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ファントム・ブレイブ - (2014/01/20 (月) 17:18:54) の編集履歴(バックアップ)


ファントム・ブレイブ

【ふぁんとむ・ぶれいぶ】

ジャンル シミュレーションRPG
対応機種 プレイステーション2
発売・開発元 日本一ソフトウェア
発売日 2004年1月22日
定価 7,140円
分類 良作

ストーリー

海に浮かぶ小さな孤島「おばけ島」。
そこには去る戦いで命を落とした戦士『アッシュ』の霊魂(ファントム)と、
ファントムを操る能力を持った少女『マローネ』が二人で住んでいました。
島には不定期にマローネ宛のボトルメールが流れてきます。
マローネはボトルメールに入れられた依頼書を受けて遂行し、
報酬をもらう請負人(クローム)として生活しています。

マローネは霊を見ることができる能力のせいで、
他人に『悪霊憑き』と罵られ、住む場所さえままなりません。
それでも優しく前向きな彼女は両親の
「人助けをしていれば、いつかみんながマローネを好きになってくれる」
という言葉を信じて、ボトルメールの依頼をこなすのでした。
当面の目標は報酬を集めておばけ島を買い取り、住む場所を確保すること。
アッシュとマローネの冒険が始まります。
(公式サイトより引用)


概要

  • マール王国の人形姫シリーズや魔界戦記ディスガイアで名を上げた日本一ソフトウェアが送り出したシミュレーションRPGの一作。
  • 豊富なキャラクターメイキング、9999まで上げられるレベルを始めとした膨大なやりこみ要素、章形式のシナリオなどは従来の同社作品通り。
  • その一方で後述するシステム面では新たに導入されたものが多い。
    • キャラメイクや戦闘中の仕様自体もかなり変化しており、ディスガイアとはまた違った戦略性を持っている。
    • それらのいくつかは後の同社作品に定着し、ディスガイアとはまた違った意味で日本一ソフトウェアの新機軸を開いている。
  • シナリオは童話的なハートフルファンタジー。
    • 日本一ソフトウェアの作品にはつきもののコミカルさやナンセンスギャグはほとんどないものの、同じく同社作品につきものである陰惨な展開は健在。特に序盤はプレイヤーの心を折ってくる。
  • ゲームクリア後のイベントでは、ディスガイアのラハールたちやマール王国シリーズのミャオ、シリーズ恒例の超魔王バールなど別作品のキャラクターが登場し、彼らを仲間にすることができる。

ゲームシステム

おばけ島

  • おばけ島ではキャラクターやアイテムを召喚してそれぞれ好きな場所に配置することができる。
  • 商人やダンジョン師などの施設を利用したい場合は彼らをキャラメイクしておばけ島に配置する必要がある。
  • 郵便受けには話に応じてボトルメールが届き、新たな依頼や新聞などを読むことができる。
    • 新聞では主人公たちが知らない間、世界で何が起きているかがわかり、後の話の伏線やマローネたちの評判、NPCたちの事前情報やその後がわかるようになっている。
  • キャラクターを積み重ねるなどしておばけ島の最高地点に到達すると到達した高さに応じてアイテムや仲間がもらえるといった隠し要素もある。

自由度の高い戦闘フィールド

  • ディスガイアとは異なり戦闘フィールドはHEX制ではなく、フリー移動形式に変更。それにともなってキャラの向きによる被ダメージの変化がなくなった。
  • 戦闘フィールドには場所によって様々なアイテムが落ちており、それらをコンファイン&リムーブ、持つ&投げるといった下記のシステムで利用して戦う。
    • アイテムは剣や魔導書といった武器だけでなく「岩」「木」といった自然物「リモコン」「攻略本」「植木鉢」など普通は戦闘で使うものではないものなど様々。
  • 地形にはそれぞれ滑りやすさや弾みやすさが設定されており、それによって高いところから落ちたり、一気に移動したりする際に行き着く位置が若干変わってくる。
  • それぞれの攻撃の範囲も立体的に表示されわかりやすくなっている。

コンファイン&リムーブ

  • 戦闘では最初マローネしかいないが、彼女がコンファインすることで仲間を召喚することができる。
    • コンファインとは戦闘フィールド上にあるアイテムに仲間の霊を憑依させることである。
    • 石にコンファインされたキャラクターは固くて鈍重になるなど憑依させるアイテムに応じてステータス補正を受ける。
  • 仲間は永続的にコンファインさせられるわけではない。ユニットに応じてその戦闘中に行動できる回数が決まっており、それを超えると強制的に戦闘離脱してしまう。これをリムーブという。
    • リムーブする際にその仲間が憑依していたアイテムを一定確率で入手することができる。戦闘能力に乏しいがリムーブ時のアイテム入手率が非常に高い盗賊的なポジションのユニットもいる。
    • なお、主人公のマローネのみは倒されなければ何度でも行動できる。

持つ&投げる

  • 戦闘フィールド上に存在するステータスを持つものなら何でも持つことができる。そしてアイテムごとに固有の特殊技が設定されており、持った状態なら使うことができる。
    • アイテムの種類自体がかなり多様なため、技の数も非常に多く、演出も様々。
    • 挙句の果てには敵や味方キャラまで持ち上げて装備したり投げたりすることができる。ただし敵もこちらのキャラを持ち上げたり投げたりすることがある。
      • これにより敵を一箇所にまとめて範囲攻撃で一網打尽にしたり、敵を持ち上げて身動きを封じたり、厄介な敵を場外に捨てたりすることができる。
      • ただし敵を持ったままターンを終了したキャラクターは持ち上げた敵に応じてダメージを受ける。
  • 味方を持ち上げた場合、持っている間持ち上げたキャラは行動できなくなるが攻撃を受けることもなくなるため緊急回避に使える。

場外

  • 戦闘フィールドの外へキャラやアイテムを放り投げれる。そうすると強制的にそれらは戦闘から離脱してしまう。
  • キャラの移動中に場外に出てしまうことがあるが、その場合は落ちたところから一番近い場所に戻ってくる。またマローネは落ちた理由にかかわらず戦闘フィールドに戻ってくる。
    • 厄介な敵を投げ捨てることで葬り去ることができるが、残った敵が落とした敵のレベルに応じてレベルアップしてしまうためやりすぎると瞬殺されるおそれがある。最後の敵は場外送りにしても戻ってくる。
    • また当然のことながら敵がこちらのキャラを場外送りにしてしまうこともある。この場合その戦闘中は復活しない。

キャラ作成

  • 素質が霊験と名を変えていたり、ユニットが世界観に合わせてがらりと変わっていたりするものの基本的にはディスガイアと変わらない。マナで素質(このゲームでは霊験)を強化できるのも変わらない。
  • 商人やダンジョン師、称号師など施設までもキャラとして作成することができるようになった。施設を利用する場合は彼らを作成しておばけ島に配置する必要がある。もちろん彼らも戦闘に出すことができる。

プロテクション

  • 戦闘フィールド上にあるアイテムとキャラクター、あるいはキャラクター同士に発生する支援効果。支援効果の内容は能力を補正したりHPをターンごとに回復するなど様々。
  • プロテクションは効果を与える側と受ける側が存在し、与える側が健在な限りは効果が発生し続ける。
  • かかる補正が非常に強力な場合もあり、そういう効果を受けている敵がいる場合は与える側を先に破壊するなど対処が必要である。
  • プロテクションがかかっているアイテムに味方をコンファインすることで恩恵をそっくりそのまま受け取れるので、使い方によっては味方を有利にできる。

称号

  • 全てのアイテムやキャラクター、ランダムダンジョンには称号がついており、それによってステータスなどに補正がつく。
  • 称号師を利用することで称号を付け替えることができ、味方を強化したり、ダンジョンにあえて弱体化する称号をつけることで攻略を楽にしたりできる。

転生

  • レベルの上限は9999でそれより上げることはできないが、「転生」を行うことで特殊技や武器熟練度を引き継いでLv1に戻ることができる。基本的にはディスガイアと同じ。
  • この作品ではチェンジブックやタマゴといった特定のレアアイテムが必要となっている。

評価点

ディスガイアを発展させた戦略性

  • コンファインによって「どのアイテムに誰を憑依させるか」という位置や補正を考えたパズル的な駆け引き、リムーブによって「どういう順番で誰を戦闘に出していくか」といった戦術的な駆け引きが生まれている。
  • 能力が高くて強力なユニットほどリムーブまでの行動回数が少ない事が多く、ゲームバランスの調整に一役買っている。
  • 考えなしに仲間を出しまくっているとリムーブ後にマローネしかいなくなってしまうので否が応にもパーティプレイを積極的にさせる。
    • そのため一人のキャラを重点的に育てて無双することはできず、SRPGでよくあるベンチウォーマーが生まれない。仮に役に立たない仲間でも魔導合成の材料にするなど使い道は必ずある。
    • キャラごとに装備していたアイテムはリムーブしても戦闘フィールドに残るため、最初にコンファインしたキャラクターが持っていた強力なアイテムをその場に置いて、次のキャラをコンファインするといったことも可能。
  • ユニットの種類も増え、商人やヒーラー、ダンジョン師など施設そのものをキャラとして作れるようになったのも自由度が高い、非戦闘系キャラでも役に立てるなどとして好評。
  • 持つ&投げるもディスガイアの同システムを更に発展させており、特に場外に投げられるのは見た目的にもなんでもあり感を増していて自由度が高く派手。
    • 一方で敵を場外送りにしまくっていると残った敵のレベルを激増させてしまうため考えなしにやると逆に不利になることもあるためバランスはとれている。
  • プロテクションの存在により敵を倒す順番を考えたり、戦場のアイテムを利用したりする必要が有るため戦闘のスパイスとして機能している。
  • 特殊技の種類は400種類以上もあり、見た目的にも派手で荒唐無稽なものが多いため飽きない。
  • これだけ斬新な要素を取り入れておきながら、(序盤からやり込みすぎなければ)ゲームバランスが快適なのも良い点。
    • ただしディスガイアに比べてやり込みやすくなったためプレイヤーの裁量であるとはいえ、ランダムダンジョンを何度も利用すると比較的簡単にヌルゲーになってしまう。

強化されたやり込み要素

  • 仲間やアイテムを合成するシステムや称号などの存在により、ディスガイアに比べるとやりこみがしやすくなっている。
  • レベルの高いランダムダンジョンに弱体化する称号をつけることで弱い敵しか出ないがレベルの高いアイテムが落ちているダンジョンを作る、といった手により経験値稼ぎ・アイテム収集も楽になった。
    • ダンジョンに称号をつけるとそこで登場する敵に同じ称号がつく。弱体化する称号がついた敵はその分経験値が減るが、アイテムやクリアボーナスには影響がないのでアイテムを攻撃して経験値を稼ぐ、敵をひたすら無視してダンジョンをクリアする、などの手で高経験値が得られる。

時に残酷、時に優しげなストーリー

  • ディスガイアのようなハチャメチャさはなくなっており、どちらかといえばマール王国シリーズに近い絵本のようなストーリーである。
    • 特にディスガイアでこれでもかとあったギャグ要素は全く見られない。そのためバカゲーのノリが苦手な人でも受け入れられやすいものになっている。
  • 差別や偏見を受け、迫害されていた主人公が仕事を通じて次第に友達や理解者を増やしていき、最後は世界の危機を救って人々から認められる、という流れは少々ベタながら演出が丁寧でとても心温まる。
  • 悪人だったキャラクターが主人公の働きに影響されて改心する人物、マローネと同じように差別を受けながらも別の方法でそれを克服しようと努力する者、逆に修羅の道に身を落とす者などNPCの描写も様々で考えさせられるもの。
  • ストーリーが進むごとに郵便受けに届くボトルメールも「マローネが関わらない場所で世界に何が起きているのか」、「マローネの世間的な評判の移り変わり」を知ることができ、物語に深みを与えている。先の話で回収される伏線の描写もしばしばあるので唐突さがない。
  • このためディスガイアなどに比べて万人受けし、誰にでも薦められるものとなっている。
  • ただし後述するが描写が丁寧なために人間の身勝手さや理不尽な迫害の描写も際立っており、その点で人を選ぶことはある。

良質な音楽

  • 佐藤天平氏が手がける音楽はどれも聴き応えがあって作品の雰囲気を盛り上げている。
    • 一見癒し系の旋律ながら長く聞いていると徐々に盛り上がってくる通常戦闘曲「この熱き想いの果て」やおばけ島の安らぎ・のどかさを引き立てる「My Little Garden」など名曲は枚挙に暇がない。
    • 特にボス曲の一つ「Strange Wind」はその流麗で哀愁ただよう旋律からこのゲーム屈指の人気曲となっている。
    • 一方で挿入歌付きのイベント曲である「ともだち」はディスガイアの「ラハールさまの賛美歌」や「戦友(とも)よ」などに比べると影が薄いといわれがち。

ドット絵のグラフィック

  • 原田たけひと氏のデザインは世界観にそぐわっており、キャラクターの個性が容姿でしっかり箔付けされている。
  • グラフィックは明るく温かみのあるドット絵で描写されており、イベントシーンではぬるぬるとアニメーションをしてくれるなどそのクオリティは高い。
    • しかしPS2も全盛期な時代にドットかよ! という声もなくもない。
    • とはいえディスガイアでも同じ批判はあったのでこれはどちらかといえば日本一ソフトウェアのお家芸であろう。ドット絵を採用しているおかげでロードが早い一面もある。

豊富な隠し要素

  • ラハールや超魔王バールをはじめクリア後に多数の隠しボスと戦ったり、他作品のキャラを仲間にできたりするほか、本編では登場しなかった隠しアイテムも豊富。
  • おばけ島の最高地点到達や転生のシステムも結果的に隠し要素となっている。
  • 日本一ソフトウェア作品の恒例でもあるがこうした要素はやりこみの目標として機能しており、歓迎されている。

快適な仕様

  • イベントのスキップやソフトリセットのコマンドが完備されており、非常に快適。ロードもほとんど無く、やりこみの邪魔にならない。
  • チュートリアルもコンファイン&リムーブや持つ&投げるなど重要なものについてはひとしきり網羅している。
    • ただし後述するが「使わなくても問題ない」システムに関しては説明されてないことも。

賛否両論点

序盤の残酷な展開と終盤とのギャップ

  • 序盤のマローネは人々から『悪霊憑き』と迫害されているのだが、この描写がかなり露骨で容赦がない。
  • 依頼を達成したのに依頼人から報酬を払うのを拒絶されたり、別の同業者に手柄を横取りされたり、とにかく人間の汚らしさとマローネの不憫さが際立っている。人が死んだりする陰惨さとはまた別方向でひどい。
    • そういった描写が少なくなってきた中盤以降でも「地上げ屋におばけ島を奪われかける」「薬品会社の施設を作るために島から住人(モンスター扱いだが)が追い出されかける」など嫌なところがリアル。
  • 終盤ではうってかわってマローネたちは世界を救える唯一の希望として世間から賞賛されるため「都合が良くなったら手のひらを返された!」と人間の身勝手ぶりに憤るプレイヤーも多い。
    • もっとも直接的に人々と絡まなくてもマローネが仕事を成功させることで評判が上がっていく経緯はボトルメールなどで描写されているため展開そのものに無理があるというわけではない。
    • またこういった点が引き立つのもストーリー描写の丁寧さの裏返しとも言える。

仲間になる固定キャラがほとんどいない

  • マローネとアッシュを除くと固定の設定を持つ仲間キャラはクリア後の隠し要素で仲間になる日本一ソフトウェアの別作品のキャラぐらいしかいない。
  • スポット参戦で共闘するNPCは何人かいるため「仲間にしたかった!」という声は少なくない。
  • もっとも主人公の設定上、仲間にできるのは「既に死んでいる霊」であるため、彼らを仲間にするためにはヴァルキリープロファイルのように死亡イベントを山ほど作る必要に迫られたろうが…

崩壊しやすいゲームバランス

  • やりこみのハードルが下がった弊害として、やり方さえわかっていれば序盤から容易にランダムダンジョンや称号師、魔導合成師などを利用してパーティを飛躍的に強化できるためやりすぎるとヌルゲーと化す。
    • もっともこの点はあくまでプレイヤーの裁量次第である。
  • SPD(素早さ)が高いほどターンが早く回ってくることや、少ないながらも攻撃力がSPD依存の特殊技があることなどから能力値の中でSPDの重要度が突出している。
  • ただしアイテムごとの強さは極端な強弱がないことや、リムーブの要素でSPDが高ければ高いほど早く退場してしまうため、ディスガイアに比べればよくなっているという意見もある。

問題点

戦闘中の不親切な点

  • フリー移動を取り入れたばかりでシステム構築がまだ未熟だったからか、傾斜やアイテムの位置関係によっては移動中のキャラがそれらに阻まれて途中で移動が終了してしまうことがよくある。
  • 味方の特殊技に巻き込まれて別の味方が場外送りにされた場合、そのキャラクターはその戦闘中戦闘不能扱いになってしまう。

一部システムが説明不足

  • 意欲的かつ多彩なシステムが取り入れられているにもかかわらず、称号や場外、魔導合成、転生など説明書やゲーム中のチュートリアルで説明してくれないシステムがいくつかある。
    • 称号や場外、魔導合成に関しては試しているうちに使い方に気づかないこともないが、転生はほとんど隠し要素の様相を呈している。
      • 合成の計算式など複雑なものもあるため、もっと説明書を充実させてほしかったという声は多い。
    • 転生に必要なアイテムはかなり貴重であることや本編をクリアするだけなら使わなくても何も問題ないため、やりこまなければ必要はないが。

総評

  • 少々問題点はあるものの、万人受けするストーリーや自由度の高い戦闘システムなど見どころの多い作品。
  • 持つ&投げるの仕様や場外の概念、やり込みに関する仕様、一部の汎用ユニットなどはその後の同社作品に受け継がれ、ディスガイアとは異なる形でその後の日本一ソフトウェアのその後に貢献している作品といえる。
  • マール王国シリーズやディスガイアに比べると地味ではあるが一定のファンを獲得しており、後に何度も追加要素をつけた廉価版が発売されたりオンラインゲームになっていたりしている。