SIMPLE2000シリーズ Vol.120 THE 最後の日本兵~美しき国土奪還作戦~

【しんぷるにせんしりーず ぼりゅーむひゃくにじゅう ざ さいごのにほんへい うつくしきこくどだっかんさくせん】

ジャンル ミリタリー・アクション
対応機種 プレイステーション2
メディア CD-ROM 1枚
発売元 D3パブリッシャー
開発元 タムソフト
発売日 2007年8月30日
定価 2,000円(税抜)
レーティング CERO:C(15歳以上対象)
判定 なし
SIMPLE2000シリーズ

概要

  • SIMPLE2000シリーズ Vol.102 THE 歩兵 ~戦場の犬たち~』(以下『歩兵』)の流れを汲むタムソフト製TPS。謎の軍隊に占領された日本を舞台に、たった1人生き残った自衛官が孤独な戦いを挑む。
  • 目的は日本の国土解放。各都道府県ごとに1ステージが割り当てられている。北海道からスタートし、ステージクリアごとに隣接する都道府県への出撃が可能となる。最終決戦の舞台は東京。
  • 『歩兵』同様、プレイヤーの成長要素がある。ミッションクリア時に与えられる経験値がたまると、レベルと階級が上がり、任意のステータスを上昇させることができる。
  • 北海道の毛ガニや青森県のりんごなど、各ミッションにはその都道府県の「特産物」が1つ配置されている。使用するとHP全回復と一定時間無敵の効果がある。

ストーリー

俺の名前は百目鬼朝男(どうめき あさお)。
西暦200X年8月16日。俺は北海道での演習を終え、駐屯地に戻ってきた……はずだった。
だが、俺を迎えたのは謎の軍隊と、彼らに占領された街だった。旧式の兵器を持った多数の謎の敵兵が街を占拠していたのだ。
わずか数日の間に日本は一体どうなってしまったのか?無線も使えず、部隊や家族、友人の安否さえもわからない。
だが、俺は戦う。
いや、戦わなくてはならない。
例え俺が、最後の日本兵であろうとも!

評価点

  • 設定のユニークさ。
    • 「自衛官が日本を舞台に戦う(相手は怪獣などではない)」という設定のゲームは非常に珍しい。
    • どこか見覚えのある日本の風景がある程度は再現されている。
  • 『歩兵』同様、1ミッションあたりの所要時間は短い。
  • TPSとしてのシステムを見ると、『歩兵』から改良されている部分が多い。
    • 『歩兵』では基本的に敵兵のどこを狙っても即死させられたが、本作では部位ごとのダメージ倍率が設定され、ヘッドショット以外では数発耐えるようになった。
    • 『歩兵』ではTPS視点(オートエイム付き)とFPS視点が用意されていたが、本作ではこの中間にあたるエキスパート操作も追加された。これに切り替えると三人称視点のままFPS視点に近い操作方法になる。
    • 『歩兵』ではミッション中の現地調達かクリア後の報酬しか補給の手段がなかったが、本作では装備補充(ショップ)のシステムが導入された。ミッションクリア時に与えられるCP(クリアポイント)を使って弾薬や医薬品などを購入できる。
    • 『歩兵』では弾薬にも重量が割り当てられており、ミッションに持ち込める量が限られていたが、本作では装備として持ち込まずとも常にすべての弾薬が使用できるようになった。
    • 『歩兵』ではレベルアップ時に成長させられるステータスの効果が明確ではなかったが、本作では体力とスタミナ、生命力とHP、速さと速度が対応しており、成長後の数値も表示されるためわかりやすい。
    • 百目鬼は『歩兵』の主人公よりいくらか健康らしく、初期ステータスの状態でもHPやスタミナがある程度は高い。
    • 敵がやや賢くなった。

賛否両論点

  • バカゲー要素は薄い
    • 『歩兵』に比べると全体的におとなしめ。BGMは古い戦争映画や軍隊の行進曲を思わせる明るいものが多かった『歩兵』に比べて地味かつ重めの雰囲気に。「上官」のような強烈なキャラクターもいないし、あだ名システムもテーマ曲もなし。
    • パッケージ等には「NOと言える自衛官」や「美しき国土奪還作戦」など、保守派政治家のパロディを思わせる文言もあるが*1、ゲーム内で使われることはほぼない。その他の時事ネタも皆無。
  • 敵の探知範囲が広くなった結果、オートエイム範囲外の距離で戦う場面も多くなった。部位ダメージ倍率の追加も相まって、手動照準の重要性が増し、『歩兵』よりも慎重な戦い方が求められるようになった。TPSとしての手応えは確かにある程度増している一方、気楽に遊べた『歩兵』のカジュアルさが失われたことも確かである。

問題点

いくつかの問題点は、『歩兵』と共通する。

  • 設定やストーリーの薄さ。
    • たった1人で国土を奪還するという設定は一見すると面白そうだが、敵の正体、目的、侵攻の手口、どうして「謎の軍隊」が昔の兵士の姿をしているのか、占領下の市民はどのように過ごしているのか、日本以外の国は無事なのか……といった部分の掘り下げは特に行われない。
    • オープニングとエンディングを除くと、ストーリーに触れる演出は時々出会う瀕死の自衛官らとの会話のみ。
      • 大抵は途切れ途切れに曖昧な話をした後に息絶えてしまう。また、彼らも百目鬼と同様に敵の正体を知らず正確な状況も掴めていないので、プレイヤーが抱いた疑問に答えてくれることは一切ない。
  • 手抜きにも見える露骨なリソース流用。
    • 敵の「謎の軍隊」は、『歩兵』に登場した兵士のモデルに赤く光る目を取り付けただけ。ボスも同様。日本風のマップも『族車キング』シリーズなどタムソフトの過去作から流用したリソースに依存している。『歩兵』からそのまま流用したジャングルのマップもある。
  • 各都道府県を特徴づける要素だったであろう「特産品」の作りが雑。
    • 外見はすべて無味乾燥な黄色い星のアイコンで、効果には何ら差がない。全て集めても特にイベント等はない。
    • 説明文も簡素。例えば北海道の毛ガニは「北西太平洋沿岸に広く分布する大型のカニ」、岩手のわんこそばは「つゆを飲まずに噛まないではやく食べるのがコツ」といった調子。ユーモアを含んではいるが、ネタと呼べるほどの強さはない。
  • マップのパターンは少なく、置物の位置や昼夜が異なる程度のミッションが序盤のうちから目につくようになる。使い回しの都合、各都道府県を思わせるランドマークなどは皆無*2。北海道から沖縄まで数パターンの風景が繰り返されるばかり。
  • 『歩兵』同様、ミリタリーアクションとしてのリアリティは薄い。
    • 戦車やヘリが数種類登場するものの、やはり容易に破壊できる。
    • 後述の問題点にも絡むが、銃の性能は必ずしもモデルとなった実銃を反映していない。例えば、有名な対物ライフルであるバレットM82をモデルにしたN82狙撃銃*3の威力は他の狙撃銃と全く同じで、射程も飛び抜けて優れているわけではない。
  • 武器は数こそ多いものの……
    • T89小銃(89式小銃)や5・56軽機関銃(5.56mm機関銃MINIMI)など、自衛隊の装備をモデルにした銃もあるが、大部分は『歩兵』からそのまま流用されている。そのため、200X年を舞台としながらもほとんどの場面で第二次世界大戦期の銃を使って戦うことになる。
    • 『歩兵』同様、死に武器が多い。
      • 武器のステータスは威力、射程、重量、精度、弾数、速度の6要素から成るが、同一カテゴリ内では基本的に射程、重量、弾数以外は共通*4。別の銃の完全な下位互換となる銃が多いので、自ずと使うものは限られてくる。
      • 機関銃はそれなりに汎用性があるものの、フルオートで撃つと命中率が低くなり、高評価を目指すときには使いづらい。
      • 新規に追加された重機関銃は使い勝手が非常に悪い。高威力の弾を無制限に撃てるのだが、装備中は動けず、精密射撃も不可能という仕様。銃口を左右に向けることはできるが、弾幕を張ることはできない。よって、大まかに敵を1人ずつ正面に捉えて当たるまで乱射することになるのだが、そんな手間をかけるくらいなら他の銃を使って精密射撃を行う方が断然容易かつ効果的である。当然命中率にも悪影響を与える。
      • 近接武器も使う場面がほぼない。ただし、特産品を使って無敵状態で接近戦を挑むことはできるので、『歩兵』の頃よりは使い道があるかもしれない。銃を使うことに対するアドバンテージがあるかは別として……
      • 結局は『歩兵』同様、敵の探知範囲外から高精度で攻撃できる狙撃銃がやたらと強い。高評価を目指すならほとんど狙撃銃のみを使うことになる。
    • 武器はミッション中に回収したものがショップで購入できるようになる仕組み。しかし、必ずしも後半ほど強い武器がドロップするわけではない。序盤に入手できる武器の下位互換となる銃が後々ドロップすることも多いほか、中盤に初期装備と同じ銃がドロップするミッションも複数ある。また、当然ながら回収した時点でその銃を1つ入手できているわけで、通常はわざわざ購入する必要がない。
      • ミッション中に装備枠が埋まった時などは銃や道具を捨てることができる。1つしか所持していなかった銃を捨てたのなら再購入する必要も出るかもしれないが、そもそも枠を埋めるほど銃を持ち歩くことが通常はない。
      • ミッションに再挑戦した折に再び回収する、ついついショップで購入するなどして複数の同じ銃が武器庫にある場合、ミッションに持ち出して捨てる以外に処分する方法がない。
  • 『歩兵』よりいささか劣化した部分も。
    • 『歩兵』では武器(マシンガン、ピストルなど)やアイテム(回復、手榴弾など)の種類ごとにカテゴリが分けられていた。本作では装備画面が武器と道具の2つでしか分けられておらず、中盤以降はゴチャゴチャしがち。
    • 手榴弾が道具のカテゴリに統合されているのだが、1つで道具枠を1つ占有するようになった。例えば手榴弾を3つ持ち込むには医療キットなどにも使われる道具枠を3つ埋めることになる。
    • 例えばT-100という銃を複数入手した場合、『歩兵』の武器庫ではT-100x2のように個数が表示されたのだが、本作ではそのままT-100が2つ表示されるので、どんどん縦に伸びて見づらくなる。先述の余剰武器の処分の手間がこの問題を際立たせる。
    • クリア済みミッションの評価は、『歩兵』ではミッション一覧に直接表示されていた。本作では日本地図から都道府県を選んだ後のミッション詳細画面に表示されているので、低評価のミッションをやり直すときに探しづらい。
    • 『歩兵』では入手済みのアイテムが確認できる武器一覧画面があったが、本作では削除されている。
  • 他に比べると些細な問題だが、本作ではミッション終了時の弾倉の状態が保存される仕様がある。例えば弾倉に2発残した状態でミッションを終えれば、次のミッションはその2発残した弾倉を取り付けたままの状態で開始されるのである。使おうとしたときに弾が切れているのは小さなストレス。特に弾数1のロケットランチャーで顕著。
    • 『歩兵』では常にフル装弾の状態でミッションが始まった。そのため、複数の銃を使い分けるなどしてリロードを一切行わなければ、弾薬を消費せずにミッションを終えられる。『歩兵』では同じ武器を複数所持する意味も多少はあったのである。

総評

『歩兵』から見ればTPSとしては改善されている部分は確かに多い。しかし、あらすじ以上の物語はほぼ語られず、各ミッションで各都道府県の風景が忠実に再現されているわけでもない。『歩兵』のイメージからバカゲーのノリを期待しても肩透かしを食らうだろうが、かといって大幅にリアルあるいはシリアスなミリタリーアクションに生まれ変わったというわけでもない。いずれの味付けも薄く、「バカゲー要素を抜いた『歩兵』の改良版」というなんとも微妙なポジションにある本作の評価は、「自衛官が日本を舞台に戦う」という珍しい設定にプレイヤーがどれだけの魅力を感じるかというただ一点に掛かっている。

余談

  • そもそも自衛官を「日本兵」と呼ぶべきかどうかは別としても、百目鬼は厳密には「最後の日本兵」ではない。
    • 序盤から終盤までそこそこの頻度で負傷した自衛官を助けるミッションがあることを踏まえると、百目鬼以外にも抵抗を続けている部隊が各地に存在するようである。もっとも、多くはそのまま息絶えてしまうのだが……
    • 護衛対象として登場するトラックの乗員も自衛官であろう。
  • 宣伝用のPVや雑誌に掲載されたスクリーンショットなど、開発中の映像には製品版と異なる箇所がいくつか見つかる。
    • 武器には「コルト.45 M1911」や「トンプソン短機関銃 M1A1」のような実銃に近い名前が使われている。製品版ではそれぞれ「N1911拳銃」、「N1A1短機関銃」。
    • 『歩兵』の日本兵も敵として登場している。製品版ではドイツ兵とアメリカ兵のみ登場する。
    • PVの途中に映る日本地図は隣接した都道府県以外も解放されている。
  • タイトル画面で放置した際に再生されるデモでは、障害物に引っかかりながら目の前に手榴弾を落として味方を爆殺して自らも死ぬ百目鬼、主観視点で近接攻撃を連発しつつ謎のビープ音を鳴らし続ける百目鬼、敵に囲まれているのに屈伸しながらミニマップの拡大縮小を連打する百目鬼など、異常なプレイが披露される。とにかく足元に手榴弾を落として自爆するパターンが多い。
  • SIMPLE DSシリーズ Vol.34 THE 歯医者さん』では、ゲストキャラとして百目鬼が登場する。ただし、名前の表記が朝に変わっている。
  • 2019年9月の東京ゲームショウで初公開された同開発元の『国防挺身少女・日之丸子』は、大部分を敵軍に占領された日本を舞台に単独で国土奪還を試みるという設定や「国防挺身少女」というフレーズに象徴される独特の世界観を踏まえると、ある意味では本作の精神的後継作と言えるかもしれないし、言えないかもしれない。
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最終更新:2023年01月10日 11:45

*1 前者は石原慎太郎元東京都知事と盛田昭夫の書籍『「NO」と言える日本』、後者は発売当時の首相だった安倍晋三が就任中に掲げていたスローガン「美しい国」の捩りと思われる。

*2 東京のみ国会議事堂風の建物がある。

*3 この銃は最終決戦直前のイベントで、あたかもボスを倒すための重要なアイテムであるかのように手渡されるのだが、当然別の銃を使っても問題なく戦える。

*4 機関銃のみ威力が3、5、12の3種類ある。