kairakunoza @ ウィキ

0から始めよう! 3話

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匿名ユーザー

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「ここですね」
 表札に書かれてるのは、『泉』の文字。
 うん、確かに住所は間違いないわね。
「どうすりゃいいの? 憑けったって言われても」
「ええと、とりあえず体に触れればいいだけらしいですよ」
 移動の間もハウトゥー本を読んでたらしく、自信満々に言い放つ。
 そういうのは最初から出来るようにしとこうな。
「触れば、ね」
 じゃあ簡単か。
 とりあえずそいつを探さないとね。
 もう学校も終わってる時間だから居るはず……居なかったら終わりだけど。
 家の中に入ると、妙な異臭に気がつく。
 匂いはあるのか……視覚、嗅覚、聴覚ぐらいはあるわけね。
「大分、汚いですね」
 本当よ、片付けぐらいしないわけ?
 ゴミは散らかりっぱなし、洗濯物は投げっぱなし。
 台所にいたってはカップラーメンが山積みじゃない。
「あ、この部屋じゃないですか?」
 それらしい部屋の前までやってくる。
 中を覗くと、確かに人が居た。
 机のパソコンに向かって座り、しきりにマウスをクリックしている。
 でも……。
「同い年でしょ? 大分小さくない?」
 小学生ぐらいよこれじゃ。
 もっと別の部屋があるんじゃない?
「いえ、この子みたいです。泉こなたさん、陵桜学園高等部2年E組所属」
 同じ高校かよ!
 しかもつかさと同じクラスじゃない。
 ……んー、でもこんな子居たっけ?
 何回はつかさのクラスに行った覚えはあるけどなぁ。
 こんな特徴的な子だったら目に付きそうなものよね。
「あの、急いだほうが」
「んああ、だったわ」
 その小さい体に手を伸ばす。
 その手が肩に触れるのと同時に、消えかかっていた体が元に戻る。
 ふぅ……一安心。
「なるべく宿主の近くに居ないといけないそうです。遠くに長時間離れるとまた成仏いちゃうそうです」
 じゃあこの小さい子の傍に居ないといけないわけ?
 大体さっきから何やってるのかしら、なんかパソコン弄ってるけど。
『んっ……あっ、はぅっ』
「……あらあらまぁまぁ」
 と、天使が頬を染める。
 パソコンの画像を覗き込んだからだ。
 画面に映ってるのは、何ていうのかな。
 こう、大分モザイクがかかってて内容が分かりづらいけど。
 漏れてくるのは大音量の……喘ぎ声。
「エロゲーかよ!」
「最近のは凄いですねぇー」
 とニヤニヤと頬を緩ませてやがる!
 つーか何処をどうやったら高校生が18禁のゲームを買えるんだ!
「……」
 無言のまま、カチカチとマウスをクリックしていく少女。
 その度に喘ぎ声が漏れ、気恥ずかしくなる。
 まさかこの子も、後ろから二人に覗かれてるとは思うまい。
「えー、宿主が法律を犯す:-80TPっと」
 ってチケット切られてるぅううううう!
「な、何でよ! こいつが勝手にやってるだけでしょ!?」
「あれ、言ってませんでしたっけ? 宿主の行動もポイントに加算されますよ」
 んがくくっ!
 じゃあ何よ、私がいくら貯めてもこいつがエロゲしまくってたら一向に貯まりやしないじゃない!
 つか80は行きすぎだろおおおお!
「現在-119TPです☆」
 笑顔で言いやがったこの野郎。
 くぅう、ええいじゃあいいわ。止めてやろうじゃない!
「ポイント使うわよ、触れるようにして!」
「はぁーい、5TP消費します」
 用はこのパソコンがいけないのよ、せいやぁ!
「!」
 少女の体がビクンッと跳ねる。
 思いっきりコンセント引き抜いてやった。
 これで続けられないでしょ!
「あれぇ?」
 急に真っ暗になったデスクトップに不審を抱き、数回叩く。
 でも主電源が抜けてるわけだから、点くはずもない。
 今まで入ってたって思い込みがあるから、案外気がつかないのよねこういうのって。
「……ああもう、いいや」
 数回電源を押したり、マウスをクリックした後に机から離れてベッドに身を投げる。
「これでどう? 宿主の法律違反を止めたわよ!」
 せめて1ポイントぐらいあるでしょ!
「ええと、言いにくいんですけどポイントなしです」
 ぐはっ……くそっ、まぁいいか。
 騒がしい喘ぎ声が止まったわけだし。
「しかも電源が入ったパソコンのコンセントを抜く:-10TPです」
 んなのもあんのかよ!!! そりゃ確かに危険だけども!
 はぁ……まだ借金街道まっしぐらだ。
「はぁ」
 と、私と同じようなため息が部屋に響く。
 さっきの少女のものだ。
 ん? なんだろうこの気持ち……妙に気分が高揚してる。
 何ていうの? こう、ムラムラと……。
「んっ……」
「ひゃっ!」
 ベッドの少女から、声が聞こえたと思った瞬間だ。
 思わず、私の声が漏れた。
 みっともないような、今パソコンから漏れたような声。
 な、何今の。
 体に電気が走ったような感覚。
「? どうかしましたか?」
「えっ……いや、今何かひぃぅぅっ!」
 体がビクッと反応し、下半身に妙な感覚が襲う。
 妙な下半身の異物感と快楽に、体が仰け反る。
 だ、だから何なのよこれ!
「あっ、え、えとちょっと待って下さい」
 思い出したかのように、慌てて本を広げる。
 な、何でもいいから早く……うう、これはあれだ。
 快楽……ってやつ。
 今私の下半身からゆっくりと脳にまでアドレナリンが溢れまくってる。
 何で? だからそれを聞いてるのよ。
「やっ……ん、ぅ、ぅうう」
 口を自分の手で塞いでも、喘ぎ声が自制出来ない。
 顔が火を噴くような羞恥心に襲われ、ジワジワと感覚が麻痺していく。
 押し寄せる快楽の波には一度だけ、記憶がないわけじゃない。
 一度だけ、そう一度だけよ?
 ちょっと興味本位で一度だけ……したことがある。
 それによく似て……ってゆーか、それそのまんまだよ!
「う、むぅ……んんんぅっっっ!」
 口を抑えた手から一気に声が漏れ、私は……果てた。情けない声と、ともに。
「あー、そのえっと。いいですか?」
「……何よ」
 おずおずと話しかけてきた天使をギラリと睨んでやる。
 うう、顔が真っ赤だ……恥ずかしい。
 訳は分からないが、何故か今私の体を快楽が襲ったのは確かだ。それも強制的に。
「どうやら、宿主とは……感覚を共有してるみたいです」
 と、ハウトゥー本を見ながら答える。
 感覚を?
 ……。
「じゃ、じゃあまさか!」
 と、ベッドを見る。さっき寝転がったはずの少女。
 その少女もまた、頬を染め恍惚の表情をしていた。
 その両手はそれぞれ、下着の中に。
 じゃああれ? エロゲでムラムラしたから自慰してたってか! どこの中学生だ!
 うぅ、酷い目にあった。
 これじゃ無理矢理されたのと一緒よ……恥ずかしいったらない。
「あ、で、でも可愛かったですよ。喘ぎ声も」
 てめぇこの野郎ぉおおおおおおお!
「ち、千切れますぅううう」
「あんたが説明しなかったのが悪いんでしょ!」
 くぅうう毎回このエロガキが自慰するたびにこんな目に会うってわけ? 冗談じゃない!
「あ、でも悪い事ばかりじゃないですよ? ご飯を食べれば味も共有出来ますし」
 視覚、聴覚、嗅覚までは残ってる。
 ないのは触覚と味覚……それは宿主が肩代わりってわけ?
「じゃ、じゃあちょっと待って。こいつがもし怪我したら……」
「そりゃ……痛いです」
 くそっ、痛覚までかよ!
 しかも一方的と来たもんだ……どうしよ、本当。
「宿主用のポイントもありますよ」
「宿主用? 何よそれ」
「ええと、50TPで宿主にだけ声が届きます。100TPで宿主にだけ姿が見えます。もちろんずっと」
 それは……使えるのか?
 むしろビックリするだけでしょ、意味ないない。
「あと他にも……」
「あーいいわ、どうせ使う事ないから」
 こんなエロガキと心を交流させてどないせっちゅーねん。
「つーか親は何してんのかしら、一軒家だし他にも住んでるはずよね?」
「ええと、確か……」
 また封筒から履歴書を取り出す。
「ああ、母親は亡くなってますね……『去年』」
 ……なるほど、何となく理由が分かった。
 部屋が汚いのは多分、その所為かな?
「それでどうやらひきこもってるみたいです、この子」
「ああ、そういう事」
 どうりで顔に見覚えがないわけね、学校もそれで行ってないってわけか。
 お母さんが死んだショックからまだ立ち直れないって所かな?
 ……そりゃ辛いか。
 私も想像しただけで、ちょっとひきこもりそう。
「でも凄いですよ」
「?」
 思い出したかのようにもう一度分厚い本をめくりだし、私に突きつける。ええと何々……。
「ひきこもりを社会復帰……5000TP!?」
 凄ぇ! もうノルマ半分じゃん!
 今までのマイナスも一気にチャラ、勝利は目前!
 目指せ5000!
 目指せ脱・ひきこもり!

  • 現在のTP:-134TP(↓)













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