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マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~ - (2023/02/09 (木) 10:34:35) の編集履歴(バックアップ)


マリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士~

【まりーのあとりえ ざーるぶるぐのれんきんじゅつし】

ジャンル 新感覚RPG
高解像度で見る 裏を見る
対応機種 プレイステーション
発売・開発元 ガスト
発売日 1997年5月23日
定価 5,800円
判定 良作
アトリエシリーズリンク


あらすじ

マリーことマルローネは、錬金術士を目指してザールブルグの王立魔法学校(アカデミー)に通う少女。しかし、彼女の成績はアカデミー始まって以来最低最悪。
このままだとマリーは卒業できない! 彼女の師であるイングリド先生はその状況を見るに見かね、留年を回避する為に一つの課題を出した。
それは、「5年間錬金術士のアトリエを維持しながら勉強をし、何か一つ高レベルのアイテムを作ること」。その間の成果がよければ卒業を認めるというものだった。
既にこれが留年じゃないかともよく言われる。
かくしてマリーは城下の錬金術のアトリエに移り、卒業目指して奮闘することになったのである。


特徴及び評価点

世界を救うのはもうやめた!

  • これ以前に『ファルカタ』や『メールプラーナ』をリリースするも、未だ無名も同然だったガストが突如として発表した意欲作。
  • 剣と魔法の世界を舞台にしたRPGにもかかわらず、主人公は悪い魔法使いを退治したり、魔王にさらわれたお姫様を救い出す必要はない。この世界の住民の一人となって錬金術を使って生活していくという内容。
    • そのためRPGというよりは錬金術士シミュレーション、といったほうがしっくりくる内容だが、エンカウントによる戦闘やレベルアップによる成長、アイテムや装備などRPGに必要な要素は全て揃っている。
  • そんなゲームが果たして面白いのか? と疑問を抱くだろうが、これがよくできていた。

錬金術の生活スタイル

  • ボリュームの割には自由度の高い内容なのでプレイヤー次第であるが、基本的には錬金術の工房(アトリエ)でアイテムを作ることを主軸にゲームが進行する。
  • プレイヤーはマリーを操作して、アイテムを作るために必要な知識、素材、設備などを集めてアイテムを作る。
  • 最初は錬金術士としての実力が低く設備も少ないので作れるものは少ないし、レベルも低いので遠出もしづらく素材も集まらない。
    • しかし簡単な調合を繰り返して経験を積み、作ったアイテムを後述の酒場で売り渡すことによりお金を稼ぎ冒険者を雇うことで遠くて危険な場所の素材集めも容易になる。
      • 上述のようにマリーはおちこぼれの女の子であるため最初の頃はかよわい。序盤は遠出の際に冒険者を雇うのは必須である。
  • 書物を買ったり図書室で読んだりすることでアイテムのレシピを集められ、作れるものが増える。
    • 書物やアイテムを作るために必要な設備は高額で、図書室は錬金術士として一定以上の実力がなければ入らせてもらえない。そのため最初から強力なアイテムを作って楽することはできない。
  • 町の酒場には「○○を求めている」という依頼が張り出されており、錬金術で作ったアイテムを酒場のマスターに売り渡すことで銀貨(コール)を得ることができる。
    • モノによっては高額のコールが支払われるため、本の購入や冒険者の雇用のためには酒場で依頼をこなすことがほぼ必須である。
  • このように通常のRPGのように敵と戦って経験値を手に入れ、レベルを上げて強くなりお金を稼ぐのとは違い、調合を繰り返して錬金術士としての実力を上げ、作ったものを使ってお金を稼ぐことでマリーは強くなっていく。
    • 戦闘力に関しては普通のRPGのように戦ってレベルを上げることで強くなるのだが、ゲーム内期間が5年に決まっている上にマップを移動するたびに数日消費するため、ある程度効率的なプレイを心がけなければならない。
      • 5年の間を錬金術そっちのけで戦士としての修行に費やし、敵を倒しまくってレベルを上げマリー無双をすることだってできる。そのようなゲームコンセプトから外れた成長法を取ってもバッドエンドにならないエンディングまである。

5年間を彩る様々な要素

  • ただ単に禁欲的に錬金術士の腕を磨くだけでは現在のような一大シリーズの原点にはなりえなかっただろう(もちろんそういうプレイもできるが)。このゲームはサブキャラクターやそれに伴うイベントが豊富なのだ。
  • 様々なミニゲームが発生することも。
  • 親友のシアをはじめ、ライバル的存在の優等生クライス、冒険者宿で出会う冒険者たち、武器屋の主人やアカデミー関係者など多くの人間と関わることになる。
  • 彼らはそれぞれの生活・仕事をしているだけでなく各個にサブイベントが存在し、仲がよくなれば個人的にアイテム製作の依頼を持ちかけてくることもある。
    • 特にシアの病気イベントはサブイベントではあるものの、エンディングのキーアイテムの1つ「賢者の石」を作るのに不可欠なイベントでもある。
  • キャラクター関連だけでなく、のみの市が開かれればレアなアイテムが購入できたり、騎士団が討伐の遠征に出かければモンスターのエンカウント率が低くなり遠出が楽になったりと、ゲーム進行の役に立つイベントが多い。
  • また、ストーリーを進行していくと妖精さんを雇うことができる。妖精さんは雇うことでマリーの代わりに調合したり素材を集めてきてくれる。雇うには高額なお金がかかるがプレイを大幅に楽にしてくれる。
  • また素材を収集できる場所によってはボスがいることもある。非常に強いが彼らを倒すことで強力な素材を手に入れたり、エンディングのフラグを立てることができる。
    • マルチエンディングであり、プレイスタイルに合わせて変わるエンディングは魅力的。一度クリアしても別の楽しみ方ができる。
      • 一緒に冒険に出て友好度を上げた仲間は人物プロフィールと各種立ち絵を閲覧できるモードに登録されるという要素もある。
  • 上記の要素は起こすも無視するもプレイヤーの自由。これらのおかげで5年という年月のあちこちにアクセントがついている。
    • 逆に5年間何もせずひたすら睡眠というプレイにも、相応のエンディングを用意している。

その他の評価されている点

  • 桜瀬琥姫によるキャラクターデザインはファンタジー色が強く、美麗で人気がある。
    • 前述の妖精さんに加え、ドラクエでいうスライムにあたる雑魚敵「ぷにぷに」はその可愛らしいデザインからシリーズのマスコット的存在になり、後のシリーズではパーティーキャラクターとしてユニークキャラまで登場するに至った。
  • 音楽も良質。のんびりとした安らげる曲が多い一方でボス曲はとてもかっこよかったりする。
    • また作曲者がメールプラーナと同じであるため、メールプラーナのアレンジBGMがおまけとして挿入されている。
  • ロードが皆無、また睡眠することで一気に期間を飛ばすこともできテンポは快適。

賛否両論点

主人公の強さが極端

  • 「錬金術士は戦うのが仕事ではない」為、ゲーム開始時点では町のすぐそばにある森の雑魚モンスターにも苦戦する。 本作はそれを補う為に金を払って傭兵等を雇わねばならない。
    • これ自体はマリーの目的が練金であり戦闘ではないのでいいのだが、マリーの錬金技能レベルと冒険者レベルが連動している為、外へ出なくても強くなっていき、さらに戦闘用アイテムを作成したりイベントで強力な武器を手に入れることで、一部ボスを除けばマリー無双状態となってしまう。
      • 後作では錬金術士としてのレベルと冒険者レベルが別個に設定された他、戦闘難易度も調整され、近場なら無理に長期間滞在しなければ数度の戦闘を自然とこなせるくらいにもなりえる。

序盤から強力な敵の出る場所へ行けてしまう

  • 序盤から行ける材料採取地の一つ「ヴィラント山」は序盤から行ける割には道中含め強敵が出没し、序盤では用意をした上で向かってもあっさり全滅してしまう程。
    • ただし情報を聞いた時点で「危険なモンスターが出る」と忠告されるので、話を聞かない方に問題があるのだが。
    • また、年に2回騎士団がモンスター討伐を行ってくれる月の間は一切モンスターが出なくなるので、そのときが安全に採取を行うチャンスとなる。
    • ヴィラント山で採取できるアイテムで序盤に欲しいアイテムは、一度ヴィラント山に行く事で情報を入手できる別の場所で比較的安全に採取が出来るほか、一度行ってしまえば妖精さんに採取を頼む事も可能になる。
      • まぁ、妖精さんを雇うまでに少し手間がかかるが…。

素材アイテムが99個以上の状態で該当アイテムが採取出来る場所で採取を選ぶとアイテムの回収数が大幅に減る

  • メッセージ表示がないが仕様で99個以上でも採取したという判定になる上なおかつ他のアイテムの入手確率が上がるわけでもないのでかごがいっぱいになるまで採取する効率優先スタイルのプレイヤーには悩まされる事になる。

問題点

シナリオ面

  • サブイベントやボリュームが少なく薄味な感がある。
    • サブイベント自体はそれなりにあってもフラグをきちんと立ててないと途中でイベントがなくなってきてシナリオ面で飽きがくる。
      • その頃には大抵合成にのめりこんでいるので、余計なイベントが発生しないので合成に集中できるという意見もあるにはある。

システム面

  • 戦闘のバランスが悪い。
    • 本作の戦闘では素早さが最重要視されており、素早さのちょっとの差でも高い方が先に攻撃できるようになっているので、序盤の低レベルキャラはリンチを喰らいやすく、レベル上昇と共に素早さが成長した後半になると、相手に攻撃の機会さえ与えないこともある。
    • 戦闘で貰える経験値がSRPGのようなキャラ個別での入手方式である為、前述の通り素早さが低いキャラや打たれ弱く前線に出し辛いキャラは、かなり育ちにくい。

総評

この時点ではディレクターが述べた通り「シミュレーションを土台にRPG的テイストを入れた」作品である。 そのゲーム性と当時先進的であった桜瀬琥姫氏のキャラデザで話題となり、一定のファンを獲得することに成功した。
ガストという中小企業の認知度を上げ、後に続くアトリエシリーズの礎となる作品になった。
この作品自体の移植やリメイクも何度かなされている。


移植

  • セガサターン版『マリーのアトリエ』(1997年12月11日発売)
    • イベントなどが追加された。版権イラストを収録した「画廊」も追加されている。
    • 雑誌企画に存在した「親友キャラのシア(初期レベル0)を最大のレベル50にまで育てる」というネタを拾い、マリーとシアのレベルを50にした時専用のエンディングも追加された。
  • PS版『マリーのアトリエPlus』(1998年6月4日発売)
    • セガサターン版の逆移植。画廊に加えて「音声劇場」が追加された。
      • 現在はこの『Plus』版がゲームアーカイブスで配信されている(2007年12月26日、600円)。
  • Windows版『マリーのアトリエPlus』(2000年4月28日発売)
    • 『エリー』と同時のPC移植。
    • デスクトップアクセサリ類も入っているが、ゲームと連動して順次解放されていく方式。また定期的に品揃えが変わるショップが新設された(要ネット環境)。
  • DC版『マリー&エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士1・2~』(2001年11月15日発売)
    • 1作目マリーと2作目エリーをセットにしたカップリング移植なのだが…
    • おまけディスクを含めコンピュータウイルス「W32/Kriz」に感染しており、PCのBIOSが破壊される等の問題が発生し、即座に販売が中止されるほどの大問題となった。
      • 厳密には本編ディスク、おまけディスク共に感染しているが、問題が発生するのはおまけディスク内のスクリーンセーバーをPCにインストールした際。
      • あくまでPCへのおまけインストールでのみ問題が発生していたので、DCでゲームを遊ぶ分には何の問題もなく遊べた。
  • PS2版『マリー&エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士1・2~』(2005年10月27日)
    • 上記カップリング移植と内容は同じ。当然ながらウイルスの問題はない。

その後の展開

  • PS版無印の翌年に続編『エリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金術士2~』が発売され、正式にシリーズ化された。
    • 本作と『エリー』、3作目の『リリーのアトリエ ~ザールブルグの錬金士3~』など、ザールブルグを舞台とした作品群は「ザールブルグシリーズ」と呼ばれている。
      • また、ここから、以降のまとまった作品群を「(舞台の名前)シリーズ」としていくようになった。

余談

  • 本作でそれなりに知名度を上げた後、次(97年9月)にガストが発表したのが、よりによって知る人ぞ知る駄作『火竜娘 柳判官編/高悠環編』だった。
  • 上のコンピューターウィルスの件にもあるように、ゲームの評価とは関係ないところでトラブルを残してしまった作品でもある。
    • 中でも有名なのが、イラストレーターの桜瀬琥姫氏とガストとの間で起きた金銭トラブルである。このため、キャラクターデザインの評価は高かったにも関わらず、次作『エリーのアトリエ』では別のイラストレーターを起用せざるを得なくなってしまった*1。以降、桜瀬琥姫氏は二度とアトリエシリーズに携わっていない。
    • しかもこれで終わりではなく、次作『エリーのアトリエ』及び3作目『リリーのアトリエ』のイラストレーターである山形伊佐衛門氏とも同じような問題を起こしてしまっている。
      • これらの作品をリメイクする際(携帯機など)に、ガスト側は別の絵師のイラストに差し替えていることを見ても、これは相当に根深いと思われる。品のある二人のイラストを好んでいたファンも決して少なく無く、当時のガストという企業が抱える問題の一端を垣間見ることができる。こんなトラブルは担当者がきちんとしていれば防げた話であると思うので、なんとも勿体ない。
  • 本シリーズで錬金術を扱う者は『錬金術』ではなく『錬金術』である。わざわざこの違いに作中で言及しているものもあるので、スタッフ的には譲れない所なのだろう。*2*3意味としては別にどちらでも間違いではないのだが、錬金術を扱う他の漫画やアニメは漏れなく前者の方を採用しているので、本シリーズをよく知らない人には高確率で間違えられてしまう。