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柊のはりでさす。

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「大根買った、きゅうりも買ったし……あ、里芋みっけ! よぅし、これで全部だぜっ♪」
 2月2日、土曜日。日下部みさおは、頼まれていた夕食の買い物にスーパーを訪れていた。
「あ、このぽてち安いじゃん。買いだめしておこーっと」
 とはいえちゃっかり者の彼女のこと、自分の分の買い物にも余念がない。本日のターゲットはバーゲン中のスナック菓子、3袋で248円。
いそいそとカートに放り込むと、日に焼けた童顔に満面の笑みを浮かべた。
「みゅふふ、大漁大漁ー♪」
 早足でカートを押して、レジを目指すみさお。会計待ちの列にたどり着いた彼女だったが、浮き足立ったせいか前に並んでいた買い物客の背中を軽く押すような格好になってしまった。
「あっ、ごめんなさい。……あ、柊!」
「ああ、いえいえ……げ、日下部!?」
 前に並んでいた買い物客が振り返る。つり目がちの瞳にツインテール、みさおよりも若干小柄な同年輩の少女。実に5年越しの腐れ縁となる、同級生の柊かがみであった。押しているカートには、受験仕様のカールとキットカットとハイレモンが立錐の余地なく詰め込まれている。
「あー、ウカールじゃん。なに、柊もそういう縁起とかかついじゃうタイプ?」
 格好のおもちゃを見つけた、とばかりにかがみにじゃれ付くみさお。肩にあごを乗せるしぐさが、やんちゃな子犬を思わせる。
「顔近づけるな! これはアレよ、こなたとみゆきの分よ!」
 赤面したかがみは、みさおの顔を手で遠ざけようとした。
「ちびっ子はともかく、高良はもう推薦決まってるじゃん。ほんとは自分の分なのに、強がっちゃうかがみんモエー」
 当然みさおにとっては逆効果。余計に面白がってかがみをからかい始めた。髪をひと房つまみあげて声色を変えてみせたところを見ると、
かがみの親友である泉こなたの物まねをしたつもりらしい。
「違うわよ! ていうか似てねーよ!」
 実際、激しく似ていなかった。
 そうこうしながら会計を済ませた二人は、並んでカートの中身を持参の袋に詰め始めた。徒歩のみさおはトートバッグ、自転車のかがみは
大きめのリュックサックである。
「へー、柊もマイバッグ持ってきてるんだ。意外ー」
「うちはずっと前からやってるわよ。家族多いし、安いにこした事はないもの」
 言いながらかがみは一度詰めた中身をリュックから出し、収まりよくなるように詰めなおしている。
「買い物慣れしてないかがみんモエー……あいて」
「似てないつってるでしょう、うっさいわねぇ」
 かがみチョップがこなた化したみさおの額に命中する。おどけて距離をとってみせたみさおは、その拍子にある物に気づいた。
「んぉ? 何だこりゃ?」
「何よ?」
 みさおが目を留めたのは、窓の内側に貼られた貼り紙だった。豆まきや恵方巻きといった節分の風習が写真入りで解説してある。
「ああ、そういえば明日は節分だものね。うちは14日だけど」
「へ、なんでバレンタイン? 3日じゃねーの?」
「お社の方の節分が14日なのよ。それまでは準備で節分どころじゃないわ」
 きょとんとするみさおに、かがみは人差し指を立てて解説した。彼女の家は関東最古の神社なのだ。今年は受験だってあるしね、と説明を
締めくくると、かがみはリュックのファスナーを閉じた。
「ちびっ子とか来そうだよな、巫女さんモエーとか言って……ぶっ、あはははははは!」
 懲りずにこなたのまねをしていたみさおが、不意に爆笑を始めた。怪訝に思ったかがみがリュックを背負って向き直ると、みさおは貼り紙のある一点を指差したまま、某同人ドラマCDの日陰の少女もかくやという勢いで笑い転げている。
「なにげらげら笑ってるのよ……なになに? 『柊鰯は鰯の匂いで鬼を遠ざけ、柊の針で鬼の目を刺すと言われています』……?」
「柊の針! 柊の針だって! 針持った柊が鬼を刺すんだ! 柊凶暴伝説ー! あははははははは!」
 衆目そっちのけでみさおは笑い続ける。一方のかがみはしばし渋面を作っていたが、こらえきれずにみさおに向けて噴火した。
「ちょっと待て! 誰が凶暴で針で刺すって!?」
「きゃー、刺されるー、凶暴柊ー♪」
 ひょいとバッグを提げて、跳ねるように店から出て行くみさお。かがみもすかさず追いかけるが、みさおが日ごろの健脚に物を言わせて瞬く間に距離を開けてやると、根負けしたように肩をすくめた。
「明日の勉強会! あんたの家に集合だからね、忘れんなよ!」
 両手をメガホンにしてそれだけを告げると、かがみは駐輪場へ歩み去る。
「うん、分かったー! また明日なー!!」
 その背に大きく手を振りながら答えると、かがみは振り返って小さく手を振り、自転車に乗って去っていった。
 そして、その夜の日下部家。
「……でさあ、柊に『凶暴伝説ー』って言ってやったんだよ。そしたら柊もむきになるもんだから、もうおっかしくて。……あ、そか、もう
こんな時間か。……うん、おやすみあやの。じゃーね、また明日」
 自室で幼馴染の峰岸あやの相手の長電話を終えると、みさおは延べておいた布団にもぐりこんだ。そろそろがたがき始めた電気ストーブを切ると、刺すような冬の空気が部屋に忍び入ってくる。彼女は温もりを逃さないように、布団の中で身体を丸めた。
 郊外の住宅地ともなれば夜は静かで、安眠を妨げるものは何もない。あっという間もなく、みさおは眠りへと落ちていった。


「……さかべ。日下部! 日下部ったら!」
 みさおの見ている夢の中。かがみの声に気がつくと、そこはなぜだか教室だった。夢特有のあやふやな感覚のせいか、教室であるという事が分かる程度で、細かいディティールは判然としない。
「なんだよ柊、私は昼寝に忙しいんだってば」
 だってヴぁ、と聞こえそうないつもの口調でみさおは返す。
「そんなの関係ないわよ! よくもこの間は人を凶暴呼ばわり……」
 してくれたわね、とかがみが続けようとしたとき。
「でもそんなの関係ねえ! あーそんなの関係ねえ! あーそんなの関係ねえ!」
 突然かがみの妹のつかさが乱入し、どこぞの芸人よろしく左拳を振り下ろした。身に着けた白いスリングショット……俗にブラジル水着と呼ばれるそれは、幼さを色濃く残すつかさの身体には悲しくなるほど似合っていなかったのだが。
 かがみはひとしきりこめかみを押さえると、なぜか天井からぶら下がっているロープを力いっぱい引いた。
「はい! おっぱっぴにゃああああああ!?」
 足元の床がぱくりと開き、決め台詞を放とうとしていたつかさを飲み込んで閉じる。
「……」
「……」
 二人の間を天使が通り過ぎた。和風ミニスカスパッツで空気が読めないかどうかは定かではない。
「……で、何の話だったっけ」
 毒気を抜かれたようなみさおの一言。しかしかがみは当初の勢いを取り戻すと、みさおに食って掛かった。
「それよそれ! よくも人を凶暴だの針で刺すだのヤンデレだのNice boatだの、好き勝手放題言ってくれたわね!?」
「待てよ柊、後半二つは私言ってないじゃん!」
「黙れ日下部。今日という今日は私も我慢がならないわ。ちょうど節分だし、あんたの中の鬼を徹底的に退治してあげる」
 しなやかな人差し指が、まっすぐみさおを指差す。次いで不敵に微笑むと、かがみは裁判官よろしく冷徹に告げた。
「……そうね。散々針で刺す針で刺すとからかってくれたんだもの、お望み通り『はり』で『さして』あげるわ」
「いいいいい!?」
 青ざめるみさお。たかがからかっただけで針をぶっ刺されては、とてもではないが洒落にならない。だがかがみはそんな彼女をねめつけ、やおら着衣に手をかけて言い放つ。
「ふふ……言葉も出ないみたいね、日下部? 見せてあげるわ、あんたに『さす』『はり』は……これよっ!!」


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 すぽーん、と擬音がつきそうな勢いでセーラー服が宙を舞う。一挙動で脱ぎ去られた制服の下から、半裸のかがみが現れた。大きすぎず小さすぎず、実に絶妙なサイズの乳房を隠そうともせず、両腰に手を当てて胸を張っている。
 局部を覆うのは皮製と思しきハーネス、そして。
「ぺ、ぺぺ、ぺぺぺぺぺぺ!?」
 思春期の頃から兄秘蔵のエロ本をこっそり盗み見ていたみさおは、それが何であるかを正確に理解した。Tバックのハーネスの中央部、男性であれば一物があるだろう箇所から、男性自身をかたどった木製の何かがにょっきりと生えている。
「何よ日下部、意味もなくカードでもあげたくなったの?」
「違ぇよ! そ、それ、それ、ぺに、ペニスバンドじゃん!」
 彼女が指摘した通り。かがみが身に着けているそれは、まごう事なきペニスバンドであった。だがかがみはぴしりと人差し指を立て、左右に振りながら3回舌打ちをしてみせる。
「古式ゆかしく、張り型と呼んで欲しいわね。我が家に代々伝わる、総柊造りの由緒正しい一品よ?」
 言われてみれば、件の張り型は使い込まれた木特有の光沢に輝いている。ここまでの色つやが出るまでの歳月となると、一世紀やそこらは軽く超えているだろう。
「代々伝わってるのかよ! てーかそれを『さす』って……」
「言ったでしょう? 『張り』で『挿す』ってね?」
 愛おしそうに張り型を撫でさするかがみ。あたかも情事の前に男性が一物を猛らせるかのようなそのしぐさは、かがみに男性自身が生えているかのように生々しく見えた。
「い、いや、私結婚前までは清い身体でいたいから! じゃーね!」
 針路反転180度。一分の隙もない回れ右できびすを返すと、みさおはどこぞの時をかける少女ばりの俊足で一目散に逃げ出した。逃げられた格好になったかがみは、しかしいささかも動じることなく号令を下す。
「コナッキー!」
「はーい。全国のツンデレ女子高生の皆さ~ん」
「ミネズラー!」
「え、えっと、風邪ひいてまんねん?」
「いや峰岸、それ違う人だから……もとい! 犯ぁっておしまい!」
『アラホラサッサー!!』
 みさおが急ブレーキをかける暇もあらばこそ。行く手をふさぐように現れたこなたとあやのは、みさおを取り押さえたかと思うと制服の上をずり上げて下着を上下とも剥ぎ取り、そのままくるくると後ろ手に縛り上げてしまった。あらわになった両の乳房にかけられた縄が、風変わりなブラジャーのようにみさおの胸を強調している。
「さあ、観念しなさい日下部。思う存分ぶっ挿してあげるわ」
 自慢の張り型を構えるかがみに、みさおは声一つ出ない。今しもそれがみさおの中に突き込まれようかという時、あやのが声をあげた。
「柊ちゃん、柊ちゃん」
「なによ峰岸、これからが本番よ? それとも替わって欲しいの?」
 お楽しみに水を差されて不満そうなかがみに、あやのはおっとりとした口調を崩すことなく言った。
「みさちゃん、震えてるわよ? 柊ちゃんが男の子ポジションなんだから、優しくリードしてあげないと」
「そだねー。今のまんまじゃみさきちも痛いばっかりだし」
 こなたも、いつもと変わらぬお気楽さで同意する。
「それもそうね……じゃあ、まずはこの辺からかしら?」
 一瞬考え込むようなそぶりを見せたかがみは、みさおをうって変わったような優しさで抱き起こし……そのまま自らの胸の中に抱きしめた。ふわふわとした温もりに包まれて、先ほどまでとは別の意味でみさおの言葉が失われる。収まりの悪い髪をくしけずる手つきはあくまでも優しく、みさおは自分が縛られているのを忘れそうな気分になった。いや、きっぱりと忘れた。


 何しろ夢の中の事である。見ている当人に忘れ去られた事柄は、存在していないに等しい。みさおを縛っていた戒めはこなたとあやの、それに着ていた制服もろとも綺麗さっぱり消え失せ、いつの間にか彼女は生まれたままの姿でかがみの愛撫を受けていた。
「可愛いわよ、日下部……もっともっと可愛くしてあげる」
 慈愛に満ちた眼差しが、裸身のみさおに注がれる。頬に、胸に、背に、尻に、そしてみさおの大事な場所に。かがみの指先がそっと触れる度に、みさおの隅々までが雨を注がれた草原のように潤されていった。
「ひぃらぎぃ……」
 普段より上ずった声が、かがみに呼びかける。
「なぁに?」
 返すかがみの声も、夢のように優しい。実のところ夢なのだが、みさおが気づこうはずもない。
「あのさ……あのね? こういう時くらいさ、その、名前……で、呼んで欲しいな」
 うっとりと見上げる視線の先で。かがみは笑みを深くして、みさおの願いをかなえた。
「お安い御用よ、みさお」
「ありがと、かがみ……!」
 見詰め合う二人の距離が縮まり、やがてゼロになる。長くて優しい、恋愛ドラマのようなキス。ただし空けた利き腕で、みさおの大事な場所を撫でさすることも忘れない。みさおが息苦しさに唇を離すと、かがみは頬をひと撫でしてからみさおの乳首を口に含んだ。
「うぁ、ぁ、ひいら……かがみ、はげし、すぎる、よぉ……」
「ん、ちゅ……美味しいよ、みさおのおっぱい」
 いたずらっぽい笑みを浮かべると、かがみは右手を乳房に添え、さらに愛撫を強めた。左右の胸とみさお自身、敏感な3ヵ所を同時に愛されたみさおは、更なる愛撫をねだるかのようにかがみを抱きすくめる。
「はっ、あっ、ぁあ、ひいらぎ、きもち、いいよぉ」
「こぉら、呼び名戻ってるじゃない。かがみでしょ、み・さ・お?」
「あ、そだった……やぅっ、あーっ!!」
 呼び名を戻してしまったみさおをとがめるかのように、かがみは左手の動きを強めた。みさおにもたらされる快感もそれにつれて加速し、みさおにスパートを強いていく。
「も、だめ、かがみ、わたし、そろそろ、げんかい、かも……!」
 いやいやをするように首を振りながら、みさおはかがみに訴えた。
「そう……じゃあ、そろそろ行くわね。あんたを大人に、してあげる」
 そっとみさおの両膝を開かせると、かがみは張り型をみさおの奥深くに差し入れた。破瓜の痛みに一瞬身を硬くするみさおだが、そこはなんと言っても夢の便利さ。恐れていた痛みはなく、今までに倍する快感がみさおに訪れた。もちろん、現実ではキスさえ未経験のみさおにとっては想像上のものでしかないが、彼女を高めるにはそれで充分だった。
「ひ、ひいら、かがみ、すごい、すごいの、なんかすごいの、きちゃう、おね、がい!」
 両手はかがみの背に、両足はかがみの腰に。全身で彼女を抱きしめると、かがみはより強い快感でみさおに応える。
「みさお、好きよ、大好き、ずっと、はなっ、離さないから……!」
「うん、好き、わたしも、すき、だから、はなれ、ない、ずっと……!」
 みさおの身体が、激しく揺さぶられる感触。その感触が最大限に高まろうかとする刹那、待ち望んだ感覚がみさおに訪れた。彼女はあらん限りの声を振り絞り、訪れる感覚をそのまま言葉にして放つ。


「かがみ、私、いっちゃう……うぁぁぁぁぁーっ!!」


 意識を取り戻したみさおが見たものは、見慣れた自室の天井だった。
「夢かぁ……つかなんか変な夢。よいせっと」
 むっくりと起き上がるが、妙に身体が涼しい。というか寒い。なぜだろうと首をひねると、辺りに脱ぎ散らかされたパジャマが散乱しているのが見えた。寝ぼけて脱いでしまったのだろう、と結論付けたみさおは着衣を拾おうと全裸のまま布団を出て、自室に自分以外の人影があるのを認識した。

 人影その一。顔面を蒼白にして腰を抜かし、足先の動きだけで出口への後退を試みる柊かがみ。
 人影その二。キャパシティを超えた事態の到来に思考を停止させ、口をあんぐりと開け放って「sneg?」と繰り返す泉こなた。
 人影その三。いつも通りの笑顔でたたずんでいるように見えるが、固まったまま延々と「SEVENTH MOON」を口ずさむ峰岸あやの。

「あ……れぇ?」
 不審に思ったみさおが出たばかりの布団を振り返ると、超特大のしみがくっきりとシーツについている。はっとして自分の大事な場所を見やると、そこは愛液でてらてらと濡れ光っていた。


 ……まるで、「たった今オナニーで達した」ばかりのように。


「あ、あのさぁ?」
 引きつった笑顔でみさおが声をかける。すると。
「だだだだ、だめよ日下部! 私たち女同士だしこういうのは間違ってると思うの! せめて1000万歩譲って最初は交換日記からにして!」
「それなんてエロゲ? これなんてエロゲ? ていうか私、エロゲの国に迷い込んじゃったの? フラグはどこ、セーブはいつできるの? 助けて知得留先生、もしくはタイガー道場ー!?」
「おしーえーてくれせぶんすむーん♪ このむーねのもやもやをっをー♪ おれをどーこへとーつれてゆくのかー♪」
 混乱の限界値に達したかがみたちは、三者三様のパニックを起こしながら転がるように部屋を出て行ってしまった。
 あとに取り残されたのは、全裸のみさおただ一人。
「もぉぉ~、朝っぱらからなんなんだよぉ~!? ……へきしっ!」
 くしゃみを一発放つと、みさおは混乱もそのままに着衣をかき集めた。ぐしょ濡れで使い物にならないショーツは諦め、たんすから新しいブラとショーツを取り出して身に着ける。

 実のところ。昨日の夕方かがみと交わした約束か、枕元で未読メールと不在着信をを溜め込んでいる携帯電話、どちらか一方にでもみさおが気づいたなら、状況の正確な把握にも役立ったろうが……ぐしょ濡れの布団にも戻れず、はんてんを羽織って電気ストーブが温まるのを待つみさおがそれに気づくのは、もう少しあとの事になりそうだった。

(どっとはらい)












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