Root Film

【るーとふぃるむ】

ジャンル ミステリーアドベンチャー

対応機種 Nintendo Switch
プレイステーション4
発売元 角川ゲームス
発売日 2020年7月30日
定価 7,480円(税込)
プレイ人数 1人
レーティング CERO:D(17才以上対象)
備考 初回特典で秘蔵映像コレクションDVD付属*1
判定 なし
ポイント 角川ゲームミステリー第2弾
ぶっ飛んだ前作からマトモなミステリーに進化
写実的なタッチからコミックタッチに変更
システムはノベルゲーム寄り
角川ゲームミステリー
√letter(Last Answer) / Root Film


概要

角川ゲームミステリー第2弾作品。第1弾である『√letter』は雰囲気こそ評価されど肝心のシナリオがぶっ飛ばした出来であった。
そのため本作の出来も不安視されていたが、蓋を開けてみればマトモなサスペンスミステリーに仕上がっており前作を知るプレイヤーを良い意味で驚かせた。


あらすじ

島根県に事務所を置く若手映像作家・八雲凛太朗はTV局に勤める五十神プロデューサーの推薦により、10年前に中断されていた島根を舞台としたミステリードラマの制作プロジェクトに携わる事が決まる。
順調にロケが進む中、突如殺人事件が発生。何かプロジェクトと無関係でもないのではと直感した八雲は事件の調査も進めていく。
一方、ドラマの撮影を進める新人女優リホもまた殺人事件に巻き込まれていき…。


特徴

  • 主人公が映像監督である八雲凛太朗と女優であるリホの二人となった。
    • ゲームスタート時は八雲固定となるなど、シナリオの比重は八雲に大きく寄っている。
    • シナリオをクリアしていく度に次の話が解放されていくが、アンロックがかかっていてさらなる解放のために互いの主人公のシナリオをクリアしていく必要がある。
    • そして、全てをクリアする事でシナリオの全貌が明かされる…という仕組みになっている。
  • 舞台は前作と同じく島根県だが、今回は松江市以外の街も舞台となるなど、更に行動範囲が広がっている。
  • シナリオは『クロックタワー』『御神楽少女探偵団』を手掛けた河野一二三氏が担当しており、UIデザインにも携わっている。
    • 一話完結形式となっており、各話クリアの際にはエンディングクレジットが流れるなど、テレビドラマを意識した構成となっている。
    • 撮影を題材としていることもあり調査は聞き込みの他、録画した映像から事件の証拠品などを見つけていく場面が主となる。
  • 蓑星太郎氏によるキャラクターデザインや背景CGなど写実的なタッチだった前作から一転し、本作のキャラクターデザインは青年向け漫画のようなタッチとなり、背景も実写取り込みを加工したものが多い。
  • 主な女性キャラクターたちの声は『プリティー』シリーズでお馴染みアイドルグループであるi☆Risが担当している。
  • ゲーム進行は前作同様、島根県の各地域を巡り会話を進めていくオーソドックスな作り。
    • 追及パートとして、前作同様「マックスモード」が導入されているが、今作では各話のクライマックス以外にも挿入される場面が多い。
    • 今回のマックスモードは体力ゲージ(によく似たもの)が表示されており、正解となる選択肢を選んでいく度に相手側のゲージが満たされていくなど、格闘ゲームを意識したデザインとなっている。
  • 前作では主人公のみボイス無し(完全版『Last Answer』ではパートボイス)だが、今作ではフルボイス仕様。立ち絵もデザインされている。
  • ゲストとして、前作同様にしまねっこや島根県出身の芸人・ネゴシックスが登場している。声も勿論本人。

登場人物

  • 八雲 凛太朗
    • 主人公。個人事務所「八雲映像」を構える新鋭映像作家。実力を評価する者はいるが、作家としては未だ無名であり自己研鑽を怠らない。
    • 芸名に「八雲MAX」を用いており、愛称も「マックス」である。
    • 普段はズボラな面が隠しきれていないが社会人としての礼節と常識は弁えており、偉い人に会いに行くときはラフな格好ではあるが身だしなみを整えてから訪ねる、露天商をしている者から情報を聞き出す時は、その情報と引き換えに商品を購入するといったやり取りもできる。
      • マックスだからといって、前作のマックスのように恫喝を用いて情報を聞き出したり、サイコパスめいた言動を見せたりはしないので安心して良い。
  • 曲 愛音
    • 八雲映像に務めるアシスタント。編集ソフトや撮影機材の操作、伝票整理などマルチな才能を発揮しており、電話の対応を含めてコミュニケーション能力は高く、八雲映像が潰れずにいるのは間違いなく彼女のおかげ。気だるげな雰囲気で口が悪いなど元ヤン疑惑を持たれている*2
    • 根は気が良く、八雲との仲も良好。時には漫才のような掛け合いを見せることもあるが、実は八雲の映像作品を見たことがきっかけとなり、彼に憧れて押し掛けたという結構乙女的な弱みがあったりする。
  • 金手 杏一
    • カメラマン。端正な顔立ちだが、常に眠たそうな表情をしている。
    • 寡黙であり、台詞も大半が「~っす」だけ。また、カメラマンという都合ゆえか、一枚絵CGでは端っこに見切れている事が多い。
    • 実はかなり最初の方からちゃんと八雲達に同行しているのだが、長台詞があるのは数話経ってからである。
    • 発売後のアップデートにて、クリア後のおまけとして彼を主役とした短編シナリオが追加された。
  • 天方 一葉
    • 弱小事務所に所属するアイドルで本作のヒロイン。ドラマプロジェクトの主演として八雲に選ばれ、共に島根の各地を巡る事となる。
    • 若干天然の気はあるが、事件の進展になる情報に気付いたりと勘の鋭い所も見せる。
  • リホ
    • もう一人の主人公。17歳という若さでデビューした新人女優。高い演技力で業界から少しずつ評価されている。
    • 趣味としてミステリーを愛読しており、事件の調査においてその知識を披露することが多い。
  • 真鍋 洋子
    • リホのマネージャーである女性でリホ編のパートナー。
    • キャラクターデザインと声優でピンと来た人は多いが、前作のヒロインである文野亜弥(役を演じたAYA)がスターシステムにより再登場した姿である。

評価点

  • サスペンスミステリーとしてまともな作品になった。
    • たびたび言及するが、前作はミステリーと言うにはあまりにシナリオとキャラクターに粗があり、バカゲー寄りな方向性であった。
    • 本作は粗が全く無いわけでは無いもののシナリオに露骨におかしい部分が無くなり、推理ミステリーもきちんと成立した作品となっており、キャラクターたちも好感が持てる人物揃いとなっている。
    • シナリオのボリュームもアップしており、各話1~2時間ほどでクリアできる内容であり総合的には12~18時間近くとなる。
  • 立ち絵を背景の位置に合わせて縮尺を変えて遠近感を出したり、横姿や後ろ姿もふんだんに使うなどで表現を豊かに見せている。
    • 一枚絵CGも豊富になった。
  • 良質なBGMや情景描写など、前作の良点は魅力を損なう事も無く全て受け継がれている。
    • ちなみに一部のBGMは前作の物が流用されているが、シリーズ作品かつ舞台もほぼ同じなため、あまり違和感はない。

賛否両論点

  • 作風の変化
    • 上記のように前作から画風が変わった他、「ドラマの撮影の合間に起きる殺人事件の調査」というミステリーの王道かつ重めな題材になったこともあり、現地の人々との交流も少なめになった。
    • このため、「人探し」を題材とした前作の方が旅情感がよく出ていたという意見も見られている。
    • せっかく一般人には馴染みが薄い「テレビ業界」を舞台にしているのだから、業界用語や撮影器具のアレコレなど、『流行り神』シリーズのデータベースのようなものがあると興味を引きやすいし、目的地以外の場所を訪れた際にも八雲達のボイス付き会話が入るので、これらの寄り道ついでに雑学や豆知識を収集できる要素があればボリュームはさらに上がっただろう。

問題点

  • ゲーム性・演出はやや退化。
    • 前作に合ったアイテムの取得や人物への突き付けなどが無くなり、調べられる場所も「カーソルを移動して決定を押す」動作から「あらかじめ提示された場所を探す」となり、これらを総当たりして話を進め、推理では正解となる選択肢を正確に選んでいく…と、選択の幅が狭まりノベルゲーム寄りのシステムになっている。
    • 会話中のワードを忘れてはいけない言葉として記憶する「共感覚」があり、公式サイトなどではボタンを押すことで記憶しマックスモードで使用する…という触れ込みではあるが、実際の所、マックスモードでは既に決められた選択肢を選ぶだけであり、単なるQTEになってしまっている。
      • 一応、共感覚で提示された情報は謎の推理に使われるため、ストーリー上での意味はある。
    • 追及パートも上記のように実質的にできることが選択肢のみであり、その選択肢も文章をよく読んでいけばまず間違えないうえに、こちらが提示する情報も勝手に2~3個に選別されてしまう。しかもマックスモードは最初から最終話に至るまでどれも3~4回程度指摘しただけで終了する。
    • ハッキリ言ってしまえばこのマックスモードは本作の目玉のシステムであるにもかかわらず、敵の手は最初から丸わかりのじゃんけんを3回するモードと言っても過言ではないので難易度は低いどころか皆無。せめて後半に進むに従って難易度が上がっていけば犯人の手強さと狡猾さが演出できたのだが…。
    • 特にラスボスは巧みに人心を掌握し、何人もの人生を狂わせてきた相手なので、どれだけ必死に追求しても、のらりくらりとかわされるくらいの大物感が欲しかった所。
    • 前作に合ったムービーもほぼ無くなり、各話EDのみとなっている。
    • 立ち絵やイベントCGには表情差分が少なめで泣いたり怒ったりしているシーンで表情が変わらないことが多く、違和感を持ちやすい*3
    • 一応のマルチエンドであった前作と異なり、今回は完全な一本道となった。
  • 各話フローチャート機能は序盤や犯人への追及といった各パートへの選択ができないなど細分化されておらず、実質的に単なるシナリオ選択。
    • このため、PS4版での一部トロフィーの獲得が面倒に感じやすい。
  • リホ編はわずか2話で終了となるうえに尻切れトンボ気味。
    • 誤解のないように言っておくとこれにはきちんとした理由があり、手抜きというわけではない。
    • ただ、これではダブル主人公という謳い文句には首を傾げざるを得ない。
      • 実質的には八雲がメイン主人公、リホはサブ主人公という位置づけである。
  • シナリオの完成度は高いが、ゲーム中の人物は知っているがプレイヤーは知らない情報が多く出て推理にも使われるなど、プレイヤーに対して説明不足な点が見受けられている。
    • シナハン*4やペンディング*5といった業界用語が多用されるが、それらの意味はゲーム中ではほとんど解説されない。今時なら気になった人はネットで調べるだろうからいちいち説明するのは冗長と判断されたのかも知れないが…。
    • 共感覚もゲーム中では大層な能力として説明されているが、シナリオでの関係は皆無で上記のシステムの簡素さなどもあり、余計に大袈裟な印象を受けてしまう。
    • 中盤頃から実は10年前の事件の関係者が、八雲が関わってしまった事件の当事者であるというのが次々に明るみに出て一気に盛り上がってくるのだが、終盤のストーリーは肝心な部分に尻すぼみ感がある。
      + 以下、終盤のネタバレ。
      • 何故か制作途中でペンディングになってしまった謎の作品とその原因となったフィルムを追う、というのが終盤までの主人公の目的なのだが、その肝心のフィルムの内容を知る者はみんな口を揃えて「あんな物は忘れろ」と評し、さも悍ましい凄惨な映像が映っているのだろうと、プレイヤーは最終話までその内容を延々引っ張られてしまう。
        • しかし、その肝心の映像はと言うと「撮影中に照明が倒れてきて役者が首筋に大きな火傷を負った」「主人公と関わりの深い人物が崖から飛び降り自殺をする映像」の2つだけ*6
        • 確かに前者の方は役者生命を立たれてしまう痛ましい事故の記録ではあるし、後者も海に飛び込んで崖下に姿を消す瞬間なので、決して軽い映像ではないだろう。
        • だが、前述のように口にするのも憚られるような悍ましい映像かと言われればNOであり、ぶっちゃけテレビの特番や動画サイトでも見れる事故映像レベルでしかない。
        • 人によっては第1話の「撮影中に本物の死亡事故が起きてしまったのでなかったことにされた」という結論に至るシーンの方が怖気を感じるかも知れない。
        • ただし、過去にフィルムを見た者たちは黒幕である人物から恫喝を受けているため、その辺りを込みで忠告したともとれる。

総評

前作に本来望まれていた「地方を舞台としたミステリー作品」という趣のものを極めて正しい形で世に送り出したという意味では正しく理想的なシリーズの続編と言える。
前作の難点はほぼ解消されているが、共感覚などの本作独自のアイデアはあまり煮詰めきれていない部分が見受けられる。
前作のような批判を恐れるあまり良くも悪くも無難な出来に収まってしまったというところだろうか。
全体的なデザインはライトユーザー寄りとも言えるため、前作のようなエキセントリックさを求めている人やゲームに慣れている人からしてみれば薄味になってしまって物足りなさも感じるかもしれない。
少なくとも、1つのミステリー作品としては卒なく纏まり、前作から進歩したものである事は疑いようがないだろう。


余談

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最終更新:2023年11月10日 15:30

*1 パッケージ版のみ。

*2 昔は警察に結構絞られてた、ということを言ってるのでそこそこヤンチャであった模様。

*3 「複雑な表情で黙り込んだ」と書かれているのに、絵の方には不敵に舌を出していたりする。

*4 シナリオハンティングの略。脚本を書くために撮影場所へ下見を行うこと。

*5 頓挫、保留の意味。

*6 飛び降りて地面に叩きつけられた後のグロい姿が映っているなどではない。