水晶の龍

【すいしょうのどらごん】

ジャンル アドベンチャー
対応機種 ファミリーコンピュータ ディスクシステム
発売元 DOG
開発元 スクウェア
発売日
()は書換開始日
1986年12月15日(1987年2月14日)
定価 3,400円
プレイ人数 1人
判定 なし
ポイント グラフィックは非常に良い出来
BGMがないのが残念
おそらく本編のゲーム内容より有名なウソテク
DOGシリーズ


概要

1986年12月にDOGがファミコンディスクシステムソフトとして発売したSFアドベンチャーゲーム。
DOGとしては処女作となる。また電気工事会社の1部門でしかなかったスクウェアがゲーム会社として独立後、最初に発売した作品でもある。
「龍」と書いて「ドラゴン」と呼称する。

作画には漫画家やアニメーターとして有名な佐藤元氏を起用している。
更にアニメーション制作には当時放送中だった『機動戦士ガンダムZZ』を含む「ガンダムシリーズ」はじめ現在を含めその後も数々の人気アニメを手掛けた日本サンライズを起用している。


ストーリー

時は未来。国家は惑星ごとに独立し、惑星間を結ぶ交通機関はエア・バスが用いられている。
ヒューたちの住む街は超近代的都市計画に基づいて作られ、道路が広く緑豊かで様々な人種が同居する住みよい街で、広場を中心に放射状に広がっている。
ある日の放課後、ヒューたち3人はおばばを訪ね、シンシアは「水晶の龍事件」のことを聞くがおばばは何も答えず、何かを隠していると気付くものの、それが自分たちに密接に関わってくることになろうとは知る由もなかった。

そして日曜日、ヒューはナイルと一緒にシンシアからスペースランドのスペシャルコース(シャトルでの宇宙遊泳)に誘われる。
ハイテンションで乗り回していた矢先「水晶の龍」に遭遇し、一瞬のうちに襲われてシンシアのシャトルは破壊され、ヒューもまたその衝撃に吹っ飛ばされて気が付くと見知らぬ宇宙船にいた。
そこでユージンという謎の美女と出会うことになる。彼女に送られて自分の星に戻ってきたヒューはシンシア、ナイルの行方を追うために行動を始める。


内容

主な登場人物

  • ヒュー・ルーカス(主人公)
    • シニアスクール3年生の14歳。運動神経抜群な少年。
  • シンシア(ヒロイン)
    • ヒューの同級生で歳も同じ14歳。おてんばな性格で、実は某星の王女でもありヒューの学校に留学している。
  • ナイル
    • ヒューの親友で12歳と年下だが秀才でシニアスクール3年生(飛び級)。超能力を専攻している。テレパシーの使い手。
  • おばば
    • 本名は不明で、ヒュー達からはこう呼ばれている。
  • ユージン
    • 物語冒頭でヒューを助けた謎の美女。

システム

  • マウスカーソルのような矢印を十字ボタンで動かし、グラフィックウィンドウの中で直接選ぶ方式を取っている。
    • アドベンチャーの代表格である『ポートピア連続殺人事件』のように、文字による選択肢は一切表示されない。
    • 移動は矢印をBボタンで選択して、その方向に行くという形式で地名の表示などはない。
  • ゲームオーバー(バッドエンド)のようなものはあると言えばあるが強制的に少し前に戻ってやり直す形になるため、あまりその実感がない。
  • ディスク故の容量的限界のためか、序章的な部分は取扱説明書に掲載された漫画で見せている。
    • これが22頁と非常に濃い内容になっている。また説明書そのものが全体的に漫画仕立ての作りになっている。
      • そのため何も考えずソフト単体で入手していきなりゲームをはじめると、よくわからないまま襲われて始まり、ゲーム中も終始わけがわからないままになる。

コマンド

  • コマンドはそれぞれアイコンになっている(左から以下の順で並んでいる)。
    • 移動(アイコン・4方向を指した矢印)
      • 移動可能な方向を選択し別のシーンに移る。
    • 見る・調べる(アイコン・目)
      • メイン画面中のものを見たり調べたりする。
    • 取る(アイコン・丸いものを掴む手)
      • メイン画面中の物を取る。
    • 話す(アイコン・口)
      • 相手を選んで話しかける。
    • 使う(アイコン・親指を上に立てたゲンコツの手)
      • 持っているアイテムを選んだ場所で使用する。
    • 開ける・閉める(アイコン・ドア)
      • メイン画面中にあるドアなどを開閉する。
    • 操作する(アイコン・ボタンらしきものを押す指)
      • メイン画面にあるもの使ったり操作したりする。
    • 手放す(アイコン・落ちていく丸めた紙)
      • 持っていたアイテムを捨てる。「渡す」というニュアンスでも使われる。
    • セーブ・ロード(アイコン・ディスク)
      • ゲーム内容を保存したり、既存のデータを読み出したりする。

評価点

  • 非常に大きなグラフィックのウィンドウで、またディスク初期、ファミコンでもやっと中期に入るような頃でありながらグラフィックが非常に鮮明で、描き込まれている。
    • 特にゲーム開始に現れるパッケージイラストそのままの「水晶の龍」の登場から、そのインパクトは絶大。
    • 様々な背景があるが、いずれも非常に細かい部分まで描き込まれている。
      • 上記の通り、グラフィックウィンドウから直接選択する方式も、このような鮮明なグラフィックあってこそできるものだろう。
    • スクウェアは本作以前にもPCで『Will -The death trap 2-』や『アルファ』でグラフィック面で非常に高い評価を得ており、面目躍如と言ったところ。
  • 少女漫画風のキャラをはじめ、佐藤元氏によるカラー漫画を見ているような感覚で楽しめる。
    • ストーリーの出来も際立って秀逸とまではいかないものの、それなりに良くできている。

賛否両論点

  • 全体的にノーヒント。
    • アドベンチャーなのに進行に纏わるヒントが少ない点は理不尽に思えるがCMでも「君の頭脳にチャレンジ」とあるように、プレイヤーの直感や判断力を試すという意味では間違いではない。
    • しかも、後述の通りクリアまでストレートに進めると短すぎてやり甲斐もヘチマもないので、ゲームとして成り立たせる点と見ることもできる。
    • もっとも当時のPCのADV界隈では進行がノーヒントなのはよくある事で、後述のBGMの問題も含めてPCゲームの空気感をファミコンに持ち込もうとしていたのだと思われる*1
  • 独特なコマンド方式。
    • 特に移動が移動対象の名前が出るのではなく、グラフィックウィンドウに表示された矢印で選ぶと言う方式になっている。
      • 慣れない方法なのでやりづらい点もあるが、街中の背景などでは、その位置関係などがイメージしやすいという利点もある。

問題点

  • タイトルとエンディング以外BGMがない。
    • いくらまだファミコンがブームに乗ったばかりとはいえ前年にはアクションゲームなどでもゲーム中のBGMはあって当り前も同然で、アドベンチャーとして大事な部分であるためそれがないのは今一つ盛り上がりに欠ける。
    • この頃にBGMがまったくないゲームはアクションやシューティングでもほとんどない。
    • 当時のPCのADVはBGMが無いものが多く、それに倣ったと思われるがファミコンのユーザー層には受け入れられづらかった。
  • メッセージが一括表示なため、見る前に誤操作で送ってしまったりしやすい。
    • また、同じメッセージが表示される場合、再表示されている感じが全くないので、それが操作によるものか元々あったのが残っているだけなのかがわからない。
  • ストーリーの質は悪くはないが短かさが顕著。
    • 実際完全解答でストーリーを進めてしまうと20分かからず終わってしまうほど。
    • ゲームのプレ部分にあたる内容が付属の漫画で語られているため、ゲーム単体で見た場合は導入部がやや不親切。救出対象の2人に関しても途中幻影で現れるシンシアはともかく、テレパシーでしか交信できないナイルはエンディング一枚絵でしか姿を見ることができず、若干割を食っている。

総評

アドベンチャーとして重要なグラフィックに関しては文句なしのクオリティで、ストーリーも短いながら決して悪くはないが、BGMがないせいで盛り上がりに欠ける点は非常にもったいない部分である。
ゲーム進行でノーヒントな部分に関しては物語を楽しむアドベンチャーとして考えると欠点に思えるが、そこはアクションゲームにも似た直感で判断するものと取ることもできるので賛否両論だろう。
まだアドベンチャーゲームが確固たる地位を築く前の作品ということもあり全く違ったシステムにチャレンジした姿勢は高く評価できクソゲーと呼ぶほどひどいものではないが、まだまだ名作と呼ぶには程遠い出来である。
実際現在を含めてレトロゲームブーム本格化後でも本作が注目されるのは後述のウソテクばかりでゲーム本編はそっちのけな傾向にある。


余談

  • 本作の作画を担当している佐藤元氏は当時『月刊少年チャンピオン』(秋田書店)で『ファミコン探偵団』を連載していた*2
    • 上記作品ではアイドルグループ「少女隊」をモデルにした「少女隊(正式名称「少女探偵隊」)」が登場する。同氏は「少女隊」のメンバー「トモ」こと引田智子のファンということもあり取扱説明書のゲーム操作説明の漫画にゲスト出演させている。またモブ同然ながらゲーム本編でも登場する。
    • 実在人物が絡むためか、その後移植や配信など一切されていない。
  • 本作とそっくりなアイコンコマンドのシステムを採用したアドベンチャーゲームとしては1988年1月にサンソフトから発売された『リップルアイランド』がある。

伝説となったウソテク

  • 本作を語る上で欠かせないのが『ファミリーコンピュータMagazine(通称「ファミマガ」)』のウソテク*3である。ある意味本作のネームバリューはこれあってのものと言い切っても過言ではない。
    • それは1987年第2号(2月6日号)で紹介された本作の「シンシアと野球拳」であり、そのインパクトは絶大だったようで、現在でも「ウソテクと言えば『水晶の龍』の野球拳」とほとんどの人に言わしめるほど*4
      • 当然ウソなので実際はできないが、やり方はパッケージ裏のシンシアの写真と同じシーンでシンシアの手を調べると、コマンドアイコンが「グー」「チョキ」「パー」となり選んでジャンケンし、勝てば1枚ずつ脱いでいくというもの。写真ではスカートを取ってブラウスのボタンを外させるところまで。
        この通り非常に簡単なやり方(試し方)なので、翌号の解答発表で「やっぱりすぐわかったかな?」と言われていた。また、実は続きの写真がもう1枚作られたが、あまりに過激なので掲載は出来ず、ハイスコアコーナー担当の机に眠っているという事も書かれた。
      • これが見たくて買ったのに*5ウソテクと知ってブチ切れた人がいたなど、いろいろこのウソテクに纏わる逸話も多い。
        しかし、その割には対象週から翌号までの週で売上ランキングでは本作が急浮上して再ランクインしている様子がないので、ブチ切れたと言う人を嘘吐きとまでは言わないが少数派だったであろう事がうかがえる*6そもそもどれか一つはウソテクである事が明言されていたわけだし。
    • 中にはこのウソテクを再現しようと、後年になってFlashや『メイド イン ワリオ』で「シンシアの野球拳」を作った猛者が何人も存在するほど。
    • このウソテクが有名すぎるのと、移植がなかったせいもあってかリアルタイム世代以外では「ゲーム本編は知らないけど、野球拳は知ってる」は元より、果ては「野球拳のゲームと思っていた」という人も珍しくない。
    • また、この件でファミマガ編集部はおろかキャラデザの佐藤氏にまで問い合わせが殺到したようで、中には「ウソ技に関与していたのではないか?」と誤解されたこともあったと言う*7
  • 後に佐藤元氏がキャラクターデザインを手掛けたPS1ソフト『SIMPLE1500シリーズ Vol.101 THE 銭湯』では銭湯にやってくる客として湯人(ゆーじん)と深志谷(しんしや)というキャラが登場する。
    • 言うまでもなく本作のヒロインのパロディである。
    • 深志谷は 全国野球拳選手権の連続優勝者 という設定で なんと野球拳で勝負が出来る。
      • しかし結局勝っても脱ぐことはないのであった…。
  • CMはのっけから上記の野球拳と同じシーンで始まっている。
    + CM

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最終更新:2022年04月28日 20:05

*1 同社のハードボイルドAVG『ザ・デストラップ』は当然として、美少女キャラが売りの『ザ・デストラップ2 will』や『アルファ』もノーヒントで高難易度かつ無音である。

*2 ファミコンネタを学園生活に重ねて展開する学園コメディ漫画。当時「ファミ探」と呼ばれていたが1988年中期に前後編ディスクとして『ファミコン探偵倶楽部 消えた後継者』(任天堂)が発売されてから「ファミ探」はこのゲームの愛称として定着している。

*3 合成写真や自作ドッドで画面を作成した嘘の裏技。毎号51or101の裏技の中に1つだけ、これが仕込まれており「ウソテッククイズ」というそれを当てるクイズになっていた。実は本来の目的は、当時過熱していた裏技スクープ合戦において「他誌に記事をパクられない為のトラップ」である。要は他誌が正規の裏技のみならずウソテクまで載せた場合「記事をパクられた」という証拠を突きつける材料にもなる。

*4 ちなみに当時の任天堂の規定では女性キャラクターのへそが見えるゲーム画像をガイドラインで禁止しており、その観点からも野球拳で服を脱ぐというのはありえないものであった。

*5 因みにこの号が発売された頃は書換開始前なのでパッケージ版で買うしかなかった。

*6 当時はベスト10までしか発表されていなかったので11位以下で変動があった可能性も無いわけではないが、結局は10位以内にランクインさせるほどの影響力は無かったと言える。なお同年16号(9月16日号)からベスト20に拡大された。

*7 このウソテクの顛末についてはファミマガ2代目編集長を務めた山本直人氏による著書、「超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集」(徳間書店)にも記されている。