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Epilogue : Great Triangle in Summer

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匿名ユーザー

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【Vega】


今日のこなたお姉ちゃんは、お昼前に家を出た私を見送ったあと、自分の部屋に戻って
そのまま夕方まで寝ていたらしい。
昨日の夜はまた、徹夜でインターネットのゲームをやっていたんだって。

「いや~、ほんのちょこっと息抜きのつもりだったんだけど、めがっさレアなアイテム拾っちゃってさー。
 みんなに見せびらかしてるうちにテンション上がりまくっちゃって♪」

そうじろう叔父さんと三人で囲む夕食の席で、楽しそうにお姉ちゃんは語る。
よっぽど嬉しかったみたいだ。
その顔は、かがみさんとのことを喋るときに匹敵するほど輝いていた。

レアアイテム、かぁ。
私も、ゲームの方はやらないけど、インターネット自体はよく利用するから、
それがどういったものかはなんとなく知っている。
ものによると、出会えるのは何万、何百万分の一の確率なんだとか。

「そうなんだ。よかったね、お姉ちゃん」
「うん!」

と、私の言葉に元気よくうなずいたお姉ちゃんが、ふと不思議そうな顔になる。

「……ゆーちゃんも、そういえばちょっと嬉しそうだね。何かあった?」
「えっ?」
「そうか、今日はクラスの友だちの家に行ったんだったね。楽しかったかい?」
「あ、はい」

そして優しく問いかけてきたそうじろう叔父さんに、うなずいて返す。
こなたお姉ちゃんの目がキラリと光った。

「みなみちゃんと、何かあったんだ?」
「へっ? べ、別に、そんなんじゃないよっ」

みなみちゃんをみんなで取り囲んでしまったことを思い出して、恥ずかしくなって、慌てて首を振る。
ああ、もう。なんであんなことしちゃったんだろう。
今度ちゃんと謝らなくちゃ。

「ホントにー?」
「う、うん。そうじゃなくて……そう。うん、そうなんだ。そうじゃなくて、みなみちゃんの家に、行く途中にね。
 私にもあったんだよ。アイテムじゃないけど、すっごくレアなこと」

言いながら頭に浮かんだ元気な笑顔に励まされて、にっこりと笑い返すと、
ニヤニヤと迫ってきていたお姉ちゃんが、きょとんとなって止まった。
叔父さんも、ちょっと驚いてるみたい。
そんな二人に向かって、私は口を開く。
今日という日に起こった、レアで、とっても素敵な出会いのことを話すために。





【Deneb】


今日という日の思い出がたっぷり詰まった携帯を兄貴にさんざん見せびらかして、
喋るだけ喋って満足した私は、自分の部屋に戻った。
いや、こうやってまた携帯を開いてたりするあたり、まだ満足してねーのかも。

舌を出してお座りしてるチェリー。なんとなく笑ってるようにも見える。
ぎこちない笑顔を浮かべてる岩崎さん。ううん、もったいない。
その岩崎さんと、小早川とのツーショット。いくらか良い顔だけど、ちょっと小っさいよな。
パトリシアに腕を抱えられてるメガネの田村。真っ赤になってら。

「へへっ」

しばらくニヤニヤと眺めていたけど、ふと思い立って携帯を操作しなおし、アドレス帳を呼び出した。
この時間なら、まだ家の電話の方にかけても大丈夫だよな。
発信ボタンを押して、数瞬の接続音のあと、けれど聞こえてきたのは話し中を告げるツーツー音。
ならば携帯の方に、と……

『――はい、柊かがみです』
「あ、もしもし柊!? 私――」
『ただいま電話に出ることができません。御用の方は発信音の後にメッセージを――』

って留守電かよっ。
ん? てことは、家の電話の方使ってんのも柊本人か?
……まさか相手はちびっ子じゃねーだろーな。
うう、ちくしょ。猫みたいなニヨニヨ笑いが頭に浮かぶ。気持ちが沈んできやがった。
と、そこにドアがノックされる音に続いて、母ちゃんの声。

『みさおー、お風呂入っちゃいなさい』
「あ……はーい……」

って、むぅぅぅう。なんて情けない声出してんだ私。
ダメだダメだ、しっかりしろ。そうと決まったわけじゃない。
仮にそうだとしても、なんだってんだ。むしろ望むところだ。そうだ。そんぐらい思わなきゃ私じゃない。

「……よし、よしっ!」

ほっぺを叩いて気合を入れる。
再挑戦。リダイヤル。案の定、また留守電だったけど。別にいい。それでいい。

「――あ、柊? もしもし! 私、みさお! 何回もごめんな。でもどーしても話したいことあるから。
 えっと、できれば電話じゃなくて直接! 明日にでも! だから返事くれな! メールでもいーから!
 ホント、すっげー大事な――」
“ピーッ”
「あ……」

時間切れ、か。まいーや。言うことは言ったし。
携帯を畳んで机に置く。
さてっと――そんじゃ、ひとっ風呂あびてくるとしますかね!





【Altair】


 入浴を済まし、自室に戻る。クーラーをつけようかと思ったけど、ベッドの脇でチェリーが寝息を
立てているのを見て、窓を開けるにとどめた。網戸をすり抜けた夜風が、ふわり、と頬をなでる。
 勉強机に座り、ノートと問題集を取り出す。
 結局昼間は、ほとんど宿題を進められなかった。
 まだそれほど切羽詰まっているわけではないけれど、このまま寝てしまうのはさすがに抵抗が
ある。せめて今日やろうと思っていたところまでは終わらせたい。
 ……皆は大丈夫だろうか。
 問題集をめくりながら、ふと、そんなことを思った。

「んっ……」
 一段落視したところでペンを置き、軽く背筋を伸ばす。
 気配を感じた。
 振り向くと、眠っていたはずのチェリーが頭を起こし、こちらをじっと見つめていた。
「……」
 その黒い瞳に誘われるように、立ち上がり、歩み寄って傍らに腰を下ろす。首筋を撫でると、
彼女は気持ちよさそうに目を閉じた。
「……今日は、ありがとう……」
 何が、かは自分でもよく分からない。
 だけど心からの言葉。
 感謝の気持ちを込めて、毛並みに沿って丁寧に撫で下ろす。
 チェリーがほとんど反応を示さないのはいつものことなのに、どこか寂しく感じるのは、昼間が
賑やか過ぎたせいだろうか。
「……もっと、甘えてもいいんだよ……?」
 正三角の白い耳がぱたぱたとはためく。
 それは肯定? それとも否定?
 手をあごの下に移して軽く掻くと、くうん、と眠たげな声をもらす。
「ふふっ……」
 私も眠くなってきた。
 まだ宿題は途中だけど、やはり今日はもう寝てしまおうか。
 一旦机に戻り、ノートと問題集を片付ける。まあ、間に合わないということはないだろう。でも
もし、仮に間に合わなかったとしたら、そのときは皆を――親友たちを、頼ろう。
「……いい、よね……?」
 チェリーの尻尾が持ち上がり、そしてぱたり、床に落ちた。

 照明を落とし、チェリーをもう一度だけ撫でてから、ベッドに入る。
 それじゃあ、みんな。
 そのときは、どうかよろしくお願いします。

 おやすみなさい。










































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  • 面白かった!意外性のある組み合わせがいいね。 -- 名無しさん (2008-03-26 04:30:03)

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