ある日、いつもの三人で弁当を食べていたときだった。
「なあ白石」
「ん、なんだ?」
「今日お前ん家泊まりに行っていいか?」
「げほっげほっ」
「ん、なんだ?」
「今日お前ん家泊まりに行っていいか?」
「げほっげほっ」
俺の弁当に箸を伸ばしながら、日下部はそんなことを聞いてきた。
ちなみに今むせたのは俺ではない。
ちなみに今むせたのは俺ではない。
「み、みさちゃん。それは白石君に迷惑じゃ……」
「あ、やっぱし?」
「あ、やっぱし?」
ダメ元で聞いたのかよ。
「……まあ今日はバイトがあるからな。あんまりお前に構ってやれないが、それでもいいなら」
「んじゃ決まりだな!」
「んじゃ決まりだな!」
冗談半分で言った台詞を鵜呑みにし、一人で勝手に納得する日下部。
「……峰岸、あいつを止めてくれ」
「えっと……ごめんね白石君。頑張って」
「えっと……ごめんね白石君。頑張って」
自分の両手をぐっと握る峰岸。
詰まるところ今の日下部を止める方法は無いようで、
詰まるところ今の日下部を止める方法は無いようで、
「はあ……」
俺は彼女を泊めなければいけない状況に陥った。
「……けど何しに来るんだ?」
「泊まりに行くんだからそれしかねーだろ。ま、半分見学みたいなもんだけどな」
「見学……?見学って何だよ」
「泊まりに行くんだからそれしかねーだろ。ま、半分見学みたいなもんだけどな」
「見学……?見学って何だよ」
そう聞くと日下部は考え込み、
「なんつーのかな……将来の二人の住まいを確認しに行くってヤツ?」
瞬間、三人を囲む空気が凍りついた。
「……なあ日下部」
「何?」
「冗談だって分かってないみたいだぞ、峰岸は」
「あちゃー」
「何?」
「冗談だって分かってないみたいだぞ、峰岸は」
「あちゃー」
やっちまったとばかりに頭を掻く日下部。
見れば峰岸は箸を持ったまま固まっている。
ちなみに俺たちはそういう関係じゃない。断言する。
見れば峰岸は箸を持ったまま固まっている。
ちなみに俺たちはそういう関係じゃない。断言する。
「お前、本気に聞こえるような冗談言うの止めろよな。普段そういうの言わないからなおさらだぞ」
「ごめんごめん。悪かったよ」
「ごめんごめん。悪かったよ」
軽く峰岸に謝る日下部。
だが当の本人はまだ凍ったままだ。
だが当の本人はまだ凍ったままだ。
「で、俺の家には本当に何もないわけだが……。それでもいいんだな?」
なので峰岸が氷解するまでに俺はこっちの話を進めておくことにした。
「別にいいぞー。っていうか流石にゲームぐらいはあるだろ?」
「まあな。実家がおもちゃ屋やってるし」
「へー。……あれ?でもそれ関係なくね?」
「……まあな」
「駄目じゃん」
「ぐっ」
「まあな。実家がおもちゃ屋やってるし」
「へー。……あれ?でもそれ関係なくね?」
「……まあな」
「駄目じゃん」
「ぐっ」
ストレートなツッコミが胸を突き刺す。
しかし肝心の日下部は話が本筋から脱線しているにもかかわらずその方向へ進んだ。
しかし肝心の日下部は話が本筋から脱線しているにもかかわらずその方向へ進んだ。
「んじゃさ。私が買いに行ったときに」
「割引はしないからな」
「VIPルームにご招待」
「そんなものはない」
「……やっぱし?」
「割引はしないからな」
「VIPルームにご招待」
「そんなものはない」
「……やっぱし?」
というかそもそもここから実家までが遠すぎる。
後で旅費だけでゲームが何本買えるのか計算してみるか。
後で旅費だけでゲームが何本買えるのか計算してみるか。
「ううう……。なんでお前私の言うことが分かるんだ……?」
「そりゃあ、なあ?」
「『なあ』って意味深だな……。ま、いっか。人間細かい事気にしてたら生きていけねーし」
「そりゃあ、なあ?」
「『なあ』って意味深だな……。ま、いっか。人間細かい事気にしてたら生きていけねーし」
そして空になった弁当箱を片付ける日下部。
俺もそれに続いて片付け始める。
……助かった。はっきり言ったらいくら日下部でも傷付くだろうからな。
そして俺が片付け終わったとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
俺もそれに続いて片付け始める。
……助かった。はっきり言ったらいくら日下部でも傷付くだろうからな。
そして俺が片付け終わったとき、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「時間か。で、結局どうする?」
「うーんと……。んじゃしばらく駅で待っててくれ。家から荷物持って来るから」
「分かった」
「うーんと……。んじゃしばらく駅で待っててくれ。家から荷物持って来るから」
「分かった」
空の弁当箱を手に自分の教室へ戻る。
……その時、何か忘れ物をしたような気がした。
そして隣のクラスから「起きろー!あやのー!」と大声が聞こえてようやくそれを思い出す。
……その時、何か忘れ物をしたような気がした。
そして隣のクラスから「起きろー!あやのー!」と大声が聞こえてようやくそれを思い出す。
「……あ、峰岸」
――――
放課後になり、俺は日下部の荷物を半分持って、日下部を連れて自分の部屋に帰ってきた。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔しまーす」
部屋の電気を付ける。
「うっわ、本当に何にもねーな」
それと同時に日下部のやっぱりストレートな感想。
「アシスタントの仕事とかバイトとかで結構忙しいときが多いからな。そんなに物も無いんだよ」
「へー、バイトもやってんのか。大変だなー」
「まあな」
「へー、バイトもやってんのか。大変だなー」
「まあな」
だが実際、勉強・バイト・仕事の三つ巴は日下部が言う以上に疲れる。
今日みたいにたまの休みがなければ学生の身分にして過労死しそうだ。
今日みたいにたまの休みがなければ学生の身分にして過労死しそうだ。
「さて、いつまでも立ってると疲れるだろ。荷物をここら辺に置いたら適当に座っていいぞ」
「りょーかい。よいしょ……っと」
「りょーかい。よいしょ……っと」
部屋の真ん中にドスン、と荷物を置く俺と日下部。
そしてそのまま二人とも腰を下ろす。
そしてそのまま二人とも腰を下ろす。
「ふぃー。あんがとな白石」
「どういたしまして。……それじゃ夕飯は少し遅くなるけど、いいな?」
「なんでだ?」
「しばらくしたら出掛けるんだよ。昼に言っただろ、今日はバイトがあるって」
「あれ、そうだっけ?」
「どういたしまして。……それじゃ夕飯は少し遅くなるけど、いいな?」
「なんでだ?」
「しばらくしたら出掛けるんだよ。昼に言っただろ、今日はバイトがあるって」
「あれ、そうだっけ?」
こいつ……。
「……ま、今に始まったことじゃないか」
「なんか言ったかー」
「別に。それに聞かないほうが身のためだ」
「ひぇ……。やっぱし学校じゃなくても容赦ねーよ」
「そりゃどうも。……しっかし」
「なんか言ったかー」
「別に。それに聞かないほうが身のためだ」
「ひぇ……。やっぱし学校じゃなくても容赦ねーよ」
「そりゃどうも。……しっかし」
部屋に堂々と居座る荷物――4つのボストンバックを見る。
ちなみにこれは今日の為だけに日下部が持参したものだ。
おかげで運搬を手伝わされたり。
ちなみにこれは今日の為だけに日下部が持参したものだ。
おかげで運搬を手伝わされたり。
「お前この荷物の量は何なんだよ……。普通一泊だったらこんなにいらないだろ」
「いや、だって……なあ?」
「『なあ』?」
「いや、だって……なあ?」
「『なあ』?」
今日の昼頃俺が言ったような意味深な単語とともに、日下部はとんでもない台詞を口にした。
「今日からしばらくお前ん家泊まることにしたからさ」
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- 続きに激しく期待!! -- 名無しさん (2007-11-14 00:10:03)
- GJ!続きwktkして待ってます! -- 名無しさん (2007-11-09 05:34:05)