不如帰

【ほととぎす】

ジャンル シミュレーション
対応機種 ファミリーコンピュータ
発売元 アイレム
開発元 タムテックス
発売日 1988年8月19日
プレイ人数 1人
定価 6,500円
判定 良作
ポイント 戦国シミュレーションの隠れた名作


概要

1555年戦国動乱の時代が舞台の国取りSLG。プレイヤーは大名となって天下統一を目指す。
既に光栄の『信長の野望 全国版』がファミコンでも発売されており、後塵を拝することになったが、大名以外の配下武将を導入したのは『信長の野望 戦国群雄伝』よりもこちらが先となる。


システム

大名を選択

  • プレイヤーはまず全国に散らばる全40人の大名から一人を選ぶ。そして名前を付け替えることができる(苗字は変更不可)。
    名前の後は能力を決定する。与えられた10ポイントを「作戦」「戦闘」「政治」「カリスマ」の各能力に振り分ける。
    • 「作戦」野戦では奇襲の成否、挟み撃ちでの回り込みの速さ、意見を求めた時の奇策発案、籠城戦では力攻めの攻撃力に影響。
    • 「戦闘」野戦での攻撃力、防御力、籠城戦での守備力に影響。
    • 「政治」経略での効率、敵からの経略への抵抗力、籠城戦での兵糧攻めに影響。
    • 「カリスマ」家臣を雇う場合、または家臣の維持(大名自身のこれが高いと裏切りにくい)に影響。
      ただしこれに関しては忍者に失敗して下がったりもすれば、野戦に勝ったりキリスト教を取り締まったりで上がるので初期のボーナスで上げる意味があまりない。

1年の流れはフェイズ方式で「経略」→「徴税」→「移動」(1)→「戦闘」(1)→「政略」→「移動」(2)→「戦闘」(2)→「移動」(3)→「戦闘」(3)→「軍備」

  • 「経略」は内政で、投資して石高を上げる。また敵国に投資して下げることもできる。降伏した状態では使用不可。
    • 敵大名もこれを行っており、自国に妨害の経略をしてくるが、これに対してはその領地にいる武将の「政治」の力が強いと、その効力を弱めることができる。
  • 「徴税」は文字通り税(年貢)の徴収。重税(1~6のレベル)を行うと収入が増える反面、一揆を起こされるリスクがある。
    • 一揆を起こされると、その国からの税収が0になり、石高が下がる。
    • このタイミングで配下の武将や兵(兵士はそれぞれの武将に紐づいた格好になっている)への俸禄を支払う。足りないとその分の兵がいなくなる。
  • 「移動」は武将を移動させるコマンドで、自分の支配下領地が連なっている範囲内ならどこでも一手で移動できる。
  • 「戦闘」は隣国に攻め込むコマンド(詳細は後述)。降伏した状態では使用不可。
    • 3回目の「移動」「戦闘」は冬にあたり、東北と北陸は必ず大雪になる。大雪の地区は支配下領地であっても「支配下領地が連なっている」とは見なされない。
      大雪の国への出兵や移動、また大雪の国にいる武将の移動はできない。
  • 「政略」は「政略結婚」「降伏させる」「忍者」「謀反」「寝返らせる」、山城(京都)を治めている場合、官位を与えられる。
    • 「政略結婚」いわゆる同盟で友好関係を結ぶことで攻められにくくなる(ただし絶対ではない)。
    • 「降伏させる」降伏させて大名自体を支配下に置くことができる。支配下大名からすれば自分は「盟主」となる。
    • 「忍者」成功すると「大名の暗殺」「大名のカリスマを下げる」「金を減らす」「兵力を減らす」「国力を落とす」といった様々な効果が得られるが、金100と膨大な出費が必要。失敗すると、自身のカリスマが低下するリスクもある。
    • 「謀反」盟主がいる(既に降伏している)場合、その支配下から抜けて独立する。
    • 「寝返らせる」敵大名の配下武将を引き抜く。
    • 「官位を与える」自分の支配下の大名に高い官位を与えると、謀反が発生しにくくなる反面、支配下でない武将が高い官位を持っていると降伏しない。
  • 「軍備」は「新しい家臣を雇う」→「家臣の俸禄を増やす」→「徴兵」→「城の強化」→「鉄砲購入」の後、セーブ(任意)。
    • 「新しい家臣を雇う」配下武将が4人以下(大名自身を含め5人以下)の場合、その空き枠に新しい武将を入れる。
    • 「家臣の俸禄を増やす」配下武将の俸禄を増やすことで「政略」の「寝返り」をしにくくさせることができる。一度増やしたら減らせない。
    • 「徴兵」兵を雇う(1武将あたり最大99まで)。
    • 「城の強化」城の防御度を高める。
    • 「鉄砲購入」鉄砲を購入する。

戦闘

  • 戦闘(合戦)のシステムは野戦と籠城戦。籠城戦で敵の城を落とすと、その国が手に入る。
    • 他国を攻める(出兵)場合には、その武将が率いている兵数×2の金が必要となる。
    • 攻められた場合、兵力の総数が一定の数以下でないと、最初から籠城はできない。
    • また敵が大名一人の場合、その大名が戦いの最中に討ち死にすれば無条件で勝利となり、その大名が持っていた支配国がまるごと手に入るのでおトク。
  • 野戦
    • 兵数ではなく、士気が勝敗を決める。士気が0になると負けとなる。野戦で勝利すると籠城戦に持ち込まれる。敗北すると鉄砲の数が減少。
    • 「突撃」「挟み撃ち」「包囲」「奇襲」4通りの陣形から1つを選ぶ。
      • 「突撃」いわゆる真正面から戦う正攻法。複数部隊(出陣武将が複数人)の場合、まずは先陣で1部隊を出す。
        「挟み撃ち」(要2部隊以上)1部隊を別行動させ、敵の背後を取りに行く。背後を取ることに成功すると、攻撃力が上がり、自軍の士気が回復する。背後を取るまでは別動隊は兵力の内に入らないので、その前に本隊が全滅してしまえば元も子もない。
        「包囲」(要2部隊以上)敵を正面と左右から取り囲んで敵の士気を下げていく。右備えや左備えも兵力に入ってはいるが、本隊が全滅した時点で負けとなる。
        「奇襲」全部隊で一気に敵本陣に奇襲をかける。成功すると敵をしばらくの間一方的に攻撃できるが、失敗すると敵に囲まれこちらの士気が一気に約1/3まで大幅ダウン(しかも全部隊を出しているので後述の「後詰」で士気を回復することもできない)という、まさにイチかバチかの作戦。「作戦」能力依存で雨天時の方が成功しやすい。
    • 野戦での戦闘中のコマンドは「見守る」「後詰」「鉄砲」「意見」「退却」の5通り。
      • 「見守る」いわゆる待機コマンド。
        「後詰」待機している武将を新しく投入。士気回復につながる。
        「鉄砲」一度のみ可能(雨天時は不可)。鉄砲で攻撃。武将の戦闘力が低くても鉄砲の数が多ければ強力な攻撃になる。
        「意見」武将に進言を求める。「作戦」能力が高い武将なら、敵の横を攻撃するなど奇策を編み出してくれる。
        「退却」自らの判断で戦闘を放棄する。ただ、すぐ逃げられるとは限らず敵の攻撃もある程度受ける。当然敗北扱い。
  • 籠城戦
    • 攻撃側が「兵糧攻め」「力攻め」「使いを送る」から選択。
      • 「兵糧攻め」兵力を消費しないが1回しか攻撃できない。その攻撃力は「政治」力に依存。
        「力攻め」兵力を消費するが兵数が尽きるまで何度でも攻撃できる。その攻撃力は「作戦」力に依存。攻撃時に兵力の尽きた武将は討ち死にする可能性がある。
        「使いを送る」説得して無血開城を試みる。成功すればその時点での城の防御力を維持したまま勝利となるが、城の防御力が高いほど成功しにくい。

主なイベント

プラス

  • 「豊作」税収が上がる。
  • 「南蛮貿易」国力が上がる。
  • 「不手際」支配下の大名を取り潰し、名実とも自国領化する。

マイナス

  • 「凶作」「飢饉」税収が下がる。
  • 「台風」国力が下がる。
  • 「病死」「寿命」武将が死亡。
  • 「出奔」武将が去ってしまう。

一長一短

  • 「キリスト教」取り締まれば、国力が下がる代わりにカリスマが上昇。放置すればその逆。

評価点

  • フェイズに分かれていることで行動パターンを組みやすい。
    • 敵大名の動向を先読みすることで有利に立ち回ることができる。
    • 3回目の「移動」「戦闘」は雪になる可能性があり、戦略が狂うこともある。実際の1年間の雰囲気もうまく出せている。
  • 城攻めの方法に「兵糧攻め」などがあり、戦闘力が高くなくても工夫次第で敵城を落とすことができるので、いわゆる弱小大名でも充分工夫次第で天下統一できる。
  • 大名自身の能力を自分で設定できる。
    • 10ポイントを「作戦」「戦闘」「政治」「カリスマ」にそれぞれに振り分けることができる。
      • とことん戦闘的な今川義元や政治的な上杉謙信など、自分好みにカスタマイズできる。
      • 本来底辺クラスな実力しかない大名でも、それなりの能力が持てる。
  • 最大6人という少人数の武将で進めなければならないので、困窮した状態になりやすいが、その反面、ある程度領土拡大が進んでくると陥りがちな「だれる展開」になりにくい。
    • 不便な点ではあるが、隣の国に武将がいればそこから出すことができるし、またそれすらできない状況でも城の力だけで守り切れることもあるので、完全な無防備ではない。
    • 或いは降伏させていれば、その支配下大名が援軍を送ってくれる。
    • 少人数で進めるため、SLGとしては非常にテンポが良い。早ければ1時間程度で統一まで行くことも。
  • 無所属な武将の中には強力な武将がおり、誰でも獲得できるチャンスがあるので弱小大名でも天下統一が現実的。
    • 裏を返せば真田昌幸が武田以外の配下になって武田軍と戦うという史実ではありえないことにもなるが…
  • BGMもなかなかの良曲揃い。テンポが良く、それでいてゲームの場面に合っていて演出を盛り上げてくれる。
    • 15年毎に曲が変わるのだが、1585年以降の曲は、大作風大河ドラマのようにドラマチックでメロディアス。同時に「ゲームが終焉に向かっている」ことも示唆しているようで、非常に印象深い。

賛否両論点

  • 敵大名は死亡すると家臣から後任が選ばれるのに対し、プレイヤー大名が死亡すればそれでゲームオーバー。
    • 不公平な感はあるが、本作は「プレイヤー=主人公」のような位置付けが濃く、自分で能力を決められる点からしてもやむを得ないことである。
    • また病や寿命で死んでしまうこともある。後任を選べないので有無を言わさずゲームオーバー。
  • ゲームバランスの問題で仕方ないが全大名が1国しか持っていない。
    • 公平な反面、長野業正や十河存保、筒井藤勝(順慶)、果ては僧でしかない一向蓮悟が大名に無理矢理なっていたりするという不自然な状況に。
    • それに付随して今川は最初から実質2国(徳川が降伏しており支配下に置いた状態)。
      • ただ、これに関しては今川自身が弱い*1ことと徳川がすぐ謀反を起こして独立してしまうこともあって、あまり気にならないという見方もできる。
  • 大名自身の能力を自分で設定するのはいいがトータルで10ポイントしかなく、大多数の大名の場合、本来(敵として相対する場合)よりも弱くなる。
    • 全能力を足して10未満という大名は少なく、大内義長、本願寺顕如、筒井藤勝、北畠具教、朝倉義景、一向蓮悟、山名豊国、尼子晴久、十河存保の9人だけ。
      後々上下するカリスマはどうでもいいと考えて、他の3能力を足して10未満の大名という条件でも上記の9人に加えて、津軽為信、蘆名盛氏、宇都宮広綱、畠山義綱、今川義元、三好長慶、波多野秀治、宇喜多直家、河野通宣、大友宗麟、阿蘇惟将の計20人。
      彼らで天下統一したいという者からすれば本来よりも強くなれるが、大半がマイナーな大名である。大多数は本来の能力より弱体化してのプレイを強いられる。
  • 合戦は光栄の『信長の野望シリーズ』と比べると、簡素なシステムで進行がスピーディーな反面、文字ばかりなので実戦でのイメージがしにくい。
    • 文字も全てひらがなで、スペースで区切られたりといった工夫もされていないので読みにくい。
  • 大名を家臣として直接登用する事が出来ない。
    • 攻城戦で負けた大名は切腹して死亡するので配下に出来ず、降伏勧告で臣下に出来た大名も属国の扱いのままなので、自由に活用出来ないのは痛い点。
    • ただ裏技を使う事によって*2(運が良ければ)家臣として雇う事も可能ではあるが…。

問題点

  • いろいろ史実に合わない部分がチラホラある。
    • 山城(京都)に将軍(当時なら足利義輝)がいない。また足利将軍家の一門が一人もいない。
      • 当該国を収めているのは足利の誰でもなく、何故か裏切り者として名高い松永久秀(本来は大和の武将)。上記の通り山城の支配者は官位を与えられる将軍のような位置付けのため、松永久秀が実質的な将軍というありえないことになっている。配下武将が誰もいなくて一人だけというのは彼らしいといえば彼らしいが将軍としてはいかがなものか。
    • 松平元康の名前が、最初から徳川家康になっている(システム的都合でやむを得ないのかも知れないが)。
    • 1555年当時2歳の毛利輝元や、まだ生まれてすらいない伊達政宗まで普通に現役武将として出ている。
    • それとは逆に1555年開始時には既に亡くなっている一向蓮悟*3も現役武将として登場しているのも疑問である。
    • 本願寺顕如が何故か摂津を治めている(当時の本願寺の本山であった石山本願寺は攝津にあったが…)。
  • 武将たちのステータスが表示されない。
    • 大体史実に則って設定されているが、紛らわしい部分として黒田如水(官兵衛)、竹中半兵衛、山本勘助といった名立たる名軍師たちの戦闘力は意外と低い(代わりに作戦力はトップクラス)ので、高いと思って実戦に出したら討ち死にしたなんてこともザラ。
    • これに関しては開発者が取説にも記述してある通り、ステータス表示による武将の能力判断に疑問を感じた為だという意図的な仕様である。

総評

日本全土を舞台にした本格的戦国シミュレーションとして、王道な要素は網羅しており、しかもシステムも簡素にできている。
それでいて、イベントなども豊富でゲームバランスがしっかり取れており、テンポも早いためだれるような展開になりにくい。
武将の能力など数値に明示されない部分が多い点に不便さはあるが工夫次第でカバーできないほどではない。
4か月ほど先に発売された『独眼竜政宗』共々『信長の野望シリーズ』のような光栄系歴史シミュレーションへの入門的な位置付けとするには適切である。


余談

  • 本作は『信長の野望シリーズ』と変わらず全国区を舞台にしており、簡素にしてこそいるものの、同年ナムコから発売された上記の『独眼竜政宗』や『三国志 中原の覇者』のようなおちゃらけたような要素は持っていない正統派である。
    • 同じようなシミュレーションゲームで差別化をせず真っ向から正統派路線で対抗したようなゲームは非常に珍しい。
  • 特定の条件を揃えることで特殊なイベントが発生する、いわゆる「歴史イベント」がある。
    • 普通のエンディングと違う「乱世エンディング」や「川中島の合戦」などは制作者自身も発生条件を失念してしまい、ほぼ誰も見た事のない幻のイベントとなってしまった。
      • 発売から10年以上の時を経て不如帰ファンが集まり、なんとしても幻のイベントを再現しようと様々な研究・模索が行われた。
+ 乱世エンディングの発生条件
  • 美濃の国を最後に攻め落として統一する。たったこれだけである。
    • 美濃の国は日本の中央にあるので、陸奥の国と薩摩の国の両方を攻め落とすまで放置しておくなどまずありえない。こんな変則的な発生条件なので発見は遅れに遅れた。
    • 乱世というくらいだから幕府の存続年数*4を0年にするとか、全国の国力を最大にしてからクリアするなど、当時は実に様々な条件が試みられていた。わかってしまえばそれらとは全く関係ない単純なものだったというオチがつくことになった。
+ 川中島の合戦の発生条件
  • 解明されていない。
    • 発売から既に30年以上経過しているが、いまだにこのゲームは極められていないのである。
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    最終更新:2023年03月13日 23:30

    *1 家臣は能力が最低クラスの氏真一人しかいないことと、敵として相対する場合は義元自身もカリスマが高いだけで、政治力は中程度、作戦・戦闘力は弱い。

    *2 降伏勧告で配下にした後、上手く取り潰しが成功出来れば大名も在野武将の扱いになるので、新たに雇い入れる事も可能になる。

    *3 本願寺中興の祖と言われる蓮如の息子で、後北条家の祖である北条早雲とほぼ同世代(つまり二世代程違う)で本願寺顕如が生まれる約半年前に堺で死去。

    *4 通常エンディングで発表される得点のようなもの。クリアしたときの状態によって存続年数が違う。