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エアーズアドベンチャー - (2015/02/28 (土) 21:23:11) の編集履歴(バックアップ)


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エアーズアドベンチャー

【えあーずあどべんちゃー】

ジャンル RPG
対応機種 セガサターン
発売・開発元 ゲームスタジオ
発売日 1996年12月10日
定価 5,800円
分類 クソゲー
ポイント 史上屈指の電波ゲー
たたみかける様な展開の早さ
何もかも簡略化
デザインとBGMは好評

概要

ゼビウス』の遠藤雅伸、後に『巨人のドシン』を出した柴田賀盆、音楽には『機動戦士Ζガンダム』の三枝成彰、キャラクターデザインには『ファイブスター物語』の永野護という超一流のクリエイター集団が関わった、俯瞰視点・コマンド式戦闘のストーリー主導型RPG。
グラフィックを3Dポリゴンで表現し、プレイボーイで名を馳せる美形の貴族ヘンリーと、とある国の王女コーリンの物語を描く(名前は変更可)。
かつての『クロノ・トリガー』を彷彿とさせるその制作陣の豪華さから、ビッグタイトルとして大いに期待・注目を集めていた。
しかしいざ蓋を開けてみると、船頭多くして船山に上るという諺通りに、盛大にコケた怪作となってしまった。

ゲーム内容

あえて好意的に表現するなら、「誰でも簡単に遊べるRPG」。純粋にストーリーに没頭させるべくあらゆる要素が簡略化されている。

  • 移動シーン
    • 屋外マップは昔ながらの2DRPGと同じ、俯瞰視点で上下左右の4方向移動。ダンジョン内は3Dで描かれ、左右旋回と前方への移動を組み合わせる3人称視点を用いる。
  • 戦闘
    • ランダムエンカウントで、「攻撃(ヒロインは魔法)・防御・アイテム」のコマンドを使ったターン戦闘。
    • プレイヤー側は前後二列に位置取りして戦う。後列キャラには直接攻撃が及ばず、魔法は普通に使用可能。敵側は複数出現しても先頭の1匹のみが戦い、倒すごとに後続が1匹ずつ出てくる。
  • 装備は武器や防具などを「装備1」「装備2」といった一式にまとめ、鍛冶屋で強化しながら使う。つまり種類が少なく、一部の特別な品以外は名前もシンプル。
  • 上記とストーリー部分を除いたRPGとしてのシステムの骨組は、お使いでイベントとキーフラグをこなしていく極々ベーシックなもの。

問題点

あまりにも簡略化されすぎている。その省略っぷりたるや、一周回って爆笑もの。

かねてより不義を働き続けていたという主人公は、ゲーム開始直後のイベントで処刑台にかけられるピンチに陥り、偶然通りかかったヒロインと出会う。
これ以降は、何を考えているのか分からない人物、どうしてそうなるのか分からない展開、常識外れで女性の事しか頭にない主人公が織りなす、説明不足の物語が繰り広げられる。

  • ストーリーの省きぶりが尋常でなく、細かい段取りが一切無い
    • 序盤で言うなら、「なんとなく」予感がして主人公を助けたヒロイン、主人公の何を見込んだのか突如勧誘してくる自称裏社会の秘密結社(最初の町のみの登場、特別なエピソード無し)、初めて見る顔だが主人公の入団を何故か既に知っていて指令を告げてくる秘密結社員、ヒロインに近づきたいがため入ったばかりの秘密結社から無言で即脱退する主人公、などが挙げられる。これはまだ最初の町から出る前の10分くらいで消化するイベントであり、同じ調子が最後まで続く。
    • ストーリー展開の都合上、当時の主人公の能力では太刀打ちできそうにない敵と序盤で戦う事になるが、直前に強力な装備が何の脈絡も無く空から降ってくる
      • その装備一式が降ってきた時に居合わせた弟のコメント「これは天からにいさんへの贈り物に違いない」
      • 実は、本当に贈り物であったと相当後になって分かるのだが、入手時点で描かれている主人公像は、女性関係の乱れが過ぎてあわや処刑されかかった軟派男でしかない。プレイヤーがその物語を素直に受け取るのはおよそ不可能だろう。
    • 戦闘中に形態変化をするボスもいるが、説明や演出は特に挟まれない。
    • 極限まで簡略化された例では、キーアイテムを入手するために訪れるある場所で、マップアイコン到着と同時にそのアイテムを入手できる。普通ならイベントやダンジョン攻略が始まるところなのだが。
      • そのマップアイコンも、久々に町の外を探索できると思いきや*1、町から出て真西に直の場所にある。住人が「その樹は巨大すぎて誰も近づけない」と言っているが、普通に隣接してボタンを押すだけでアイテムが入手できる。フラグとはなんだったのか。
    • 他にも、ゲーム的なフラグの都合に絡んで思わせぶりに登場しては、省略されて投げっ放しにされる要素が多い。
  • 街の構造も判り易くシンプルで、秘密結社のアジトが街の広場のすぐそこに堂々と建っている。しかも一般市民が存在を知っている。
  • ダンジョンも然りで、最初のダンジョンは全く分岐の無い一本道構造。また、ゲーム全体を通じてダンジョンの数自体が少なく個々のボリュームも無い。ほとんど3Dの意味なし。
  • キャラクターは、バストアップ絵の変化や、マップ上のキャラによる演技が無い。ムービー中ですら感情表現に乏しい。
    • 主人公の人間性は特に理解しにくい。一般的なRPGの主人公としては異色な設定を持つにも関わらず、女性が絡まない限り口数が少なくムービーでも上記の通りであり、行動の意味不明さに拍車がかかっている。例えば…
      • 実家の侯爵家に戻ると父親から勘当に近い宣告を受けるのだが、主人公は無表情ノーコメント
      • 「中身を読むなよ」と念を押されて預かった手紙に対し、顔色を変えず物も言わず直後にその場で開封する
  • 説明書も簡易的で、5つ折りの紙切れ1枚のみ。ジャケ絵などを差し引くと実質4ページ。
    • せっかく有名イラストレーターの起用であるにも関わらず、説明書にキャラクターイラストの掲載は無い。
  • 「とあるイベントで必要になるアイテムを、そのイベントより前の段階であまり意識もせずに入手済み」など、数少ないゲーム部分の構成もぞんざい。
  • サターンは元々3DCGの表現に向かないと言われているものの、それを差し引いてもグラフィックの出来がお粗末。
    • 主な理由は「ほとんど動かない」こと。一部のムービーや戦闘といったキャラを大きく描くシーンに時折アニメーションがあっても、全体的にギクシャクしている。
    • 逆にキャラが小さいシーンでは、画質の粗さが目立つ。
    • カメラワークも単純で、比較的描写に力を入れるイベントシーンでも、斜め上方や真横からなど固定視点が多い。
      • 前述した主人公の父親は、「主人公のバストアップのカットを挟んだ一瞬の隙に、画面が戻るといつの間にかいる」という登場の仕方をする。パッ、パッ、と1コマで。
    • イベント中のセリフ文は映画の字幕のような感じで表示されるのだが、情報や動きの少なさ故に誰がしゃべっているのか混乱しやすい。

その他

  • 宝箱を開けると、専用の画面になり主人公がガッツポーズする。この演出は宝箱の中身が何であろうとも例外なく実行され、たとえ中身がモンスターであってもガッツポーズ
  • 敵を倒すと、倒した敵がポリゴン片になって爆発する。敵を打ち倒したという事を強調する演出なのだろうが、見方によってはギャグの様にも見えてしまう。
    • 戦闘終了後お金を入手する時、実際に空から音と共に金貨の振ってくる描写あり。こういうところは省かない。
    • 空から落ちてきた装備を着た時、同時に父親から貰う「馬」に乗って戦うのだが、相変わらず戦利品の小銭は地面に落ちる。毎回馬から下りて小銭を拾っているのだろうか。
    • そしてこの後、この馬である建物に突入するのだが、突入後の室内でも馬に乗ったまま進行する。
  • メニュー画面を開くと、そのたびに旗がひらめく演出が入り豪華なファンファーレが鳴る。テンポ悪し。
  • あるボスが戦闘中に使う技「結界」は、通常攻撃も魔法攻撃も受け付けずに数ターン持続するという、じっと待つ以外に対策のない厄介な技。
    • ちなみに、このボスが出る城は何故か移動中に処理落ちして移動がかなり遅くなる。普通に歩くスピードも結構遅いのに。
  • 町の住人には冒険のヒント(か電波)をくれる人がいるのだが、ある住人のヒントが間違っている。
    • 具体的に言えば民家に入った時に(民家は探索出来ない。一言聞いて終わり。)ヒントをくれるキャラ一人がいるのだが、そのヒントが間違っているキャラがいる。

評価点

  • デザインや雰囲気作りの面は非常に優れている。
    • キャラクターデザインでは服飾面でも卓越したセンスを誇る永野氏らしく、キャラの上着はもとより下着まで(!)緻密に設定されている。光の帆を張って飛ぶドラゴンなどモンスターのデザインも独創的。
      • しかし、そのドラゴン。主人公一行を乗せて飛んでるシーンがあるのだが、何故か羽を動かしていない…何故?
  • 音楽の評価は高い。勇ましい曲から神秘的な美しい曲まで、高水準かつ豊富に取り揃えられている。
  • レベルアップ時の演出が主人公とヒロインとで異なる。やや大仰だが、本作において演出が奏功している数少ない部分と言える。

総評

世界の命運より女が大事。そんな異色な主人公の活躍を描くはずだったのだろう。
しかし肝心のシナリオは細部がスカスカ。むしろ細かな描写の積み重ねで深めていく「愛」の物語には、到底なりえなかった。
耽美なキャラクターデザインも、それをゲームの中で活かせているとはお世辞にも言えない。
ゲーム自体は戦闘もお使いイベントも全体的に単調で面白味に欠け、まともに褒められる点は音楽くらいである。

ポリゴン表現の苦手なセガサターンにおけるポリゴンRPGの企画は、元々それなりにハンデを負っている。
とはいえ、本作の抱える「行き過ぎた簡略化」は、こうしたハードスペックの云々とはもはや別次元の問題だろう。

演出の拙さが醸し出す独特の雰囲気と超展開シナリオに触れてみたい…
そんな稀有な趣味の人がいるならば、難易度が易しくBGMの素晴らしい本作はもってこい。
SSのプレイ環境が、後年において次第にハードルを高くしていった事が悔やまれる。

余談

  • 出荷数がそれなりにあったためか、発売後のあまりの評判にすごい速さで値崩れした。
    • 燃えプロ』『ジーコサッカー』に次ぐ駄菓子並の値段で投げ売られても尚売れ残り続けるワゴンの主となった。
  • 出来の悪さは開発者も認めるほどで、柴田氏は本作のサントラの後書きにて無念の思いを綴っている。永野氏に至っては気の毒な事に、本作の悪評を聞いて数日間寝込んでしまったと言う。
  • クソゲーオブザイヤー2009動画の2008年概要(七英雄)のパートで本作のオープニングBGMが使用されている。

プレイ動画

+ 超展開注意。
オープニング&ニューゲームから最初の町を出るまで。