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*rain 【れいん】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B00J7JRZLM)| |対応機種|プレイステーション3|~| |メディア|ダウンロードソフト/BD-ROM 1枚|~| |発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~| |開発元|アクワイア&br;SCEジャパンスタジオ&br;PlayStation C.A.M.P!|~| |発売日|ダウンロード版:2013年10月3日&br;パッケージ版:2014年6月5日|~| |定価|ダウンロード版:1,500円&br;パッケージ版:2,200円(全て税別)|~| |プレイ人数|1人|~| |レーティング|CERO:A(全年齢対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|「雨」がおりなす独特の美しい世界観&br;他ゲームにないシステムと高い芸術性|~| |>|>|CENTER:''[[SIEワールドワイド・スタジオ作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **あらすじ  熱を出してサーカスを見に行けなかった少年が雨が降る窓外の景色を退屈に眺めていると、そこには雨に打たれて姿を浮かび上がらせた透明な少女とそれを追う透明な怪物があった。~  少女を案じて彼女と怪物が入り込んだ扉をくぐった先には冷たい雨の降る夜の街が広がっていた。少年もまた自らの姿を失っていることに気づく。少年は彼女を助けることができるのか、そしてこの夜の街から出られるのか… ---- **概要 開発はアクワイアとSCE JSの共同によるものであるが、SCE内製の『[[ICO]]』『[[ワンダと巨像]]』とゲーム性がやや似ている。 雨の降る誰もいない街から脱出するゲーム、操作するキャラが透明な体という独自のゲーム性と、雨と街灯が作り出す不気味ながらも美しい世界が特徴。 2013年発売のDLソフト中最もDLされ、後にPlayStation Storeの歴代予約ソフト第1位に躍り出た。DL専売ソフトだったが、後にパッケージ版も売り出された。8つのChapterから構成されている。 ---- **システム・世界観 -夜の街 --さまよう少女を少年が追ううちに迷い込んでしまった異世界。 --建物は少年が暮らす欧州風の街並みそっくりで、雨が降り続けている。 --家明かりや街灯はついているが、登場するのは少年と少女と謎の怪物のみ。 -透明な体 --雨が降る街で動く存在はすべて透明な体をしている。 --雨に当たっている間は、少年少女と街に現れる怪物ともに姿(輪郭)が見える。 --濁った水たまりの上を歩くと体に泥がつき、雨に当たっていなくても姿が浮かび上がってしまう。きれいな水溜りを歩いたり体を流水で洗うなどして泥を落とす必要がある。 -怪物 --主人公を見つけると襲ってくる。追いつかれて攻撃されると即死するが、主人公たちは基本的に反撃手段がないため、タイミングよく雨宿りをして自分たちの姿を怪物の前に表さない様にしたり、雨の中を行く事が避けられない時は工夫して逃げる必要がある。 --襲ってこず、むしろ雨避けになるキリンのような怪物や、他の怪物も襲う小さなキノコのような怪物もいる。 --指揮者の怪物は全編にわたって主人公たちを執拗に追いかける。 -少女 --透明であり怪物に追われていたところを窓から見かけた少年が助けに行くことになる。 --中盤で少年と合流し、彼女と協力して怪物のはびこる街からの脱出を目指す。 --怪物におびえながらも果敢に行動し、行き詰まったときにヒントを指し示してくれる。 --少女は怪物に追われるよりも前に、少年と面識があったことを匂わせる描写が存在する。 -攻略の流れ --やること自体は一貫して敵をかいくぐりながら、夜の街を脱出するという単純なもの。 ---夜の街は寄り道できるポイントはいくつかあるが、基本的には入り組んだ一本道構造。 --□ボタンでダッシュ、×ボタンでジャンプ、○ボタンで調査 --主人公が直接怪物に攻撃する手段はなく、捕まった時点で即死する。このように死に覚えゲーとしての要素が強くリスタート地点は多め。なおリスタート地点はセーブデータには反映されない。 --Chapter終了時、またChapterの節目にオートセーブが入り途中からのリロードが可能。 --しばらく行き詰ると、SELECTボタンからヒントを見ることが出来る。 --2周目からChapterを選択してプレイが出来るようになる。各Chapterをくまなく探し「記憶」と呼ばれる白く光る球体を集めることになる。 ---「記憶」を手に入れると、詩的な文章で本作のシナリオを補完解説してもらえる。 ---- **評価点 -演出 --プロローグ、エピローグの絵の具によるアニメーションがきれい。 --序盤の少年は心細さに涙ぐむしぐさをとるなど、挙動にも力を入れている。 --舞台となる欧州風味のさびれた街の趣きあるデザインが良好。また壁の落書きや舞うチラシなど現実感もあふれている。 --シナリオで頻繁に動かすことになる大きな物体以外にも、チラシ・机のような小さな設置物は少年たちがぶつかったりすると動く。 --雨や川の流れ、水溜りを歩く足跡を表現したグラフィックや音がリアル。時折入る菅野祐悟氏によるアコースティック主体のBGMがゲームのその場その場の状況に噛みあっており雰囲気が非常に良い。テーマ曲にドビュッシーの『月の光』が用いられている。 -雰囲気に徹したシナリオ --体が透明であるという設定で、見知らぬ世界に取り残された少年少女がなかなか出会えないというもどかしさを上手に表現している。 --街の壁に字幕によるナレーションが現れ、お洒落にストーリーを説明してくれる。 -独特のシステム --今までのゲームにはないシステムでスニーキングアクションを確立したと言える。 ---怪物の目を盗んで、雨の当たらない玄関先や橋梁の下といった安全地帯へ移動することが基本になる。 ---ジャンプは段差や別の足場へ飛び移るだけでなく、雨の当たらない水溜りで行えば、隠れたまま敵をおびき寄せることが出来る。 --途中から同伴する少女との協力アクションもいくつか存在。肩車で高い所を登ったりお互いの姿を隠したりできる。 -攻略への配慮 --マップは適度に頭を使わないと攻略できないように練られており、仕掛けもワンパターンではない。 --雨に当たっていない間は、少年と少女の位置がプレイヤーに確認できるように足跡や砂埃が現れる。また、これをもとに敵に位置を特定されることはない。 --敵に捕まったり川に落ちたりすると即死するという一種の死んで覚えるゲームだが、リスタート地点が多く設置されロードもきわめて短くテンポが良い。 --途中から行動を共にすることとなる女の子のAIがしっかり作り込まれており、おかしな行動をとって自滅するというこの手のゲームではありがちな問題がほとんどない。 ---ただし彼女にも意思があり、特にChapter 6ではプレイヤーの予測のつかない行動をとられて、こちらが死ぬ原因となることもある。 --クリア後の「記憶」は分かりにくい場所に隠されているものもあり、なかなか探し甲斐がある。 --マップが広いにもかかわらず、Chapter中のロード時間は皆無。 ---- **賛否両論点 -カメラワーク --カメラワークはキャラがいる位置に応じて変化し、こちらが自由に切り替えることはできない。 --カメラの映す範囲は悪くなく、3D酔いの防止にはつながっているが、先に進む道が分からなくなる事がある。 -シナリオの整合性 --本作は雰囲気を重視しておりシナリオもおとぎ話のような存在なため、整合性を過度に期待してはいけないのだが、シナリオを盛り上げる為に不自然に佳境を盛り込んだり、設定が定まっていない点が見受けられる。 #region(close,ネタバレ有り) --主人公たちを執拗に追い回してくる指揮者の怪物は、高い段差を飛び越えたり障害物を破壊できるのだが、このできることとできない事の境目が不明瞭。 ---プレイヤーの操作時には、高めの段差や、鉄の柵を乗り越えたり破壊しない性質があるにもかかわらず、イベントだと高い段差をよじ登ってきたり、どこからともなくロングジャンプして登場したりというシーンが終盤になるとやたらと多い。 --一方同行者の少女に関しても、操作時に高い所から飛び降りられないため補助するシーンがある。しかし、別のイベントシーンではそれよりも高い所から普通に飛び降りる事がある。 --主人公たちが迷い込んだ世界の正体は結局分からずじまいな一方で、やりこみ要素や壁の字幕ナレーションでは、その核心に迫るような記述がやや強引にされている。 --やりこみ要素で、「街で雨が降る理由」、「指揮者の怪物」に言及している記述がいくつか出ているのだが、以下の描写とやや食い違う。 ---少女が失神したときだけ雨がやんだ事~ 後半で指揮者の怪物以外の敵が檻に閉じ込められていたこと~ 指揮者の怪物を異世界である夜の街の外の世界(≒少年少女がもとにいた世界)へ「追い出す」という理屈 #endregion ---- **問題点 -自由度の低さとボリュームの制限 --全チャプターは4時間ほどで一通りクリア可能。2周目以降は隠しアイテム以外の変化がないので死に覚えゲーなことも相まってやる気は出にくい。 --攻撃=即死のバランス ---ゴリ押しできる場面が全くと言っていいほどない。動きまわって敵を翻弄する魅せプレイや敵の攻撃を避けて強引に突破するタイムアタックの余地が無いのは残念。 ---敵と遭遇中は安全地帯が少なく、立ち止まって背景を見渡す余裕があまり無いので、雰囲気を味わえるのは敵がいない移動パートだけになりがち。 --「少女編」はなく、中盤で合流した後のシーンを2人で協力プレイすることも不可能。 --本作のマップ自体は入り組んでおり単純ではないものの、シナリオやプレイヤーが通る道は完全なる一本道。プレイヤーの行動で後の展開が変わることは特にない。 ---「迷子が体験できる」の触れ込みに違わず、1人見知らぬ世界に取り残された心細さは感じられるのだが、それはせいぜい序盤の話。それ以降は怪物から逃げるため、もしくは少女を助ける為に「しなくてはならないこと」がほとんどで自由度はあまり高くない。迷ったら死に直結する切迫した事態も多い。このようなマップやシナリオの構成から「物理的な迷子」はあまり体感できない。 ---評価点で述べた「少女となかなか出会えない」という展開が前半のほとんどを占めるので、人によっては歯がゆく感じる。終盤は特に理由や必要性も不明なまま、指揮者の怪物がそれまでの身体能力を格段に引き上げて登場し、2人を引き離そうとする展開が多い。 --Chapter7~8は頭を使うというより、するべきことが明確で急かされる内容。 --単純に怪物も誰もいない深夜の街を、あてもなくさまようモードがあっても良かったとの声もある。 --定価が2000円余りとかなり安いので仕方ないことではあるが。 ---- **総評  ゲームのボリュームと自由度は少ないので多少人を選ぶ内容だが、雨を活かした独自のゲーム性と美しいサウンドやグラフィックによる高い芸術性を誇った作品と言える。~  PS3で描き出される不気味ながらも美しい世界で散策すれば、誰もが小さいころに体験したであろう恐怖、そして夜の世界の魅力に引き込んでくれるだろう。
*rain 【れいん】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|&amazon(B00J7JRZLM)| |対応機種|プレイステーション3|~| |メディア|ダウンロードソフト/BD-ROM 1枚|~| |発売元|ソニー・コンピュータエンタテインメント|~| |開発元|アクワイア&br;SCEジャパンスタジオ&br;PlayStation C.A.M.P!|~| |発売日|ダウンロード版:2013年10月3日&br;パッケージ版:2014年6月5日|~| |定価|ダウンロード版:1,500円&br;パッケージ版:2,200円(全て税別)|~| |プレイ人数|1人|~| |レーティング|CERO:A(全年齢対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|「雨」がおりなす独特の美しい世界観&br;他ゲームにないシステムと高い芸術性|~| |>|>|CENTER:''[[SIEワールドワイド・スタジオ作品]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **あらすじ  熱を出してサーカスを見に行けなかった少年が雨が降る窓外の景色を退屈に眺めていると、そこには雨に打たれて姿を浮かび上がらせた透明な少女とそれを追う透明な怪物があった。~  少女を案じて彼女と怪物が入り込んだ扉をくぐった先には冷たい雨の降る夜の街が広がっていた。少年もまた自らの姿を失っていることに気づく。少年は彼女を助けることができるのか、そしてこの夜の街から出られるのか… ---- **概要 開発はアクワイアとSCE JSの共同によるものであるが、SCE内製の『[[ICO]]』『[[ワンダと巨像]]』とゲーム性がやや似ている。 雨の降る誰もいない街から脱出するゲーム、操作するキャラが透明な体という独自のゲーム性と、雨と街灯が作り出す不気味ながらも美しい世界が特徴。 2013年発売のDLソフト中最もDLされ、後にPlayStation Storeの歴代予約ソフト第1位に躍り出た。~ DL専売ソフトだったが、後にパッケージ版も売り出された。8つのChapterから構成されている。 ---- **システム・世界観 -夜の街 --さまよう少女を少年が追ううちに迷い込んでしまった異世界。 --建物は少年が暮らす欧州風の街並みそっくりで、雨が降り続けている。 --家明かりや街灯はついているが、登場するのは少年と少女と謎の怪物のみ。 -透明な体 --雨が降る街で動く存在はすべて透明な体をしている。 --雨に当たっている間は、少年少女と街に現れる怪物ともに姿(輪郭)が見える。 --濁った水たまりの上を歩くと体に泥がつき、雨に当たっていなくても姿が浮かび上がってしまう。きれいな水溜りを歩いたり体を流水で洗うなどして泥を落とす必要がある。 -怪物 --主人公を見つけると襲ってくる。追いつかれて攻撃されると即死するが、主人公たちは基本的に反撃手段がないため、タイミングよく雨宿りをして自分たちの姿を怪物の前に表さない様にしたり、雨の中を行く事が避けられない時は工夫して逃げる必要がある。 --襲ってこず、むしろ雨避けになるキリンのような怪物や、他の怪物も襲う小さなキノコのような怪物もいる。 --指揮者の怪物は全編にわたって主人公たちを執拗に追いかける。 -少女 --透明であり怪物に追われていたところを窓から見かけた少年が助けに行くことになる。 --中盤で少年と合流し、彼女と協力して怪物のはびこる街からの脱出を目指す。 --怪物におびえながらも果敢に行動し、行き詰まったときにヒントを指し示してくれる。 --少女は怪物に追われるよりも前に、少年と面識があったことを匂わせる描写が存在する。 -攻略の流れ --やること自体は一貫して敵をかいくぐりながら、夜の街を脱出するという単純なもの。 ---夜の街は寄り道できるポイントはいくつかあるが、基本的には入り組んだ一本道構造。 --□ボタンでダッシュ、×ボタンでジャンプ、○ボタンで調査 --主人公が直接怪物に攻撃する手段はなく、捕まった時点で即死する。このように死に覚えゲーとしての要素が強くリスタート地点は多め。なおリスタート地点はセーブデータには反映されない。 --Chapter終了時、またChapterの節目にオートセーブが入り途中からのリロードが可能。 --しばらく行き詰ると、SELECTボタンからヒントを見ることが出来る。 --2周目からChapterを選択してプレイが出来るようになる。各Chapterをくまなく探し「記憶」と呼ばれる白く光る球体を集めることになる。 ---「記憶」を手に入れると、詩的な文章で本作のシナリオを補完解説してもらえる。 ---- **評価点 -演出 --プロローグ、エピローグの絵の具によるアニメーションがきれい。 --序盤の少年は心細さに涙ぐむしぐさをとるなど、挙動にも力を入れている。 --舞台となる欧州風味のさびれた街の趣きあるデザインが良好。また壁の落書きや舞うチラシなど現実感もあふれている。 --シナリオで頻繁に動かすことになる大きな物体以外にも、チラシ・机のような小さな設置物は少年たちがぶつかったりすると動く。 --雨や川の流れ、水溜りを歩く足跡を表現したグラフィックや音がリアル。時折入る菅野祐悟氏によるアコースティック主体のBGMがゲームのその場その場の状況に噛みあっており雰囲気が非常に良い。テーマ曲にドビュッシーの『月の光』が用いられている。 -雰囲気に徹したシナリオ --体が透明であるという設定で、見知らぬ世界に取り残された少年少女がなかなか出会えないというもどかしさを上手に表現している。 --街の壁に字幕によるナレーションが現れ、お洒落にストーリーを説明してくれる。 -独特のシステム --今までのゲームにはないシステムでスニーキングアクションを確立したと言える。 ---怪物の目を盗んで、雨の当たらない玄関先や橋梁の下といった安全地帯へ移動することが基本になる。 ---ジャンプは段差や別の足場へ飛び移るだけでなく、雨の当たらない水溜りで行えば、隠れたまま敵をおびき寄せることが出来る。 --途中から同伴する少女との協力アクションもいくつか存在。肩車で高い所を登ったりお互いの姿を隠したりできる。 -攻略への配慮 --マップは適度に頭を使わないと攻略できないように練られており、仕掛けもワンパターンではない。 --雨に当たっていない間は、少年と少女の位置がプレイヤーに確認できるように足跡や砂埃が現れる。また、これをもとに敵に位置を特定されることはない。 --敵に捕まったり川に落ちたりすると即死するという一種の死んで覚えるゲームだが、リスタート地点が多く設置されロードもきわめて短くテンポが良い。 --途中から行動を共にすることとなる女の子のAIがしっかり作り込まれており、おかしな行動をとって自滅するというこの手のゲームではありがちな問題がほとんどない。 ---ただし彼女にも意思があり、特にChapter 6ではプレイヤーの予測のつかない行動をとられて、こちらが死ぬ原因となることもある。 --クリア後の「記憶」は分かりにくい場所に隠されているものもあり、なかなか探し甲斐がある。 --マップが広いにもかかわらず、Chapter中のロード時間は皆無。 ---- **賛否両論点 -カメラワーク --カメラワークはキャラがいる位置に応じて変化し、こちらが自由に切り替えることはできない。 --カメラの映す範囲は悪くなく、3D酔いの防止にはつながっているが、先に進む道が分からなくなる事がある。 -シナリオの整合性 --本作は雰囲気を重視しておりシナリオもおとぎ話のような存在なため、整合性を過度に期待してはいけないのだが、シナリオを盛り上げる為に不自然に佳境を盛り込んだり、設定が定まっていない点が見受けられる。 #region(close,ネタバレ有り) --主人公たちを執拗に追い回してくる指揮者の怪物は、高い段差を飛び越えたり障害物を破壊できるのだが、このできることとできない事の境目が不明瞭。 ---プレイヤーの操作時には、高めの段差や、鉄の柵を乗り越えたり破壊しない性質があるにもかかわらず、イベントだと高い段差をよじ登ってきたり、どこからともなくロングジャンプして登場したりというシーンが終盤になるとやたらと多い。 --一方同行者の少女に関しても、操作時に高い所から飛び降りられないため補助するシーンがある。しかし、別のイベントシーンではそれよりも高い所から普通に飛び降りる事がある。 --主人公たちが迷い込んだ世界の正体は結局分からずじまいな一方で、やりこみ要素や壁の字幕ナレーションでは、その核心に迫るような記述がやや強引にされている。 --やりこみ要素で、「街で雨が降る理由」「指揮者の怪物」に言及している記述がいくつか出ているのだが、以下の描写とやや食い違う。 ---少女が失神したときだけ雨がやんだ事~ 後半で指揮者の怪物以外の敵が檻に閉じ込められていたこと~ 指揮者の怪物を異世界である夜の街の外の世界(≒少年少女がもとにいた世界)へ「追い出す」という理屈 #endregion ---- **問題点 -自由度の低さとボリュームの制限 --全チャプターは4時間ほどで一通りクリア可能。2周目以降は隠しアイテム以外の変化がないので死に覚えゲーなことも相まってやる気は出にくい。 --攻撃=即死のバランス ---ゴリ押しできる場面が全くと言っていいほどない。動きまわって敵を翻弄する魅せプレイや敵の攻撃を避けて強引に突破するタイムアタックの余地が無いのは残念。 ---敵と遭遇中は安全地帯が少なく、立ち止まって背景を見渡す余裕があまり無いので、雰囲気を味わえるのは敵がいない移動パートだけになりがち。 --「少女編」はなく、中盤で合流した後のシーンを2人で協力プレイすることも不可能。 --本作のマップ自体は入り組んでおり単純ではないものの、シナリオやプレイヤーが通る道は完全なる一本道。プレイヤーの行動で後の展開が変わることは特にない。 ---「迷子が体験できる」の触れ込みに違わず、1人見知らぬ世界に取り残された心細さは感じられるのだが、それはせいぜい序盤の話。それ以降は怪物から逃げるため、もしくは少女を助ける為に「しなくてはならないこと」がほとんどで自由度はあまり高くない。迷ったら死に直結する切迫した事態も多い。このようなマップやシナリオの構成から「物理的な迷子」はあまり体感できない。 ---評価点で述べた「少女となかなか出会えない」という展開が前半のほとんどを占めるので、人によっては歯がゆく感じる。終盤は特に理由や必要性も不明なまま、指揮者の怪物がそれまでの身体能力を格段に引き上げて登場し、2人を引き離そうとする展開が多い。 --Chapter7~8は頭を使うというより、するべきことが明確で急かされる内容。 --単純に怪物も誰もいない深夜の街を、あてもなくさまようモードがあっても良かったとの声もある。 --定価が2000円余りとかなり安いので仕方ないことではあるが。 ---- **総評 ゲームのボリュームと自由度は少ないので多少人を選ぶ内容だが、雨を活かした独自のゲーム性と美しいサウンドやグラフィックによる高い芸術性を誇った作品と言える。~ PS3で描き出される不気味ながらも美しい世界で散策すれば、誰もが小さいころに体験したであろう恐怖、そして夜の世界の魅力に引き込んでくれるだろう。 ---- **余談 -本作に関わったクリエイターは現在、ピクセルアートと3Dを融合させたビジュアル表現を特徴とした3Dアドベンチャーゲーム『Tokyo Stories』を開発している。

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