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ムーンライトシンドローム - (2020/05/19 (火) 22:00:10) の編集履歴(バックアップ)


ムーンライトシンドローム

【むーんらいとしんどろーむ】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 プレイステーション
発売元 ヒューマン
発売日 1997年10月9日
定価 6,200円
判定 クソゲー
ポイント 全体的に電波(悪い意味で)
全体的に厨二(悪い意味で)
全体的に意味不明
公式に黒歴史



静かな狂気、癒しの刹那



概要

名作ホラーアドベンチャー『トワイライトシンドローム 探索編/究明編』の後に発売された外伝的作品。
監督・脚本は『トワイライトシンドローム』の監督も務めた『シルバー事件』『Killer7』等で知られる須田剛一氏。
しかし様々な理由により出来が非常によろしくなく、シリーズのファンからそっぽを向かれてしまった。

なお、本作のシナリオは前作の隠しシナリオを原型としている。


問題点

キャラクター性の変貌

  • 登場人物は引き継がれているものの主人公が異なる。その上キャラの性格が、どうしたことか全員かなりイヤな方向にねじ曲がっている。
    • 悪質な噂を流すことを躊躇しないミカ、クール通り越して人形のようなユカリ、路上で詩集を売ってたりする電波系のチサト。
      • 特にチサトは、霊感少女から超能力少女にクラスチェンジしている*1。それも人間を瞬間移動させられるほどの。
    • 舞台となる町の漢字表記が違うことから、前2作のパラレルワールドと解釈されることが多い(パラレルワールドであってくれと言う希望も含まれる)。
      • 前作でキーとなった旧校舎が解体されるシーンから始まるというのも、前作ファンにしてみれば複雑だろう。
    • トワイライトが怪談系ホラーなら、こちらはサイコホラー(いわゆる電波系)ストーリー。なお、パッケージは前作トワイライトについて一切触れていない。

真っ当なゲームとは言い難いシステム

  • 前作に引き続き自由にセーブできない。シナリオを読み終わった時点のみ。
    • 一応途中でのセーブも可能。ただし、シナリオをクリアするとそのセーブは消える。要するにクイックセーブである。
  • 説明書で堂々と「展開は一本道」と宣言。移動して会話するだけなのでプレイヤーが介入できる部分がほぼない。一本道なので、当然会話中の選択肢はストーリーに影響しない。ゲームオーバーも無い。ED評価があるわけでもない。ボタンを押して見ているだけ。
    • その割に道に迷いやすい。
    • 一応ある選択肢を選んだ場合にしか見れないCGや展開なども存在する。本筋には全く影響しないが。
    • 「分岐に期待しすぎだよ」というセリフがゲーム内に実際にある。皮肉か、それは皮肉なのか。
    • 説明書にはヒントらしきものが書いてあるが、「母は駆け足に敏感で、忍び足に気付かない」などはまだしも「子供を信じるな」「光にゆだねる時」になるともうヒントなのかポエムなのか…。
  • やたらとボイスが豊富。選択肢がワープトラップになっていたりするので、偏執的なキモオタや電波おばさんと壊れたお喋りを、強制的に、しかも繰り返し聞くハメになる。
    • ちなみにキャラクター達の日常会話はかなりリアル…が、話の本筋とは全然関係が無い。
  • 特定のエピソードで操作することになるキャラクターが、「歩く」しかできない。しかもやたらと遅い。
    • 一応、スタッフロールで「初めて走ることになる」という伏線ではある。

不可解極まりないシナリオ

  • 操作キャラの独り言がやたらと多い(ボイス付き)。夜道でぶつぶつ言ったり、鏡の前でぶつぶつ言ったりする。カクカクポリゴンの顔で。
  • 画面にまったくテキストが表示されないまま延々と長台詞を続ける事も。しかもそういう時に限って独白調で、まったく聞き取れない。
  • ゲームスタート時からプレイヤーは話についていけなくなる。
    • 話が難解なゲームなら他にいくらでもあるが、本作はそれ以前の問題。
    • 「私がシンボルからサブスタンスになる瞬間、リアルを取り戻すの!」 …お前は何を言っているんだ。
      • 和訳すると 「私が象徴から実体になる瞬間、現実性を取り戻すの!」
      • 上記セリフを言ったキャラは、子供たちの連続投身自殺「ダイブ」を指揮している…と思われていた人物。「しかしあくまで「象徴」であり、ダイブを止める権限はなかった。自分自身がダイブすることでそれを否定し、異常な現象であるダイブを沈静化させた」一応はこういうことなのだが、よくよく考えないと意味がわからない。
    • 目の前で焼死したキャラから電話がかかってきて「俺は君に執着することにしたよ。これは形を変えた愛なんだ」。
    • 前作から引き続いて登場のオカルトライター「アラマタ」が「ゲームの登場人物」であることを自覚しているかのようなことを話す。ほかにもそんなメタな話をするキャラが…。
      • ミカはミカで、セーブポイント役になったアラマタに「今回はちゃんと役に立つんだね」と言ったりする。今までもちゃんとオカルト関係の情報源だったはずだが、ヘンタイ呼ばわりである。
    • 加えて終盤ではレギュラーメンバーが次々と惨殺死体と化し、前2作に愛着のあるプレイヤーを激怒させた。
    • 極めつけは夢オチとも取れるエンディング。「これはゲームじゃない」「わけがわからない」と言われ、シリーズのファンからも黒歴史とされた。
      • 「第二話でリョウが気絶するところからエンディングまで、すべてリョウが見た悪夢」という見方もあるようだ。時系列や服装などの矛盾を考えると、それでもおかしくないから恐ろしい。
  • せっかくの追加キャラクターも、殆ど「既出人物の劣化コピー」であり個性が立っているのは謎の少年とチサトの姉くらい。なお、その謎の少年は最後までその正体どころか名前さえ明かされない。
    • 一応設定名は「ミトラ」であり、「契約」「盟友」の神の名から取ったようだがやっていることは真逆。ミカに興味を持っていたようだが、その行動の理由は何一つ明かされていない。終盤でリョウに切り刻まれてたが、どうなったのか…。

評価点

  • 電波具合に共感する人間も稀に居る。
    • 中には前2作よりも好きという人もおり、続編として売り出さなければ、数々の謎と共にひっそりと語り継がれるゲームになっていたのかもしれない。
  • 桃乃未琴(現・平岡恵子)氏によるエンディングテーマ『あなたは海の底』だけは評価が高い。
    + エンディングテーマ参考動画

総評

未だに圧倒的多数のアンチ(トワイライト好き)と極一部の熱烈信奉者を抱く、ある意味伝説とも言える作品。
何にせよ確実に人を選ぶ内容であることは、上記の内容を見れば作品を知らないプレイヤーでも疑いようないだろう。
日本屈指の「人を選ぶゲーム」クリエイター』と称される須田ゲーのファンをしてさえ「これは無理」と言われることもある程である。
一般的なADVとしての点数は限りなく低いが、自分がサイコパシーな雰囲気を楽しめるという剛の者だと言うならば挑んでみるのもいいだろう。

ただし自己責任で。


余談

  • 本作の開発中に神戸連続児童殺傷事件が起こったため自主規制ではあるが、かなりシナリオや表現を変更せざるを得なくなってしまったという背景がある。
  • シルバー事件』(こちらはファンが多い)の最初のエピソードには本作のキャラクターが登場するので、そう言う意味ではプレイする価値はあるかもしれない。
    • 後に同作のHDリマスター版『The Silver Case』のデジタルコミックにて同一の世界観の物語であることが判明している。
  • なぜか攻略本が7社もの出版社から発売されている。
    • 内容は攻略記事よりもストーリーの考察や設定資料などがほとんど。一本道のゲームとしては異例といえよう。
  • 2008年のスパイクによる完全新作『トワイライトシンドローム 禁じられた都市伝説』のサイトに載った『トワイライトシンドローム」の歴史に記されていない。このソフトは「トワイライト」シリーズから完全に黒歴史とされてしまった。
    • ただし一部のキャラクターは新作でも死んだままであったり…。
    • スパイク版『トワイライトシンドローム~再会~』では岸井ミカが「心霊写真投稿コーナーの常連投稿者」として登場している。主人公が話を聞きにいくシーンがあるが、キャラとしての登場はなし。
  • 小説版も存在しており、そちらはゲームでは無く書籍として話の整合性を突き詰めている分内容は分かりやすくなっている。
    • それ故かエンディングの内容等、ゲーム版と相違している点も多い。
  • セールスは前2作以上に好調であり、このゲームの強烈なインパクトは、賛否ありながらも普通に遊べる出来であった『ファイヤープロレスリング』シリーズや『トワイライトシンドローム』シリーズよりも須田氏の名を広めた(良くも悪くも)。
    • 本作の発売後、須田氏はヒューマンからの給料支払いが滞った事に危機感を感じ独立を決意した事を後年雑誌などで明らかにした。氏の危惧通りヒューマンはゲーム業界から消えていった。
    • ちなみにPS2ゲーム『SIREN』の主人公須田恭也の名前は、本作に共感したシナリオライターの佐藤直子氏が、須田氏から取ったものらしい。『SIREN』に対する影響(後世への影響)だけは素直に褒めてもいいと思われる。
  • 大抵のファンはクソゲーであることを認めている。彼らは話ではなく雰囲気を評価している。