが、本作はそれらの集大成的な存在である。
キャラクターは一人しかいないものの、9種類の構えを切り替えてプレイヤーごとの個性を引き出し、対戦ゲームとしての存在価値を維持している。
地味ではあるが、バランスも整った、そつなくまとまった作品である。

余談

  • 当時から基板の出回りが悪く、移植もされていないため、現在はプレイ困難。
    • わけの解らないタイトルのせいで、そもそも格闘ゲームだと思う人も少なかったという。
    • 開発したミッチェルも当時『スーパーパン』等である程度は知られている会社だったが、どちらかと言えば「知る人ぞ知る」レベルの知名度だった故、「濃ゆい人が集まる有名なゲーセン」クラスの店舗ぐらいでしか入荷されなかった。
  • ステージの背景に同社の『キャノンダンサー』に登場する宗教テロリストである「スレイヴァー」の御本尊らしきものや、『ノスタルジア1907』に登場するノスタルジア号が転覆したようなものが描かれていたりと世界観的に共通してる部分があるのではないかと目されているが、これについては言及されていないため実際のところは不明。
  • 本作で異様な存在感を放っている歌舞伎な審判だが、プレイヤーの中には「彼がラスボスなのではないか?」と思っていた人も少なからずいたようだ。

参考動画

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