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サプライズ☆オレンジ

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匿名ユーザー

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 高良みゆきの就寝は早い。今でこそ、就寝は十一時だが、中学の頃は十時には床についていた。
 そんな彼女が十一時を過ぎた今でも起きているのにはある事情があった。それは、今から一時間ほど前のことだった。

「ふう……。今日はこのくらいにしましょう」
 ノートに走らせていたペンを置き、みゆきは息をついた。
 時計を見ると、既に十時を回っていた。
 ちょうどいい時間だと思い、みゆきは携帯を手に取る。つかさと恋人になってからというもの、就寝前のこの時間は大抵つかさと電話で話す時間になっていた。
 今日はどんな話をしようかと心を弾ませ、みゆきは携帯を開いた。
(ーーーあら?)
 待ち受け画面にメールの着信を知らせるアイコンが浮かんでいた。先程、入浴している際中に来たのだろうか。メール画面を開き、発信者を確認する。瞬間、みゆきはかすかに驚いた。
(つかささん……?)
 画面の発信者名は『つかささん』という文字を映していた。急いで、内容を確認する。しかし、その内容にさらにみゆきは驚いてしまった。

『ゆきちゃんへ
 どうしても直接話したいことがあるの で、今から行きます。待っていて下さ い』

 そういうわけで、みゆきは今だ起きていたのである。
(つかささん……)
 携帯の画面を見る。整った顔に幸せそうな笑みを浮かべるつかさの写真がそこにある。恋人同士になってしばらくの後に撮影したものだ。今では、こうして待ち受けにしている。
(話したいこと……)
 突然すぎるとは思う。その上、つかさは『直接話したい』らしい。電話でもメールでも言えないこと。
 そう言われても、みゆきには内容の想像が出来なかった。一つだけ言えることは、かなり重要な話なのだろう。
(待つしかありませんね……)
 携帯を閉じ、みゆきはキッチンへ向かう。今夜は特に冷える。つかさに温かいお茶を用意しておこう。そうして、つかさの来訪を待つのであった。

 程なくして、チャイムが鳴る。ゆかりに自分の客であることを告げ、玄関を開く。待ち人がそこにいた。
「こんばんは、つかささん」
「こんばんは、ゆきちゃん」
 しばしの間の後、つかさを中へ通す。おじゃまします、と小さな声を発し、つかさは中へ入った。
 先に自分の部屋へ向かうように言ってみゆきはキッチンへ足を運ぶ。程よく温まった紅茶を香りと共に運んで、自室の扉を開けた。つかさは、ジッと座り込んでいた。

 カップに紅茶を注ぎ、つかさに渡す。
「どうぞ。寒かったでしょう」
「あ、ありがとう。いただきまーす」
 クピクピと紅茶を口に運ぶ。つかさは、体中が温まるのを感じた。
「おいしい。いい香りだね」
「そう言って頂けると嬉しいです」
 みゆきも紅茶を口に運ぶ。それをテーブルに戻した。
 そして、恐る恐る口を開く。
「それで……つかささん」
「ん?何?」
「いったい、どうしたのですか?直接話したいこととは……」
 つかさはそれにニコリとする。どこかそわそわしているようにも見える。
「え……と、ね」
 すると、つかさは今までそばにおいていた袋を手にとって、みゆきにそれを見せる。
「こ、これ!」
「え?」
つかさを見ると、顔は朱に染まり、緊張しているのか手は震えていた。不思議に思いながらも、みゆきはそれを手に取った。中を覗く。中にある物を出した。
「これは……マフラー……?」
 出てきた物はマフラーだった。白を基調にオレンジのラインが入っている。
 つかさが口を開いた。
「た、誕生日、プレゼント……」
「え……?誕生日……?」
「明日、ゆきちゃんの誕生日だから、これからどんどん寒くなるし、ちょうどいいかなって……」

 しどろもどろでも、つかさははっきりと話す。みゆきは手にあるマフラーをまじまじと見つめた。
「誕生日プレゼントだし、ホントは明日渡すべきなんだけど、明日は、みんなでパーティーするでしょ?だから、そのぉ……」
 もじもじと体を揺らしながら、つかさは言った。
「ふ、二人っきりの時に渡したかったから……」
「~~~っ!」
 みゆきは、とっさにつかさから顔を背ける。顔が熱い。つかさの顔が直視出来ない。もし、見てしまったら、気絶してしまいそうだ。
つかさもまた、視線を落とし先程よりもさらに顔を赤くしていた。
「あ、あの……」
 なんとか、つかさに声をかける。直視は出来ないままだが。つかさも視線を落としたままだ。
「ありがとう……ございます。本当に、嬉しいです……」
「う、うん……。ありがとう……」
 しばしの間が流れる。お互いに気恥ずかしさから、声もかけられない。
 沈黙を破ったのはみゆきだった。
「つかささん、これ……今巻いてみてもいいですか?」
「あ、ああ、うん!」
「それでは……」
 みゆきはつかさに背中を向け立ち上がりマフラーを首に巻いていく。その様子を、つかさはじっと見ていた。程なくして作業が終わる。

 みゆきはつかさの方へ向き直った。
「どう……でしょうか……」
 つかさはじっとみゆきを見つめ、満足気に微笑んだ。
「えへへ。自分で言うのもなんだけど、すっごく似合うよ」
「そうですか?ありがとうございます」
 自然とみゆきにも笑みがこぼれる。見つめ合うと、つかさもみゆきもクスクスと笑い最後には遠慮せず、大きな声で笑った。
 と、そこでみゆきはあることに気がついた。
「あの、つかささん」
「えっ、なあに?」
「お帰りはどうされるのですか?もう、電車はなくなっているはずですが……」
 つかさの動きが停止した。不思議に思い、もう一度声をかける。
「つかささん……?」
 少し間を置いて、弱々しい声でつかさは答えた。
「……考えてなかった」

「ごめんね、ゆきちゃん。泊めてもらって……」
「いいんですよ。別に、迷惑ではありません」
 むしろ、と言ったところで口を閉じる。
「?どうしたの?」
「むしろ、つかささんと一緒に寝られるのが嬉しいです……から」
「はううぅっ!?」
 つかさが文字通り『飛び上がり』、ベッドに倒れ込む。
「つかささんっ!?だいじょーーー」
 つかさに駆け寄ろうとしたとき、足を滑らせてしまった。

「う、うん、だいじょうーーー」
 大丈夫と言おうとしたつかさに力が掛かる。不思議に思い、閉じた目を開ける。みゆきが目の前にいた。
『あ……』
 声が重なる。それ以上言葉を発する事が出来ない。
『……』
 ふと。
 つかさが目を閉じた。
 みゆきは一瞬驚いたが、すぐにつかさに顔を近づける。
 心臓の鼓動を煩わしく思いつつ、その顔はだんだんつかさに近づいていく。
 もう、唇が触れーーー
 トントン
「みゆきー。早く寝なさいよー」
 ガバッと、二人の体が離れた。みゆきはゆかりの声に、努めて冷静に答える。
 ゆかりはそれで気が済んだのか足音は遠ざかっていった。二人は息を吐く。
「……寝ようか」
「……そうですね」
 そうして、みゆきは自分のベッドに、つかさは用意された布団で寝るのだった。

 時計の針が重なり、日付が変わったことを示した。
 灯りの消えた部屋の中で、みゆきはつかさに話しかける。
「つかささん、今日はありがとうございました」
「どういたしまして。喜んでもらえて嬉しいよ」

「マフラー、明日から早速使わせて頂きますね」
「うん!」
「そういえば、つかささん。」
「なあに?ゆきちゃん」
「あのマフラー。オレンジのラインが入ってましたが……」
「うん。ゆきちゃんの好きな色だよ」
「知ってくれていたんですね」
「もちろんだよ。だって……」
「?」
「ゆ、ゆきちゃんのことだから……」
「~~~っ!」
「えへへ。おやすみなさい!」
「つかささん!」
「ねえ、ゆきちゃん」
「はい?」
「お誕生日おめでとう!」
「ーーーっ」
「やっぱり、これは言わないとダメだよね」
「……そんなことを言われると……何も言えなくなってしまいます」
「えへへ……」
「……つかささん」
「なあに?」
「大好きですよ」
「ふえっ!?」
「うふふ。お返しです」
「うぅ、ゆきちゃんひどいよ~……」
「あら、本当のことですよ?」
「う~~~」
「つかささん」
「な、何?」
「これからも、ずっと一緒にいて下さいね」
「……もちろんだよ」





 翌朝。深夜に寝ぼけてベッドに入り込んだつかさが、みゆきに抱きついている光景を二人を起こしに来たゆかりに目撃され、からかわれるのは、また別のお話。

(Fin)












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  • ゆかりママ公認??
    -- 九重龍太∀ (2008-05-23 23:20:20)
  • これは萌える -- 名無しさん (2008-02-14 20:35:29)

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