アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝

【あんちゃーてっど かいぞくおうと さいごのひほう】

ジャンル アクションアドベンチャー
対応機種 プレイステーション4
発売元 Sony Interactive Entertainment
開発元 Naughty Dog
発売日 2016年5月10日
定価 8,690円
廉価版 PlayStation Hits
2018年7月26日/2,189円
判定 良作
アンチャーテッドシリーズ
SIEワールドワイド・スタジオ作品



「Playする映画」ここに極まる



プロローグ

3度(外伝を含めれば4度)に渡り世界中の秘宝を求めた冒険野郎「ネイサン・ドレイク」(通称ネイト)
彼も、年月を重ね成熟し、前作『砂漠の中のアトランティス』の3年後、ついに冒険家引退を決意した。
今はエレナ・フィッシャーと結婚し、心の何処かにしこりを残しながらも慎ましく、尊い幸せを噛み締めていた。

しかしそんな日々は、死んだと思われていた実の兄「サミュエル・ドレイク」(通称サム)が突如現れたことで終わりを告げる。
とある理由から命を狙われていたサムは、どうしてもネイトと共に財宝を探し当てなければならなかった。
目標は海賊王ヘンリー・エイブリーの「海賊史上最大のお宝」である。それは兄弟の積年の悲願でもあった。

ネイトは最後の冒険に旅立つ。過去の自分と、エレナとの未来にケリをつけるために…。


概要

世界的ヒットタイトルとなったNaughty Dogの『アンチャーテッド』シリーズ本編の第4作にして最終作。海外名は『Uncharted 4: A Thief’s End』となっている。

前作から5年の時を経てプラットホームをPS4に移し、また間に『The Last of Us』を経て、シリーズとしてのみならず、Naughty Dogが追求し続けてきた体験できる映画表現の(2016年時点)総決算的タイトル。正にキャッチコピーに偽りなしの大作である。


特徴・評価点

8世代機(2016年当時)最高峰のグラフィック

  • 常にその時点における業界最高峰の映像表現を追求してきたシリーズだが、今作もそれは変わらない。マダガスカル、スコットランド、インド洋諸島を中心に、世界中を駆け巡る。
  • 荘厳な遺跡、秘境の奥に隠された財宝、そして息をのむほどのスペクタクルアクション。
  • シリーズ十八番の風景描写やスリルもさることながら、今作は特に物体の細部や人物の表情描写にこだわり抜いている。
    • 沼地を走れば跳ねた泥がハンドガンに付着し、斜面の砂利を撃てば物理演算で散らばり落ちる。キャラ表情の機微も自然かつ微細に描いており、不気味の谷を感じさせることは殆どない。
    • 例として作中後半、我を忘れて冒険に夢中になるネイトを、静かに見つめるエレナをアップで捉えるシーンがある。この時エレナは一言も発さないのだが、表情を見ればプレイヤーは彼女の抱えた言葉にならない複雑な心情をナチュラルに読み取ることができる。

戦略性が広がった戦闘

  • これまで同様のTPSに加え、今回は様々な新要素が導入されている。ロープアクションによって立体的な素早い移動が可能になり、視認した敵に任意でマーカーを付けることもできるようになった。
  • ステルスアクションも改善・強化されており、敵の警戒・発覚状態を表示するインジケーターも導入。
    • またこれまでは一度発覚されれば どちらかがやられるまで戦闘フェイズを終えられなかったが、今作は上手く身を隠せば再び警戒フェイズ→未発見フェイズに戻れる。
    • これにより裏からこっそり忍び寄って厄介な敵を先に始末したり、ロープスイングで敵の頭上から急襲したり、といった幅の広い戦闘が楽しめる。
  • こう書くと操作が複雑そうだが、銃撃以外のターゲッティングは、ある程度ファジーに補正してくれるので、簡単操作で直感的に戦闘を展開できる。

シリーズ総決算・脱B級の冒険

  • 全体的に第2作『黄金刀と消えた船団』のスペクタクルアクションと、第3作『砂漠の中のアトランティス』の人間ドラマ、過去作において特に評価された要素を発展統合させた作風になっている。
  • アクションシーンはPS4のマシンパワーを駆使し、これまでよりも高低差や空間的なダイナミズムを感じさせる展開が可能になった。
    • 雪の降る中で山頂から麓の海まで激しい銃撃の中を駆け抜けたり、一発の銃声が街の賑わいを震撼させ、そこから街全体を駆け巡るカーチェイス劇を繰り広げたりといった、刻一刻とシーンが激しく変わる中、派手でありながらなめらかに流れるようなシークエンスが増えたのが特徴。
  • また2016年当時にブームだったオープンワールドのトレンドを反映し、中規模ではあるが広大なエリアを自由に探索できる「オープンリニア」形式の章も2箇所存在する。
  • シナリオ面では、これまではある意味気軽な「B級アクション映画」を彷彿とさせるベタコテな展開も多かったが、今作は最終作としてほぼ全ての伏線に決着をつけている。
    • エレナとの関係からドレイクの血筋の秘密、そしてエピローグ後のキャラ達の顛末に至るまでしっかりと帰着点が描かれる。往年のシリーズファンにとっては寂しさを感じさせながらも、納得できるものとなっているだろう。
  • 初登場のサム、レイフ、ナディーンもこの1作のみながらキャラが立っている。サムは兄として、レイフはライバルとして、それぞれネイトの合わせ鏡のような役割を担い、ナディーンも女性傭兵隊長として、少ない登場シーンながらも強烈な存在感を放っている。
    • 人気が高かったからか、サムとナディーンは後続のスピンオフ『古代神の秘宝』にてメインキャラに昇格した。
  • 後半では、現代では当然ながら故人である海賊王「ヘンリー・エイブリー」を初めとした名だたる海賊達の、当時の心境と出来事ももう一つのストーリーとして絡んでくる。
    • 聖ディスマス*1と自分を重ね合わせ海賊と財宝を集め、自由の楽園「リバタリア」建国を夢見るエイブリーが段々と疑心と狂気に囚われていく様が、残された遺跡や手紙・遺体・罠から読み取れる。
  • また今回は探索によって知ることができるサブストーリーも豊富。メインのテンポを妨げないために見つけるかどうかは任意となるが、ネイトと母親と老齢の女性エヴリンのエピソードなどは、細部まで紐解くには時間を要するが、顛末はとても深くしんみりさせられる。
  • 他にも同じくNaughty Dog制作であるPS1時代の『クラッシュ・バンディクー』のファンならば思わずニヤリとさせられる、それでいて単なるファンサービスに留まらない物語的に深い意味を持つ演出もある

オンライン

  • 基本はこれまで通りの対戦型TPSだが、ロープアクションやサイドキックシステム(条件を満たすことで発動でき、回復や援護射撃などを行う)などの導入により、楽しみ方の幅が増した。
    • 操作キャラにカッターやラザレビッチなどを選べたり、また大技として「エルドラドの呪い」や「チンターマニの恵み」などが使えたり、と過去作経験者にはニヤリとできるファンサービスも多い。

賛否両論点

脱B級路線の弊害

  • 最終作ということでテーマ的にもシステム的にも前作までより格段に深みが増したのだが、それは裏を返せば気軽に遊びにくくなったということでもある。
    早い話が従来作よりキャラクターの心理描写を重視しており、重厚かつ暗い作風となっている。
    • 「真夜中の海岸でずぶ濡れて薄汚れ、苦虫を噛んだようにうつむくネイト」という本作のメインビジュアル、重厚かつ悲壮感を感じさせる様に大胆にアレンジされた「ネイサン・ドレイクのテーマ」等は従来作とは毛色の違う本作の雰囲気を象徴していると言えよう。
  • 基本的に「冒険野郎ネイサン・ドレイクとその仲間達vs神秘の財宝を狙う悪者集団」で単純明快にストーリーが帰結していた本シリーズだが、本作は名有りのメインキャラクター一人一人に丁寧な心理描写がなされており、場目によってはかなりピリピリとした仲間同士の対立もあったり、キャラの心境をよく考えないと行動理念がイマイチ理解出来ない場面も多々有る。
    本作の今までにないドラマチックなストーリー展開という新たな魅力を得た反面、他の大作ゲームでは得難い魅力だった、前シリーズまでの頭をカラッポにして楽しめる「B級映画的コミカルさ」はやや薄れているのは否めない。
    • 良くも悪くも「冒険バカ」だった主人公・ネイトからして成熟の代償としてか、これまでのような軽口や泣き言はやや鳴りを潜め、恒例のエレナとの夫婦漫才も、本当の夫婦となり大人としての責任を自覚させるようなテイストに変わっている。
  • 本作のネイトの目的は終始一貫して「サムを助ける」からブレない。死んだと思っていた兄を二度と失いたくないという気持ちを考えれば当然なのだが、
    上記の通りエレナの為に選んだ平穏な生活と、兄を救う為に危険な冒険に出なければならない板挟みに悩んでおり、無邪気に冒険と歴史の探求に没頭する従来のネイトの姿は、本作ではあまり見せてくれない。
    • 対して当のサム本人は、自分の命がかかっておりかつネイトを巻き込んだにしては、まるで前作までのネイトのごとくお宝探しの冒険を楽しんでいる節があり、ある意味呑気に見える。そしてその描写は間違ってない。
    • 物語の終盤で「ある意味」サムがネイトとプレイヤーを裏切る衝撃の事実が発覚するが、それでもなおネイトはサムを助ける為に突き進む。
      「兄弟の絆」を描く事には見事に成功しているものの、主題である「エイヴリーの財宝」はドレイク兄弟のドラマの為のダシと言えなくもなく、やや影が薄い。
  • 新たに導入されたオープンリニアステージや、章1つを丸々ストーリーテリングのみに費やしたセクションなどは、確かに広大な世界観の描写や物語を重層的に描くという意味では成功しているが、ただ手軽に冒険を楽しみたい層には冗長に感じる。
  • それらのシフトチェンジを象徴するかのように、タイトル画面では、いつものノリノリのテーマ曲は流れず、白骨化した海賊が「キィ…キィ…」と不気味に風に揺られている。
    • もはや「お気楽なB級の皮を被ったA級アクション」ではなく、「初めからA級を自覚した重層映画アクション」となった結果、過去作以上に賛否が割れた。

オープンエリア

  • 広大な様に見えて基本的に一本道に進むしか出来なかった前作までから一転、乗り物に乗って広大なマップを360℃移動出来るオープンエリアが随所に追加されたが、今までにない探索や戦略を楽しめる反面、テンポが冗長化している。
    • 特に最初のオープンエリアであるキングスベイの平原は、行ける場所が多すぎる割にメインの目的地はキャラの大まかな「あっちに行ってみるか」的発言とこれまた大まかな手書きのマップでしか示唆されない。
      当然ながらそのまま一直線に行ける訳ではなく、迷いやすい。
      登れない泥の坂道や仕掛けを車のアンカーを取り付けて攻略する場面もあるが、取り付ける為に一々降りてアンカーを持ってクルリと巻きつける様に動かなければならない。それらの要素はリアリティはあるが、テンポが良いかと言うと否である。

戦闘難易度の激化

  • ロープやステルスなどの新要素により戦略のバラエティが増したのは良いが、反面それらを駆使しなければ苦戦するバランスになっている。
  • 今回は敵のAIも賢く、頻繁に射撃ポジションを微調整したり、回り込んだりしてくる。
  • また、歳をとったからなのかネイト自身も過去作より打たれ弱くなっており、何も考えずに突撃すれば、これまで以上に返り討ちになることが多い。
  • 事前にステルスキルで敵の数を減らし、いざ発覚されればロープで素早くポジショニングを調整するような戦略が要求されるのだが、これが慣れるまでは若干難しい。
  • 後半になると四方からショットガンやミサイルなどに囲まれることも多発するため、これまで以上に指先とカメラが忙しくなるだろう。

銃撃戦の減少

  • オープンエリアでの戦略的な銃撃戦に重きを置いた反面、戦闘シーンそのものは数が激減している。
    • 一章辺り平均3回ほどしかなく、その間は無人の環境を探索・アスレチック移動するような展開が多い。
    • その分探索の時は探索、戦闘の時は戦闘に集中できるので評価点でもあるのだが、銃撃戦が好きなプレイヤーは物足りなさを感じるかもしれない。

問題点

ハーケン

  • 発売前の特集等でさも2大新アクションの様に宣伝されていた「ロープ」と「ハーケン」だが、「ロープ」に関しては最初から最後まで大活躍する反面、「ハーケン」に関してはゲームも後半に入った頃、目的地の島に辿り着いた時点でようやく入手する。
    • 使い方に関しても、「ロープ」の方はターザンアクションから高所からの落下阻止、敵の車に引っ掛けて引きずり回される等様々なアクション・パニックシーンに織り込まれているのに対して、「ハーケン」は岩壁の手がかりが届かない・無い場所に突き刺して手がかりにする使いみちしか無く、はっきり言って地味。
      • そもそも本シリーズは、岩壁にしがみついたり登ったりする際に掴める出っ張りや手がかりが「偶然」手の届く範囲にあるのがツッコむのも野暮なお約束と化している。
        本作でもハーケンを入手するまでに岩壁を何も使わず出っ張りを掴んで渡っていくシチュエーションは頻繁に存在し、後半の最後の島でだけハーケンを使わせる意味合いは感じられない。
      • いつものクライミングに変化を持たせたかったのかもしれないが、だとするとやはり入手時期が遅すぎる。
    • またハーケンを刺せることを示す柔らかい壁が、蜂の巣の様に細かいブツブツが並んでいるものであり、ちょっとキモいという声が多い。

スロースターター

  • 物語開始から本題に入るまでがとても長い。全22章のうち5章までは、チュートリアルを兼ねた、複雑な人間関係を描写するための実質的なプロローグになっている。
    • シナリオに説得力を持たせるために必要なのはわかるが、第2作のような全編フルスロットルの冒険を期待している層はヤキモキさせられるだろう。

グレネードの投げ返し機能の削除

  • 前作『砂漠に眠るアトランティス』では行えたグレネードの投げ返しが今作ではできない。
    • 今作ではグレネードの威力が過去作以上に強力になっており、尚且つ一部の遮蔽物が壊れるため戦闘難易度の激化に拍車をかけている。今作の戦闘システムでグレネードも投げ返せれば戦術の幅がもう少し広がったのだが・・・

ラスボス

  • ラスボスの問題点もシリーズ恒例。これはシリーズとしてのシステム周りがそもそも一対一の闘いを盛り上げるのには向いていないからで、それでも今作は演出や会話で相当頑張ってはいる。
  • しかし、ここに来て突然これまでとはかけ離れたゲーム性(2択剣戟)を突きつけられるので、難易度は意外と高く、ここで若干詰まってしまう人もいる。

総評

これまでNaughty Dogが培って来た技術力の総力を注いだ、シリーズ集大成。
個々の要素を紐解くと、重点を置いているポイントや、開発の思想が過去作とはかけ離れているところも多いので、人によっては戸惑いを覚えることもあるだろう。
が、重すぎずも軽すぎずもなく、シンプルな操作で深みのある美麗な世界を堪能できるという意味では、正しく最終作を飾るにふさわしい。
2010年代を代表するシリーズの一角として、見事に有終の美を飾ったと言えるだろう。


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最終更新:2022年02月18日 07:19

*1 キリストの磔刑の際に同時に磔にされていた盗賊2人のうち、キリストに罪を悔い改め昇天を約束された「良い盗賊」。