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エアーズアドベンチャー - (2018/09/14 (金) 20:42:09) の編集履歴(バックアップ)


エアーズアドベンチャー

【えあーずあどべんちゃー】

ジャンル RPG
対応機種 セガサターン
発売・開発元 ゲームスタジオ
発売日 1996年12月10日
定価 5,800円(税抜)
判定 クソゲー
ポイント 豪華スタッフによる史上屈指の電波ゲー
たたみかける様な展開の早さ
何もかも簡略化
デザインとBGMは好評

概要

ゼビウス』の遠藤雅伸、後に『巨人のドシン』を出した柴田賀盆、音楽には『機動戦士Ζガンダム』の三枝成彰、キャラクターデザインには『ファイブスター物語』の永野護という超一流のクリエイター集団が関わった、俯瞰視点・コマンド式戦闘のストーリー主導型RPG。
グラフィックを3Dポリゴンで表現し、プレイボーイで名を馳せる美形の貴族ヘンリーと、とある国の王女コーリンの物語を描く(名前は変更可)。
かつての『クロノ・トリガー』を彷彿とさせるその制作陣の豪華さから、本作はビッグタイトルとして大いに期待・注目を集めていた。
しかしいざ蓋を開けてみると、船頭多くして船山に上るという諺通りに、盛大にコケた怪作となってしまった。

ゲーム内容

あえて好意的に表現するなら、「誰でも簡単に遊べるRPG」。純粋にストーリーに没頭させるべく、あらゆる要素が簡易的である

  • 移動シーン
    • 屋外マップは昔ながらの2DRPGと同じ、俯瞰視点で上下左右の4方向移動。ダンジョン内は3Dで描かれ、左右旋回と前方への移動を組み合わせる3人称視点を用いる。
  • 戦闘
    • ランダムエンカウントで、「攻撃(ヒロインは魔法)・防御・アイテム」のコマンドを使ったターン戦闘。
      • コントローラーのボタン毎にコマンドが割り振られており、ボタン1つで攻撃や防御が可能。
    • プレイヤー側は前後二列に位置取りして戦う。後列キャラには直接攻撃が及ばず、魔法は普通に使用可能。敵側は複数出現しても先頭の1匹のみが戦い、倒すごとに後続が1匹ずつ出てくる。
  • 装備は武器や防具などが「○○の装備」といった一式にまとめられている。要所要所で新たな装備を入手できるが、そう頻繁ではないため、手持ちを鍛冶屋で強化しながら使うことになる。
    • 武具も剣や盾等の区別が無く、全てが一体となった「装備」で統一されている。
    • 一部の特別な品以外は名前もシンプル。「力の装備」「戦車の装備」など、タロットカードをモチーフにした名前がみられる。
  • 上記とストーリー部分を除いたRPGとしてのシステムの骨組は、お使いでイベントとキーフラグをこなしていく極々ベーシックなもの。

問題点

あまりにも簡略化されている。その省略っぷりたるや、一周回って爆笑もの。

かねてより不義を働き続けていたという主人公は、ゲーム開始直後のイベントで処刑台にかけられるピンチに陥り、偶然通りかかった王女(ヒロイン)と出会う。
これ以降は、何を考えているのか分からない人物、どうしてそうなるのか分からない展開、常識外れで女性の事しか頭にない主人公が織りなす、説明不足の物語が繰り広げられる。

  • ストーリーの省きぶりが尋常でなく、細かい段取りが一切無い
    • 序盤で言うなら、「なんとなく」予感がして主人公を助けたヒロイン、主人公の何を見込んだのか突如勧誘してくる自称裏社会の秘密結社(最初の町のみの登場、特別なエピソード無し*1)、初めて見る顔だが主人公の入団を何故か既に知っていて指令を告げてくる秘密結社員、ヒロインに近づきたいがため入ったばかりの秘密結社から無言で即脱退する主人公、などが挙げられる。これはまだ最初の町から出る前の10分くらいで消化するイベントであり、同じ調子が最後まで続く。
    • ストーリー展開の都合上、当時の主人公の能力では太刀打ちできそうにない敵と序盤で戦う事になるが、直前に強力な装備が何の脈絡も無く空から降ってくる
      • その装備一式が降ってきた時に居合わせた主人公の弟のコメント「これは天からにいさんへの贈り物に違いない」
        + ちょっと軽いネタバレ
      • 実は、本当に“天からの贈り物”であったと相当後になって分かるのだが、入手時点で描かれている主人公像は、女性関係の乱れが過ぎてあわや処刑されかかった軟派男でしかない。プレイヤーがその物語を素直に受け取るのはおよそ不可能だろう。
    • あるダンジョンでは探索をしていると、突然ボス戦が始まる。それに関する説明や演出は一切されない。
      • 戦闘中に形態変化をするボスもいるが、これも説明や演出は特に挟まれない。
    • 極限まで簡略化された例では、キーアイテムを入手するために訪れるある場所で、マップアイコン到着と同時にそのアイテムを入手できる。普通ならイベントやダンジョン攻略が始まるところなのだが。
      • そのマップアイコンも、久々に町の外を探索できると思いきや*2、町から出て真西に直の場所にある。住人が「その樹は巨大すぎて誰も近づけない」と言っているが、普通に隣接してボタンを押すだけでアイテムが入手できる。フラグとはなんだったのか。そもそも「樹が巨大すぎて近づけない」という話自体もおかしい。
    • 他にも、ゲーム的なフラグの都合に絡んで思わせぶりに登場しては、省略されて投げっ放しにされる要素が多い。
      + そしてそのノリは最後まで続く…
    • ラストダンジョンはなんとダイジェスト形式。入り口でのボス戦の後は主人公達がラストダンジョンを進む姿が数シーン映し出されるだけで唐突にラスボスが出現する。ダンジョンを経由せずラスボスと戦うRPGは他にもあるが、大層なラストダンジョンを用意だけしておいてプレイヤーの探索を省略するのは本作ぐらいのものではないだろうか。容量か開発期間が足りなかったのだろうか…?
      • そのラスボスも肝心の最終決戦時は一言も喋らない。無言のまま戦闘に突入し、無言のまま第二形態に変身し、無言のまま倒される。
    • エンディングは意外にも切ない結末である。
      • …と思わせて最後にそれをひっくり返すまさかのラブコメオチが待っている。しかもその伏線が微妙にストーリー中に存在するのもまた小憎らしい。
  • 街の構造も判り易くシンプルで、秘密結社のアジトが街の広場のすぐそこに堂々と建っている。しかも一般市民が存在を知っている。
  • ダンジョンも然りで、最初のダンジョンは全く分岐の無い一本道構造。また、ゲーム全体を通じてダンジョンの数自体が少なく個々のボリュームも無い。ほとんど3Dの意味なし。
  • キャラクターは、バストアップ絵の変化や、マップ上のキャラによる演技が無い。ムービー中ですら感情表現に乏しい。
    • 主人公の人間性は特に理解しにくい。一般的なRPGの主人公としては異色な設定を持つにも拘らず、女性が絡まない限り口数が少なくムービーでも上記の通りであり、行動の意味不明さに拍車がかかっている。例えば…
      • 実家の侯爵家に戻ると父親から勘当に近い宣告を受けるのだが、主人公は無表情ノーコメント
      • 「中身を読むなよ」と念を押されて預かった手紙に対し、預け主が扉を閉めるや否や、顔色を変えず物も言わずその場で開封する
  • 説明書も簡易的で、5つ折りの紙切れ1枚のみ。ジャケ絵などを差し引くと実質4ページ。
    • せっかく有名イラストレーターの起用であるにも拘らず、説明書にキャラクターイラストの掲載は無い。
  • サターンは元々3DCGの表現に向かないと言われているものの、それを差し引いてもグラフィックの出来がお粗末。
    • 主な理由は「ほとんど動かない」こと。一部のムービーや戦闘といったキャラを大きく描くシーンに時折アニメーションがあっても、全体的にギクシャクしている。
    • 逆にキャラが小さいシーンでは、画質の粗さが目立つ。
    • カメラワークも単純で、比較的描写に力を入れるイベントシーンでも、斜め上方や真横からなど固定視点が多い。
      • 前述した主人公の父親は、「主人公のバストアップのカットを挟んだ一瞬の隙に、画面が戻るといつの間にかいる」という登場の仕方をする。パッ、パッ、と1コマで。
    • イベント中のセリフ文は映画の字幕のような感じで表示されるのだが、情報や動きの少なさ故に誰がしゃべっているのか混乱しやすい。

その他

  • 宝箱を開けると、専用の画面になり主人公がガッツポーズする。この演出は宝箱の中身が何であろうとも例外なく実行され、たとえ中身がモンスターであってもガッツポーズ
  • 敵を倒すと、倒した敵がポリゴン片になって爆発する。敵を打ち倒したという事を強調する演出なのだろうが、スカスカなストーリーと相俟ってギャグにしか見えなくなってしまっている。
    • 戦闘終了後お金を入手する時、実際に空から音と共に金貨の降ってくる描写あり。こういうところは省かない。
    • 空から落ちてきた装備を着た時、同時に父親から貰う「馬」に乗って戦うのだが、相変わらず戦利品の小銭は地面に落ちる。毎回馬から下りて小銭を拾っているのだろうか。
    • そしてこの後、この馬である建物に突入するのだが、突入後の室内でも馬に乗ったまま進行する。
  • メニュー画面を開くたびに、豪華なファンファーレと共に旗のひらめく演出が入る。テンポ悪し。
  • あるボスが戦闘中に使う技「結界」は、通常攻撃も魔法攻撃も受け付けずに数ターン持続するという、じっと待つ以外に対策のない厄介な技。
    • ちなみに、このボスが出る城は何故か移動中に処理落ちして移動がかなり遅くなる。普通に歩くスピードも結構遅いのに。
  • 民家に入ると住民が一言だけしゃべる。それで終わりで家中の探索はできない。情報は冒険のヒント(か電波)だが、一部住人のヒントが間違っている。
    • 町の住人が常に正解を知ってるわけではないというのはある意味現実的かもしれないが、ゲームとしてはどうだろう。

評価点

  • デザインや雰囲気作りの面は非常に優れている。
    • キャラクターデザインでは服飾面でも卓越したセンスを誇る永野氏らしく、キャラの上着はもとより下着まで(!)緻密に設定されている。光の帆を張って飛ぶドラゴンなどモンスターのデザインも独創的。
  • 音楽の評価は高い。勇ましい曲から神秘的な美しい曲まで、高水準かつ豊富に取り揃えられている。
  • レベルアップ時の演出が主人公とヒロインで異なる。大仰だが、本作において演出が空回りしていない数少ない部分と言える。
    • 戦闘で片方が倒されると、残った方が倒れたパートナーに駆け寄ってから敵を睨みつける、と言う細かい演出もある。

総評

世界の命運より女が大事。そんな異色な主人公の活躍を描くはずだったのだろう。
しかし肝心のシナリオは細部がスカスカ。むしろ細かな描写の積み重ねで深めていく「愛」の物語には、到底なりえなかった。
耽美なキャラクターデザインも、それをゲームの中で活かせているとはお世辞にも言えない。
ゲーム自体は戦闘もお使いイベントも全体的に単調で面白味に欠け、まともに褒められる点は音楽くらいである。

ポリゴン表現の苦手なセガサターンにおけるポリゴンRPGの企画は、元々それなりにハンデを負っている。
とはいえ、本作の抱える「行き過ぎた簡略化」は、こうしたハードスペックの云々とはもはや別次元の問題だろう。

演出の拙さが醸し出す独特の雰囲気と超展開シナリオに触れてみたい…
そんな稀有な趣味の人がいるならば、難易度が易しくBGMの素晴らしい本作はもってこい。
SSのプレイ環境が、後年において次第にハードルを高くしていった事が悔やまれる。

余談

  • 出荷数がそれなりにあったためか、発売後のあまりの評判にすごい速さで値崩れした。
    • 燃えプロ』『ジーコサッカー』に次ぐ駄菓子並の値段で投げ売られても尚売れ残り続けるワゴンの主となった。
  • 出来の悪さは開発者も認めるほどで、柴田氏は本作のサントラの後書きにて無念の思いを綴っている。永野氏に至っては気の毒な事に、本作の悪評を聞いて数日間寝込んでしまったと言う。
  • クソゲーオブザイヤー2009動画の2008年概要(七英雄)のパートで本作のオープニングBGMが使用されている。

参考動画

+ 超展開注意。
オープニング&ニューゲームから最初の町を出るまで。