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//理由を書いてCOした場所を黙って復元せず、せめて復帰する理由を書きましょう。 また、意見が割れているならスレで相談してください。 *君と彼女と彼女の恋。 【きみとかのじょとかのじょのこい】 |ジャンル名義|Alternative ADV|&amazon(B00DVHTTM4,image);| |対応機種|Windows XP/Vista/7|~| |発売・開発元|ニトロプラス|~| |発売日|2013年6月28日(初回限定版/USBメモリ)&br;2013年8月30日(通常版/DVD-ROM)|~| |定価|7,500円(税別)|~| |レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~| |配信|2014年6月27日/6,500円(税別)|~| |判定|BGCOLOR(lightsteelblue):''賛否両論''|~| |~|BGCOLOR(MistyRose):''怪作''|~| |ポイント|ニトロプラスがエロゲーマーに叩きつけた、&br()禁断の問いかけと究極の二者択一&brあらゆる意味で、何もかもが賛否両論&br''「人生に、『IF』なんてない」''|~| |>|>|CENTER:''[[ニトロプラス作品リンク>Nitro+作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- #center{&size(20){''WARNING!!!!!!!''}&br;&size(20){''閲覧の際は、ゲーム本編のネタバレに最大限注意してください!''}} ---- **ストーリー 毎日は、階段のように過ぎていく。 >まるでモブのように無個性な主人公・心一。~ 学園のヒロイン・美雪とは幼馴染みだが、目立ちたくないがために声をかけることもなく、ただのクラスメイトの1人として、平凡な日々を過ごしていた。 >そんなある日、親友の雄太郎に呼び出され向かった屋上で出会ったのは、クラスで浮いている電波少女・アオイ。~ 「ビリビリ、するの?」そんな言葉とともに、突然キスを迫られた心一。~ 偶然居合わせた美雪に助けられ、なんとかその場は切り抜けたが、それ以後アオイに奇妙につきまとわれるようになる。 >友達もなく、人間らしい感情を持たないアオイ。彼女に友達との付き合い方を教えてやりたくて、意を決して美雪に頼み込み、3人で時間を過ごすことに。~ 日が経つにつれ、徐々に人間らしい感情に目覚めていくアオイ。一方美雪も、幼い頃無理矢理押さえ込んでいた心一への想いが蘇り、徐々に主人公との距離を詰めていく。~ せっかく友達同士になれたのに、日に日にギクシャクしていく3人の関係。 >ずっと、一緒にいられると思ってた >でも、3人ではもう、いられない >''主人公が選ぶのは美雪か、それともアオイか……?'' (公式サイト 「ストーリー」より抜粋) ---- **キャラクター #region(クリックで開閉) -須々木 心一(CV:なし) --主人公。この手のゲームの主人公らしく特筆する特徴は無い。 --ただしキャラ名は変更できない。 -曽根 美雪(CV:手塚まき) --ヒロイン。容姿端麗かつ才色兼備で主人公とは幼馴染。演劇部に所属。 --今は疎遠というこれもまたこの手のゲームの幼馴染キャラにありがちな設定。 -向日 アオイ(CV:仙道ミツキ) --もう一人のヒロイン。いわゆる電波・無感情系の不思議ちゃん。 --常に電波の届かないスマートフォンを持ち歩いて「カミサマ」という謎の者と交信しようとしている。 -ハル(CV:桐谷華) --演劇部所属の美雪の後輩。気弱なドジっ子。 -曙雄太郎(CV:ほうでん亭ノドガシラ) --心一の同級生で親友。暑苦しい。弟が一人いる。 -エル(CV:北都南) --アオイが見つけた黒い猫。 -カミサマ(CV:北都南) --アオイがスマートフォンで交信しようとしている謎の相手。 #endregion ---- **概要 //括弧や太字が多くどこを強調したいのか分かりにくかったので全体的に修正。当サイトでは『』はゲームや出版物のタイトルのみに使う傾向にあるます。 -『アザナエル』から2年半ぶりのニトロプラスのアダルトゲーム。略称は平仮名だけを抜いて『ととの。』 --ライターは同社で『スマガ』や『[[STEINS;GATE]]』を担当した下倉バイオ氏。下倉氏曰く本作のコンセプトは >一般的な美少女ADVは、選択肢を選びCGを100%にしたりトゥルーエンドを見るために、~ '''全てのルートをプレイしなければならないといった義務的なものになっているが、'''~ ''本作品ではヒロインを2人に絞りどちらを選ぶかに主眼を置いた'' (要約)~ とのこと。 -近年のニトロプラスは、自社以外の一般向け作品への製作協力を活発化しており、元々のメインフィールドである18禁ゲームが発売されない状況が続いていた。~ そのためファン及びアダルトゲーム愛好家的には嬉しい一作になると思われた…が。~ 同社の18禁ゲームはいわゆる「抜きゲー」よりも活劇ものや暴力性が高い作品となる傾向にあった。このため「純愛」をテーマにした学園モノというどこかありきたりな第一報が知らされた時には困惑する声が多かった。一方同社の「純愛」は[[強烈な前例があった>沙耶の唄]]ため、この時点で何か裏があるのでは?と勘ぐる人もいた。 --やがて、例によって暴力描写のあるCGが公開され、同時に「&bold(){選ばれなかった彼女は…?}」という意味深なあおり文も掲載された。 --これにより今作もただの純愛モノとは一線を画すただならぬ雰囲気を醸し出すようになっていき、発売後誰もが身構えながらプレイしたが、その中身は予想のさらに斜め上を行くものであった。 -本ゲームはかなり独創的なギミックが仕込まれており、''一切ネタバレや「仕様」について知らない状態でプレイした方が望ましい。'' --ただ、本作は「プレイヤー側がADV形式のアダルトゲームを何作かプレイしていること」および「プレイヤーが主人公視点でストーリーに没入してくる」ことを想定している。~ よって&color(purple){初アダルトないしノベルゲーとしては全くオススメできない};。アダルトゲームを何本か遊びきった上で「ストーリーに没入し、主人公視点で楽しめる人」にこそ向いているゲームである。 -上記の通り、ニトロ作品の例に漏れずやはり暴力描写はある。 --ただし本作の場合は、流血描写のある暴力・グロよりも''精神的に刻み込まれる怖さが大きな比率を占める''。 --また、注意事項として本作には一種のマニュアルプロテクトが含まれている。''パッケージを絶対に捨てずにプレイすること''。 --中古品だと最悪詰む危険性があった。((一応現在では、ネット媒体を含めた様々なメディアによる”緩和処置”がなされている。))買うなら新品または未開封品を推奨。 --途中でこのギミックについて気づいてしまったとしてもゲーム側のテキストをしっかり読み込み、ゲーム側の指示にきちんと従っていくこと。そうしなければ正常なプレイが続けられなくなる恐れがあるので要注意。 #region(踏み入った''内容・仕様について、ネタバレを含みます。'') **踏み入った内容・特徴 -前述の通り「純愛」が表向きのテーマだが、もう一つのテーマはずばり「アダルトゲームそのもの」である。 --一見相反するようなこの二つだが、ストーリーが進行するにつれこの二つのテーマが交わっていくことになる。 -1周目は美雪ルート(のGOODエンドかBADエンド)固定となっている。主人公である心一が美雪と永遠の愛を誓ってEND、とこの時点では実にありふれたアダルトゲームである。 --真価はGOODエンド以降の所謂「2周目」からである。アオイルートへの選択肢が解禁されるので、大抵のプレーヤーはアオイの好感度が上がる選択肢をとるだろう。 ---そして「2周目」は、そういった形でADV形式のアダルトゲームを体感し尽くしてきた本数が多い人ほど、衝撃が大きくなるような内容が待ち受けている。 **賛否両論点(兼主なゲーム内容) -ネット上で公開されているチートコードを特定箇所にて入力すると、警告メッセージを経て製品版収録の全CGやミュージックが解放されると同時に、''"崩壊状態"というべき専用ルートに突入して事実上のゲームプレイ不可''になる。~ これが''発売前の体験版ですら行使・閲覧できてしまう''((しかもコードの公開は予告なしで発売日の前日に行われた))。もちろん体験版でチートコードを入力した場合も、後で製品版を買ってこようがストーリーはプレイできなくなる。 --バグでも何でもなくスタッフの意図した仕様である。これは本作の製品版に仕込まれた特殊なギミックの数々に起因しており、ニトロプラス社内でも賛否があったが、幾度もの討議の末に決断されたらしい。 --つまり&u(){アダルトゲームのCGだけにしか興味が無い人は''このゲームを買わず、体験版をDLしてくるだけでいいのだ。''}しかしその体験版にまで仕込まれた大胆な仕様そのものが本作のスタンスを示しており、同時にいわば製品版への伏線にもなっていた。 -本作はシナリオが進むと諸般の事情でシステムの一部(ボイス音量調節設定等)が利用できなくなる。 --''演出''の一環としては斬新と言えば斬新。この手のゲームに欠かせないとある機能が封じられることは不便に感じるかもしれないが、そう思った時点で製作者の術中に嵌っているのかもしれない… -原画は『すーぱーそに子』でおなじみ津路参汰氏が担当。氏独特のどこか淡い絵柄はこれまた稀代のゲームである本作に合っているとの意見が多い。 --が、「あえて一般的な量産型エロゲー風の絵柄の方が本作のテーマを語るうえで適切だったのでは?」との声も。 -とにかく評価は分かれる怪作だが、好評の人にはとことん好評。普通のゲームとは一味どころか二味も違う作品で、他の作品では絶対に味わえないものは味わえる。 --「PC用アダルトゲーム」そのものを逆手にとったギミックとそれを生かした演出が多く、プレイヤーからの驚嘆・感心の声も多い。 #region(&color(crimson){''以下、本作の核心である「仕様」に関するさらに重大なネタバレを含みます。構わない方のみ開いてください。''}) -『2周目』のアオイルートを進めると、何故か美雪はアオイと主人公がくっつくのをあからさまに妨害してくるようになる。~ その中で美雪は「''永遠の愛''」は嘘だったのかと心一に問いただしてくるが、ここで違和感を覚えるだろう。''まだ主人公は『1周目』と違って美雪に告白していない''からである。 --それでも美雪を避け、アオイの好感度が上がるであろう選択肢を選んでいくとアオイルートが進んでいくが、終盤でなんとアオイは主人公以外の男と性行為をするというとんでもない展開になる。 --「純愛ゲーをうたっておいてこんなことするなんて」とどこまでも清らかな恋愛物を期待して買った人から非難されているが、しっかりとした理由づけはされている。~ そして心一は自分自身がアオイを愛する気持ちは本物だとして、アオイがそのような行為をする理由を受け入れる。 ---二人は紆余曲折はあったものの幸せに結ばれ、アオイルートはGOODエンドとなる。~ ~ ~ ~ ~ ~ ……と思いきや突然その場に美雪が現れる。~ そのまま美雪は恨み言を並べながら、&color(crimson){アオイと心一を殺害してしまう}。 ~ #center{もはや舞台には美雪しかいなくなったが、突如として美雪は”舞台”の外にいるある人物を呼ぶのであった。それは――――――} ---- -本作が賛否両論となった最大の理由は、''メタフィクション性および、プレイヤーへの風刺性が極めて強い''ことにある。((ここでいうメタフィクション性とは「ゲームで遊ぶという行為自体がゲームのテーマとなっている」「ゲームを構成する諸々の要素の中に、現実に存在するものが直接的に含まれている」といった意味で解釈して欲しい。)) --メタフィクションを持ち込んだ作品は古今東西にそれこそ400年以上前の『ドン・キホーテ』の時代から、風刺的な芸術となると実に紀元前時代から存在してきていたが、~ 前者はギャグのネタにしたり、ストーリーの重要な局面でプレイヤーを感動させたり…というプラスの活用法が多く、後者も時代を経るに連れてユーモアの側面が強まっていった。 --古くからの演劇、戯曲から近年のマンガやアニメ等まで、登場キャラが「自分がフィクション内の登場人物であること」を自覚していて、キャラが視聴者や読者に向かって直接語りかけたりする展開はそれほど珍しいものではない。しかしそれらのほとんどは単なるギャグ描写であったり、もしくはせいぜい、虚構と現実の境界を曖昧にすることでちょっとした混乱感覚をもたらす演出意図によるものであった。 --対して本作は言わばマイナスの方向にメタ演出を利用しており、上述した場面以降はメタ演出を最大限に活用した展開が繰り広げられることになる。そうして叩きつけられる展開の恐ろしさはプレイヤーに向けたある種のホラーの域にまで入り込んでいる。~ この一環としてアダルトゲーム及びアダルトゲーマー批判がなされるが、''そこでは「明確な答え」や「こうであれという姿勢」は示していない''。 ---好意的に解釈するのであれば、プレイヤーや業界人に考えさせられる内容となっている。悪く言うと、言いたいことだけ言って全てユーザーに投げている。 ---人によっては凄まじい罪悪感を感じる可能性や、今後このゲームがトラウマになって、アダルトゲームをプレイするたびにこのゲームのことを思い出して楽しめなくなる可能性すらある。~ 実際完走したプレイヤーの感想の中でも、クリア後茫然としてしまってしばらくアダルトゲームに手が伸びなくなった、やろうとしたら美雪やアオイの顔が浮かんできたとの報告がある。~ 憤ってすぐさまアンインストールしてこのゲームのことを忘れようとしたり、インストールメディアを破壊してまで別のアダルトゲームに手を出した人もいるが、それを過ちだとは一概に言えないであろう。 -本作のやっていることをかいつまんで例えるなら''「企業として最も大切にするべきであろう自社の商品に加えてお客様さえもこき下ろす」という禁じ手''をやってしまっているのである。 --ゲーム業界外の評論家等が「ゲームは生産性が皆無かつ低俗な趣味でゲーマーは性根が悪い」と罵倒する事はあるし、ゲーマーが自虐的に言うこと自体はありえるとは言える。~ だが、業界のクリエイターが恒常的にそのような発言をするのはまず無いであろう。そのようなことをすれば仕事が来なくなり、多くのコアユーザーがそっぽを向くのは間違いないからだ。 ---しかしその禁じ手を今になって使った事そのものが良くも悪くも本作最大の特徴なのである。このお客様批判をぼやかさずにはっきりと行ったことは必ずしも評価できるとまで言い切れないが、挑戦的な作品として存在感を放っていることは確実である。 --ゲーム中盤以降、美雪とアオイはそれぞれ作中のキャラクター一人という枠には収まらなくなり、一種の「象徴」として扱われるようになっていく。~ このことに対して「関係ない作品を巻き込むな」「これからもキャラクター商売をしていくだろうに、自らを棚に上げルート固定までしてこんな主張はどうか」という批判もあれば、「実に個性的で興味深い内容だった」「ゲームに対する考え方が変わった」と肯定的な意見もあった。 -結果として、こういった特色が毀誉褒貶にも近い激烈な賛否両論を巻き起こす原因となった。 --また、本作発売当時のニトロプラスは上述の通り一般向け作品への製作協力が多くなっており、アダルト作品での商品展開について消極的になっていたので~ 「本作をもってアダルト分野から撤退するからこそこのようなゲーマーへの恨み節をぶちまけたような内容にしたのではないか」と勘繰るユーザーも一定数存在したのも本作の評価が荒れることになった一因ではある((作中に複数のニトロプラスの過去作ネタがあるため、当時はこう捉えられても仕方なかったとは言える))。 ---補足しておくとその後も(2、3年に1作ペースではあるが)18禁ゲーム自体は発売しており、結果的には邪推に過ぎなかったと言える。 -驚愕の展開の果てに待つのは、オルタナティブ(二者択一)ADVにて要求される最後の解答の提示。すなわち、''プレイヤーが''美雪とアオイのどちらを選ぶかという「究極の二者択一」である。 --その選択の結果は、本当に作中で述べられた通りの結末を辿る事になる。両方のエンドを見る手段は作中で言及されるが、その行為は「彼女''たち''への裏切りないし冒涜」となる構成・仕様に仕立て上げられている。 --ただこの二択について片方の描写不足から「状況的に、どうしてもある方を選びたくなる」との指摘がある。~ もっともクリア済みレビューを見る限り最後に選ばれたのが("ある方"がやや優勢気味ではあるが)どちらかに偏重しているわけはないので、ある程度意図した・構成的にやむを得ない部分はある。 -最後の選択を終えスタッフロールの後、タイトル画面に戻るとある変化が起こっている。~ さらにそこで回想モードを開くと、発売前の宣伝広告の「&bold(){選ばれなかった方は…?}」の真意がついに判明することとなる。これらを見てしばし机の前で固まってしまったという感想も多い。 --「''一つの選択肢しか選べず、別の人生を送れない''」ということは、否ゲーム的で極めて現実的な話である。~ 下手にハーレムルートや3人の良い関係が続くENDを用意することなどせず、二つのどちらかしか選べないという、この現実的な「純愛」のひとつの極致を、徹頭徹尾まで表現しきったことには相応の評価が与えられて然るべきだろう。 #endregion #endregion ---- **評価点 -楽曲の評価は安定している --適切な状況で使われており、無音になる箇所では否が応でも緊張感が高まる。 -距離が近づくにつれて大きくなる足音等の生々しい効果音が臨場感・緊張感に貢献している。 ---- **問題点 //リージョンを開けていない人に配慮した内容に修正 -初期版にバグが多い --本作は中盤以降の異常事態が肝だが、プレイヤーは動揺するよりも先に本来のバグの発生を疑ってしまい、演出意図がうまく伝わらなかったという事態が多発した。 --とりわけ後半にフリーズバグが発生すると、本作の独自仕様も相まって泣ける事態に…。 --公式で修正パッチが公開されているのでプレイする人は必ずDLしておくように。それでも固まるときは固まるが、安定性自体は大幅に向上している。 //パッチ適用後にプレイしましたが、一切フリーズしなかったです。一応メモ。 -平均プレイ時間は11~13時間程度とされ、価格に対してやや短いと言える。 --確かに中盤からは怒涛の展開が続く。しかし、そこに至るまでの肝心の前半部が何の変哲もなく薄味な話であるというのは致命的だった。このためにキャラの描写が薄くなり魅力を感じ取れずに終わってしまったという声が少なからずある。 --少々ひねくれた言い方をすると、(価格の分遊べるだけのボリュームがあるという意味ではないが)''場合によってはプレイ時間は無限大にまで上がりうる''作品ではある。 ---- **総評 一見すると何の変哲もない正統派であり、その観点だけで見ると本作の''導入部が淡白すぎる印象は否めない''。~ もちろんそれ自体は文字通りの仮の姿にすぎず、その先に踏み入った途端、あまりにも直球なメッセージがニトロプラスらしい攻撃的な演出を以って突きつけられてくる。~ それこそが本作最大の特徴であり、そしてこの二面性が”アダルトゲームとして”の評価を賛否両論極まりないものにしている最大の要因であり、~ 「初心者お断り」「''アダルトゲーム経験者でなければ本作の真髄を理解することは不可能''」と言われる最大の理由となっている。 その演出手法から奇作・怪作を体験したい人をも引きずり込む力を持っているが、~ 内容そのものは''あらゆるアダルトゲームプレイヤーに大きな一石を投じる、まさに純粋すぎるほどの問題提起作''なのだ。 ニトロプラスなりの「純愛」を類稀なほどに徹底した2度目の作品であるとはいえ、尖ったゲームの目立つニトロプラスのカラーがまたも色濃く表出した一作である。~ その方向性のため、個人によって受け取り方や印象は各々が異なるものになって来るだろうことは避けられない。 #right{「このゲーム」の果てに、あなたが選ぶのは美雪とアオイのどちらなのか。&br;その「究極の二者択一」を、あなたは受け容れられるか否か。&br;そして、その先に待つものは、'''あなたにとっては'''果たして。} ---- **余談 -本作は新作ゲームとしては珍しく、USBメモリスティックで販売された。~ 賛否両論さと初見印象の凄まじさに比例する話題度から購入希望者が徐々に現れたものの、初回版は早期に完売したため、2ヶ月後にDVD-ROMディスクパッケージを通常版として発売した。 --USBメモリスティックで発売された理由は、作中のキーアイテムがスマートフォンであり、「スマホのパッケージのような小さな箱を開けるワクワク感を実現させるため」とのこと。 --しかし、USB版とDVD版は同価格である。最初から安価なDVDで売るか、逆に最後までこだわり通してUSB限定にするべきだったのではないか、という意見もある。~ もう少し間を置いてDVD版を廉価版に位置づければ、価格に対する不満は生じなかったかもしれない。 --ただし、USBとDVDでは部品の単価が''10倍以上''違っているなどUSB側が圧倒的に不利である。内容の短さに対してやや高価格な設定、DVD版の発売時期については営利を目的とする企業活動の一環として致し方ないところもある。~ 少し詳しい内容は下倉バイオ氏自身の[[発売前発言まとめも参照>https://togetter.com/li/479767]]。 -小ネタ的な隠し要素が非常に多い。特定の記念日や久しぶりに起動した場合に聞ける専用メッセージだけでも多数存在する。 --ゲーム中特定条件を満たすことで聞ける隠しメッセージを含めればさらに細かいところにまで仕込まれていることも判明している。本作はコンプに一生懸命になるようなソフトを意図して作られたものではないが。 ---その中には、プレイヤーが本来その場面に到達した段階では知りえない行動をそこでとると出現するものも存在する。~ …が、これはいわゆるトラップ的な役割を兼ねていて、出すと大変なことになるのでやめた方がいい。どの場面・どんな行動・それによって起こる効果の真意はその時に察せられるようになると思うので、こちらも伏せておく。 -深夜11時に公式サイトが変化するギミックがあったが、残念ながら現在ではそれは削除されている模様。しかし表の公式サイトも非常に細かい仕掛けが隠されている。 -2015年12月10日発売のお祭り格闘ゲーム『ニトロプラスブラスターズ -HEROINES INFINITE DUEL-』のパートナーキャラクターとして美雪、アオイが出演している。 -2020年4月20日にソーシャルゲーム『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』にてコラボイベント『君と彼女と彼女の恋。ソシャゲ版』が開催された。 -2020年6月にYouTubeの期間限定で2019年9月のニトロプラス設立20周年記念のライブイベントで人形劇の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(サンダーボルトファンタジー トウリケンユウキ)』と特別ドラマを公開し、共演していた。凜雪鴉(リンセツア)と殤不患(ショウフカン)の主人公は二人で声優は鳥海浩輔氏と諏訪部順一氏と豪華。ネタバレは極力避け、ドラマ内容は健全なネタ路線。登場人物は美雪だけで声優も手塚まき氏ご本人%%(背景で十分ネタバレである)%% //「どう賛否分かれているか」が大事で、他所での評価はここでは扱わない事。意見については、妥当な物ならそのまま上の批評欄に書けばいいだけ。他所でよっぽど特異な事が起きてるならともかく、エントリーしたけど却下されたとかそのくらいなら不要 //作品のKOTYにおける扱いは本サイトでもよく取り上げられる、たかが選外でも総評で論及したからここに乗せてもいい //-本作の賛否両論ぶりを象徴する出来事の一つとして、KOTYe2013にエントリーされていたことが挙げられる。 //--ただし、KOTYeは他部門と大きく違い、ノミネートではなくエントリー制を取っており選評さえ書けばどんな作品でも総評でゲーム内容を触れてもらえる。エントリー自体はあくまで「''クソゲーとしてその作品を語ろうとしたスレ住人がいた''」ことを示すものでしかない。 //---本作はプレイヤーによって他の作品以上に傑作からクソゲーまで評価が大きく割れてしまう作品であり、エントリーされること自体も普通にあり得て「クソゲーというには妥当じゃない」という意見も多かった。 //---話題性を鑑みてか、総評では両論併記の形で多少触れられ「クソゲーならぬ''『くさやゲー』とでも呼ぶべき''か」と括られた。 //--なお発売前に内容を不安視したニトロプラス側が業界人にプレイしてもらったところ、そちらでは概ね大好評となった。 //KOTYeはノミネートなんて概念無いってば。 //↑意見箱で不要とされたためCO。https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/51440/1466262407/889- #co{ -エロゲーに関するユーザーレビューサイト「ErogameScape -エロゲー批評空間-」などでの情勢でも本作の賛否両論ぶりが顕わす。 #region(ゲーム本編を遊んだユーザーのレビューについて記述しています。ネタバレ注意) -好意的な意見としては「(自分は気に入っているが)賛否両論出るのも致し方なし」「高得点は付けられないがこういうのもたまにはアリ」といったものがある。 -一方で、否定的意見はというと。 --「試みはいいが中途半端で肝心の普段の内容がスカスカ」「似たアイデアが他作品で先行していた・(いろいろな意味で)出るのが遅かった」~ という、煮詰め具合や時期が拙かっただけで、その試みの内容自体は評価するもの。 --「エロゲーマーからすればエロゲーのあり方にはすでに折り合いをつけており、ゲームだからこその「(プレイヤー=主人公に)都合のいい世界」を楽しんでいる。なのにシステム面やらなんやらで制約をつけてまでこれまでのエロゲーのあり方を否定し、制作側のメッセージ(=エゴ)を一方的に押し付けるやり方はエロゲーやエロゲーマーを馬鹿にしている。ハッキリ言って''余計なお世話''だ」 --「「エロゲー」としては認められない、これを認めることは謂わば''エロゲー規制推進派を肯定するようなものだ''」~ 等といった、本作での試みを全面否定するもの。 --「これまで(異色作ばかりとはいえ)エロゲーを制作・販売して利益を上げてきたニトロプラスが、エロゲーという表現ジャンルを否定しているとも解釈できるこのような作品をリリースしたことは、商業倫理上看過できることではない」 --「この作品のせいでニトロプラスの過去作ももう素直に楽しめなくなった」「この先ニトロプラスがどんなゲームを出そうがこの作品が尾を引いて冷めた目でしか見られなくなるのは間違いない」~ など、作品を通り越してブランドの作風や姿勢そのものに否定的になってしまった意見まで見られる。 #endregion } //ゲームに対する否定的な意見も多いのにほとんど触れられてないってのも不自然なので、批評空間の低得点のレビューからいくつかピックアップして抜粋してみた。高評価の意見は上で評価点で書かれてるから、そっちは軽く触れる程度にしてある。賛否両論という意味ではもう少しゲーム自体に対する否定意見も拾った方が良いと思ったので。ただ、偏りすぎは否めないので上手いこと組み込んで貰えれば。 //ちょっと冗長になってきちゃったかもですね。
//理由を書いてCOした場所を黙って復元せず、せめて復帰する理由を書きましょう。 また、意見が割れているならスレで相談してください。 *君と彼女と彼女の恋。 【きみとかのじょとかのじょのこい】 |ジャンル名義|Alternative ADV|&amazon(B00DVHTTM4,image);| |対応機種|Windows XP/Vista/7|~| |発売・開発元|ニトロプラス|~| |発売日|2013年6月28日(初回限定版/USBメモリ)&br;2013年8月30日(通常版/DVD-ROM)|~| |定価|7,500円(税別)|~| |レーティング|BGCOLOR(black):''&font(#FF69B4){アダルトゲーム}''|~| |配信|2014年6月27日/6,500円(税別)|~| |判定|BGCOLOR(lightsteelblue):''賛否両論''|~| |~|BGCOLOR(MistyRose):''怪作''|~| |ポイント|ニトロプラスがエロゲーマーに叩きつけた、&br()禁断の問いかけと究極の二者択一&brあらゆる意味で、何もかもが賛否両論&br''「人生に、『IF』なんてない」''|~| |>|>|CENTER:''[[ニトロプラス作品リンク>Nitro+作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- #center{&size(20){''WARNING!!!!!!!''}&br;&size(20){''閲覧の際は、ゲーム本編のネタバレに最大限注意してください!''}} ---- **ストーリー 毎日は、階段のように過ぎていく。 >まるでモブのように無個性な主人公・心一。~ 学園のヒロイン・美雪とは幼馴染みだが、目立ちたくないがために声をかけることもなく、ただのクラスメイトの1人として、平凡な日々を過ごしていた。 >そんなある日、親友の雄太郎に呼び出され向かった屋上で出会ったのは、クラスで浮いている電波少女・アオイ。~ 「ビリビリ、するの?」そんな言葉とともに、突然キスを迫られた心一。~ 偶然居合わせた美雪に助けられ、なんとかその場は切り抜けたが、それ以後アオイに奇妙につきまとわれるようになる。 >友達もなく、人間らしい感情を持たないアオイ。彼女に友達との付き合い方を教えてやりたくて、意を決して美雪に頼み込み、3人で時間を過ごすことに。~ 日が経つにつれ、徐々に人間らしい感情に目覚めていくアオイ。一方美雪も、幼い頃無理矢理押さえ込んでいた心一への想いが蘇り、徐々に主人公との距離を詰めていく。~ せっかく友達同士になれたのに、日に日にギクシャクしていく3人の関係。 >ずっと、一緒にいられると思ってた >でも、3人ではもう、いられない >''主人公が選ぶのは美雪か、それともアオイか……?'' (公式サイト 「ストーリー」より抜粋) ---- **キャラクター #region(クリックで開閉) -須々木 心一(CV:なし) --主人公。この手のゲームの主人公らしく特筆する特徴は無い。 --ただしキャラ名は変更できない。 -曽根 美雪(CV:手塚まき) --ヒロイン。容姿端麗かつ才色兼備で主人公とは幼馴染。演劇部に所属。 --今は疎遠というこれもまたこの手のゲームの幼馴染キャラにありがちな設定。 -向日 アオイ(CV:仙道ミツキ) --もう一人のヒロイン。いわゆる電波・無感情系の不思議ちゃん。 --常に電波の届かないスマートフォンを持ち歩いて「カミサマ」という謎の者と交信しようとしている。 -ハル(CV:桐谷華) --演劇部所属の美雪の後輩。気弱なドジっ子。 -曙雄太郎(CV:ほうでん亭ノドガシラ) --心一の同級生で親友。暑苦しい。弟が一人いる。 -エル(CV:北都南) --アオイが見つけた黒い猫。 -カミサマ(CV:北都南) --アオイがスマートフォンで交信しようとしている謎の相手。 #endregion ---- **概要 //括弧や太字が多くどこを強調したいのか分かりにくかったので全体的に修正。当サイトでは『』はゲームや出版物のタイトルのみに使う傾向にあるます。 -『アザナエル』から2年半ぶりのニトロプラスのアダルトゲーム。略称は平仮名だけを抜いて『ととの。』 --ライターは同社で『スマガ』や『[[STEINS;GATE]]』を担当した下倉バイオ氏。下倉氏曰く本作のコンセプトは >一般的な美少女ADVは、選択肢を選びCGを100%にしたりトゥルーエンドを見るために、~ '''全てのルートをプレイしなければならないといった義務的なものになっているが、'''~ ''本作品ではヒロインを2人に絞りどちらを選ぶかに主眼を置いた'' (要約)~ とのこと。 -近年のニトロプラスは、自社以外の一般向け作品への製作協力を活発化しており、元々のメインフィールドである18禁ゲームが発売されない状況が続いていた。~ そのためファン及びアダルトゲーム愛好家的には嬉しい一作になると思われた…が。~ 同社の18禁ゲームはいわゆる「抜きゲー」よりも活劇ものや暴力性が高い作品となる傾向にあった。このため「純愛」をテーマにした学園モノというどこかありきたりな第一報が知らされた時には困惑する声が多かった。一方同社の「純愛」は[[強烈な前例があった>沙耶の唄]]ため、この時点で何か裏があるのでは?と勘ぐる人もいた。 --やがて、例によって暴力描写のあるCGが公開され、同時に「&bold(){選ばれなかった彼女は…?}」という意味深なあおり文も掲載された。 --これにより今作もただの純愛モノとは一線を画すただならぬ雰囲気を醸し出すようになっていき、発売後誰もが身構えながらプレイしたが、その中身は予想のさらに斜め上を行くものであった。 -本ゲームはかなり独創的なギミックが仕込まれており、''一切ネタバレや「仕様」について知らない状態でプレイした方が望ましい。'' --ただ、本作は「プレイヤー側がADV形式のアダルトゲームを何作かプレイしていること」および「プレイヤーが主人公視点でストーリーに没入してくる」ことを想定している。~ よって&color(purple){初アダルトないしノベルゲーとしては全くオススメできない};。アダルトゲームを何本か遊びきった上で「ストーリーに没入し、主人公視点で楽しめる人」にこそ向いているゲームである。 -上記の通り、ニトロ作品の例に漏れずやはり暴力描写はある。 --ただし本作の場合は、流血描写のある暴力・グロよりも''精神的に刻み込まれる怖さが大きな比率を占める''。 --また、注意事項として本作には一種のマニュアルプロテクトが含まれている。''パッケージを絶対に捨てずにプレイすること''。 --中古品だと最悪詰む危険性があった。((一応現在では、ネット媒体を含めた様々なメディアによる”緩和処置”がなされている。))買うなら新品または未開封品を推奨。 --途中でこのギミックについて気づいてしまったとしてもゲーム側のテキストをしっかり読み込み、ゲーム側の指示にきちんと従っていくこと。そうしなければ正常なプレイが続けられなくなる恐れがあるので要注意。 #region(踏み入った''内容・仕様について、ネタバレを含みます。'') **踏み入った内容・特徴 -前述の通り「純愛」が表向きのテーマだが、もう一つのテーマはずばり「アダルトゲームそのもの」である。 --一見相反するようなこの二つだが、ストーリーが進行するにつれこの二つのテーマが交わっていくことになる。 -1周目は美雪ルート(のGOODエンドかBADエンド)固定となっている。主人公である心一が美雪と永遠の愛を誓ってEND、とこの時点では実にありふれたアダルトゲームである。 --真価はGOODエンド以降の所謂「2周目」からである。アオイルートへの選択肢が解禁されるので、大抵のプレーヤーはアオイの好感度が上がる選択肢をとるだろう。 ---そして「2周目」は、そういった形でADV形式のアダルトゲームを体感し尽くしてきた本数が多い人ほど、衝撃が大きくなるような内容が待ち受けている。 **賛否両論点(兼主なゲーム内容) -ネット上で公開されているチートコードを特定箇所にて入力すると、警告メッセージを経て製品版収録の全CGやミュージックが解放されると同時に、''"崩壊状態"というべき専用ルートに突入して事実上のゲームプレイ不可''になる。~ これが''発売前の体験版ですら行使・閲覧できてしまう''((しかもコードの公開は予告なしで発売日の前日に行われた))。もちろん体験版でチートコードを入力した場合も、後で製品版を買ってこようがストーリーはプレイできなくなる。 --バグでも何でもなくスタッフの意図した仕様である。これは本作の製品版に仕込まれた特殊なギミックの数々に起因しており、ニトロプラス社内でも賛否があったが、幾度もの討議の末に決断されたらしい。 --つまり&u(){アダルトゲームのCGだけにしか興味が無い人は''このゲームを買わず、体験版をDLしてくるだけでいいのだ。''}しかしその体験版にまで仕込まれた大胆な仕様そのものが本作のスタンスを示しており、同時にいわば製品版への伏線にもなっていた。 -本作はシナリオが進むと諸般の事情でシステムの一部(ボイス音量調節設定等)が利用できなくなる。 --''演出''の一環としては斬新と言えば斬新。この手のゲームに欠かせないとある機能が封じられることは不便に感じるかもしれないが、そう思った時点で製作者の術中に嵌っているのかもしれない… -原画は『すーぱーそに子』でおなじみ津路参汰氏が担当。氏独特のどこか淡い絵柄はこれまた稀代のゲームである本作に合っているとの意見が多い。 --が、「あえて一般的な量産型エロゲー風の絵柄の方が本作のテーマを語るうえで適切だったのでは?」との声も。 -とにかく評価は分かれる怪作だが、好評の人にはとことん好評。普通のゲームとは一味どころか二味も違う作品で、他の作品では絶対に味わえないものは味わえる。 --「PC用アダルトゲーム」そのものを逆手にとったギミックとそれを生かした演出が多く、プレイヤーからの驚嘆・感心の声も多い。 #region(&color(crimson){''以下、本作の核心である「仕様」に関するさらに重大なネタバレを含みます。構わない方のみ開いてください。''}) -『2周目』のアオイルートを進めると、何故か美雪はアオイと主人公がくっつくのをあからさまに妨害してくるようになる。~ その中で美雪は「''永遠の愛''」は嘘だったのかと心一に問いただしてくるが、ここで違和感を覚えるだろう。''まだ主人公は『1周目』と違って美雪に告白していない''からである。 --それでも美雪を避け、アオイの好感度が上がるであろう選択肢を選んでいくとアオイルートが進んでいくが、終盤でなんとアオイは主人公以外の男と性行為をするというとんでもない展開になる。 --「純愛ゲーをうたっておいてこんなことするなんて」とどこまでも清らかな恋愛物を期待して買った人から非難されているが、しっかりとした理由づけはされている。~ そして心一は自分自身がアオイを愛する気持ちは本物だとして、アオイがそのような行為をする理由を受け入れる。 ---二人は紆余曲折はあったものの幸せに結ばれ、アオイルートはGOODエンドとなる。~ ~ ~ ~ ~ ~ ……と思いきや突然その場に美雪が現れる。~ そのまま美雪は恨み言を並べながら、&color(crimson){アオイと心一を殺害してしまう}。 ~ #center{もはや舞台には美雪しかいなくなったが、突如として美雪は”舞台”の外にいるある人物を呼ぶのであった。それは――――――} ---- -本作が賛否両論となった最大の理由は、''メタフィクション性および、プレイヤーへの風刺性が極めて強い''ことにある。((ここでいうメタフィクション性とは「ゲームで遊ぶという行為自体がゲームのテーマとなっている」「ゲームを構成する諸々の要素の中に、現実に存在するものが直接的に含まれている」といった意味で解釈して欲しい。)) --メタフィクションを持ち込んだ作品は古今東西にそれこそ400年以上前の『ドン・キホーテ』の時代から、風刺的な芸術となると実に紀元前時代から存在してきていたが、~ 前者はギャグのネタにしたり、ストーリーの重要な局面でプレイヤーを感動させたり…というプラスの活用法が多く、後者も時代を経るに連れてユーモアの側面が強まっていった。 --古くからの演劇、戯曲から近年のマンガやアニメ等まで、登場キャラが「自分がフィクション内の登場人物であること」を自覚していて、キャラが視聴者や読者に向かって直接語りかけたりする展開はそれほど珍しいものではない。しかしそれらのほとんどは単なるギャグ描写であったり、もしくはせいぜい、虚構と現実の境界を曖昧にすることでちょっとした混乱感覚をもたらす演出意図によるものであった。 --対して本作は言わばマイナスの方向にメタ演出を利用しており、上述した場面以降はメタ演出を最大限に活用した展開が繰り広げられることになる。そうして叩きつけられる展開の恐ろしさはプレイヤーに向けたある種のホラーの域にまで入り込んでいる。~ この一環としてアダルトゲーム及びアダルトゲーマー批判がなされるが、''そこでは「明確な答え」や「こうであれという姿勢」は示していない''。 ---好意的に解釈するのであれば、プレイヤーや業界人に考えさせられる内容となっている。悪く言うと、言いたいことだけ言って全てユーザーに投げている。 ---人によっては凄まじい罪悪感を感じる可能性や、今後このゲームがトラウマになって、アダルトゲームをプレイするたびにこのゲームのことを思い出して楽しめなくなる可能性すらある。~ 実際完走したプレイヤーの感想の中でも、クリア後茫然としてしまってしばらくアダルトゲームに手が伸びなくなった、やろうとしたら美雪やアオイの顔が浮かんできたとの報告がある。~ 憤ってすぐさまアンインストールしてこのゲームのことを忘れようとしたり、インストールメディアを破壊してまで別のアダルトゲームに手を出した人もいるが、それを過ちだとは一概に言えないであろう。 -本作のやっていることをかいつまんで例えるなら''「企業として最も大切にするべきであろう自社の商品に加えてお客様さえもこき下ろす」という禁じ手''をやってしまっているのである。 --ゲーム業界外の評論家等が「ゲームは生産性が皆無かつ低俗な趣味でゲーマーは性根が悪い」と罵倒する事はあるし、ゲーマーが自虐的に言うこと自体はありえるとは言える。~ だが、業界のクリエイターが恒常的にそのような発言をするのはまず無いであろう。そのようなことをすれば仕事が来なくなり、多くのコアユーザーがそっぽを向くのは間違いないからだ。 ---しかしその禁じ手を今になって使った事そのものが良くも悪くも本作最大の特徴なのである。このお客様批判をぼやかさずにはっきりと行ったことは必ずしも評価できるとまで言い切れないが、挑戦的な作品として存在感を放っていることは確実である。 --ゲーム中盤以降、美雪とアオイはそれぞれ作中のキャラクター一人という枠には収まらなくなり、一種の「象徴」として扱われるようになっていく。~ このことに対して「関係ない作品を巻き込むな」「これからもキャラクター商売をしていくだろうに、自らを棚に上げルート固定までしてこんな主張はどうか」という批判もあれば、「実に個性的で興味深い内容だった」「ゲームに対する考え方が変わった」と肯定的な意見もあった。 -結果として、こういった特色が毀誉褒貶にも近い激烈な賛否両論を巻き起こす原因となった。 --また、本作発売当時のニトロプラスは上述の通り一般向け作品への製作協力が多くなっており、アダルト作品での商品展開について消極的になっていたので~ 「本作をもってアダルト分野から撤退するからこそこのようなゲーマーへの恨み節をぶちまけたような内容にしたのではないか」と勘繰るユーザーも一定数存在したのも本作の評価が荒れることになった一因ではある((作中に複数のニトロプラスの過去作ネタがあるため、当時はこう捉えられても仕方なかったとは言える))。 ---補足しておくとその後も(2、3年に1作ペースではあるが)18禁ゲーム自体は発売しており、結果的には邪推に過ぎなかったと言える。 -驚愕の展開の果てに待つのは、オルタナティブ(二者択一)ADVにて要求される最後の解答の提示。すなわち、''プレイヤーが''美雪とアオイのどちらを選ぶかという「究極の二者択一」である。 --その選択の結果は、本当に作中で述べられた通りの結末を辿る事になる。両方のエンドを見る手段は作中で言及されるが、その行為は「彼女''たち''への裏切りないし冒涜」となる構成・仕様に仕立て上げられている。 --ただこの二択について片方の描写不足から「状況的に、どうしてもある方を選びたくなる」との指摘がある。~ もっともクリア済みレビューを見る限り最後に選ばれたのが("ある方"がやや優勢気味ではあるが)どちらかに偏重しているわけはないので、ある程度意図した・構成的にやむを得ない部分はある。 -最後の選択を終えスタッフロールの後、タイトル画面に戻るとある変化が起こっている。~ さらにそこで回想モードを開くと、発売前の宣伝広告の「&bold(){選ばれなかった方は…?}」の真意がついに判明することとなる。これらを見てしばし机の前で固まってしまったという感想も多い。 --「''一つの選択肢しか選べず、別の人生を送れない''」ということは、否ゲーム的で極めて現実的な話である。~ 下手にハーレムルートや3人の良い関係が続くENDを用意することなどせず、二つのどちらかしか選べないという、この現実的な「純愛」のひとつの極致を、徹頭徹尾まで表現しきったことには相応の評価が与えられて然るべきだろう。 #endregion #endregion ---- **評価点 -楽曲の評価は安定している --適切な状況で使われており、無音になる箇所では否が応でも緊張感が高まる。 -距離が近づくにつれて大きくなる足音等の生々しい効果音が臨場感・緊張感に貢献している。 ---- **問題点 //リージョンを開けていない人に配慮した内容に修正 -初期版にバグが多い --本作は中盤以降の異常事態が肝だが、プレイヤーは動揺するよりも先に本来のバグの発生を疑ってしまい、演出意図がうまく伝わらなかったという事態が多発した。 --とりわけ後半にフリーズバグが発生すると、本作の独自仕様も相まって泣ける事態に…。 --公式で修正パッチが公開されているのでプレイする人は必ずDLしておくように。それでも固まるときは固まるが、安定性自体は大幅に向上している。 //パッチ適用後にプレイしましたが、一切フリーズしなかったです。一応メモ。 -平均プレイ時間は11~13時間程度とされ、価格に対してやや短いと言える。 --確かに中盤からは怒涛の展開が続く。しかし、そこに至るまでの肝心の前半部が何の変哲もなく薄味な話であるというのは致命的だった。このためにキャラの描写が薄くなり魅力を感じ取れずに終わってしまったという声が少なからずある。 --少々ひねくれた言い方をすると、(価格の分遊べるだけのボリュームがあるという意味ではないが)''場合によってはプレイ時間は無限大にまで上がりうる''作品ではある。 ---- **総評 一見すると何の変哲もない正統派であり、その観点だけで見ると本作の''導入部が淡白すぎる印象は否めない''。~ もちろんそれ自体は文字通りの仮の姿にすぎず、その先に踏み入った途端、あまりにも直球なメッセージがニトロプラスらしい攻撃的な演出を以って突きつけられてくる。~ それこそが本作最大の特徴であり、そしてこの二面性が”アダルトゲームとして”の評価を賛否両論極まりないものにしている最大の要因であり、~ 「初心者お断り」「''アダルトゲーム経験者でなければ本作の真髄を理解することは不可能''」と言われる最大の理由となっている。 その演出手法から奇作・怪作を体験したい人をも引きずり込む力を持っているが、~ 内容そのものは''あらゆるアダルトゲームプレイヤーに大きな一石を投じる、まさに純粋すぎるほどの問題提起作''なのだ。 ニトロプラスなりの「純愛」を類稀なほどに徹底した2度目の作品であるとはいえ、尖ったゲームの目立つニトロプラスのカラーがまたも色濃く表出した一作である。~ その方向性のため、個人によって受け取り方や印象は各々が異なるものになって来るだろうことは避けられない。 #right{「このゲーム」の果てに、あなたが選ぶのは美雪とアオイのどちらなのか。&br;その「究極の二者択一」を、あなたは受け容れられるか否か。&br;そして、その先に待つものは、'''あなたにとっては'''果たして。} ---- **余談 -本作は新作ゲームとしては珍しく、USBメモリスティックで販売された。~ 賛否両論さと初見印象の凄まじさに比例する話題度から購入希望者が徐々に現れたものの、初回版は早期に完売したため、2ヶ月後にDVD-ROMディスクパッケージを通常版として発売した。 --USBメモリスティックで発売された理由は、作中のキーアイテムがスマートフォンであり、「スマホのパッケージのような小さな箱を開けるワクワク感を実現させるため」とのこと。 --しかし、USB版とDVD版は同価格である。最初から安価なDVDで売るか、逆に最後までこだわり通してUSB限定にするべきだったのではないか、という意見もある。~ もう少し間を置いてDVD版を廉価版に位置づければ、価格に対する不満は生じなかったかもしれない。 --ただし、USBとDVDでは部品の単価が''10倍以上''違っているなどUSB側が圧倒的に不利である。内容の短さに対してやや高価格な設定、DVD版の発売時期については営利を目的とする企業活動の一環として致し方ないところもある。~ 少し詳しい内容は下倉バイオ氏自身の[[発売前発言まとめも参照>https://togetter.com/li/479767]]。 -小ネタ的な隠し要素が非常に多い。特定の記念日や久しぶりに起動した場合に聞ける専用メッセージだけでも多数存在する。 --ゲーム中特定条件を満たすことで聞ける隠しメッセージを含めればさらに細かいところにまで仕込まれていることも判明している。本作はコンプに一生懸命になるようなソフトを意図して作られたものではないが。 ---その中には、プレイヤーが本来その場面に到達した段階では知りえない行動をそこでとると出現するものも存在する。~ …が、これはいわゆるトラップ的な役割を兼ねていて、出すと大変なことになるのでやめた方がいい。どの場面・どんな行動・それによって起こる効果の真意はその時に察せられるようになると思うので、こちらも伏せておく。 -深夜11時に公式サイトが変化するギミックがあったが、残念ながら現在ではそれは削除されている模様。しかし表の公式サイトも非常に細かい仕掛けが隠されている。 -2015年12月10日発売のお祭り格闘ゲーム『ニトロプラスブラスターズ -HEROINES INFINITE DUEL-』のパートナーキャラクターとして美雪、アオイが出演している。 -2020年4月20日にソーシャルゲーム『凍京NECRO<トウキョウ・ネクロ> SUICIDE MISSION』にてコラボイベント『君と彼女と彼女の恋。ソシャゲ版』が開催された。 -2020年6月にYouTubeの期間限定で2019年9月のニトロプラス設立20周年記念のライブイベントで人形劇の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀(サンダーボルトファンタジー トウリケンユウキ)』と特別ドラマを公開し、共演していた。凜雪鴉(リンセツア)と殤不患(ショウフカン)の主人公は二人で声優は鳥海浩輔氏と諏訪部順一氏と豪華。ネタバレは極力避け、ドラマ内容は健全なネタ路線。登場人物は美雪だけで声優も手塚まき氏ご本人%%(背景で十分ネタバレである)%% //「どう賛否分かれているか」が大事で、他所での評価はここでは扱わない事。意見については、妥当な物ならそのまま上の批評欄に書けばいいだけ。他所でよっぽど特異な事が起きてるならともかく、エントリーしたけど却下されたとかそのくらいなら不要 //作品のKOTYにおける扱いは本サイトでもよく取り上げられる、たかが選外でも総評で論及したからここに乗せてもいい //-本作の賛否両論ぶりを象徴する出来事の一つとして、KOTYe2013にエントリーされていたことが挙げられる。 //--ただし、KOTYeは他部門と大きく違い、ノミネートではなくエントリー制を取っており選評さえ書けばどんな作品でも総評でゲーム内容を触れてもらえる。エントリー自体はあくまで「''クソゲーとしてその作品を語ろうとしたスレ住人がいた''」ことを示すものでしかない。 //---本作はプレイヤーによって他の作品以上に傑作からクソゲーまで評価が大きく割れてしまう作品であり、エントリーされること自体も普通にあり得て「クソゲーというには妥当じゃない」という意見も多かった。 //---話題性を鑑みてか、総評では両論併記の形で多少触れられ「クソゲーならぬ''『くさやゲー』とでも呼ぶべき''か」と括られた。 //--なお発売前に内容を不安視したニトロプラス側が業界人にプレイしてもらったところ、そちらでは概ね大好評となった。 //KOTYeはノミネートなんて概念無いってば。 //↑意見箱で不要とされたためCO。https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/51440/1466262407/889- #co{ -エロゲーに関するユーザーレビューサイト「ErogameScape -エロゲー批評空間-」などでの情勢でも本作の賛否両論ぶりが顕わす。 #region(ゲーム本編を遊んだユーザーのレビューについて記述しています。ネタバレ注意) -好意的な意見としては「(自分は気に入っているが)賛否両論出るのも致し方なし」「高得点は付けられないがこういうのもたまにはアリ」といったものがある。 -一方で、否定的意見はというと。 --「試みはいいが中途半端で肝心の普段の内容がスカスカ」「似たアイデアが他作品で先行していた・(いろいろな意味で)出るのが遅かった」~ という、煮詰め具合や時期が拙かっただけで、その試みの内容自体は評価するもの。 --「エロゲーマーからすればエロゲーのあり方にはすでに折り合いをつけており、ゲームだからこその「(プレイヤー=主人公に)都合のいい世界」を楽しんでいる。なのにシステム面やらなんやらで制約をつけてまでこれまでのエロゲーのあり方を否定し、制作側のメッセージ(=エゴ)を一方的に押し付けるやり方はエロゲーやエロゲーマーを馬鹿にしている。ハッキリ言って''余計なお世話''だ」 --「「エロゲー」としては認められない、これを認めることは謂わば''エロゲー規制推進派を肯定するようなものだ''」~ 等といった、本作での試みを全面否定するもの。 --「これまで(異色作ばかりとはいえ)エロゲーを制作・販売して利益を上げてきたニトロプラスが、エロゲーという表現ジャンルを否定しているとも解釈できるこのような作品をリリースしたことは、商業倫理上看過できることではない」 --「この作品のせいでニトロプラスの過去作ももう素直に楽しめなくなった」「この先ニトロプラスがどんなゲームを出そうがこの作品が尾を引いて冷めた目でしか見られなくなるのは間違いない」~ など、作品を通り越してブランドの作風や姿勢そのものに否定的になってしまった意見まで見られる。 #endregion } //ゲームに対する否定的な意見も多いのにほとんど触れられてないってのも不自然なので、批評空間の低得点のレビューからいくつかピックアップして抜粋してみた。高評価の意見は上で評価点で書かれてるから、そっちは軽く触れる程度にしてある。賛否両論という意味ではもう少しゲーム自体に対する否定意見も拾った方が良いと思ったので。ただ、偏りすぎは否めないので上手いこと組み込んで貰えれば。 //ちょっと冗長になってきちゃったかもですね。

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