【はくちゅうむのあおじゃしん】
ジャンル | SFADV | ||
対応機種 | Windows8/8.1/10 | ||
発売・開発元 | Laplacian | ||
発売日 | 2020年9月25日 | ||
定価 | 8,800円(税別) | ||
レーティング | アダルトゲーム | ||
判定 | 良作 | ||
ポイント | 多方面で隙の無い完成度 | ||
Laplacian作品 キミトユメミシ / ニュートンと林檎の樹 未来ラジオと人工鳩 / 人類最強性欲の嫁 工口倫子 - 白昼夢の青写真 |
Laplacianブランドから発売された4作目(*1)のタイトル。
これまでの作品である『キミトユメミシ』、『ニュートンと林檎の樹』、『未来ラジオと人工鳩』で同ブランドが消化しきれなかったテーマと向きあい、制作集団として次の段階に進めるような作品とすることも目標として企画された。
開発に際しては社内スタッフの増員を行った上でなお過密スケジュールでの制作となり、その中でさらにシナリオの加筆や改稿・推敲までもが限界まで行われた。
シナリオの構成の関係で元々のボリュームもかなり大きかったこともあり、最終的にはDVDメディアに収まらずにデータを一部削る必要がある程の分量となったという。
ライターによる全体の監修も過去作よりも多く行われる等、質的な水準の向上も余念なく行われ、総じてボリューム・クオリティ共にブランドの集大成と呼ぶにふさわしい大作として発売された。
劇中には上記の過去作品の舞台やBGMが使用されているシーンもあるものの、シナリオ的な繋がりは皆無であるため未プレイでも特に支障は無い。
テキストウインドウの文章を読み進めるオーソドックスなアドベンチャーゲームであるが、選択肢による大きな展開分岐が存在しないため、広義的にはゲームではなくデジタルノベルと言える。
序盤は「CASE-1」・「CASE-2」・「CASE-3」の全く違った3つの物語がランダムな順で並行して進行する。合間合間には短いインターバルが挿入され、それぞれの物語に関する簡単な補足も行われる。
物語がある程度進行すると3つの物語の結末までは好きな順で進行できるようになり、それらを全て終えるとインターバルの内容から展開する「CASE-0」の物語に進むことができる。
構成上それぞれの物語は断続的に読むことになるが、一度読了した話はタイトル画面から選択することでインターバルなしの一本道のバージョンをプレイすることもできる。
話の内容としては恋愛要素を大きく扱いながらも、終盤では「人の記憶・過去、そこから決定される行動と人格・個性の関係性」といった哲学的な問いが主題となるシーンもある。
該当する場面は全体のほんの一部ではあるが非常に考えさせられる内容で、独特の余韻を強く残す展開となっている。
こうしたテーマは一見すると難解なようだが、あくまでプレイヤーが自発的に考えることを誘導する程度の絶妙な主張にとどめられており、話の流れそのものは全体的に理解しやすい。
「CASE1~3」の物語は同列の扱いであり、最後の「CASE-0」の中でそれらの繋がりが明らかとなる…といった構成である。
スタートから当分の間は事態の全容が見えない状態が続くものの、それぞれの物語の単独の完成度が高いため序盤から十分に楽しめる。
「CASE-0」は単体での完成度もさることながら、それまでのあらゆる情報が展開や演出に利用されるため、分量的にも感覚的にも別次元のボリュームを持ったシナリオとなる。
人類は同じ夢を見るようになった。 ある晩は、女生徒と教師の不倫の物語であり-- ある晩は、劇作家と女優の身分を超えた恋物語-- またある晩は、不登校の少年と教育実習生の淡い初恋-- 3種類の夢を、人類は繰り返し見るようになった。 何故、全人類が同じ夢を見つづけるのか。 これは、世界と呼ばれた一人の少女の物語。
公式BOOTHの商品説明ページより引用。
+ | CASE-0 |
+ | CASE-1 |
+ | CASE-2 |
+ | CASE-3 |
本作の3+1つの物語は様々な面で方向性が異なるため、個別に特徴を紹介する。
+ | CASE-1~3 |
+ | CASE-0 |
あらゆる面で高い完成度
シナリオ
構成
テキスト
声優諸氏の演技
グラフィック
音楽
演出
「CASE-0」の内容について
「CASE-1~3」については否寄りの意見が極めて少ないが、「CASE-0」は情報量の多さもあって賛否が分かれる点が複数ある。
※それぞれ核心に近い情報を含むので注意されたし。
+ | ボリュームについて |
+ | SF的設定について |
+ | 終盤の雰囲気について |
+ | 結末について |
エピローグ
本作は同ブランドの過去作と比較してもユーザー・制作側の双方から極めて高い評価を得ることとなった。
ただ、あらゆる方面での妥協のないクオリティ追及の結果
「完成度が高すぎて逆に評価点が説明できない」といった妙な事態
となっているため、情報が必要であればメーカー側が提供している体験版・YouTubeで公開されている全楽曲や各物語のOPムービー・公式サイト等を参考にするべきだろう。
ただ、調べすぎないほうが本編をより楽しめることもまた事実であるため、購入を決意した時点で速やかにプレイに移行することが推奨される。